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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。

犬が丸くなって寝るのは、体温調整や警戒心などいくつか理由があります。よく見かけるこの寝相には犬の心理や健康状態が深く関係しているようです。今回は、犬が丸まって寝る理由について、心理的な側面や体調との関連、飼い主が知っておきたい寝姿の異常や対処法、良質な睡眠環境を整備するポイントなどを、獣医師の平松育子先生監修のもと解説していきます。
目次
- 犬が丸くなって寝る心理的、生理的背景
- 犬の健康状態と寝姿勢の関係
- 犬の寝姿に異常を感じたときの対処法
- 犬の健康状態を守るために注意すべきこと
- 快適な犬用ベッドの紹介
- まとめ
犬が丸くなって寝る心理的、生理的背景
犬が丸くなって眠る理由は一つではありません。この姿勢には、寒さや防御本能、安心感を得るための行動、環境への適応など、さまざまな要因が関係しています。それぞれの理由を詳しく解説します。
寒さや体温調整など防御本能による行動
犬が体を丸めるのは、内臓や急所を守るための防御本能が関係していると考えられています。特に寒い環境下では、体温を効率的に保つためにこうした姿勢をとります。丸くなることで体から逃げる熱を最小限に抑えられるため、短毛種や寒さに弱い犬によく見られる行動です。寒い日の散歩後や冬場の室内で、特に子犬など寒さに弱い犬が丸くなって寝ていたら、室温が低くないか確認してみましょう。
野生時代からの本能で安心感を得るため
犬が丸くなる習慣は、本能が関係しています。外敵から身を守るために、狭い巣穴で急所であるお腹を隠し、体を小さくして寝ることで防御力を高めていました。この行動は現在も受け継がれていると思われ、特に、飼い主や家族が近くにいないときなど、犬が自分で安全を確保しようとする際に見られることが多いといえます。
狭い空間で落ち着く姿勢だから
狭い場所や限られた空間で眠る際、犬が丸まるのは合理的な判断からだといえます。ケージや小さなベッドなどでは、体を丸めることでスペースを効率的に使えます。この姿勢が物理的にも心理的にも具合がいいため、多くの犬が自然と丸くなって寝ます。これは、犬が安心感を得るための環境作りを考えるうえで大いに参考になる習性といえます。
警戒心が関係しているケース
犬が丸くなって寝る姿勢はリラックスしている状態の場合もありますが、警戒心からくる行動である場合もあります。環境の変化やストレスを感じているとき、丸くなることで急所を守りつつ緊張状態を保っているといえます。新しい環境に慣れるまでの間や、不安な状況下で見られることが多い行動です。このような場合、愛犬が寝ている場所の気温や生活音など環境面をチェックして犬がリラックスできる環境を整えるなどの配慮が重要です。
犬の健康状態と寝姿勢の関係
犬が寝るときの姿勢にはさまざまな種類があり、丸くなって寝るのは自然な行動といえます。しかし、過度に丸まる、あるいは異常な寝姿勢をとる場合、体調不良や痛みが関係している可能性があります。ここでは、健康状態と寝姿勢の関係について、注意すべきポイントを解説します。
異常な寝姿勢とは?
犬はさまざまな姿勢で寝ますが、その寝姿の中には体調不良や痛みを示すケースがあるため注意が必要です。例えば、背中を丸めた状態で寝ている場合、内臓(特に消化器系)の不調による痛みが原因である場合があります。また、通常の丸まった姿勢と違い、体に力が入ってこわばっている場合は、リラックスしているのではなく寒さや痛みを感じている可能性があります。
膵炎などの腹痛を示すことが多いとされているのは、前足を伸ばして腰を高く上げた姿勢(祈りのポーズ)で寝ているときです。体をこわばらせ、短い呼吸を繰り返していたり嘔吐や下痢など胃腸炎の症状も見られたりするときは早めに動物病院を受診しましょう。
寝ながら震えている場合も注意が必要です。震えが軽度であれば寒さを感じている可能性がありますが、強い震えや頻繁に見られる場合は、病気が隠れている場合があります。
呼吸の異常
寝ている犬の呼吸にも注目しましょう。呼吸が速い場合は、ストレスや痛みを感じていることが考えられます。特に、伏せた姿勢で荒い呼吸をしている場合には、呼吸器系に問題があるのかもしれません。一方で、寝ているときの呼吸が浅いときは、リラックスできていない可能性があります。
また、息苦しそうな様子が見られたり、寝ている間に明らかに異常な音を立てていたりする場合は、早急に動物病院での診察を受けましょう。呼吸の異常は、健康状態の重要なサインとなるため、普段の呼吸リズムを把握しておくことも大切です。
その他の異常な動き
寝ている際に激しく体を動かす場合、てんかんや脳疾患の可能性があります。正常な睡眠中の動きは、足をピクピクと動かしたり、軽く寝言を発したりする程度ですが、これとは異なる激しい痙攣や動きが見られる場合は注意が必要です。これらの症状が頻繁に起きる場合は、専門医による検査を受けることをおすすめします。
リラックスしているときの姿勢との違い
リラックスしている犬は、横向きやへそ天と呼ばれる仰向けでお腹を見せる姿勢で寝ます。これらの姿勢は、犬が安心感を持っていることを示すサインです。特に仰向けの姿勢は、急所であるお腹を見せているため、飼い主との信頼関係が強いほど見られやすい姿勢といえます。
一方で、リラックスした姿勢が見られず、常に丸くなったり、不自然な寝方をしたりしている場合は、ストレスや健康問題のサインである可能性があります。日頃から愛犬の寝姿勢を観察し、リラックスした状態で寝られる環境作りを心がけましょう。
犬の寝姿に異常を感じたときの対処法
犬の寝姿からは、健康状態や気持ちの変化を読み取ることができます。そのため、普段から寝姿を観察し、異常が見られたときには早めに対応することが大切です。ここでは、観察のポイントと、獣医師への相談のタイミングについて解説します。
観察のポイント
犬の寝姿を観察する際、普段と異なる行動や様子に注意を払いましょう。例えば、愛犬が普段寝ている場所とは異なる場所で頻繁に寝ている場合、ストレスや不安を感じている可能性があります。特に、飼い主から離れた場所で寝るようになった場合は、心理的な負担が影響しているかもしれません。
また、眠りが浅く頻繁に寝相を変える原因としては、不快感や痛みの存在が考えられます。健康な犬は比較的深い眠りにつくことが多いため、このような行動が続く場合は注意が必要です。
愛犬が呼びかけに反応しない、あるいは反応が鈍い場合も、体調不良が隠れているかもしれません。普段はすぐに振り向き近づいてくる犬が無反応な場合は、体力が低下している可能性も考えられます。これらの観察ポイントを基に、早めに異常を察知できるようにしましょう。
獣医師への相談の目安
犬の寝姿に異常を感じた場合、特にそれが数日以上続くようであれば、獣医師に相談するのが適切です。寝姿だけでなく、下痢や嘔吐、食欲不振、元気がないなどの症状を伴う場合は、より早急な対応が求められます。
また、急激な行動の変化が見られる場合も要注意です。普段は元気に遊んでいた犬が急に元気がなくなったり、寝ている時間が極端に増えたりする場合は、痛みや体調の変化が原因かもしれません。特に、普段は横向きや仰向けのリラックスした寝姿を見せる犬が、丸まった姿勢を頻繁にとるようになった場合は、心理的なストレスも考慮する必要があります。
異常が見られた際は、専門的な診察を受けることが大切です。早期に相談することで、大きな健康問題を未然に防ぐことができます。
犬の健康状態を守るために注意すべきこと
犬が快適な睡眠を取ることは、心身の健康を保つために非常に重要です。日頃から愛犬の様子をよく観察し、快適な睡眠環境を整えることが、健康維持の鍵となります。ここでは、その具体的な方法について詳しく解説します。
普段の様子をよく観察する
日々の行動や寝姿の変化に注意を払うことは、愛犬の健康を守る上で欠かせません。普段の生活パターンを把握しておくことで、異常を早期に発見する手助けになります。ここまで紹介してきたような異変が見られた際は、すぐに獣医師に相談することが大切です。愛犬の健康を守るために、普段の様子を観察する習慣をつけましょう。
良質な睡眠環境を整備する
愛犬が健康で精神的に安定して過ごすためには良質な睡眠環境を整える必要があります。飼い主ができる具体的な対策を紹介します。
1.快適な寝床の選定
愛犬の体型に合ったサイズのベッドを用意しましょう。クッション性の高い柔らかい素材のベッドは、長時間の睡眠をサポートし、床ずれを防ぐ効果もあります。
2.静かで落ち着ける環境の整備
寝床は人の出入りが少なく、生活音が少ない部屋に設置しましょう。犬は暗い場所を好むため、カーテンやブラインドを使って光を遮るとより快適になります。
3.温度管理
室温を適切に保つことも重要です。冬は暖かい寝床や毛布を用意し、夏は涼しい場所を確保するなど、季節に応じた対策を取りましょう。
4.運動と日光浴
日中に適度な運動や日光浴をさせることで、体内時計が整い、夜の睡眠の質が向上します。散歩や遊びを通じてエネルギーを発散させることも、快眠の助けになります。
5.食事と水分管理
栄養バランスの取れた食事を与えることは、睡眠の質を向上させる要因となります。特に就寝前の食事は消化に良いものを選びましょう。また、常に新鮮な水を用意し、脱水を防ぐことも大切です。
6.愛情と安心感の提供
愛犬に対して優しく接し、愛情を示すことで安心感を与えられます。リラックスした状態にすることで、より深い睡眠を得ることができるでしょう。
快適な犬用ベッドの紹介
愛犬の健康と快適な睡眠をサポートするためには、季節や犬の体型に合ったベッドを選ぶことが大切です。カインズでは、春夏にぴったりの通気性が良いベッドや、秋冬に最適な保温性の高いベッドなど、季節に合わせたさまざまな犬用ベッドを取りそろえています。さらに、クッション性に優れたものや、洗える素材のベッド、夏向けのドーム型ベッドもあり、清潔さを保ちながら快適な環境を提供できます。ぜひカインズのサイトで、愛犬にぴったりなベッドを見つけてみてください!
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
犬の寝姿には、健康状態や気持ちが反映されていることがあります。丸くなって寝る姿勢には体温調整や安心感を得るためなどの理由のほか、警戒心やストレスが関係しているケースもあります。また、異常な寝姿勢や行動が見られる場合は、痛みやストレス、病気の可能性も考えられます。普段から愛犬の様子をよく観察し、異変に早く気づくことで、健康状態を守ることができます。
愛犬の健康を守るために快適な睡眠環境を整えましょう。愛犬の体型や季節に合ったベッドを用意し、静かで落ち着ける場所を確保することが重要です。運動や食事の管理、飼い主とのスキンシップも、犬の快適な生活を支える要素となります。