庭もない、お金もない、世話もしたくないから、知り合いの家に俺の家庭菜園を作った
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こんにちは、工業製造業系ライターの馬場です。
そんな場面でお湯が必要になったら、あなたならどうしますか? 電気ポットを求めてコンビニに駆け込むのもいいでしょう。たき火をするという選択肢もあります。ただ、コンビニが近くにない場合もあります。家の中や都会の公園でたき火はできません。
現代社会ではガス台や電気ポットでいとも簡単にお湯が手に入ります。しかし、家庭に電気やガスが普及するまでは、お湯を作るとなったら薪や炭を使って火起こしする必要がありました。
日本で都市ガスの事業が始まったのは、1872年(明治5年)。横浜・馬車道にガス燈が灯ったのが、その最初とされています。一般家庭でガスが使われるようになったのは1900年代に入ってから。プロパンガスの普及が進んだのが1950年代頃と言われていますので、家庭でお湯を簡単に沸かせるようになったのは、割と最近のことなのです。
キャンプでも、慣れないと火起こしは手間取りますよね
お湯は体を温め、食品や食器を加熱、殺菌できる、大変ありがたいものです。そして、緊急時といえど、寒い季節にお湯で温めたものを食べるとホッとします。
何が起こるか分からないこの世の中。第2、第3の方法を用意しておくか、情報だけでも知っていれば、対処できるかもしれません。ということで、火を使わずにお湯を作る方法を紹介していきます。
※以下に紹介する方法では沸騰状態(1気圧下で100度)にするのは難しいものの、それに近い温度、または火傷する温度(50度以上)には達します。実際に試す際は取り扱いに十分注意してください。また、火傷、火災の原因となる可能性もありますので、実際に試す場合は周りに燃えやすいもののない場所で行ってください。夏休みの自由研究などでお子さまが試す場合は、大人の方が付き添って実施してください。
シチュエーション別に「使える」方法を知っておきましょう
まず、太陽光でお湯を作る方法をご紹介します。そのための装置(太陽熱熱水器)を屋根の上に置いている建物も多く、よく知られた方法ではないでしょうか。
ただ、屋根の上に置くような大型の装置は、用意するのも大変です。もう少し簡単に用意できるものとして、ソーラークッカーがあります。
ソーラークッカー。ダンボールとアルミホイルをくっつけて自作することも可能
太陽光を反射して集め、その熱でものを温める仕組みです。
こちらは組み立てるだけの市販品です(※現在カインズでの取り扱いはありません)。
使用する際は、太陽の方向に向けて広げ、中央に温めるものを置きます。黒く塗った缶を容器として使えば、熱を吸収しやすく、より早くお湯を作ることができます。
黒く塗った缶の方がより熱を吸収します
ただ、難点は時間がかかり過ぎること。夏のよく晴れたような日でも、100ml程度の量の水をお湯にするのに30分以上かかります。ジュースの缶1本程度(350ml)ならば2時間ほどかかる計算です。
小学校の理科の時間に、虫眼鏡で太陽光を集めて紙を焦がす実験をしたことがある方もいるでしょう。あれと同様の仕組みで、パラボラアンテナのような反射板で太陽光を集めてより多くの熱を得られるソーラークッカーもあります。そのようなタイプなら湯沸かしだけでなく、調理に使うことも可能です。ただ、日が陰ると熱量は落ちるので、使えなくなります。
天候に左右される方法ではありますが、道具をそろえるのが簡単かつ自作もできて、ある程度実用的な量のお湯を得られるため、選択肢の1つにはなりそうです。
次に摩擦熱でお湯を作る方法です。以前、摩擦熱で燗酒を作ったことがあります。
一応温まります
カクテルづくりに使うステンレス製のスイングメジャーカップに25mlぐらいの日本酒を入れ、紐を巻きつけます。カップが動かないように割りばしと養生テープで固定します。
その紐を左右に動かしながらこすったところ、とりあえず40度ぐらいの温度に上げることができました。ただ、そこまで温度を上げるのに、結構大きく手を動かし続けて4、5分かかります。燗酒で温まる前に体があったかくなってきますね。
電動ドリルのようなものを使って、こする速さと回数を上げれば、もう少しなんとかなるかもしれませんが、摩擦熱でお湯を作るのはあまり効率のいい方法ではないでしょう。
4、5分かけてこの程度です
ちなみに、同じ原理で金属製の細い管を紐でこすって水を沸騰させる方法もあります。
ボールに空気を入れるエアポンプのノズル部分や割りばし、ペットボトルの蓋などでセットを組み立て、あとは100円ショップの化粧品コーナーで売っているスポイトなどでノズルに水を入れて、紐でこすります。「摩擦熱 沸騰」のようなキーワードで検索すると出てきますので、興味のある方は調べてみてください。夏休みの自由研究ネタにぴったりかもしれません。
細い金属製の管と紐で水を沸騰させる実験機材
それから、摩擦の原理とはちょっと違うのですが、容器をこするのではなく、ミキサーで直接水をかき混ぜ続ける方法もあります。理科の時間に、水を振動させて温度を上げるみたいな実験をやったことはないでしょうか?
手で水をかき混ぜるぐらいではなかなか温度は上がりませんが、ミキサーを使うと割と早くお湯になるんです。
理科の授業で、エネルギーと熱の関係について学びましたね
かき混ぜる前の温度
10分連続でかき混ぜた後の温度
このミキサーを使って300mlの水を10分間混ぜ続けたところ、約6度温度が上昇しました。さらに混ぜ続ければ温度は上がりますが、ミキサーのモーターが加熱するのであまりおすすめはしません。
いずれにせよ効率のいい方法とは言えないので、どうにもならない時の最終手段として覚えておくぐらいでお願いします。
次はモバイルバッテリーの電力でお湯を作る方法です。
60000mAhの大容量ポータブルバッテリー
モバイルバッテリーといっても、使うのはスマートフォンに充電するための小型のものではなく、100Vのコンセントが付いているような、ある程度大きなものです。
DC12Vの出力を使用
このサイズのモバイルバッテリーでは、DC12Vの出力を備えているものがあります。ここを使って湯を作ります。
湯を作るのに使用するのは、車のシガーソケットに差し込むタイプの湯沸かしポットです。最近は標準で装備されていない車もあるそうですが、たばこに火をつけるための電熱線を加熱するソケットが車にはあります。そこに差し込んで使うための小型家電がカー用品として売られているのです。
ただ、家庭のコンセントに差し込んで使う通常の湯沸かしポットは、必要な電気の量が大きいため、このようなモバイルバッテリーでは動きません。シガーソケットに差し込むタイプの湯沸かしポットならギリギリ使えます。
シガーソケット変換コネクタを使用
【店舗限定】カシムラ DC充電器 ストロング 3A TYPE-C BK AJ-541 ブラック
湯沸かしポットをモバイルバッテリーに接続するには、コネクタの形状を変えるアダプタが必要です。このサイズのモバイルバッテリーならば、大体付属されています。
シガーソケットで使える湯沸かし器。カー用品として売られています。400mlの常温の水が30分程度で95度以上になります
このポットの場合、400mlのお湯を作ることができます。スイッチを入れてから大体30分程度で、常温(25度程度)の水がで95度以上の熱湯になります。
インスタント食品を調理するのには十分な温度
一度に大量の湯を作ることは難しいですが、太陽光や摩擦熱に比べればかなり実用的な方法でしょう。
折り畳み式太陽光パネル。60Wほどのパワーがある
磁気研究所 HIDISC 太陽の力で様々な機器を充電 持ち運び可能なソーラーパネル
仮に電気が止まっていても、折りたたんで持ち運べる、写真のような太陽光パネルを用意しておけば、再び充電することも可能です。火ほどの熱量は得られないものの、熱源を使い切る心配はなくなります。
また、このサイズのモバイルバッテリーならば、湯沸かし以外の使い道もあります。
200W程度のものまでなら動かせます
家庭と同じ100Vのコンセントが付いているので、例えば扇風機やLEDのスタンドライト、小型の冷蔵庫など200W程度までの家電なら、短時間動かすことが可能です。
こうした家電を活用すれば、こんなこともできます。
最近、キャンプ用の折りたたみ椅子を持ち歩いて身近なアウトドア環境を楽しむ「チェアリング」が流行っていますが、モバイルバッテリーがあるとチェアリングもより快適になります。
川風の方が涼しいけどね
都内の公園では原則火は使えません。しかし、モバイルバッテリーとシガーソケットタイプの湯沸かしポットを使えば、火の使えない場所でも、お湯を作ってお茶を飲んだり、燗酒をつけたりすることが可能です。
シガーソケットで使う炊飯器なんてものもあるので、ご飯も炊ける。熱湯が手に入るので、レトルト食品を温めて食事作りもできます。ただ、パウチが温まるころにご飯が冷めている問題はあります。
このモバイルバッテリーなら6回くらいお湯を作ることができます
大容量のモバイルバッテリーは、災害やアウトドアで使える湯沸かしグッズとして、1つ用意しておくといいかもしれません。
もう1つ、火を使わずにお湯を作る方法があります。それは化学反応です。
災害備蓄品として売っています
発熱剤です。酸化カルシウム(生石灰)と水を反応させて加熱します。最近は見かけなくなりましたが、紐を引っ張ると加熱されて温かくなる弁当がかつて売られていました。あれと同じ原理です。
写真の発熱剤は缶詰やレトルト食品を加熱するための災害備蓄品。わずかな水を使うだけで、かなりの熱が得られます。
ただ、加熱する能力は高い一方で、基本的に1回きりしか使えません。軽くて小さいので、災害用に備蓄しておくと、いつか役に立つ時が来るかもしれません。
ここまで火を使わずにお湯を作る方法をいくつか紹介しましたが、逆にロウソク程度の弱い火しかない。あるいは火はあっても鍋(容器)がない時はどうやって湯を作ればいいでしょうか?
弱い火しかない場合、まずは容器の周りをアルミホイルで囲みます。容器とアルミホイルの間に隙間を少し空けてください。こんな感じです。
熱を最大限に利用する方法です
こうすると、下から上がる火の熱が隙間を通って上に抜けていきます。通常、鍋を下から火で加熱すると、火の熱は鍋の底だけでなく、横方向などにも流れていきます。また、鍋底に当たった火の熱はすべてその場で鍋には移動しないので、鍋に沿って横に逃げ、周りに広がっていきます。
時間はかかるものの、ちゃんとお湯になります
こうすることで、ロウソクの炎による熱が鍋の側面に上がり、効率よく加熱できます。仏壇に置く小さ目のロウソクでも、6本ほどあれば1合程度の米を炊くことが可能でした。
ちなみに、牛乳パック1つと空き缶2つを使って、牛乳パックを燃やした火で米を炊く実験なんてのもありますので、興味ある方は検索してみてください
そして、もう1つ。鍋(容器)なしで湯を作る時に使うのはこちらです。
水が入っていれば、直火であぶっても穴が開かない
ビニール袋です。これに水を入れて火にかけます。「そんなことをしたら袋に穴が開いて中から水が流れ出てしまうのでは?」と思った方も多いかもしれません。大丈夫です。中の水に熱が奪われる関係で、ポリエチレンのビニール袋ならば沸騰近い温度(90度程度)まで加熱できます。
気泡があるとそこから穴が開くので注意してください
和紙の鍋で料理する映像を見たことはないでしょうか? あれと同じ原理です。紙は200度ぐらいで燃え始めますが、中に液体が入っていれば、液体に熱が奪われるので燃えづらいのです。
「ビニール袋 水 加熱」みたいなキーワードで検索すれば実験映像がたくさん出てきますので、調べてみてください。
火は素晴らしい
今回紹介した方法以外にも、火を使わずにお湯を作る方法はあるかもしれません。大事なのは、それらを用意しておく、知っておくこと。火の使えない環境に急に放り出されても何とかなるよう、普段から道具を用意したり、知識を蓄積したりしておきましょう。
とはいえ、やはりお湯を作るなら火が一番早くて便利。たき火の火をボンヤリ眺めていると落ち着きます。火を使わない方法で、どうしてもお湯を沸かさなければならないような緊急事態は来てほしくないものです。みんなが楽しく集まれる平和な世界が一番ですね。