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iPhoneのAR技術で「掃除機をどこまでかけたか」をわかるようにする

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大西拓人

大西拓人

テクノロジーと現実のギャップに生まれるおかしみに着目し作品を制作するインタラクションデザイン作家。近年では、テクノロジーごとの技術仕様そのものを鑑賞の対象とするということをテーマに、ドローンやHaptics、音声入力やキャッシュレス決済などの分野の作品を制作している。

一番ARで見たいものは何だろう

こんにちは。インタラクションデザイン作家の大西拓人です。テクノロジーと現実のギャップに生まれるおかしみをテーマに作品制作を行なっています。

iPhoneにAR機能が搭載されてから私たちの生活の中では様々な便利なものが視覚化され目の前に現れるようになりました。

何をARで見てみたいかいろいろ考えたところ、一番視覚化したかったものが「掃除機をどこまでかけたか」でした。

すぐどこまでかけたかわからなくなる

すぐどこまでかけたかわからなくなる

iPhoneでどう実現するか考える

まず、iPhoneで掃除機の軌跡を視覚化するために、iPhoneのAR機能を提供しているARKitの技術仕様を考えてみます。

ARKitはカメラの映像と動きのセンサーによって下記の3つを検出しています。

  • 床や壁などの連続的な面
  • 床などのパターン(特徴展)から得られる空間上のiPhoneの位置
  • 起動後からのiPhoneの相対的な移動量

こう整理していくと、iPhoneで映した床面の検知と掃除機自体の移動量を計算することで、掃除機の軌跡を視覚化するということは実現できそうです。

こんな仕組みで実現できそう

こんな仕組みで実現できそう

iPhoneアプリを開発する

今回は3DゲームエンジンのUnityを使って床に軌跡を描くためのアプリを開発することにします。

床との当たり判定処理やボタンなどを配置していく

床との当たり判定処理やボタンなどを配置していく

検出された床面と画面中央から伸びた直線との交点を求めるだけなので、仕組みとしてはシンプルに実装できました。

このままでもお絵かきアプリや、書道アプリのようにして、床にいろいろな線を引くことができます。

AR書き初め!

AR書き初め!

家の掃除機にiPhoneを固定する

アプリができたので、あとは家にある掃除機にiPhoneを固定すれば掃除機の軌跡をARで見ることができます。

・固定器具を選ぶ

固定の方法はガムテープなどで掃除機にiPhoneを貼り付けたりしてもいいのですが、調整が大変そうなのとベタベタしそうなので固定器具を探すことにします。

最近はスマホを三脚に取り付けられるように1/4インチネジ穴があいたホルダーが販売されています。

1/4インチネジ!

1/4インチネジ!

これとカメラ用の固定器具を流用すれば掃除機にiPhoneをマウントできそうです。

いくつか検討したところ候補が2つに絞られました。フレキシブル三脚とカメラ用クランプです。

フレキシブル三脚

フレキシブル三脚

カメラ用クランプ

カメラ用クランプ

早速、取り付けて試してみます。

まずはフレキシブル三脚。曲がるアームでどこにでも柔軟に取り付けられるのがウリです。

寄生感あり

寄生感あり

一見良さそうに見えますがちょっと動かしてみると、

ガタガタ

ガタガタ

掃除機を動かす振動でガタガタしてしまうため、あまりうまくいかなさそうです。

次はカメラ用クランプ。フレキシブル三脚ほどの柔軟さはありませんが、高いグリップ力には定評があります。

マウント感◎

マウント感◎

ガッチリ!

ガッチリ!

iPhone固定番付はカメラ用クランプに軍配があがる結果となりました。

通常の掃除機であれば持ち手や筒の部分に同様な取り付けができると思います。

他の掃除機に取り付けてみるとこんな感じ

他の掃除機に取り付けてみるとこんな感じ

・掃除機のヘッドに向けてカメラの角度を合わせる

ただ固定しただけだと掃除機のヘッドの位置がずれてしまうので、手でカメラの位置を微調整します。

ヘッドが画面の真ん中に来ていない

ヘッドが画面の真ん中に来ていない

カメラ用クランプは大抵、角度を微調整する機構が備わっているので、画面の中央と掃除機の位置が合うように手で調整します。

手で微調整

手で微調整

テクノロジーで解決する仕組みを用意するのも大事ですが、人間にできることは人間に任せるという割り切りも時には重要です。

スイッチオン!

無事iPhoneも掃除機に固定できたので、ついに掃除機をかけていきます!!

スイッチ オン!

スイッチ オン!

掃除機をかける

掃除機をかける

あれ?

あれ?

今回のアプリは掃除機のスイッチオン/オフと連動する機能を作っていないので、アプリの視覚化スイッチも手で入れる必要があります。

テクノロジーで解決する仕組みを用意するのも大事ですが、人間にできることは人間に任せるという割り切りも時には重要です。

スイッチオン!(アプリ)

スイッチオン!(アプリ)

掃除機をかける(2回目)

掃除機をかける(2回目)

ついに念願の自分がどこまで掃除機をかけたかを視覚化することができました!!

軌跡の視覚化でいろいろ見えてきた

自分の掃除機の軌跡が見えるといろいろなことが見えてきて、気づくことがあります。

知らなかった自分の掃除のクセがわかったり、

机の下や隅っこが適当

机の下や隅っこが適当

二人の軌跡を共有して対戦ゲームみたいにできたり、

多く塗りつぶした方が勝ち

多く塗りつぶした方が勝ち

掃除機の軌跡をロボット掃除機の動きに移植できたり、

掃除を通じた師弟関係

掃除を通じた師弟関係

そのほか自閉症のお子さんに使っていただいたところ、これまで難しかった掃除が自分一人でもできるようになった! とのご報告をもらいました。

ひとりでできた!

ひとりでできた!

見たかったのは自分がどこまで掃除機をかけたかというシンプルなものだったのですが、ひとつ形にすることでその先にどんどん展開が生まれてくる。これもものづくりの醍醐味だなぁと再確認できた取り組みでした。

※この記事はProtoPediaで掲載された内容を元に、当時の開発の様子を振り返りながら再編集したものです。

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