1000円分のモルタルでレンガを何個作れるかやってみた!
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ものづくり生態図鑑#14 飴細工師・手塚新理
【分類】
ものづくり科アート属はさみ種
【生そく地】
生そく地 はさみコーナー
【特ちょう】
あたためた あめを じゆうじざいに あやつって
さまざまなかたちを つくりあげる
──飴細工を始めたきっかけは何ですか?
──以前は花火屋だったというのは意外ですね。
手塚さん
私の行っていた学校は機械のエンジニアを養成する学校でした。周りの同級生たちは機械系の大手の会社へと進んでいくなかで、自分はそういった道ではなく刺激のあるものづくりがしたいと思うようになっていました。そこで思いついたのが花火師です。もう思い立ったらすぐ火薬の国家資格をとって、近くの花火屋に殴り込みにいきました(笑)。そして学生時代から花火屋で働いて、そのまま社員になったはいいのですが、自分が思い描くものづくりと少し違う違和感を感じて、花火とはまた違う道を視野に入れるようになりました。
──そのときどういったことを感じていたのですか?
手塚さん
すべての花火屋がそうではないのですが、花火も半分以上は大量生産、大量消費の輸入品に頼ってしまっている現状なんですよ。それで先ほども言ったように、自分の技術がダイレクトに影響を与えるものづくりが私は好きだったので、自分の思い描くものづくりとは違うのを感じ、飴細工の道を行くことに決めました。
そして挑戦することを決めた飴細工はそのときすでに絶滅寸前で、この素晴らしいものづくりが途絶えてしまうことはもったいないと感じました。さらにもっとうまく見せることができれば世界的にももっと伸び代があると感じたことも、挑戦することの後押しになりました。
──手塚さんの代表作品を挙げるとしたらどんなものがありますか?
手塚さん
水生生物は飴の質感と相性がいいこともあり得意ですね。試行錯誤しながら何年もかけて今のかたちを作り上げました。もともと日本の飴細工で透明な飴を使うことは少なかったのですが、私は主に透明な飴を使っています。
──飴細工において技術の習得の仕方について教えてください。
手塚さん
最初のうちはイベントごとなどで作ることが多い干支を作って練習していくことが多いですね。ただ、この生き物が作れるようになったら技術がある、というものではないと思っています。言ってしまえば下手なものでも作ってしまえば作品にはなるので、その中でその細部をどう仕上げていくか。飴細工は経験を積むにつれて全体の技術が少しずつ上がっていくものだと思います。
──上手い人とそうではない人はどういった違いがあるんですか?
手塚さん
それを一言で説明できてしまうと、自分の職業が必要なくなってしまうんですよね。どの仕事もそうなんですけど、仕事ができたり綺麗な作品をつくるのってアウトプットが重要だと思われがちですが、実はそうじゃなくてインプットの方が重要なんだと思っています。
アウトプットするためには正しくインプットする必要があって、それができるかできないかがポイントだと思います。弟子たちにもいい作品を作れというわけではなく、いいか悪いか判断できるようになれ、と話したりしてます。
──作品を他の人へ魅せる力、そして作品自体の完成度。このどちらも高いレベルで両立しているように感じるのですが、作ることと魅せることをどう捉えていますか?
手塚さん
ものづくり全体に言えることなんですけど、見せるということに関して消極的になっていると感じます。伝統だからただ作っていればいい、と思っていると実際に衰退していきます。ものを作って、伝えて、魅力的だと思ってもらって初めて仕事になっていると思う。なので作ることと見せることは当たり前にやらなくてはいけないと私は思っています。
──コロナ禍でのものづくりはどうなっていくと思いますか?
手塚さん
実際に売り上げは減ってはいますが、長い目でみるとものづくりは変わらないと思います。社会のスタイルが変わっていくだけで、自分のやることをただやるだけですね。
──飴細工やものづくりにおいて「芸術」というものの意味について個人の考えはありますか?
手塚さん
意味なんてないと思いますよ。ただいいものを作り上げたいという思いが重要なんだと思っています。作品そのものに価値があるわけではなく、例えば飴細工だったら人に買ってもらって、それが誰かのプレゼントになること、人から人に良さが伝わっていくこと自体に価値があるのだと思います。
──愛用している道具を教えてください。道具選びのこだわりなどはありますか?
手塚さん
飴細工は使う道具はハサミしかないというのもいいところです。自分が飴細工に使用しているハサミは特注で日本にもうそのハサミを作れる人は1人しかいないんですよ。
手塚さん
普通のハサミと違う点は、細かい作業をしやすいように先端は薄く鋭利にしてある事と、あたためた飴はくっつきやすいのでばねを通常より固くしてもらっています。とても力が必要なので慣れないとすぐ腱鞘炎になってしまうと思います。だから弟子たちも最初は普通のハサミを使わせて、慣れてきたらこのハサミを使ってもらうことにしています。
──ものづくりをする中でホームセンターを利用する機会はありますか?
手塚さん
めちゃくちゃ行きます。カインズもプロ会員です! 10代のころは建設会社でバイトしていたので、DIYは一通りできます。なのでアメシンの浅草1号店は自分達で作りました。あとちょっとまだ秘密なんですけど、進めているプロジェクトがあるので、最近もよく行っています。
──ものづくりを続けるコツを教えてください。
手塚さん
少しキツいことをいってしまうと、コツがなんだろう、って考えているようでは続かないと思います(笑)。好きなことは続けてしまっていることが多いと思うので、続けられなくなったらいっそ離れてみることで、客観的に考えることができるかもしれません。
──手塚さんにとってものづくりとは? 一言で言うと?
手塚さん
一言で言えてしまったら自分たちは必要ないと思います。いいものを作りたいと思っていいものを作ってきて、それが人に受け入れてもらえる。それを続けていくだけなので、むしろ考えてしまうとダメなんじゃないかとも思います。
──手塚新理さん、ありがとうございました!
手塚さん
以前働いていた花火の会社を辞めてなにをしていこうか考えたときに、昔父親が言っていたことを思い出したのが1番のきっかけです。飴細工は作るときに飴を温めるのですがすぐに固まってしまうので、自分の技術がダイレクトに反映されてしまうんです。そんな、何もごまかしが効かないところに惚れ込みました。