住設メーカーの「LIXIL」に教わる! 雨戸&シャッターお掃除完全マニュアル
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目次/ INDEX
家でホールケーキを作るのは、少しハードルが高いと思う人が多いのではないだろうか。まずは私が2020年4月に作ったホールケーキをご覧いただきたい。
なぜか皿と一体化している
スポンジを焼いてクリームを塗ればそれっぽくなるのでは、と思ったのが間違いだった。友人にこの写真を見せたら「火山?」と言われた。
たしかにケーキのつややかさがまるでなく、ゴツゴツした岩肌のようだ。ぐぬぬ……なにも言い返せない。しかも「味はおいしいからOK!」ということもなく、見た目通りボソボソでまずかった。
「火山?」と言った友人は、最近よく家でホールケーキを作るらしい。なんてオシャレな趣味だ。私にもコツを教えてくれい! と聞いてみると
とのことだった。さっそく導入してみようじゃないか。
若干傾いているけれども
なんということでしょう。たった3つのコツで、火山にイノベーションがもたらされた。たしかにケーキのふちを綺麗にすると急にお店っぽさが出る。
そして、道具の力ってすごい。回転台とパレットナイフ。ケーキのふちを仕上げるには、回転させながらクリームを丁寧に塗る必要がある。
経験や技術でカバーできない素人だからこそ、道具の存在感が大きい。道具を手に入れるって、自分を進化させることだ。
たしかな手応えを感じ、それから定期的にホールケーキを作るようになった。
写真の撮り方も生意気になってきた
生クリームには決して逃してはいけない「一瞬」がある。
よく「ツノが立つまで」と言うが、ツノが立ってからでは遅い。完全に泡立つ一歩手前でストップすれば、扱いやすいつるつるのクリームになる。
岩肌ではなく陶器のようなケーキにするためには、何度か上塗りして仕上げていく必要がある。泡立ちすぎたクリームだと上塗りですぐにポソポソになってしまうのだ。
山盛りケーキ
火山ケーキからちょうど1年後のホールケーキ。もう火山とは言わせないぞ。
自信がついてきたので、お店のケーキの写真をたくさん見て、クリームや果物の飾り方を少し研究した。おしゃれに見える置き方というのが存在する。特別な材料はなくてもいい。あえていちごのヘタを残すだけでも十分かわいいアクセントになる。
1年で、火山からちゃんとケーキに進化した。と言っても1年間修行し続けたわけではなく、道具を手に入れ、少しコツを意識しただけだ。
2種の神器
慣れてきたので、変化球ケーキにも挑戦してみたい。
もうすぐ義母の誕生日がある。中国出身の義母は麻雀が大好きだ。……そうだ、麻雀牌のケーキを作ったら、きっと喜んでくれるに違いない。
普段から、麻雀の牌ってキャラメルみたいでおいしそうだなってちょっと思っていたんだよね。
無心になれるひととき
誕生日当日。少し早起きして準備に取りかかった。
デコレーションに必要な道具は回転台とパレットナイフだけど、スポンジ作りに欠かせないのは電動ハンドミキサーだ。
ここで素人の私が実感しているコツは……
ということだろうか。バターは高いし扱いづらい。代わりにサラダ油を使うレシピもたくさんあるし、実はそっちのほうがふわふわで失敗も少ない。
いつもは丸いケーキ型だけど、今回は麻雀の牌を作りたいので長方形のパウンドケーキ型を使って焼いてみる。
いってらっしゃい!
クッキングシートは材料を混ぜはじめる前に型にセットしておくといい。いつも焦って最後に紙を切ることが多くて、そのうちに生地のフレッシュなふわふわ感が失われていくのを感じるから……。
あとオーブンの余熱も早すぎず遅すぎず、小麦粉を混ぜるタイミングぐらいにしたほうがいい……。
何度も焼いているのにもかかわらず、最近やっと体が覚えた習慣だ。
ええやん!
焼けました。もうこのまま食べちゃいませんか? と言いたくなる美しい仕上がり。
土曜の昼下がりじゃないのに、土曜の昼下がりのような気がしてきた。かわいい玄関ポーチのある広い家で大きな犬を飼っている気がしてきた。スポンジケーキの焼き上がりは、いつも夢みたいだ。
焼き立ての甘い香りが部屋を包む。これは家でケーキを作ることの大きなメリットだ。ケーキを食べたいからケーキを焼くのではなく、ケーキを嗅ぎたいからケーキを焼くときだってある。
この時点でかなり牌感がでてきている
長方形のケーキ型って麻雀ケーキのためにあったのか
すこし硬い表面部分やへこんでいるところをカットし、理想の形に近づける。2回フルーツを挟みたいので、スポンジを3枚おろしにした。
ツノの一歩手前
フルーツをカットし、もろもろ準備を整えてから生クリームを泡立てる。ここでももちろん電動ハンドミキサーの出番だ。昔、手動で生クリームを泡立てようとしたら、きりもみ式の火起こしくらい大変だった。
生クリームのちょうどいい瞬間はほんのわずか。すぐに混ぜすぎになる。いかにギリギリまで我慢できるかのチキンレース。ツノ我慢選手権。
スポンジを回転台に乗せていよいよ盛り付けていく。
押しかけ助手(3歳)が現れることもある
フルーツの層を2段作ったら、全体を生クリームでコーティングしていく。
ここで大事なのは、すぐに完成形を目指さないことだと思う。まずはクリームの土台を作って、その上からもう1度コーティングするイメージ。
牌が見えてきた!
一旦このような感じ。ここからちょっと集中して整えていくぞ。 最初はあまりうまくいってなくても、回転台を回すだけでプロっぽい気持ちになれるので楽しい。無駄にぐるぐる回しちゃう。
ケーキ職人を気取ることが重要
丸いケーキと同じように、まずは側面から塗っていく。できればひと塗りごとにパレットナイフを拭いたり、ボウルのふちでクリームを落としたりした方がいい。
壁に漆喰を塗っている気分にもなってきた。漆喰を塗るのが上手い人、多分ホールケーキ作りも上手い。
フチが命
「自分にはできる」と呟きながら、下から持ってきて余ったクリームを内側に平らに塗るように均す。自己暗示が重要。
大抵のものづくりって、器用か不器用かという素質よりも、それに集中できるか・集中したいと思えるか、がカギになる気もしている。
クリームを均す作業を何度か繰り返すと……。
きらりーん
完成!
なんというか……あれだ。
すごく……豆腐です……。
私はずっと大きな豆腐を作っていたのかもしれない。
なんて書こう問題
ここからいよいよ文字を書いていく作業だが、実はどの牌にするかまだ決めていなかった。
「中」は簡単そうだけどシンプルすぎるような。
「發」は縁起がいい漢字だからアリだけど、難しそう。黒一色も寂しいし。
自分の誕生日だったら名前の「みなみ」にちなんで「南」にしたかもなあ。
悩んだ末……。
チョコペンむっず
九萬にしてみた。
「九(jiu)」は、フォーエバー的な意味の「久(jiu)」と同音のため、中国では縁起がいい数字とされているそう。
しかし、安易にチョコペンを選んだのはミスだったかもしれない。ケーキの上ですぐに冷えてやり直しがきかない。今後は文字のデコレーションの勉強もするか……。
集中力を振り絞り……、
ツモ!
できた! 巨大麻雀牌ケーキ!
文字は震え気味だが、なんとかそれっぽくなったのではないだろうか。
あと、本当は最後にかわいいお皿に載せたかったけれど、運ぶときに事故りそうなので回転台のままにしておいた。
義母はとても喜んでくれたようで、中国のSNSに写真をアップしていた。
「独創的なケーキ! 見たことある?」
味もおいしい。自分で作るいつものショートケーキの味。デコレーションのレベルが上がっても、さすがに味はお店には敵わない。
でも、「麻雀の牌を食べる」というロマンの味はちゃんとした。「九萬」って甘くておいしいんだなぁ。回転台とパレットナイフを使って、ケーキの表面をツルツルにすることで叶ったロマンだ。質感大事。
ケーキの表面をツルツルにする瞬間に宿る特別なものがある。ケーキがケーキになる瞬間というか。
作りたいケーキが作れるようになると自信が湧いてくる。元気がないときも、「でもまあ私、いざとなったらホールケーキ作れるしな」と思えるかもしれない(注:他のお菓子は依然、岩)。
最後に、以前の私が作った火山のようなケーキをもう一度ご覧いただきたい。
これはこれで愛おしい
作りたいと思えば、作れると信じれば、あなたにもきっとつややかなホールケーキが作れます。
家族の誕生日のたびにケーキを焼いたので、自分の誕生日にはできれば誰かが作ったケーキを食べたい。