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【獣医師監修】猫の座り方には種類がある! 気持ちや体調を読み取るポイント

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古江 加奈子

古江 加奈子

パーク動物医療センター副院長。福岡県獣医師会、福岡市獣医師会、日本獣医がん学会に所属。言葉の話せない動物を治療するうえで、動物たちに聞く代わりに飼い主から沢山のことを聞き、飼い主とのコミュニケーションを最重視するドクター。

猫の座り方には意味がある?

猫の座り方は、感情やリラックス度合いによってある程度パターンがあります。

座っている猫

上半身は起こしているか、前足は伸ばしているか、後ろ足はどうなっているかなど、いくつかのポイントを見ることでそのときの飼い猫の気持ちを想像することができます。

ただし、リラックスできる体勢が人それぞれ違うように、猫にもそれぞれ自分のお気に入りの座り方や楽なポーズがあります。なかにはちょっとおもしろい座り方をする子や、一般的なパターンに当てはまらないような子もいるので一概にはいえません。

座り方と併せて表情やしっぽの動きなどを観察することで、より猫の気持ちが読み取りやすくなります。

猫の座り方の種類と気持ち

猫の座り方にはいくつかの種類があり、なかでも一般的によく見かける座り方には名前(通称)がついています。

猫の座り方とそのときの心理状態について、よくあるパターンをまとめたので参考にしてみてください。

1.香箱座り

→リラックスしている・眠い・寒い・具合が悪い など

香箱座り

猫らしさナンバーワンの「香箱座り」は、伏せのような姿勢で前足と後足を折り畳み、自分の体の下にしまい込む座り方です。

「香箱」とは、漆や陶器でできた香を入れるための蓋が付いた箱のことです。猫が座っている様子を上から見ると四角い香箱によく似ていることからこの名がつけられたといわれます。

香箱座りを上から見た図

ちなみに、英語圏ではカットされていない食パンにも似ていることから香箱座りのことを「catloaf(1斤の猫パン)」と呼ぶのだとか。猫だけの座り方だと思われがちですが、犬やうさぎ、ヤギ、ライオン、トラなど他の動物も香箱座りを行うことがあります。

この座り方は、主に猫がリラックスしているときや眠たいときにすることが多いです。一方で、寒いときや体調が悪いときにすることでも知られています。

香箱座りは体勢によっていくつかパターンが分かれるので、詳細については後述の「香箱座りのパターンとリラックス度の違い」の見出しをチェックしてみてください。

2.スコ座り(おじさん座り・おっさん座り)

→リラックスしている・信頼している・足や関節に痛みを感じている など

スコ座り

通称「スコ座り」と呼ばれる座り方は、お尻を床につけて背中を丸め、後ろ足を前方へ投げ出すような姿勢のことです。スコティッシュフォールドによく見られるためこの名前がつきました。

とはいえ、全てのスコティッシュフォールドがスコ座りをするわけではなく、他の猫種がすることもあります。お腹丸出しでくつろいでいる姿が人間みたいに見えることから「おじさん座り」や「おっさん座り」などといわれることもあり、猫好きから親しまれているユニークな座り方です。

猫が急所であるお腹を見せるのは「信頼」や「安心」などの意味合いがあるため、この座り方をしているときは警戒心がなくリラックスしている状態といえます。足を投げ出しているのも、急に動く必要がない=危険がないという安心感の現れであることが多いでしょう。

ただし、スコ座りに関してもリラックス以外の理由が隠れていることがあるので注意が必要です。スコティッシュフォールドは遺伝的に関節の病気にかかりやすく、関節や体の一部が痛くて通常の座り方ができないためにこの座り方をすることがあります。

座り方と関連する主な病気については後ほど詳しく解説しているので、そちらを参考にしてみてください。

3.横座り

→リラックスしている・ややリラックスしている・眠い など

横座り

横向きに寝転がって後ろ足を伸ばす座り方を「横座り」といいます。人間の「女の子座り(お姉さん座り)」に似ていて、後ろ足の力を抜いて横に流しているのが特徴です。

野良猫やネコ科の野生動物にもよく見られる座り方なので、見かける機会は多いでしょう。猫が横座りをしている場合、上体や前足の様子によってリラックス度が変わるといわれます。

上体を起こし、前足をしっかり床につけたまま下半身だけ力を抜いているのはややリラックスしているとき。体を休めつつも、何かあったらすぐに動ける姿勢をキープして目や耳ではしっかり情報を拾っているはずです。

一方で、体全体を横に倒し、前足も後ろ足と同じように力を抜いてダラッと投げ出しているのであればかなりリラックスしている証です。横座りのまま寝てしまうこともよくあるので、目を細めたり、髭がゆるやかに垂れ下がるなど眠そうな表情が見られるかもしれません。

伸ばした前足の上に自分のあごを乗せてくつろいだり、首をひねって頭を床につけて徐々に仰向けの姿勢になるようなこともあります。

4.スフィンクス座り

→ややリラックスしている・やや緊張している・やや警戒している など

スフィンクス座り

下半身は香箱座りの姿勢のまま上体をまっすぐ起こし、肘を床につけて前足を前に突き出すような座り方を「スフィンクス座り」といいます。エジプトのスフィンクス像が由来で、凛と胸を張っているポーズがよく似ていることから名付けられました。

お腹を床につけているので比較的落ち着いている状態といえますが、横座りや香箱座りに比べるとリラックス度はあまり高くありません。後ろ足・前足共に何かあればすぐに立ち上がれる状態をキープしていることから、完全なオフモードではなくやや緊張気味といえます。

体格の良い猫や香箱座りができない猫が休憩するときにはスフィンクス座りになることが多いといわれます。

5.エジプト座り

→少し緊張している・少し警戒している・次の行動のことを考えている・何かを要求している など

エジプト座り

「エジプト座り」は、前足を立てたまま後ろ足を曲げて腰を下ろしたスタンダードな座り方です。エジプト神話に登場する猫の女神「バステト」の像が由来といわれますが、なぜ「バステト座り」でないのかは明らかになっていません。

いわゆる犬のお座りの姿勢で、野良猫や人慣れしていない猫にもよく見られます。この座り方をしているのは少し警戒の気持ちがあるときで、危険や異変を察知したらすぐに動ける状態をキープしているといわれます。

ただし、人慣れしている飼い猫の場合は警戒心からこの座り方をしているわけではないこともよくあります。眠る気分ではないときや何かを要求しているとき、気になる物を見つけたときなどになんとなくエジプト座りをしていることも多いでしょう。

普段から「ご飯の用意をしてほしい」や「早く起きて遊んでほしい」など、さも物を言いたげにエジプト座りで主張されるという飼い主さんもいるかもしれません。

6.しっぽ巻き座り

→緊張している・警戒している・危険を感じている・隙を見せるつもりはない・汚れたり濡れるのが嫌・防寒のため など

しっぽ巻き座り

エジプト座りの姿勢のまま、しっぽを体に巻きつけた状態を「しっぽ巻き座り」と呼びます。おしりから足の先を囲むようにぴったりと巻きつけられたしっぽは、緊張感の現れであるといわれます。

しっぽ巻き座りをしているときの猫は、油断大敵といわんばかりに前向きに揃えた足でしっかりと床を踏みしめながら、しっぽの先まで神経をとがらせていることが多いです。初めて出会う人や動物、物などに警戒し、隙を見せないようにできるだけ安全な姿勢を保っている状態といえます。

この座り方をしているときは、しっぽと併せて猫の表情をチェックすると不安や警戒の気持ちが見て取れます。周囲の情報をキャッチするためにひげを広げ、小さな音も聞き逃すまいとイカ耳になっていたら警戒中のサインです。

他には、しっぽが濡れたり汚れるのが嫌で体に巻きつけていたり、寒さ対策としてしっぽを体に巻きつけていることもあるといわれます。

7.体育座りなど、その他ちょっと変わった座り方

あまり一般的とはいえませんが、SNSなどで時々話題になるちょっと変わった猫の座り方もあります。

■体育座り

エジプト座りの状態で、前足をがばっと大きく開いて座る猫を見たことあるでしょうか? やや前傾姿勢になり、まるで膝を立てて座っているように見えませんでしたか? 学生の頃、体育の授業でこんな座り方をした覚えがある人も多いかもしれませんね。

そんな懐かしい座り方によく似ているこの姿勢は、猫の「体育座り」と呼ばれています。見ようによってはペンギンやお相撲さんのようにも見える猫の体育座りは、猫好きの間ではレアでおもしろい座り方として知られています。

なぜこんな個性的な座り方をするのか、理由ははっきりしていません。「グルーミングをしている途中で止めてしまった」「立とうとして止めてしまった」「体型的な理由」「ただ単にこの姿勢が落ち着くから」など、様々な意見があります。

■うつ伏せのまま後ろ足をピンと伸ばす座り方

稀ですが、スフィンクス座りや香箱座りの姿勢で後ろ足を折り畳まず、後方にピンと伸ばして座る猫もいます。

後ろ足は開いていることもあれば閉じて(揃えて)いたり、クロスさせているパターンなどもあります。横座りと違うのはあくまで「まっすぐ」伸びていることで、後ろ足の肉球は天井側を向いています。

お腹を床につけて肘を立てている姿はまるでほふく前進のようにも見え、ユニークな座り方としてSNSなどで人気を集めています。

こちらも理由は明らかになっていませんが、「後ろ足をずっと折り畳んでいることに疲れて伸びをしたくなったのでは?」や、「足を伸ばした方が楽なことに気がついたからでは?」などといわれています。

香箱座りのパターンとリラックス度の違い

香箱座りは、基本的には猫がリラックスしているときにする座り方です。ただし、足のしまい方(隠し方)によってリラックス度合いが変わるともいわれます。

香箱座りの3つのパターンをまとめたので猫の様子と併せてチェックしてみてください。

1.4本の足を全て折り畳んで体の下にしまい込んでいる

前足・後ろ足共に全て畳んで体の下にしまい込んでいるのは、香箱座りの基本ポーズです。3つのうちでもリラックス度は高く、安心できる環境にいる証といえます。

ただし、普段は足を投げ出して座ることが多い猫が頻繁に香箱座りをしていたり、あまり長い時間香箱座りのまま動かないときは少し注意が必要です。室温が低くて寒がっているか、体調不良の可能性もあります。

猫は寒いとき、できるだけ熱を逃がさないようにあまり動かなくなったり、冷えやすい足先を体の下にしまい込んで暖を取ることがあります。毛を逆立てて体をふくらませているのも寒いときのサインなので、見逃さないようにしましょう。

また、香箱座りは猫にとって楽な姿勢なので、体の痛みや不快感をどうにか緩和させたくて行っている場合もあります。座り方の他にも食欲や排泄物などに異常がないかチェックして、気になる場合は早めに動物病院へ連れて行きましょう。

2.前足や後ろ足の一部が無造作に体からはみ出ている

前足や後ろ足などが無造作に体からはみ出した香箱座りは、猫がリラックスしているときによく見られます。力が抜けている証なので、安心してくつろいでいると思って良いでしょう。

例外として、ケガなどで痛みがあるときに足を曲げることができずに投げ出した座り方になる場合もあります。

3.前足の肉球が床についたままになっている

前足の肉球を床につけたまま体の下に滑り込ませる香箱座りは、まだリラックスしきっていないときにすることが多いです。

前足の肉球が床についた状態

3つの内でリラックス度は1番低く、何か行動する前に一瞬だけ休憩をとるときなどにもする座り方です。後ろ足だけでなく前足もしっかり床につけ、いつでも行動できるように構えているのがポイントです。

スフィンクス座りと少し似ていますが、上体や前足に違いがあります。上体は起こしたまま肘を直角にして床につけ、前足は隠さずに前方へ突き出すような姿勢をしているのがスフィンクス座り。上体は伏せたまま肘をぐいっと曲げて肉球を床につけ、前足を体の下に隠すような姿勢が香箱座りです。

座り方がおかしいときは病気のサインである可能性も

飼い猫の座り方が普段と違ったり、不自然な座り方をしているときは病気やケガのサインである可能性があります。

【座り方がおかしいときに疑われる主な病気】

  • 骨軟骨異形成(こつなんこついけいせい)
  • 椎間板ヘルニア
  • 変形性関節症
  • 猫カリシウイルス感染症
  • 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

 

■骨軟骨異形成(こつなんこついけいせい)

骨軟骨異形成は、特定の猫種に現れることで知られる遺伝子疾患です。軟骨や骨、関節などに異常が起こり、コブのように腫れあがったり運動障害を引き起こします。

スコティッシュフォールドの発症率が最も高いですが、マンチカン、アメリカンカール、ヒマラヤン、ペルシャなども発症する可能性があります。

初期の頃は歩き方がぎこちなくなったり、足を引きずる、あまり運動しなくなるなどの症状が見られます。痛みから座り方に違和感が出ることも多いです。残念ながら、骨軟骨異形成は生涯付き合っていく病気なので根本的な治療法はありません。しかし、痛みを緩和することでQOL(クオリティオブライフ)を上げることができる可能性はあります。骨軟骨異形成になりやすい猫種の飼い主さんは特に不調のサインを見逃さないようにしましょう。

■椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、背骨にある椎骨の間でクッションの役目をしている椎間板(軟骨)が変形して飛び出してしまう病気です。飛び出した椎間板が近くにある神経や脊髄を圧迫することで、痛みや障害が発生します。

犬に比べて猫の発症は稀ですが、肥満や加齢、外傷などが原因で起こることがあります。

椎間板ヘルニアを発症すると痛みからあまり動かなくなることが多く、触られたり抱っこされるのを嫌がるようになります。ダメージを受けた神経の部位によって症状は異なりますが、歩き方や座り方に違和感が生じたり、排泄障害が起こることもあります。

■変形性関節症

変形性関節症は、骨と骨の間でクッションの役目をする関節軟骨が何らかの原因で破壊され、関節が変形してしまう病気です。中年期から高齢期に多いといわれ、別の疾患やケガなどが原因で発症することもあります。

主な症状は慢性的な関節痛で、それにより歩行異常や元気消沈、関節の腫れ、排泄障害などが起こります。触られるのを嫌がったり、関節をかばうためにいつもと違う姿勢で座る・寝るなどの動作が見られることもあります。

■猫カリシウイルス感染症

「猫風邪」の呼び名で知られる猫カリシウイルス感染症は、口腔内や舌に水泡や潰瘍ができるのが特徴的な病気です。口内炎による痛みやよだれ、口臭が発生する他、のどの炎症や鼻水、目やに、発熱など風邪によく似た症状が現れるのが一般的です。

しかし稀に、猫カリシウイルス感染症が原因で多発性の関節炎を招いてしまうことがあります。関節炎になると歩行や座り方に異常が起こることもあるので、猫風邪の症状とは無関係と決めつけず、異変を感じたら獣医師に相談しましょう。

■膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨(膝のお皿の骨)が正常な位置からずれてしまう病気です。

足を痛がる、引きずって歩く、足が変な方向に曲がっている、あまり動きたがらなくなるなどが主な症状で、痛みから普段のように座らなくなることもあります。軽度であれば無症状なこともあり、自然と治るようなケースもあります。

原因は先天的なものと後天的なものがあり、スコティッシュフォールド、ペルシャ、メインクーンなどの猫種は遺伝的に膝蓋骨脱臼になりやすいといわれています。これらの猫の飼い主さんは特に、歩行や座り方の異常に気がついたら早めに動物病院で診てもらいましょう。

座り方から猫の感情を読み取ろう

猫の座り方には、そのときの感情や体の調子が現れることがあります。

ある程度のパターンはありますが、くつろぐときのポーズは猫それぞれなので、香箱座りをしないからといって心を開いてくれていないとは限りません。表情や仕草と併せて、猫の気持ちを読み取る参考にしてみてくださいね。

また、具合が悪いときには一早く気がついてあげられるように、飼い猫が普段どんな座り方で過ごしているのか観察しておくと良いでしょう。

画像:黒岩ヨシコ

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