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東京都八王子市の「Green Gallery Gardens」の堀田裕大店長は、地域のガーデニングマニアに頼りにされている「マニア中のマニア」とも言える人。遠方からわざわざ訪ねてきて、アドバイスをあおぐ人も多い。
今回は、そんな堀田店長に人気の観葉植物、フィカス・ウンベラータについて解説してもらおう。堀田さんにとってウンベラータは、日本での第一次ブームからつきあってきた、親しみのある観葉植物だという。ハート型の魅力的な葉っぱを持つこの植物について、育て方から剪定のオキテなどについて、大いに語ってもらった。
園芸分類 | 観葉植物 |
科・属 | マメ科・コヨバ属 |
原産地 | ボリビア、ブラジル |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | あり |
ウンベラータの成長期は5~9月。明るいところで多めに水やりをすることで(夏の暑い日は1日2回)、元気に育ってくれる。気温が低くなると休眠期になり、成長が緩慢になってからも10~17日ごとに水やりをしよう。
フィカス・ウンベラータは僕にとって、とても思い出深い観葉植物で、その姿を見ただけで思わず顔がほころんでしまいます。というのも、僕がこの仕事を始めた2000年代のはじめ、IKEAの日本上陸とともに起こった北欧インテリアブームの勢いに乗るかのようにして、このウンベラータが大人気になったんです。
最初にその人気を支えたのが、女性たちでした。薄くて葉脈がしっかりと刻まれた葉っぱが大きなハートの形をしているのが好まれたのでしょう。
花言葉が「すこやか」、「永久の幸せ」、「夫婦愛」であることも、女性受けした大きな理由だと思います。
「産婦人科の待合室に置きたいんですけど」というお客さんにオススメして喜ばれたのをよく覚えていますし、そのほかにも出産祝い、結婚記念日、新築祝いなどの贈りものとして、多くのお客さんが支持してくれました。
クワ科フィカス属の観葉植物というと、ゴムノキに分類されるベンガレンシスやアルテシマが人気でしたが2000年代以降は、ウンベラータがそれらを押しのけて人気の頂点に躍りあがった感がありました。
ちなみにウンベラータとは、ラテン語で「日傘」を指す言葉なんですが、シャキッとまっすぐに伸びた幹に大きな葉を広げたそのルックスは、花言葉の縁起のいい言葉の響きとピッタリとマッチしていると思います。
それから成長力が強く、大きくなるにつれ、幹から「気根」を盛んに伸ばすのも、ウンベラータの魅力的な特徴です。
気根は、土のなかだけではなく、空気からも水分を取り込むために伸ばす、細長いヒゲのような根のこと。成長期のウンベラータは、これをたくさん生やして、土に着地すると幹に巻きついていきます。
2メートルくらいまで育てると、幹が生命のうねりを感じさせるワイルドな形になって、女心だけではなく、男心にも訴えかける魅力があるんですよね。
2メートルくらいの高さまで育てると、幹は気根に包まれてワイルドなルックスに。
南米の熱帯地方で生まれたウンベラータにとって、温暖湿潤の日本の風土はアウェイな環境ですが、置き場所をコロコロと変えずに同じ環境に慣らしてあげれば、元気に育つ順応力を持っています。
とはいえ、あまりに厳しい環境だと、順応力が追いつかなくて元気がなくなってしまうこともあります。ウンベラータの環境への順応力を信じてあげながら、できるだけ快適に育ってくれそうな環境に置くこと。そのバランスをうまくとってあげるのが置き場所選びのコツです。
そのとき意識してほしいのは、ウンベラータの葉っぱは、大きくて、薄いということ。
こういう葉っぱを持つ植物は、ある程度の耐陰性は持っているけれども、「日陰に強い」と言えるほどの耐陰性はありません。ですから、日の光が届く、明るい場所に置くといいでしょう。
ただし、真夏の直射日光は、さすがのウンベラータもお手あげです。観葉植物のなかには、最初から直射日光の当たる場所に置けば、その過酷な環境にも順応してくれる子もいるんですが、ウンベラータの葉っぱは薄いので、葉焼けを起こして変色してしまうことが多いんです。
ですから、室内の場合は、エアコンの冷気や温気が当たらない場所で、直射日光が午前中にしか当たらない場所か、カーテン越しの窓辺に置くといいでしょう。屋外なら、軒下の風通しのいい半日陰の場所が適切だといえます。
ウンベラータの水やりのタイミングとして適切なのは、「表面が乾いたとき」。5~10月の成長期なら5~10日に1回、鉢の底穴から水が流れ出るくらいたっぷりあげましょう。
それ以外の休眠期には10~17日に1回という具合に季節によって回数を調整してください。もちろん、他の観葉植物と同様、水のやり過ぎには注意が必要です。
ウンベラータの鉢を店に持ってきて、「根詰まりを起こしているみたいだから、植え替えてください」と頼まれることがときどきあるんですが、根を開いてみると、けっこうな確率で根詰まりではなく、根腐れが起こっていることがあります。つまり、水やりのし過ぎで根が傷んで貧弱になっているんです。
ですから、水やりについては、後に述べる用土を工夫するなどして、やり過ぎないことを心掛けたいところです。
それから、もうひとつ意識しておいてほしいのは、ウンベラータの大きな葉っぱは、ホコリがたまりやすいということ。
葉っぱにホコリがたまると、光を吸収したり、呼吸したりするはたらきが鈍って元気がなくなるのです。また、カイガラムシやハダニ、カビなどの被害を受けやすいという面もあります。
その対策として、もっとも有効なのが「葉水」です。霧吹きでスプレーをして、葉にも水をたっぷりあげて、みずみずしい緑の状態を保ってください。
ウンベラータの場合、水やりと葉水はセットでおこなうといいでしょう。
ハダニは葉の裏側、カイガラムシは枝の股の部分がチェックポイント。特にハダニはくっきりとした葉脈に沿って発生しやすいのでわかりやすいでしょう。
ウンベラータの用土として適切なのは、「水はけのいい土」です。
一般的に市販されている観葉植物用の用土は、ミズゴケやスゲなどの植物が堆積して作られた泥炭(ピート)を乾燥させたピートモス主体の有機質用土が多いんですが、それだけで育てようとすると保湿性が高過ぎるので、根腐れを起こさないように水やりするには微妙なコツを必要とします。
そこで、上級者の人は赤玉土や鹿沼土などをブレンドして通気性や排水性を調整したりしますが、最近では初心者向けの「これひとつで大丈夫」と言える便利な用土も市場に出まわっています。
その代表例が、プロトリーフが発売している「インドアグリーンの土」です。
赤玉土と鹿沼土などを原料とした粒状の用土で、有機質のたい肥を用いていないので虫やカビなどがつきにくいというメリットがあります。
土に有機質のものが混じっていると、気温と湿度があがってくる季節にコバエが発生してくることがありますが、この土ならそうしたリスクを最小限に抑えることができます。
また、水に濡れたときの色の変化もはっきりしているので、水やりのタイミングがわかりやすくなるというのも大きなメリットです。
ウンベラータは、大きな葉っぱが魅力のひとつですが、「葉が大きくならないんです」という相談をよく受けることがあります。
原因として考えられるのは、光不足。ウンベラータは日陰にも強い植物ですが、成長が鈍いように感じられたら明るいところに出してあげたほうがいいでしょう。
もうひとつの原因は、肥料不足でしょう。
肥料は、そこに含まれている、窒素(N)とリン酸(P)とカリ(K)の3要素によって作用の仕方が変わります。
そのはたらきは、要素別に分けると次のようになります。
ウンベラータの葉を大きくするには、窒素(N)とカリ(K)が含まれた肥料が向いています。
下図のような「谷型(左)」の肥料か、「平形(右)」の肥料を選びましょう。
それから、肥料には大きく分けて、「液肥(えきひ)」と呼ばれる液体肥料と、「置き肥」と呼ばれる固形肥料の2種類がありますが、ウンベラータには、どちらのタイプの肥料を使っても効果が得られます。
液肥は、原液を水で薄めて与える速効性のあるものがオススメです。希釈の割合を調整することで水やりと同じタイミングで与えることができるのでお手入れが簡単になります。
置き肥には、粉末、粒状、固形の状態のものがありますが、水やりをしたとき、土にゆっくりと溶けだしていく固形の緩効性肥料がオススメです。
製品によって効き目が「1週間」のものから「1カ月」のものなど表示されているので、自分のお手入れのペースに合わせて製品選びをしましょう。
観葉植物をどのように育てていくかは、それぞれの好みで決めていいと思いますが、ウンベラータの場合、「葉をどのように美しく見せるか」ということにこだわってほしいですね。
だいたい、葉の状態を全体から見てみると、枝ごとに「この葉っぱをきれいに見せたい」という一枚が見つかるはず。そのような葉っぱをきれいに見せるには、他の葉っぱを剪定して主役を引き立てる形にしてあげるといいでしょう。
ウンベラータを剪定するとき、第一に注意してほしいのは、「樹液」です。
クワ科フィカス属の植物は、ゴムノキのようにゴムの原料となるラテックス成分を含んだ樹液を持っています。
この樹液、皮膚に触れるとかぶれることがあるので要注意なんです。服や床などに落ちると、めったに落ちない頑固なシミを作ることもあります。
それから、不思議なことに、樹液が幹や葉につくと、そこから黒くなって腐ってしまうという困った特性もあるんです。自分自身の樹液なのに、なぜか有害成分としてはたらくんですね。
人間は、自分の血液が触れたからといって肌がかぶれることなんてないし、他の観葉植物でも、そんなことが起こることはめったにありません。でも、クワ科フィカス属のウンベラータの場合、そのことを忘れていると思わぬ失敗につながるんですね。
それでは、剪定を実演して、解説していきましょう。
剪定は、葉のついた枝のつけ根にハサミを入れます。主役となる葉っぱの影になっている葉を、枝ごと落とすイメージです。
すると、切り口から白くてベタベタとした樹液がすぐに出てきます。慣れていない人は、手袋をしたり、下に新聞紙を敷いたりして、手や床に触れないように気をつけてください。
切り口からあふれてきた樹液をきれいに拭いて、殺菌成分を含んだ癒合剤を塗ります。今回使用したのは、住友化学園芸の「トップジンMペースト」。チューブ入りなので扱いやすいです。
癒合剤を塗った切り口は、よく乾くまで注意して様子を見てください。癒合剤や樹液が流れ落ちそうな場合は、上手に拭き取ってください。
多くの観葉植物と同様、ウンベラータは1~2年くらい同じ鉢で育てていると、鉢のなかに根がいっぱいになって「根詰まり」のリスクが高まります。
根詰まりが起こると、いくら水やりをしても鉢のなかに根がいっぱいになって、すぐに土が乾いてしまうのです。
なかにはサークリング現象といって、数本の太くなった根が鉢の側面に沿ってグルグルとサークル状に固定化することもあります。最近では、これを防ぐために溝の入ったスリットつきの鉢も出まわっていますが、そうならないようにウンベラータの成長具合を見ながら植え替えをしたいものです。
植え替えの時期は、成長期の5~10月が適切ですが、梅雨明けの湿度の高い8月前後は避けたほうがいいでしょう。
この時期、船便やトラックに乗って出荷されてきたウンベラータは、コンテナのなかの蒸れた空気にさらされて、幹を持っただけで皮がズルッと剥けそうなくらい、傷んでいることがあるんです。湿気と暑さは、ウンベラータにとってかなりの負荷になるんですね。よって、新しい土に馴染ませる植え替えには向かない時期ということになります。
それでは、実演していきましょう。
鉢の底穴にネットを置き、底石の軽石を敷きます。底石は、水はけをよくするためと、鉢の重さを軽くするために軽石を用います。
深めの鉢には4分の1から、3分の1くらいの軽石を詰め、その上に水はけのいい用土を入れていきます。
土の表面には効果のなくなった肥料やカビ、雑草の種などが含まれているため、しっかり取り除いてください。
根についた土も、根かき棒を使って落としていきます。
このウンベラータは、仕入れて半年経ったくらいですが、サークリング現象は起こしていないものの、それなりに根が張っていますので、根かき棒できれいにほぐして、太い根はハサミで切り落としていきます。
僕は根かき棒は、盆栽用具として売られている喜久田のアルミ製のものを愛用しています。
先端がカギ型になっていたり、三つ股に分かれているものなど、さまざまな形状の根かき棒がありますが、僕はまっすぐな棒状のものが使いやすいと思っています。もともとは手芸の編み棒として使われていたものを改良したもののようです。
ですから、専用の道具ではなくて、割り箸でも代用できます。ただ、角のある割り箸ではなくて、丸形で先端が細くなっているものがオススメです。
最後に、水はけのいい土を鉢に満たし、根かき棒で根の側面までならし、水やりをして植え替えは終了です。
これは、どの観葉植物についてもいえることですが、育て方、手入れの仕方によってその植物は世界にふたつとない、個性的な姿を見せてくれます。置き場所、水やり、施肥などを工夫して、ウンベラータの魅力を最大限に引き出してあげてください。