潮干狩り歴70年の超人から潮干狩りに必要な持ち物、時期、場所、注意ポイントを超伝授された
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東京都八王子市の「Green Gallery Gardens」の堀田裕大店長は、地域のガーデニングマニアに頼りにされている「マニア中のマニア」ともいえる人。遠方からわざわざ訪ねてきて、アドバイスをあおぐ人も多い。
今回は、そんな堀田店長に人気の観葉植物、シェフレラについて解説してもらおう。「植物としての丈夫さ、そして幹の造形美が魅力」と熱く語る堀田さん。その上手な育て方を「植え替え」、「用土のブレンド」に至るまで、実演によって徹底解説してもらった。
園芸分類 | 観葉植物 |
科・属 | ウコギ科・シェフレラ属 |
原産地 | 中国南部・台湾 |
耐寒性 | やや強い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | 強い |
水やりのペースは、ガジュマルなどの観葉植物と同じく一般的なもの。11月以降の冬の水やりは14~30日ごとが目安だが、室内で暖房が効いてる部屋に置いている場合、10日~20日くらいのペースで。丈夫な植物なので、植え替えや剪定は10月まで行うことができる。
シェフレラは、ウコギ科シェフレラ属の植物の総称で、中国南部を中心に世界に約600種があると言われています。
大きく緑の濃い葉っぱのブラッサイア、細長くて小さな葉っぱを持つツピンタス、肉厚で葉先が丸いホンコンなど、葉の特徴によって品種の違いを言い分けることが多いですが、上の写真のシェフレラはコンパクタと呼ばれ、その名の通り、小さな葉が寄り添ったような形の品種です。
コンパクタのなかでも2種類があって、葉先がとがっていて上に向かって葉を広げるものをキング、葉先に丸みがあり、コンパクトにまとまるものをクイーンといいます。なので、丁寧に呼ぶならば、これは「シェフレラ・コンパクタ・クイーン」ということになります。
シェフレラの魅力について解説した文章は世にたくさんありますが、多くの点で強調されるのがシェフレラの「丈夫さ」です。
観葉植物の丈夫さは、耐暑性(暑さへの強さ)、耐寒性(寒さへの強さ)、耐陰性(日陰への強さ)で評価しますが、シェフレラはどの品種でもトップクラスの強さを誇ります。
もともと熱帯から亜熱帯地方の植物ですから、暑さに強いのは当たり前なんですが、寒さにも強さを発揮するのは驚きで、杉並区あたりの都心の住宅地のお庭で地植えされているのを見かけたりします。観察してみると、5度くらいの気温でも普通に元気ですし、氷点下を下まわらない限り、簡単に冬越えできるのです。
また、耐陰性についても、あまり日光が入らない部屋でも元気に育つくらいの強さがあります。
ただ、僕は個人的にはシェフレラの魅力は、丈夫さだけに留まらないと思っています。他の解説ではあまり言及されることがないんですが、それは「幹の造形美」です。
現在、市場で流通しているシェフレラの多くは、株の一部を切りとり、発根させて増やす「挿し木」という手法で生産されたものですが、そうしてできた幹にはひとつとして同じ形のものはなく、個性豊かな姿を見せてくれます。生産者は、原木からできるだけ枝ぶりのいい株を選んで、こだわりの鉢を作っているんです。
ちなみにこれは、生産者のもとで出荷を待っているウンベラータです。葉が蒸散して水分を出さないように葉はきれいに切り落とされ、高さを規格通りにそろえられていますが、幹が同じ形をしている鉢はひとつもありません。
このシェフレラも、なかなか魅力的な幹をしています。クルクルと鉢をまわして、いろいろな角度から眺めていると、空気中から水分を取り込むための「気根」がピョコンと顔を出したりして、思わず顔がほころびます。
他のシェフレラとも比較してみましょう。
右のシェフレラは、素直にまっすぐに幹を伸ばしていますが、まん中と左のシェフレラの幹は、独特な形をしているのがわかります。
まん中のシェフレラは、三つ叉に分かれていて、幹の太さもそれぞれ違いますね。
左のシェフレラは、途中で太い幹に枝分かれしています。
3つを見比べてみると、人間と同じように、シェフレラにも「人生のターニングポイント」のようなものがあるんだなと思えてきたりして(妄想ですが)。
それからシェフレラを育てていて、もうひとつの楽しみが、成長期に花を咲かせてくれるということ。
こちらは2メートルくらいの高さまで育てた、床置き用のシェフレラ・アンガスティフォリアです。近づいてみると、枝の間から花を咲かせているのを見ることができます。
シェフレラの花は、放射状に飛び出した棒状の枝に、たくさんの小花がタコのイボのようについいる姿から、欧米では「オクトパス・ツリー」と呼ばれています。花言葉は、「誠実」「正直」「実直」。
上の写真の花はまだ咲いたばかりなので白色ですが、このあと、濃い桃色に変化して、種を実らせます。
これはシェフレラだけでなく、多くの観葉植物にいえることですが、最初に決めた置き場所は、人間の都合でコロコロと変えないほうがいいです。
人間は、暑いときには涼しいところ、寒いときには暖かいところに足を使って自由に移動することができますが、植物はそのような便利な足を持っていません。そのため、置かれた場所の環境に適応することで暑さや寒さに耐えているのです。シェフレラが耐暑性、耐寒性、耐陰性にすぐれた丈夫な植物だということはすでに述べましたが、その丈夫さは、すぐれた環境適応力によるものなんですね。
ですから、置き場所を変えてせっかく順応した環境に変化を与えることは、植物にストレスを与えることにつながるのです。
そうはいっても、夏の直射日光については、植物によって耐えることができずに葉焼けといって、葉っぱが茶色くなったり、黒っぽく変色してしまうこともあります。いわゆる、葉っぱのヤケドのような症状です。
シェフレラの場合、最初から直射日光のあたり場所に置いておけば、その環境にうまく順応してくれるケースが多いです。シェフレラの多くの品種は、厚い葉っぱを持っていて、水分を蓄える能力に長けているからです。
ただ、例外的にツピンタスのように葉っぱが細かくて小さい品種では、直射日光に耐えられないこともあります。
このように葉っぱが薄かったり、小さかったりする品種の場合、夏場は遮光ネットなどを張って直射日光をさえぎってあげるか、鉢植えの場合は真夏の間だけ半日陰の場所に移動するなどして対処しましょう(鉢を移動させる場合はいきなり日陰に置くのではなく、少しずつ移動させて、環境の変化をゆるやかにすることに気をつけてください)。
丈夫なシェフレラですが、唯一の弱点といえるのが「水のやり過ぎ」です。
美しい幹を持つシェフレラは、多くの場合、「挿し木」によって栽培されたものですが、出荷されたばかりのものは、まだ発根が充分に進んでおらず、根が貧弱なことがあるんです。そんな状態のシェフレラに大量の水やりをすると、根が水分を吸収しきれずに根腐れを起こしてしまうんです。
根腐れは根の先端部分からじょじょに腐っていくのでわかりにくいですが、放置すると、幹が株元から腐って枯れていくので要注意です。
根がしっかりとして健康な状態であれば、「表面が乾いたとき」が水やりの適切なタイミングです。5~10月の成長期なら5~7日に1回。
11月以降は成長が緩慢になる休眠期に入りますので、水やりは2週間か1カ月に1回程度で充分です。
あと、水やりをするときには葉にスプレーをする「葉水」を同時に行ってほしいんですが、そのとき、「病害虫」のチェックも忘れずに。シェフレラがよく狙われる病害虫は、カイガラムシとハダニです。
カイガラムシは枝の股の部分、ハダニは葉の裏側がチェックポイントです。
カイガラムシとハダニは、冬の空気が乾燥する時期に発生することが多いので、「葉水」をしながらよく観察してください。
ハダニは水に弱いので、小まめに葉水をするだけで駆除、防虫できますが、カイガラムシは硬い殻に包まれているので殺虫剤を使って、しっかり取り除いてください。
僕は、「幹の造形美」がシェフレラの大きな魅力だと思っているので、いかにして幹を健康な状態で育てるかに気を遣います。
なかでも、「用土」選びは重要なポイントです。
植物にとって、理想的な環境がどうかを示す基準にpH(ペーハー)値があります。植物の生育がいいのは、pH値が6.0~6.5の「弱酸性」だといわれています。植物にとって、養分の有効性がもっとも高い状態です。
ただ、水やりをし続けていくと、土のなかのアルカリ成分が流れていって、酸性にかたむいていきます。そこで、有機石灰や、くん炭などを用土にブレンドしてpH値を調整したりします。このやり方は、ある程度の経験を積まないとコツがつかめないんですが、今回は初心者でも簡単にできる用土作りを紹介したいと思います。
シェフレラの用土として、まず意識してほしいのが「水はけのよさ」です。
挿し木によって栽培されたシェフレラは、まだ根が充分に伸びていないこともあるので、保湿性の高い用土で育てると根が水分を吸いきれずに根腐れを起こしてしまうからです。
「水はけのよさ」を意識して、僕が愛用しているのは、プロトリーフの「インドアグリーンの土」です。赤玉土や鹿沼土を原料にした粗めの粒状の土なので水はけがよく、濡れると色が変わるので水やりのタイミングがわかりやすいんです。
この土に、「ヤシガラ土(ベラボン)」と「籾殻くん炭」をブレンドします。
ヤシガラ土とは、ヤシの実のスポンジ状の繊維を特殊加工したもので、水を吸って膨張したり、吐いて収縮したりすることで水持ち、水はけ、通気性を持たせてくれる用土です。
籾殻くん炭とは、籾殻を無酸素、低温で炭化したもので、酸性にかたむいた土を中和する作用があって、通気性と保水性を改善させ、根の張りをよくする働きがあります。また、土壌微生物を活性化させ、病害虫を発生しにくくする効果もあります。
ブレンドの割合は、以下の通り。
植え替えをするとき、この割合で用土を混ぜて新しい鉢に植えます。誰でも簡単にできますので、是非試してみてください。
用土と同じように「肥料」についても、幹と葉の生育をよくするには大事な要素です。
肥料の種類は、そこに含まれている窒素(N)とリン酸(P)とカリ(K)の3要素によって作用の仕方が変わります。
その働きは、要素別に分けると次のようになります。
シェフレラの場合、葉と幹の成長をよくすること、幹をしっかり支える根を丈夫に育てることが重要ですから、下のように窒素(N)とカリ(K)の多い「谷型」の肥料がオススメです。
肥料は成長期に与えるのが効果的で、休眠期には必要ありません。
肥料も水やりと同じで、やり過ぎると肥料焼けを起こす原因になります。吸いきれない養分が土に溜まって環境を悪化させてしまうのです。
一般的に成長が早くなるのは5月あたりからですが、シェフレラの場合、4月くらいから元気になる子もいるので、前倒しにして4月から施肥を開始してもいいです。そのあたりは、成長の度合いを観察して決めてください。
鉢のなかで根がいっぱいになると、根詰まりを起こして水分や養分の吸収が衰えていきますので、育てて1年以上たったら成長の様子を見て植え替えするようにしてください。
植物は環境の変化を嫌いますので、植え替えは順応力の高い5~10月の成長期に行うのが適切な時期です。
木を大きくしたい場合は、鉢の大きさを2~3センチくらい大きいものに植え替えます。大きさをそのままにしたい場合は、同じ大きさの鉢に植え替えますが、そのときは根を3分の1くらい、多めに落としてください。
それでは、実演していきましょう。
鉢の底穴にネットを置き、底石の軽石を敷きます。底石は、水はけをよくするためと、鉢の重さを軽くするために軽石を用います。
深めの鉢には4分の1から3分の1くらいの軽石を詰め、その上に3種類の土をブレンドした用土を入れます。
土の表面には効果のなくなった肥料やカビ、雑草の種などが含まれているため、しっかり取り除いてください。
根についた土も、根かき棒を使って落としていきます。
今回は、2~3センチほど大きい鉢に植え替えるため、根を落とすのは4分の1程度に留めておきます。
僕はシェフレラの植え替えをするとき、幹が美しく見える角度にこだわります。傾きや土の量を調節して、自分の好みで「幹の造形美」を大事にしています。
表面まで土を入れて、水やりをして植え替えは完了です。
最後に「剪定」についても、実演していきましょう。剪定は、植え替えと同様、5~10月の成長期が適切な時期です。
シェフレラのなかでもコンパクタという品種は、小さくて細かい葉を枝に繁らせていくので、葉と葉の間の風通しが悪くなって成長をさまたげることがあるので剪定が必要になります。
幹を美しく見せるという意味でも、剪定は重要な作業です。葉と幹のバランスを全体的に見ながらととのえていくのがオススメです。もちろん、自分の好みやセンスで決めてください。
枝が伸びているところを、よく切れるハサミで株ごと切り落とします。
切った株を挿し木にする場合は、葉っぱを2~3枚残して2〜3時間ほど切り口を水につけておきます。その後、川砂や挿し木用の土に挿して根が出るまで成長させ、鉢に植えます。
細い茎が丈夫で美しい幹に成長し、見事な枝ぶりを鉢の上に展開する様子を想像しながら、挿し木にする株を選んでください。きっと、楽しい作業になるはずですよ。
丈夫な性質を持つだけでなく、個性的な幹の造形美が魅力のシェフレラ。世界でひとつしかないシェフレラを大事に育てて、末永くかわいがってあげてください。