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太い根の個性的な姿が魅力的で、強い生命力を持つことから初心者でも簡単に育てられる観葉植物、それがガジュマル。
東京都八王子市にあるガーデニングショップ「Green Gallery Gardens」の堀田裕大店長によると、ガジュマルにはその魅力を最大限に発揮する数々のコツがあるという。そこで、その経験に裏打ちされた「ガジュマルの正しい育て方」について、語ってもらいました。
園芸分類 | 観葉植物 |
科・属 | クワ科・イチジク属 |
原産地 | 沖縄、インド、東南アジア |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | あり |
植物は春から秋にかけての成長期、冬の休眠期によって育て方を変えるべき。植物の状態を観察しながら適切な時期に適切な作業を。
ガジュマルは、パキラ、ドラセナと並んで3大観葉植物とも言える人気の植物です。亜熱帯から熱帯地方に広く分布していて、日本では九州の屋久島や種子島以南で街路樹や生け垣になっているのをよく目にします。
樹齢を重ねると高さが20メートルにもなりますが、沖縄では、そうした巨木には「キジムナー」という精霊が住むという言い伝えがあります。家に幸せをもたらしたり、夜更かしする子どもを驚かせたりするそうです。
そんなガジュマルが観葉植物として親しまれるようになった最大の理由は、そのどっしりと太い根元を土の上に露出させたことでしょう。その特徴ある形を見てください。植物には、品種や個体などの違いによって異なる生き方戦略がありますが、ガジュマルは養分や水分を蓄える太い根元を持つことによって強い生命力を発揮するんです。
しかも、ひとつとして同じ形がないのも魅力のひとつです。じっと見ていると、そのたくましい生命力を感じられるはず。お酒好きな人なら、差し向かいでおいしいお酒を飲めると思いますよ(笑)。
見る角度によっても姿を変えるガジュマル。根の形が人参に似ていることから「ニンジンガジュマル」とも呼ばれている。
根だけでなく、葉の形にも植物の生き方戦略がよく表れています。例えばフィロデンドロンやアロカシアのように色が濃く、厚くて大きな葉を持つ植物は光の吸収効率が高いので、日陰に強い性質を持っています。逆に気温が高い日に直射日光を当てすぎると葉焼けを起こして枯れる原因になってしまいます。
一方、ガジュマルのように、小さくて細かい葉を持つ植物には、日当たりを好む性質があります。ただし、太い根を持つことによって耐陰性がありますので、あまり神経質になることはありません。室内ならカーテン越しの柔らかな日差しが当たる場所、戸外なら日陰や半日陰の場所が管理をしやすいでしょう。
いずれにせよ、植物は人間などの動物と違って勝手に移動できる足を持ちませんので、「置かれた場所」の環境に適応する能力があります。従って、置き場所をあちこちに変えるのは植物にとってよくないことが多いです。
ベランダなどの戸外に置いていたガジュマルを冬場に室内に移したいときは、いきなり暗い場所に移すのではなく、日の当たる場所から徐々に移していくことが大切です。室内に置いていたものを戸外に移すときも同様で、環境の変化を急激にさせないほうがよいでしょう。
ガジュマルの年齢は、年輪の数を数えるとわかる。このニンジンガジュマルの年齢は4歳だということがわかる。
ともあれ、ガジュマルの環境に順応する能力の強さには、驚かされることも多いです。そもそも亜熱帯から熱帯地方に繁殖しているガジュマルを寒い冬のある土地で育てたり、本来は土に埋まっているはずの根元を露出させたりすることは不自然なことなんですが、そんな環境にも順応してしまう強さがガジュマルにはあります。
いま、地球に棲息している植物は、260万年くらい前に起こった氷河期を生き延びた経験を持っています。不自然な寒い環境内では自らを休眠状態にして、寒さをしのぐことができるんです。
僕のお客さんの中でも上級者の人になると、ガジュマルを1年中、戸外のベランダで育てている人がいますが(八王子市の冬はマイナス0度になることがあります!)、そういう人は置く場所や水やり、施肥のタイミングを工夫して、ガジュマルが休眠状態になるスイッチを調節しているんですね。
意外なことかもしれませんが、ガジュマルを枯らしてしまう原因の多くは、ガジュマルの生命力の強さに頼ることなく、過保護な世話をしてしまうことなんです。
例えば、水やりの回数が多すぎるとガジュマルは、根を伸ばさなくなって水分を吸収する能力を弱めてしまいます。そういう状態のとき、水やりを数回忘れただけで枯れてしまうんです。また、水はけが悪く、土がつねに水を含んでいる状態にあると酸素不足となり、根腐れといって根が先端から枯れてしまうこともあります。
水やりのタイミングとして適切なのは、「表面が乾いたとき」です。5~10月の成長期なら5~7日に1回、それ以外の休眠期には2週間か1カ月に1回程度という具合に季節によって回数を調整してください。
水やりのタイミングがわかりづらいという人には「サスティー」という水やりチェッカーがおすすめです。鉢の中にさしておくだけで、鉢の中の水分量を示してくれるので水やりのタイミングがわかりやすくなります。
動物も植物も、生きるためには栄養の補給が必要です。自然界の植物は、動物の排泄物や昆虫の死骸、腐って微生物のいる落ち葉などが養分になりますが、観葉植物は人工的な環境で生きているので、手を入れてあげないと生育が悪くなって葉色がさえなくなったり、萎れてきたりします。そこで、5~10月の成長期には肥料を与え、土の環境を良好に保ってあげることが必要です。
市販の観葉植物用の培養土には「肥料入り」とか、「元肥」などの表示がされていますが、肥料の効果は1カ月くらいなので、そのたびに追肥してください。肥料を適切に与えてあげると、植物は健康な状態になって、すくすくと成長していきます。
肥料には、大きく分けて「化成肥料」と「有機肥料」の2つの種類があります。化成肥料は、植物に必要な養分を鉱物や化学的に加工したもので作られています。
有機肥料は、植物性または動物性の有機物を原料にした肥料のこと。現在、観葉植物用の肥料として市場に出回っているものの多くは化成肥料ですが、このタイプの肥料は即効性はあるけれども効果が長持ちしないというデメリットがあります。そこで、ゆっくりと効果の表れる有機肥料を補って化成肥料と配合していくとよいでしょう。
ガジュマルは高温多湿の状態を好みますが、水はけの悪い土を使うと根腐れの原因になることがありますので、できるだけ水はけのよい土を選ぶことをおすすめします。
僕がよく使用しているのは、プロトリーフ「インドアグリーンの土」。肥料入りの土を使うと、6月あたりにコバエが発生したりすることもあるので室内に土入りの鉢を入れることをためらう人も多いですが、この土は粒状の原料だけで作った培養土なので虫がつきにくく、カビやキノコなども生えにくい性質があります。もともと粗めの土なので、水のあげすぎを防ぐという利点があります。
ガジュマルを育てていると、「気根」といって幹や茎からヒョロッとした細い根が生えてくることがあります。これは、ガジュマルが健康な状態にあって、自らの体を大きくしようと成長したがっているサインです。
というのも、この気根をうまく地面に根づかせてあげると、太い根元の杖のような役割を果たして体をさらに大きくしてくれるからです。気根は、乾いた環境にあると地面に届く前に枯れてしまうので、湿り気のある状態を保って上手に根づかせてあげましょう。
ガジュマルは生命力が強く、初心者にも安心しておすすめできる観葉植物ですが、それでもたまに「葉が枯れてきた」という声を聞くことがあります。
「葉が枯れる」という現象には2つのパターンがあって、①水や光不足が原因のときは葉が先端から枯れていきます。その一方、葉が左右の側面から枯れるときは②病害虫が原因になっていることが多いです。
①の対処法は、水やりをしっかりとやって、明るい場所に移して日の光をたっぷり浴びられる環境に置きかえること。
それから、下のほうの葉が黄色に変色して落ちてくることもあります。水分や光、肥料が足りなくなって、それまで成長させた葉を維持する力がなくなったため、自らダイエットして環境の変化に順応しようとしているのです。この場合も①と同じように対処しましょう。
②の左右の側面から枯れるときの原因は病害虫なので、虫を取り除いて、日ごろから防虫対策をする必要があります。
葉の先端が枯れるのは、水や光不足が原因。左右側面から枯れるのは、病害虫が原因になっていることが多い。
観葉植物を枯らす病害虫で代表的なのは、葉ダニとカイガラムシです。これらの虫の排泄物が茎や葉に付着すると、すす病という病気を引き起こすのです。
いずれも春から秋にかけて、空気が乾燥する時期によく出てきます。見逃すとイッキに広がりますので、定期的に葉水をしてチェックするといいですね。葉ダニは葉の裏側、カイガラムシは枝の股の部分がチェックポイントです。
見つけた場合、ヘラやブラシなどでこそげ落としてもいいですが、葉や茎を傷つけてしまうと逆効果なので、殺虫剤を使うことをおすすめしています。中でも「ベニカ×ネクストスプレー」は5種類の殺虫成分で幅広い種類の病害虫を防除するほか、還元澱粉糖化物という成分には虫や病気を包み込んで退治する物理防除効果もあるので、これひとつあれば殺虫&防虫の両面で安心です。
殺虫剤、防虫剤についてはお客さんから、「化学薬品を使わない、オーガニック製品はないですか?」と問い合わせをよく受けるので、僕自身、オリジナルの製品をいろいろ試作しています。例えば、蒸留酒のジンの香りづけに使われているジュニパーベリーや、入浴剤や消臭剤にも使われる竹酢液を使って効果を試すんです。
あるとき、シナモンとサンダルウッドがエジプトのミイラの匂いを再現するために使われていたという情報を海外のSNSで見つけて試してみたことがあります。すると、部屋中にお香を焚いたお寺の本堂の匂いが充満してしまい、室内では使えないなと結論しました。
オーガニック素材は自然由来の成分なので、植物に与える悪影響は最低限に抑えられるはずですので、これからもいろいろと研究していきたいと思っています。
水やりや追肥を繰り返すと、土が減ったり、水はけが悪くなっていき、ガジュマルの成長のさまたげになることがあります。
また、根詰まりといって、鉢の中に根がいっぱいになって水を吸う力が弱まると、先端のほうから根腐れを起こしてしまいます。その場合は、ひとまわり大きな鉢に植え替えすれば元通りに成長してくれます。根詰まりを防ぐには、1~2年に1度は植え替えをするとよいでしょう。
植え替えに適切な季節は、成長期の5~10月で、それ以外の休眠期に植え替えをすると、環境の変化に順応する力を発揮できず、枯らしてしまうこともあるので要注意です。
それでは、実際に植え替えをしてみましょう。
ガジュマルを鉢から出して、表面の土を取り除きます。表面の土には効果がなくなった肥料やコケ、雑草のタネなど余分なものが含まれている可能性があるので、きれいに取り除いてください。
次に下のほうの根についている土も取り除いていきます。根を切らないように、串などでほぐしていくのがコツです。
上のほうの保湿性のある土は多少残しておきます。
植え替える鉢には、底にネットを置いて、底石に水はけのいい軽石を敷きます。
ガジュマルを添えて、土を加えます。根をどこまで表面に出すかは好みで決めてください。思いきって露出度をあげてもいいし、それまで見えていた部分をあえて埋めてみるのもいいでしょう。
水やりをして、「サスティー」をさしたら完了です。
生命力の強いガジュマルは、成長期には勢いよく枝や葉を伸ばしていきますが、そのままにしておくと不格好になるので「剪定」が必要です。剪定の時期は、ガジュマルが成長する力を持っている5~10月までの時期が適切です。
このように葉の上から伸びている枝をハサミで切ります。
どの枝を切って、どの枝を残すかは、好みの問題ですが、全体が均等になるようにするには、強く勢いのある枝から剪定します。弱くて細い枝の成長がうながされて、幹とのバランスがよくなります。
何度も繰り返して恐縮ですが、ガジュマルは強い生命力を持つ植物なので、初心者にも安心しておすすめできる観葉植物です。大事に育てれば、10年、数十年と末永く付きあっていけるはずなので、是非とも挑戦してください。