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溶接できれば「無敵」。溶接ギャル粉すけのガチンコ溶接講座

クリエイター

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馬場吉成

馬場吉成

工業製造業系ライター。かつては光ファイバーや半導体関係の装置の設計とかをやっていたが、今はライターや飲食店経営。学生時代はプロボクサーだったことも。100kmぐらいなら自分の足で走ります。

インタビュー取材はリモートで実施しました

溶接をやったことがありますか?

こんにちは、工業製造業系ライターの馬場です。皆さん、溶接をやったことがありますか? 鉄のお面を顔に当てて、バチバチ火花を飛ばして鉄と鉄をつなげるアレです。私は、機械設計の仕事をしていた頃、研修で行った町工場で数回やったことがあります。

…が、一般的なDIYといえば、使う材料の多くは木材、布、紙、ビニール類。

「ああ、そこにある金属の台。DIYで溶接して作ったんだー」なんて人はあまりいないと思います。金属加工というのは、それなりの装置がないとできないので、DIYで扱うのは非常に難しいんですね。

ただ、溶接に関しては、装置の小型・軽量化に伴い、ギリギリDIYでも扱えるようになってきました。溶接のやり方を覚えれば、金属だけのインテリアを組み立てたり、ネジや接着剤よりも強い補修ができたり、とDIYのレベルが上がりそうです。

というわけで、今回は溶接を始めたい! と考えている皆さんに向けて、イチから溶接の仕組みをご紹介します。そして、溶接職人の方に、溶接の魅力や醍醐味を聞いてきました。

あと、あまり見かけないタイプの溶接職人の方なので、職人となった経緯や、仕事に対する想いなども深掘りしました。

溶接ギャル粉すけは『イニD』好き

今回お話を聞いたのがこの方。

粉すけさん

いや、写真は間違っていないです。

ギャルであり、溶接職人であり、自動車板金塗装の会社「勝倉ボデー」の経営者でもある、粉すけさんです。溶接工や自動車整備士、トラック運転手などを経験して独立。現在は自動車、バス、重機などの板金、塗装、溶接などを請け負っています。ランエボ(三菱自動車のスポーツカー「ランサーエボリューション」)やシルビアを操り、自分の車の塗装や溶接も自分でやるほどの車好き。好きな漫画は『イニシャルD』。

そんな粉すけさんに、溶接の魅力を聞いていきます。と、その前に……。

まずは溶接の原理を知る。アーク溶接とガス溶接の違い

「溶接って何ぞや?」という皆さんのために、溶接の原理を簡単に解説しましょう。溶接とは、電気の力やガスの炎で金属を一度溶かしてつなぎ合わせる加工方法です。

溶接って何ぞや?の説明

金属を溶かす、といえば「はんだ付け」を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。母材を溶かして直接つなぎ合わせる溶接と違い、はんだ付けは「はんだ」と呼ばれる溶加材(溶接の際に使う添加剤)で金属と金属をつなぎ合わせます。接着剤を使っているので強度は溶接に劣りますが、手軽さは抜群。最近は100均にもはんだごてが売ってますね。

さて、話を戻すと、溶接の方法には色々な種類があるのですが、ここでは代表的なものを二つほど挙げます。

溶接って何ぞや?の説明2

アーク溶接

まずはアーク溶接。イメージとしては、ビーッと音をたてながら、火花をバチバチ飛ばすアレです。

アーク溶接

粉すけさんの公式YouTubeチャンネル「KINOKO -PAISEN」より

溶接したいもの(母材)と溶接機の電極(ワイヤなど)との間に、電気を通すことで発生するアーク(気体の中でおこる放電現象)で溶接します。アークは、強い光と金属を溶かすほどの熱を持っています。コンセントを引き抜くときなどにバシッと光るアレです。

電極は、トーチとよばれる、手に持って炎が出ているように見える道具の中を通っています。電極の周りには、アルゴンガスとか炭酸ガスとか、何らかの燃えないガス(シールドガス)が流れています。ガスを流す理由は、接合(溶融)部を空気から遮断するためです。溶けた金属が酸化して中に気泡が入り、溶接した部分が弱くなるのを防ぎます。非常に単純な図で書くとこんな感じです。

アーク溶接の図

アーク溶接は、アークで電極を溶かして溶接する方法と、電極以外の金属の棒などを溶かして溶接する方法の二つに大別されます。今回メインでご紹介するのは、前者、つまり電極を溶かして溶接する方法の一つで、炭酸ガスアーク半自動溶接(略して半自動)です。電極となるワイヤが溶接機から自動的に送り出されてくるので、電極が溶けてなくなっても、次の新しい電極がトーチから出てきます。自動車板金関係ではこの半自動溶接がよく使われます。

なお、ガスを使わない方法もあります。ワイヤの周りに溶融部の酸化を防ぐ素材を付ける、ノンガスワイヤ半自動溶接です。家庭の作業環境を考えると、DIYで扱う溶接はおそらくこれになるでしょう。

通常、アーク溶接には、電源トーチのついた溶接機と、ガスの入ったボンベ目を保護する面などの備品ワイヤなどの消耗品が必要です。業務用のアーク溶接機は200Vの電源を使いますが、家庭用100Vの電源で使える溶接機もあり、こちらはホームセンターでも売っています。

ガス溶接

アセチレンガスやプロパンガスなどの可燃性ガスの炎で金属を溶かし、溶接する方法です。アーク溶接ほど熱が伝わりにくいので、比較的溶けやすい金属や、熱で割れやすい薄い板の溶接に使われます。可燃性ガスが入ったボンベと、酸素ボンベ、圧力調整器などが必要で、ガスの取り扱いにもいろいろな決まり事があるので、DIYで扱うことはまずないと思います。

溶接は「とても繊細」な作業

溶接は「とても繊細」な作業

ファッションとか、「なぜ溶接なの?」とか、聞きたいことはありますが、そこは後にして。まずは、粉すけさんに溶接の初心者が意識すべきことや注意点を聞いていきます。福井県在住の粉すけさんとは、リモートでのインタビューになります。ちなみに、前髪のヘアピンは、テレビの収録に呼ばれた時、フワちゃんにもらったそうです。

馬場アイコン

初心者の方が溶接をするにあたって、まず意識しておくことは何でしょう?

粉すけアイコン

溶接って、バチバチと熱い火花が散る中、オリャー! とやっている荒々しいイメージがあるかもしれませんが、実はものすごく繊細な作業なんです。

馬場アイコン

繊細とは意外ですね。

粉すけさんのメイン溶接機

粉すけさんのメイン溶接機

粉すけアイコン

私も何回か出たことがあるんですけど、溶接の競技大会(※)では、息を止めて溶接をするくらいなんです。呼吸の上下でビード(※)がダメになってしまう。だから、手先が器用で集中力のある人が向いています。そして、角度とか細かい数字よりも、感覚が大事です。

溶接の競技大会……溶接の正確性や製作物の強度などを競う大会。代表的なものに「全国溶接技術競技会」がある。
ビード……溶接で溶けた金属によりできる跡。変に盛り上がり過ぎたり、大きさがそろっていないと見た目が汚くなり、場合によっては強度が損なわれる。

馬場アイコン

まさに職人という感じですね。

粉すけアイコン

母材にトーチが近づきすぎても離れすぎてもビードが安定しないので、溶接は距離感が大事。トーチを持った手を遠くにやるほど、母材からトーチが離れがち。距離を意識すると安定したビードが出ると思います。

馬場アイコン

でも、溶接する時に付ける面(※)では手元がほとんど見えないですよね?

溶接する時に付ける面……溶接は強い光が出るので、目や顔を守るために遮光ガラスの付いた面を装着します。手に持つタイプと、頭からかぶるタイプがある。
粉すけさんの溶接面

粉すけさんの溶接面

粉すけアイコン

面を付けてしまうとアークが出るまでほぼ何も見えないですね。見えていないので、始まりの位置がズレることもあります。だから、溶接は修正力が大事。母材との距離を意識しながら位置を調整して。音や匂いで判断することもあります。もちろん最初は失敗しますが、場数をこなせばできるようになりますよ。

溶接は修正力が大事

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