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アメリカ獣医行動学会会員、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表。問題行動の治療を専門とし臨床に携わる。
まん丸の目に、ペチャっとした鼻がかわいらしいパグ。一緒に暮らすならもちろん長生きしてほしいですが、実際の平均寿命はどれくらいなのでしょうか? この記事では、パグの平均寿命やかかりやすい病気について、「ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets」代表で獣医師の石井香絵先生先生監修のもと解説します。
目次
- パグの平均寿命、最長寿命は?
- パグの年齢は人間でいうと何歳?
- パグがかかりやすい病気は?
- パグを長生きさせる秘訣は?
- パグの老化のサインは?
- パグがシニア期に入った際のケアは?
パグの平均寿命、最長寿命は?
パグの平均寿命は13~15歳です。一般的に小型犬の平均寿命は12~15歳程度のため、パグも平均的な寿命と言えるでしょう。
一方で、パグは極端に長生きする事例も報告されています。世界のギネス記録として登録されている最長寿命は27歳。2018年に他界したSnookie(スヌーキー)という名前のパグで、南アフリカに住んでいました。
パグの年齢は人間でいうと何歳?
犬は私たちと寿命の長さが異なるため、年の取り方にも違いがあり、犬のサイズによっても年の取り方は変わります。小型犬のパグは、最初の1年でおおよそ人間の15~17歳にあたる年齢になる一方、その後の年齢の変化は比較的ゆっくりです。以下の計算式や表も参考にしてみてください。
小型犬の年齢の計算式
(犬の年齢+4)×4=人間年齢
例:5歳の小型犬であれば(5+4)×4=36歳
パグ | 人間 |
生後1か月 | 1歳 |
生後6か月 | 9歳 |
1歳 | 17歳 |
2歳 | 24歳 |
3歳 | 28歳 |
4歳 | 32歳 |
5歳 | 36歳 |
6歳 | 40歳 |
7歳 | 44歳 |
8歳 | 48歳 |
9歳 | 52歳 |
10歳 | 56歳 |
11歳 | 60歳 |
12歳 | 64歳 |
13歳 | 68歳 |
14歳 | 72歳 |
15歳 | 76歳 |
16歳 | 80歳 |
17歳 | 84歳 |
18歳 | 88歳 |
19歳 | 92歳 |
20歳 | 96歳 |
シニア期は何歳から?
小型犬の場合、一般的にシニア期は6~7歳頃から始まり、人間の年齢でいうと40代前半にあたります。しかし、実はこの年齢だとシニア期に入ったと感じられるサインはほとんど見られません。年齢による変化が行動的にも肉体的にも表れやすくなるのは、一般的に10歳程度から。この時期を過ぎると、以前より寝ている時間が増えたり、運動能力の低下や歩き方の変化などが見られたりするでしょう。
ただし、個々の生まれた環境や飼い主との暮らし、食事、運動などによって、心身の老化速度は変わってきます。「6歳からシニアだから」と焦る必要はありません。愛犬の健康状態を見てシニア期を判断してくださいね。
パグがかかりやすい病気は?
平均的な寿命を持つパグですが、飼育するうえで気をつけるべき病気がいくつかあります。代表的な疾患を見ていきましょう。
パグ脳炎
正式名称は「壊死性髄膜脳炎」。遺伝的な病気で、脳に炎症が生じる病気です。パグでの発症が多く見られることから「パグ脳炎」と呼ばれるようになりましたが、ペキニーズ・シーズー・チワワなど、ほかの小型犬でも見られます。1~3歳で発症し、悪化すると脳が壊死してしまうため、体調の変化に気づいたらすぐに治療を始めるのが大切です。
主な症状は、ふらつき・痙攣発作・視力低下などで、ほかにも旋回運動を行ったり、壁に頭を押し付けたりする行動も見られます。治療では、発作を抑える抗てんかん薬や免疫抑制剤を使用するのが一般的です。遺伝的疾患のため予防法は特にありませんが、パグを家族に迎える際には適切な飼育と管理を行っているブリーダーから譲り受けるようにしましょう。
短頭種気道症候群
マズルが短い短頭種に多く見られる呼吸器障害です。口腔が短い分、喉奥の軟口蓋が長かったり、舌に厚みがあったりなど、さまざまな理由で気道が狭くなるために発症します。リラックスしている状態でも「ブーブー」「ヒューヒュー」といった呼吸音がしたら、動物病院を受診してください。症状が悪化すると元気がなくなり、呼吸困難ののち失神することもあります。
頭部の構造が原因のため、明確な予防法はありません。治療は症状を緩和するための内科的治療、または手術が必要になります。外科治療の場合、鼻の穴が狭くなっている部分(鼻腔狭窄)や、肥大をしている軟口蓋などを切除します。病状を悪化させないためにも早めの治療が大切です。
鼻腔狭窄
鼻腔が生まれつき狭いことで起こる、短頭種気道症候群のひとつです。呼吸がしづらくなったり、鼻から「グーグー」と音が出たりなどの症状が見られます。ひどくなると、うまく体に酸素を取り込めなくなり、呼吸困難を招きます。先天的な奇形のため今のところ予防法はありませんが、鼻腔を広げる手術によって症状を緩和することが可能です。
軟口蓋過長
短頭種気道症候群の一種で、パグのような短頭種に起こりやすい先天性の病気です。「軟口蓋」と呼ばれる鼻腔と口腔を分ける弁が通常よりも長く厚くなることで、呼吸障害が起きやすくなります。気道が狭くなると、運動負荷がかかったときに呼吸がしづらく、暑い日に呼吸困難を起こす場合もあるので注意しましょう。ほかにも、いびきをかく、呼吸する際に「ガーガー」といった音が鳴るなどの症状も見られます。呼吸が苦しそうなときは早めに病院で診てもらうようにしてください。
皮膚疾患
パグは犬種特異性として皮膚がデリケートなため、皮膚病を発症するリスクが高いです。皮膚病の原因はさまざまあり、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、細菌・真菌、ノミ・マダニなど外部寄生虫の感染、ストレスなどが考えられます。そのため、原因に合った治療を行うのが大切です。
原因物質をできるだけ除去する治療法として、家庭環境を清潔にしたり、痒みや炎症をおさえる薬を使ったり、皮膚に合うシャンプー剤で洗浄や薬浴したりする方法があります。皮膚病は悪化すると治りづらくなるので、早めに皮膚専門医に診てもらいましょう。
肥満細胞種
肥満細胞がガン化して悪性腫瘍になる病気で、特に皮膚や皮下組織にしこりとして発見されることが多いです。パグはこのしこりが1ヵ所ではなく複数生じる傾向があり、赤く腫れたり、かさぶたになったりします。
治療法としては抗がん剤を使う、放射線治療を行う、外科的に取り除くなどが一般的。ただし、遺伝的な病気のため、効果的な予防法はいまのところ残念ながらありません。ガンを発症させないためにも、ストレスの少ない生活や良質な食事を意識してあげることが大切です。
外耳炎
パグの耳は垂れ下がっていて通気性が悪いので、外耳炎になりやすい傾向があります。外耳炎になると、耳を掻くしぐさや耳垢が増えたり、赤く炎症したりします。アレルギー・ダニ・細菌・真菌など外耳炎の原因はさまざまあり、治療法も変わるので、耳の異常に気づいたら早めに動物病院で診てもらいましょう。
角膜炎
角膜についた傷から炎症が起こり、痛みが生じる病気です。発症すると、目をしょぼしょぼさせたり、前足で目をこすろうとしたりなどの行動が見られるでしょう。傷が悪化すると角膜が溶け、角膜潰瘍を起こすこともあるため、早期発見が大切です。目にトラブルが生じると、目のサイズや色が変わったり、涙や目やにが大量に出るなどの変化が見られるので、日頃から愛犬の目をよく観察し、異常がないか確認するようにしましょう。
眼瞼内反症
目の構造異常により、まぶたが内側に反転してしまう病気です。遺伝的なもの以外に、後天的な外傷によるまぶたの変型、眼球の陥没、加齢に伴う皮膚の弾力低下などが影響して起こることもあります。涙や目やにが増えたり、反転したまぶたによって逆さまつげになり、角膜炎や結膜炎が起きたりします。
適切な予防法はないので、異変に気づいたら早めに病院へ連れていくことが大切です。何度も目をこすっていたり、目をしばしばさせたりなど、目の違和感が見られないかチェックするようにしましょう。治療する場合は手術でまぶたを整形したり、眼球を傷つけるまつげを抜いたりするほか、目薬で対処することもあります。
膝蓋骨脱臼
膝関節の筋肉や靭帯の形成異常により、後ろ脚の膝の皿が本来ある位置から外れてしまう病気です。小型犬に多く、予防が難しい疾患でもあります。できるだけ二足で飛び跳ねさせず、膝に負担をかけさせない生活を心がけましょう。
水頭症
脳脊髄液の流れに異常が起き、脳室内に過剰に溜まることで、脳を圧迫してしまう病気です。予防法はなく、発症すると、頭が膨らむ、痙攣が起こる、ぼーっとして動きが鈍くなる、目が見えなくなる、などの症状が見られるでしょう。治療する際は、利尿剤やステロイド剤で脳圧を下げる治療が行われます。また、外科治療としては過剰な脳脊髄液をチューブで腹腔に戻す「シャント療法」があります。
パグを長生きさせる秘訣は?
愛犬を健康的に長生きさせる秘訣としては、以下の3つのポイントが挙げられます。それぞれの詳細を見ていきましょう。
皮膚・被毛・耳・歯のお手入れをこまめする
パグは皮膚や耳の病気になりやすい犬種なので、毎日のお手入れが重要です。皮膚のコンディションが悪くならないよう、ブラッシングや体を拭くなど定期的なケアを行ってください。特に顔周りのしわが多い部分は丹念に拭いてあげましょう。
ただし、過剰な耳掃除はかえって耳の中の細菌バランスを壊し、炎症を引き起こすことがあるので注意が必要です。汚れが目立つ時だけ、軽く濡らしたコットンで外耳の内側を拭いてあげましょう。また、パグはマズルが短いため、口腔内の衛生を保つことが難しい犬種です。デンタルシートや歯ブラシを使い、毎日、口内の清潔さを保ってあげるケアも大切です。
肥満にならないようにしっかり食事管理をする
人間と同様に、肥満はさまざまな病気を引き起こす原因になります。特に、呼吸器への負担が大きくなると短頭種気道症候群を起こす可能性もあるので注意しましょう。パグは食欲が旺盛で、太りやすい傾向があります。普段から食事やおやつの量をしっかり管理して太らせないようにしてくださいね。
適度な運動をさせる
屋外での適度な運動は、リフレッシュ効果が高いのでおすすめです。匂いをかがせることは犬にとって最大の刺激となり、脳トレにもつながります。また、散歩は量よりも質に重点をおいて行いましょう。いつもと違う散歩道を選んだり、足触りの異なる道を歩かせたり、散歩の途中で公園に立ち寄ったりなど、バリエーション豊富な散歩を心がけてください。
定期健診を受ける
7歳を過ぎると病気を発症しやすくなるので、半年に1度の目安で動物病院の定期健診を受けることをおすすめします。一般的な血液検査に加え、エコー検査も受けるとより安心でしょう。
パグの老化のサインは?
10歳を過ぎたくらいから以下のような老化のサインがないか、普段から愛犬をよく観察しておきましょう。
白髪が増える
人間は40代を過ぎると白髪が目立ち始めますが、犬も6歳を過ぎた頃から顔周りに少しずつ白髪が目立つようになり、年を重ねると、体や足まわりにも白髪が現れます。毛色の黒いパグであれば白髪とのコントラストがはっきりしますが、フォーンの場合は毛が退色したような印象になります。
皮膚の変化
皮膚も年齢とともに老化のサインが現れます。皮膚や肉球が乾燥しやすくなる、シミやいぼができる、皮膚が薄くなる、などの変化が見られるでしょう。
運動量の低下
視力や筋肉量の低下、関節炎による体の痛みによって、運動量が少なくなる傾向があります。歩き方や姿勢に変化が出やすく、関節を大きく動かして歩けないことからチョコチョコとした歩き方になるでしょう。また、犬の体重のうち30%程度しか支えていない後ろ脚から衰え始めるのも変化のひとつです。さらに、寝ている時間が増えることも運動量の低下につながります。
パグがシニア期に入った際のケアは?
パグは目が突出している分、目を怪我するトラブルが多くあります。シニア期に入ったら、家の中の物の配置を再度確認すると安心でしょう。また、シニアになると腰や足先が冷えやすくなります。足先のマッサージをしたり、腹巻をしたりといった冷え予防もおすすめです。
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