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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
純白の美しい毛と、飼い主と遊ぶことが大好きで愛らしい陽気な性格が魅力のマルチーズ。日本でもよく見かける人気のある犬種です。そんなマルチーズの平均寿命や、かかりやすい病気とその予防方法などについて、chicoどうぶつ診療所の所長で獣医師である林美彩先生に解説していただきました。
目次
- マルチーズの平均寿命、最高寿命はどれくらい?
- 人間でいうと何歳?マルチーズの年齢換算表
- マルチーズのシニア期で気をつけるべきことは?
- マルチーズの寿命を縮めてしまう主な要因は?
- マルチーズがかかりやすい病気は?
- マルチーズを長生きさせる秘訣は?
- マルチーズの食事で気をつけることは?
マルチーズの平均寿命、最高寿命はどれくらい?
マルチーズの平均寿命は12~15歳と言われています。日本では24歳まで長生きした例も報告されていますが、目安としては長く生きても15歳程度と考えるとよいでしょう。
人間でいうと何歳?マルチーズの年齢換算表
人間の年齢の感覚でいると、「愛犬がシニア期に入っていることに気づくのが遅くなってしまった!」ということが起こるかもしれません。まずは、マルチーズの年齢は人間の何歳に相当するのか把握してみましょう。
マルチーズ | 人間 |
生後3か月 | 4歳 |
生後6か月 | 7歳半 |
生後9か月 | 11歳 |
1歳 | 15歳 |
2歳 | 23歳 |
3歳 | 28歳 |
4歳 | 32歳 |
5歳 | 36歳 |
6歳 | 40歳 |
7歳 | 44歳 |
8歳 | 48歳 |
9歳 | 52歳 |
10歳 | 56歳 |
11歳 | 60歳 |
12歳 | 64歳 |
13歳 | 68歳 |
14歳 | 72歳 |
この表のように、マルチーズの加齢はどんどん進みます。目安として7歳くらいからはもうシニア期に入ると言えるでしょう。
マルチーズのシニア期で気をつけるべきことは?
体調変化などが起こりやすいシニア期に入ったマルチーズと一緒に生活していく際に気をつけるべきポイントなどを見ていきましょう。
住みやすい環境をつくる
シニア期に入ったら、マルチーズの暮らす環境を見直してみましょう。滑りにくいコルクマットやタイルなどを敷いて足腰に負担がかからないようにするだけでなく、犬の苦手なタバコのにおいなどが充満していないか、部屋の照明が明るすぎないか、テレビの音量が大きすぎないか、などといったことにも気を配るとよいでしょう。
肥満や運動管理に気を付ける
人間と同じく肥満は万病の元です。適度な運動を行いつつ、適切な食事量を与え、体重管理をしっかり行うことが重要です。
室温に気をつける
マルチーズは体温調節が苦手なため、体の冷えやほてりをチェックしながら室温調整を行いましょう。室温と合わせて、除湿や加湿を行いながら湿度を調整するのもポイントです。
マルチーズの寿命を縮めてしまう主な要因は?
犬の寿命はさまざまな要因により縮んでしまうことがあります。マルチーズの場合、主な要因は次の3点です。
ストレスを溜める
長時間の留守番やスキンシップ不足などはストレスの原因になります。ストレスによって免疫のバランスが崩れると、さまざまな疾患の原因となります。
肥満
体重が大きくなり過ぎると関節への負担が増え、気管が圧迫されることも。その結果、関節系の疾患、呼吸器系の疾患、結石のリスクが高まってしまいます。また、肥満は炎症反応を引き起こすとも言われ、炎症が続くことは腫瘍の発生につながるとも考えられています。
運動不足や過度な運動
運動不足は肥満を招きます。また、肥満によって筋力が低下してしまうので代謝が落ち、体温が下がり、免疫細胞が働きにくくなることでさまざまな疾患のリスクが高くなります。運動不足を解消したいからといって過度な運動をさせてしまうと、逆に関節や心臓への負担につながるので注意が必要です。あくまでも適度な運動をさせるように心がけましょう。
マルチーズがかかりやすい病気は?
マルチーズがかかりやすい病気には、次のようなものがあります。それぞれ症状や予防方法、治療方法を見てみましょう。
流涙症、涙やけ
マルチーズのような「短頭種」は流涙症や涙やけが起きやすいと言われています。これらは涙によって皮膚炎や色素沈着が見られる疾患です。原因は鼻涙管閉塞や眼瞼内反症、異所性睫毛、ストレス、アレルギーなどさまざま。予防する方法としては、皮膚炎を起こさないように涙をこまめに拭くことや、蒸しタオルやマッサージで鼻涙管の流れを促すことなどが挙げられます。基礎疾患がある場合は、その治療を行うことで流涙症や涙やけが落ち着くことがあります。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝のお皿の骨に当たる膝蓋骨が正常な位置から外れてしまう状態のことです。マルチーズのような小型犬では膝蓋骨が内側に外れるケースがほとんどです。原因は膝の骨がはまる溝が浅い場合や、成長期の骨や靱帯、筋肉の形成異常といった先天性のもののほか、交通事故や転落、肥満による影響など後天的原因で起こる場合があります。治療方法は手術や薬の服用、レーザーでの治療などが挙げられます。
甲状腺腫瘍
甲状腺にできる腫瘍のことです。多くは悪性腫瘍で、肺への転移が見られます。甲状腺が腫れ上がることで気道や食道が圧迫され、咳や呼吸困難、えずきなどが起こりやすくなります。ストレスを溜めずに免疫バランスを乱さないことで予防することができます。治療は、外科手術での腫瘍摘出が基本ですが、内服で緩和治療を行うこともあります。
マラセチア皮膚炎
マラセチアは皮膚の常在菌の1つで、免疫バランスが崩れると異常増殖し、皮膚炎や外耳炎などを起こします。ほかにアトピーやアレルギー、脂質代謝異常、甲状腺機能低下症、腫瘍などの基礎疾患が引き金になることも。湿度によっても発症しやすいので、お部屋の湿度管理や、耳周りの被毛のお手入れなどをしっかりと行うことが予防になります。薬用シャンプーを利用して皮膚表面の油脂を落としていくことで状態が落ち着くことがあります。基礎疾患が原因の場合は、その疾患の治療を行いましょう。
心臓病(僧帽弁閉鎖不全)
左心房と左心室の間にある「逆流弁」(僧帽弁)がうまく閉じなくなることで、血液の逆流・乱流が起きる病気で、特にシニア期に発症しやすいと言われています。心臓に負担がかからないよう肥満に気を付け、シニア期には激しい運動は控えることで予防をしましょう。内服薬を用いての治療法が一般的です。
水頭症
脳内の髄液が増えることで、脳が圧迫されてしまう疾患。圧迫される脳の部位によってさまざまな症状が起こります。原因は先天的なものがほとんどですが、ほかにも交通事故や転落などによって頭部が損傷することで発症する場合もあります。投薬での治療が基本となります。
白内障
目のなかにある水晶体のタンパク質が変性し、白く濁ることで視力が衰える疾患。遺伝が関連する「若年性」のほか「老齢性」「外傷性」「続発性」「代謝性」といった種類に分かれます。進行すると視力が低下するほか、緑内障を併発すると痛みが出ることがあります。効果的な予防方法はありませんが、シニア犬の場合は進行スピードを遅らせるような目薬での治療をすることがあります。また、緑内障を併発して痛みなどを伴う場合は眼球を摘出する手術を行うこともあります。
マルチーズを長生きさせる秘訣は?
病気の予防を含め、マルチーズに長生きしてもらうために、飼い主として気をつけるべきことがあります。ここでは特に大事な5つのポイントをご紹介します。
適度な運動を欠かさない
適度な運動はストレス発散や体重管理、筋力維持などへの効果が期待できます。ただし、無理強いしたり、過度な運動はさせたりしないようにしましょう。特に心臓に関する疾患や、関節炎などの体の不調を抱えている場合には注意が必要です。
適切な食事生活を心がける
摂取カロリーが消費カロリーを上回らないようにすることと、脂質が過多にならないようにすることが重要です。詳しい食事の注意点については、次の章で解説します。
ストレスを溜めないようにする
ストレスはさまざまな疾患の要因になり得ます。お部屋の照度やにおい、室温などを見直したり、適度な運動をしたりして、ストレスを溜めさせないようにしましょう。ただし、思いもよらないことが犬にとってはストレスになる場合もあります。犬の変化を見逃さず、ストレスが溜まっていないか日々チェックするとよいでしょう。
予防接種を受ける
予防接種は感染症対策として重要です。ただし、ワクチン接種は体に負担がかかります。狂犬病ワクチンは法律で定められていますので必須となりますが、混合ワクチンは任意のワクチンとなりますので、接種する場合には抗体検査を行うなどして、必要であれば接種するようにしましょう。
定期的な健康診断を受けさせる
血液検査や画像検査では、外見上ではわからなかった疾患を発見できることがあります。シニア犬になってきたら半年に1回程度の頻度で検査を受けるのがおすすめです。
マルチーズの食事で気をつけることは?
最後にマルチーズを長生きさせるために、普段の食事で気を付けたいことをチェックしてみましょう。
良質なタンパク質が主原料であるフードを与える
犬は雑食寄りの肉食動物なので、たんぱく質をしっかり摂ることが重要です。肉類などは脂質が含まれるものがありますが、マルチーズは脂質代謝の異常によるマラセチア皮膚炎などになりやすいため、脂質が控えめのものを選ぶとよいでしょう。
消化に良い食べ物を与える
胃腸への負担は、さまざまな疾患につながります。消化しやすいものを与えて、胃腸の負担軽減に努めましょう。
無添加のフードを与える
必要不可欠な添加物が少し入っている程度であればよいのですが、添加物が大量に使われているものは肝臓などへ負担がかかるので要注意。できるだけ体に負担がかからないようなフード選びを心がけるとよいでしょう。
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