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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
冬にペットヒーターをつけっぱなしにしておくと、愛犬が好きなタイミングで暖を取ることができます。外出中や就寝中など、人が暖房器具を調整しづらいタイミングにはとくに便利です。一方で、飼い主が見守れないあいだに低温やけどや断線などが生じる危険性もあります。愛犬の安全を守るためにも、適切な使い方を学びましょう。
今回は、ペットヒーターをつけっぱなしにするリスクや、安全に長時間使うコツを紹介します。さらに、犬にとって快適な室温や、犬が寒がっているサイン、電気代を節約しつつ適温を保つ方法なども解説しますので、ぜひ冬の室内犬の寒さ対策に役立ててください。
目次
- ペットヒーターはつけっぱなしにしてもいい?
- ペットヒーターをつけっぱなしにするリスク
- ペットヒーターを安全に使うための正しい置き方
- そもそも犬にとって適切な室温とは?
- 犬が寒がっているサイン
- ペットヒーターの電気代を節約するには?
- 冬期はヒーターだけでなく加湿も大事
- まとめ
ペットヒーターはつけっぱなしにしてもいい?
ペットヒーターは犬や猫に適した温度になるよう設定していますので、長時間つけること自体は基本的に問題ありません。しかし、飼い主の留守中や就寝後など、犬がペットヒーターを使う様子を見守れないタイミングでは、つけっぱなしにすることでさまざまなリスクが考えられます。愛犬を危険な目に遭わせないためにも、ペットヒーターの正しい使い方をしっかり理解したうえで、適切に使用しましょう。
ペットヒーターをつけっぱなしにするリスク
飼い主の目が行き届かない状況でペットヒーターを長時間つけたままにしていると、愛犬の健康や電気代などへの影響が考えられるため要注意です。ここでは、ペットヒーターをつけっぱなしにした場合の主なリスクを3つ紹介します。
低温やけど
低温やけどとは、40〜50℃ほどの心地よく感じる温度の熱に長時間接触することによって起きるやけどです。同じ姿勢で眠り続けているうちに、深部まで加温されてしまい、気づかないうちに重症化してしまいます。ペットヒーターだけでなく、電気毛布、ホットカーペットや湯たんぽ、こたつなども原因になるので要注意です。
低温やけどの症状は、次のように段階的に進行します。
• Ⅰ度熱傷:皮膚の表面に赤みが生じて、ヒリヒリと痛みます
• Ⅱ度熱傷:表面に水ぶくれができたりめくれたりして、痛みが強くなります
• Ⅲ度熱傷:皮膚が壊死し、神経が損傷することで、痛みを感じられなくなります
• Ⅳ度熱傷:血管や筋肉、骨などのさらに深いところにまでダメージが及びます
ペットヒーターに寝ている愛犬が舌を出して荒い呼吸をしている場合は、暑さを感じている可能性が高くなっています。すでに低温やけどの症状が起きている可能性もありますので、愛犬の皮膚の状態を確認してみてください。
コードの断線(感電・火事)
ペットヒーターの電源コードを、犬がかじって遊んでしまうリスクがあります。コードを噛む癖は、子犬期にとくに多く見られる特徴です。好奇心が強いうえに、乳歯の生え変わり期でもある子犬は、はじめて見る暖房器具に興味津々で噛みついてしまうかもしれません。
もし、つけっぱなしにしているペットヒーターのコードに噛みつくと、電気が犬の体に流れて感電してしまうリスクがあります。感電するとコードをかじっていた口をやけどしたり、血管が傷んで肺水腫を発症したりするなどの健康リスクに繋がるため大変危険です。
また、ペットヒーターをつけっぱなしにしている最中にコードが断線すると、損傷したコードに電気が流れつづけることになります。断線箇所が発火して火災の原因にもなる可能性があるため、要注意です。
電気代の高騰
ペットヒーターの電気代の目安は、8時間で1.8〜3.5円程度だと言われています。暖房器具の電気代は、エアコンは1時間あたり2.8円~95.5円、オイルヒーターは1時間あたり13.5円~32.4円が目安となっています。こうした真冬には欠かせない暖房器具と比較すると、ペットヒーターの電気代は非常に安いのが特徴です。
しかし、犬に適した室温にするためにはペットヒーターだけでは不十分です。他の暖房器具と一緒にペットヒーターを使うことになるので、人によっては「電気代が高くなった」と感じるかもしれません。
ペットヒーターを安全に使うための正しい置き方
ペットヒーターは正しく使えば、犬が安全に暖を取ることができます。ここでは、ペットヒーターをつけっぱなしにする場合の使い方について紹介します。
ハウスやサークルの下部に固定する
ペットヒーターによる低温やけどを防止するために、飼い主が留守の間につけっぱなしにする場合は、犬に直接触れないように設置しましょう。ペットヒーターに専用カバーがついている場合は、必ずつけて使用します。ハウスの下に固定したり、サークル内に敷いたペットマットの下に敷いたりするのもおすすめです。
「湯たんぽみたいに、ペットヒーターにブランケットを巻いても効果がありそう」と考える方もいるかもしれません。しかし、ペットヒーターが保温性のいいものに長時間触れつづけると、火災の原因になります。毛布やブランケットなどでペットヒーターを包まないようにしてください。
配線カバーでコードを保護する
ペットヒーターの配置は、犬にコードをかじられないよう工夫しましょう。厚みのある配線カバーでコードを保護すると、噛み癖のある犬がかじっても断線しづらくなります。ハウスやサークルにペットヒーターを設置する場合は、コードを外に出すことで噛みつき防止に効果的です。
ほかにも、配線隠し用のアイテムを活用して、コードが犬の手が届かない位置になるよう見直すことで、誤飲・誤食の防止に繋がります。
タイマー機能を活用する
ペットヒーターには、タイマー機能がついている商品もあります。とくに冷え込みやすい夜間や朝方にはオンにして、比較的温かい日中にはオフになるよう設定することで、つけっぱなしによるリスクを避けやすくなるでしょう。
ほかにもペットヒーターには省エネ機能や段階的な温度調節機能など、犬が安全に使えて、電気代も節約できる機能がそなわっている商品が多くなっています。
そもそも犬にとって適切な室温とは?
犬が快適に感じる冬場の室温は、20℃前後が目安です。ただし、寒さに強いか弱いかは、犬種によって異なります。寒いエリアにルーツをもつ犬は比較的寒さに強い傾向にありますが、温かいエリア出身の犬は寒さに弱い子が多くなっています。
しかし、寒いエリアで生まれた犬種だからといって、暖房器具を使わなくてもいいわけではありません。寒さに強いかどうかは個体差がありますし、室内犬として過ごすうちに寒さに弱くなっているケースもあります。大切な愛犬が快適に過ごせるように、寒さを感じているサインに気づいて、室温を調整してあげることが重要です。
犬が寒がっているサイン
犬が寒がっている場合はすぐに気づいて、ペットヒーターをはじめとする暖房器具で快適な室温に調整しましょう。ここでは、犬が寒さを感じているときの特徴的な仕草や行動を紹介します。
体を縮めている・震えている
小さく縮まって動かなかったり、震えていたりする場合は、寒さを感じている可能性があります。そうした仕草をしながら飼い主を上目遣いで見ている場合は、「寒くてつらいから、暖かくしてほしい」と訴えているサインかもしれません。
一方、同様の仕草で怪我による痛みや体調不良を訴えている可能性もあります。暖房をつけても様子が変わらない場合は、怪我や病気の可能性が高いので動物病院に相談しましょう。
水を飲む量が減る
犬は寒さを感じると、水を飲む量が減ることがあります。水が不足すると体温調節がうまくいかなかったり、内臓が正常に働かなくなったりなどの不具合が起きるため、注意が必要です。水があまり減っていないことに気づいたら、室温を調整しながら、新鮮な水を用意して与えるようにしましょう。
ペットヒーターの電気代を節約するには?
ペットヒーターの電気代は比較的安いものの、つけっぱなしにするリスクを考慮すると「ペットヒーターなしでも犬に暖かく過ごしてもらう方法はあるのかな」と悩む人もいるでしょう。ここでは、ペットヒーターの使用を極力避けながら、犬にとって快適な室内環境を作る方法を紹介します。
フローリングをカーペットやマットで覆う
四足歩行の犬は、人間よりも体が床に近いため、冷気を感じやすいのが特徴です。人も冬にフローリングを裸足で歩くと底冷えして思わず肩を縮めてしまうことがあると思いますが、犬にとってもフローリングは体が冷える原因になります。保温性の高い素材を使ったカーペットやマットなどでフローリングを覆うことで、寒さを軽減するのに効果的です。
サーキュレーターを活用する
天井付近にあるエアコンを使って部屋を温めても、体高の低い犬に暖かい空気が届くまでには時間がかかります。そこでサーキュレーターと併用することで、温かい空気を犬のいる床付近まで届けやすくなります。犬だけでなく人の寒さ対策にもなるので、おすすめです。エアコンとサーキュレーターで室内が十分に温まれば、犬はペットヒーターを、飼い主はホットカーペットを、と別々の暖房器具を使う必要がなくなります。結果的に電気代の節約につながるかもしれません。
冬期はヒーターだけでなく加湿も大事
犬にとって理想な湿度は40〜60%ほどです。しかし、1年でもとくに空気が乾燥する12〜2月には、湿度が50%前後まで下がると言われています。エアコンを使うことでさらに湿度が下がるため、40%を下回ることも珍しくありません。湿度が下がると犬の皮膚が乾燥して、皮膚炎をはじめとするトラブルにつながるリスクもあります。そのため、犬が過ごす部屋でエアコンを利用する場合には、加湿器も併用するようにしましょう。
まとめ
快適な室内環境は犬種によって変わってきますが、室温20℃前後、湿度40〜60%が目安です。犬は人間より体と床が近い分、冬はフローロングからの冷気を感じやすくなっています。そのため、マットやカーペットなどでフローリングの熱を和らげたうえで、ペットヒーターやエアコンなどを活用して温めましょう。
ペットヒーターは低温やけどやいたずらによる断線のリスクもあるので、留守中に使用する場合はタイマー機能や配線カバーなどを活用するのがおすすめです。サーキュレーターや加湿器なども活用しながら、犬が過ごしやすい室内環境を整えて寒い冬を乗り切りましょう。