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日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。
愛犬がすやすやと眠っている様子はとても微笑ましいですが、「寝方」に注目したことはありますか? 犬の寝方をよく観察してみると、意外な犬の気持ちが分かるかもしれません。この記事では、犬の寝方から分かる犬の心理や、病気やストレスのサインかもしれない寝相について、動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生監修の元、解説します。
目次
- 犬の寝方で犬の気持ちが分かる?
- もしかして病気のサイン!?体調が悪いときの犬の寝方は?
- 犬が体調が悪いときの寝方をしている場合の対処法は?
- 犬にも睡眠障害がある?
- 犬のあくびといびきにも意味があるの?
犬の寝方で犬の気持ちが分かる?
愛犬の寝方から、感じていることや心身の状態をある程度推察することができます。代表的な例をご紹介しましょう。
丸くなって寝ている
犬は寒さや怖さを感じているときには、体を丸めるものです。不快感がなくてもゆったりと軽く丸まって眠ることはありますが、もし体をこわばらせて寝ている場合には、何らかの不快がありそう。犬が寝ている部屋の気温や音などの環境を気にしてみましょう。
うつ伏せで寝ている
うつ伏せは、すぐに立ち上がれる姿勢です。一時的に休んでいるだけという場合もありますが、何かしらの恐怖があり、緊張した状態かもしれません。
横向きに寝ている
犬にとって、最もリラックスした状態です。
仰向けで寝ている
横向きと同じように、犬がリラックスして安心しているときの態勢です。そのまま寝かせてあげましょう。
もしかして病気のサイン!?体調が悪いときの犬の寝方は?
もしも下記のような寝方、寝ている間の動きが見られたら、念のため動物病院を受診することをおすすめします。
前足を伸ばして腰を上げた状態で寝ている
起きているときの、犬が遊びに誘う姿勢と少し似ています。しかし、膵炎などにかかっていて腹部に激しい痛みがある場合は、座っていても伏せていても辛いため、中腰のような体勢で体をこわばらせることがあります。
このとき、耳が後に傾いているなど顔まわりの表情も緊張していたり、「ハアハア」と短い呼吸を繰り返すパンティングをしていたりするなどのストレスサインも見られる場合が多いです。いつもよりも元気や食欲がなく、じっと休むことができずにウロウロしたりしていたら、すぐに病院を受診してください。
寝ながら激しく震えている
犬も人と同じように、レム睡眠中に激しく体を動かしたりピクピクと動いたりすることがあります。しかし、てんかんなどの脳神経疾患の症状として痙攣している可能性も否定できません。寝ている間に犬が怪我をしないように、ぶつかりそうなものがあったら移動させて落ち着くのを待ちましょう。
あまりに激しく震えていると飼い主も心配になると思いますが、発作の多くは自然に止まります。発作中に体を揺さぶるなどは決してせずに、落ち着いたところで動物病院に連絡して受診をしてください。ただし、発作後すぐ普段通りの状態に戻っていたら、焦る必要はありません。夜であれば、動物病院に行くのは翌日以降でも大丈夫でしょう。逆に、体がぐったりしている、呼びかけに応じないなどの場合は、夜間でも急いで受診するように。
四肢を開いて横向きに寝ている
リラックスしているときにも見られる姿勢ですが、「ハアハア」と浅く短い呼吸をしていたり、落ち着かない様子で移動してフローリングや空調の下に移動したりする場合には暑がっている可能性もあります。部屋の気温が暑すぎないか、ストレスの原因はないかなどを確認してみましょう。
上記のような、普段とは違う寝方が見られた場合、寝方や寝る姿勢だけで心配すべき状態なのかを判断するのは難しいところです。普段の犬の生活や睡眠の長さ、活動性、元気や食欲、表情やさまざまなストレスサインなどと比較して、総合的に評価することが大切です。
犬が体調が悪いときの寝方をしている場合の対処法は?
前章で紹介した寝方を愛犬がしていたら、飼い主は何をするべきなのでしょうか。対処法をご紹介します。
発作の様子を動画に撮る
愛犬が震えていたり、おかしな体勢で寝ていたら、体全体の動きや顔まわりの表情がわかるように動画を撮っておきましょう。動物病院での診療の際に、獣医師に見せることが診察に役立ちます。もし可能であれば、心配な行動が見られる始まりからいつもの状態に戻るまで、体全体と表情、さらに気になる動きの部分全てが入るように撮影できるとより良いです。
犬が苦しそうだからと無理に起こすのはNG!
寝ている愛犬が苦しそうにしていると、すぐに起こしてあげたくなるかもしれません。しかし、痛みや苦痛、発作がある場合には、近づいたり抱きかかえようとしても落ち着くことはなく、普段は温厚な犬でも噛みついてくることもありえます。また、夢を見ているときにも苦しそうに見えることがあり、レム睡眠中に起こすことで犬が攻撃してくることもあるので注意してください。
犬にも睡眠障害がある?
犬の睡眠障害として、まず「睡眠の質と量の低下」が心配されます。睡眠は、動物の生存にとても大事なもの。犬は人よりも睡眠サイクルが短いこと、そして犬ごとの睡眠パターンは人の生活の影響を受けることが知られており 、つまり家族の生活によって犬の睡眠は害されやすく、上質な睡眠が得られないと心身のストレスとなると考えられるのです。
心理的なストレスとしては、不安や恐怖が増えて落ち着かなくなったり、攻撃的になったりする可能性があります。身体的なストレスとしては、元気や食欲が低下し、これが持続することにより免疫力が低下、病気になりやすくなるかもしれません。
家族のメンバーによっても生活パターンが違う家庭が多いと思いますが、その場合、犬は24時間落ち着かない時間を過ごすことにもなりかねません。犬には、安心して快適に休める時間と場所をしっかり用意してあげてくださいね。
一方で、「ナルコレプシー(過眠症)」も挙げられます。睡眠の調整がうまくできず、起きている状態を維持することができない状態です。まとまった睡眠時間をとれないため、感情の動きで発作的にレム睡眠におちいって眠ってしまうなどします。中枢神経の病気ですので、疑いがある場合は獣医師に相談してください。
犬のあくびといびきにも意味があるの?
寝方の他にも、犬のあくびやいびきを心配したことのある飼い主もいるのでは? それぞれからわかる犬の心身の状態もご紹介します。
あくび
犬のあくびは、自分や相手を落ち着かせる行動とされています。もちろん眠いときやリラックスしているときにもあくびをしますが、逆に不安や恐怖などストレスを感じた場合にも見られます。
いびき
リラックスしている状態と言えるでしょう。ただし、肥満や体質、呼吸器系の炎症などによっていびきをかいていている場合には、睡眠の質に影響がある可能性も。もし呼吸が苦しそうであれば動物病院を受診してください。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。
(出典)
The social behavior of free-ranging urban dogs, Applied Animal Ethology, Volume 10, Issues 1–2, March 1983, Pages 5-17