愛犬に合わせて3つの寝心地からカスタムできる！ カインズの新作ペットベッド開発秘話

——二瓶さん、初めまして！　今回、カインズから発売される新製品『中材が選べるペットベッド』について教えてください。まずは開発の経緯をお聞かせいただけますか？

開発責任者、二瓶奈々さん（以下、二瓶）：こちらこそ、よろしくお願いします。

『中材が選べるペットベッド』は、愛犬にとっての睡眠環境の大切さをもう1度見直してみよう！　という想いから開発が始まった商品なんです。

——もう一度見直す？

二瓶：はい。従来のペットベッドは、一つの商品でワンパターンの寝心地しか提供できないものが一般的でした。ワンちゃんのライフステージや好みによって、ベッドの中材を変えようとすると、別の商品を購入する必要があったんです。

でも、ベッドの今回開発した『中材が選べるペットベッド』は、一つの商品で、愛犬にあった寝心地を複数提案できるものにしているんです。

——それは画期的。人間でいうマットレスの材質を好みのものに変えられるのですね。犬用だと聞いたことがありません。開発にはどのくらいかかったのでしょう？

二瓶：はい、その通りです。商品開発には約1年半ほどかかりました。通常1年ほどで新商品を作るので、従来より少し時間がかかりました。

——大変ですね。時間をかけてでも、実現化させたいという想いはどこからきているのでしょうか？

二瓶：私は店舗に勤務していた時代があり、お客さんの相談やご意見をたくさん聞いてきました。

当時お客さんから聞いたお声、「どんなベッドを選んでいいかわからない」「なかなかお気に入りのベッドが見つからない」「これってどうやって洗うの？」など。飼い主さんたちが愛犬のことを考え、寝具について悩んでいる様子を間近で見てきた経験があります。

だからこそ、開発の立場になったときには、「みなさんの願いを叶えたい！」という使命感に駆られていました。

——飼い主さんたちのお悩みに対する、アンサー商品ということですね。

二瓶：はい！　今回の『中材が選べるペットベッド』は、飼い主さんたちからのお声を参考に作った、少し欲張りな商品になっています（笑）

——“欲張りな商品”、とても気になります！　では改めて、新製品『中材が選べるペットベッド』がどんな商品なのか、もっと詳しく教えてください。

二瓶：はい。名前の通り、まず「中材が選べる」という大きな特徴があります。つまり、寝心地を大きく左右する中材のみを、自由に取り換えることができるのです。

二瓶：私たち人間と同じで、ワンちゃんも体調やライフステージによって快適に眠れるベッドは変わります。

——私たちも、赤ちゃんの頃のベッドと、大人になってからや老後のベッドでは全然違いますもんね。大きさだけでなく、柔らかさや質感も異なりますよね。

二瓶：そうなんです。たとえば、ふかふかで柔らかめのベッドは年を取って足腰が弱くなると、起き上がるのが苦になってしまいがちです。また、硬めのベッドで何の問題もなく眠れていたワンちゃんも、高齢期に入って寝ている時間が長くなると床ずれができやすくなる恐れもあります。

だからこそ、ずっと同じペットベッドを使い続けるのではなく、そのときどきに最適な中材を選んであげられるベッドを作りました。

——人間がベッドのマットレスを買い替えるのと同じ感覚で「中材」のみを買い替えればいいのですね。

二瓶：はい。これなら、愛犬の体調やライフステージが変化したタイミングだけでなく、中材が経年劣化でへたってきたときにも気軽に取り換えられます。

また、中材やカバーを替えるだけなので、コスト面で見てもベッドを買い替えるよりお手頃です。

——なるほど！　中材やカバーを適宜取り換えることで、ベッド本体を長く使い続けられるんですね。どんな種類の中材があるのでしょう？

二瓶：①低反発ウレタン、②高反発ウレタン、③3Dファイバーの3種類で、それぞれ次のような特徴があります。

二瓶：低反発ウレタンや3Dファイバーは、柔らかいため身体を面で支えてくれて、体圧分散ができるのが特徴。まだ関節が柔らかく体幹が定まっていない子犬期や、寝ている時間の多いシニア期のワンちゃんにおすすめです。すでに腰痛などの痛みを感じているワンちゃんにも向いています。

高反発ウレタンは、寝返りは打ちやすく蒸れにくいのが特徴。低反発に比べると硬さがあるので、体格が大きかったり、肥満気味のワンちゃんにおすすめです。

愛犬の体調や体格に応じて、柔軟に使い分けてみてください。

——最近は犬の平均寿命が延びて長寿犬が増えていますから、寝たきりに配慮した3Dファイバーの中材は、特に重宝されそうですね。

二瓶：そうですね。シニア期になると食べこぼしや嘔吐、粗相も増えがちですが、3Dファイバーの中材は取り出してシャワーで水洗いすることが可能です。

もちろん専用カバーもご家庭用の洗濯機で洗濯できるので常に愛犬のベッドを清潔に保つことができますし、劣化したら中材と同様、随時新品に取り換えることが可能です。

——ほかには、どんなワンちゃんへの活用方法がありますか？

二瓶：骨の病気にかかりやすい犬種の子にもおすすめしたいです。

——骨の病気、ですか？

二瓶：はい、獣医師の先生曰く、「遺伝的に椎間板ヘルニアを起こす危険性が高い犬種」というのがいて、その子たちは比較的若い年齢でもヘルニアになりやすいため、幼年期から注意が必要なんだとか。（※）

ダックスフンド、フレンチブルドッグ、ウェルシュコーギー、ビーグル、シーズー、コッカースパ二エル、ペキニーズなどが該当犬種です。

発症を予防したり、進行を遅らせたりするサポートの一環として、体圧を分散できる3Dファイバーを使用することを推奨したいです。

（※）出典：相川動物医療センター「胸腰部椎間板ヘルニアについて」https://aikawavmc.com/specialize/?specializeId=6

——中材以外にも商品化するうえで、こだわった部分はありますか？

二瓶：もちろんです！　昨年獣医師・茂木千恵先生にご監修いただきながらペットベッドを開発する中で得た知識を、今回の商品開発のベッド本体の形状や材質の参考にさせてもらいました。

——過去のペットベッド開発での知識が活かされているのですね。

二瓶：はい。身体の一部を載せてリラックスできるL字型のフチ、いわゆる“あごのせ”枕をつけました。

二瓶：そもそも四つん這いで生活するワンちゃんにとって、頭は非常に重いもの。だから、あごのせなどで支える姿勢になれると楽なんだそうです。

——ワンちゃんの“あごのせ”、よく見かけますね。

二瓶：実は、犬は野生時代に外敵から身を守る必要があったため、その名残で眠るときでも常に周りの状況を気にしていると獣医師の先生から聞きました。

だから、あごのせして、飼い主さんや家の中の様子を見ているらしいですよ。

——え、私たちの様子をチェックしていたんですか（笑）！　それは知らなかったです。他にはどんな工夫があるのでしょう？

二瓶：ライフステージが変わっても使い続けてほしいので、高さにも配慮しました。ベッドの厚さはどの中材を入れても約4.5cmに統一。パピーや足の短い犬種のワンちゃん、シニア犬にも無理なく乗り降りできるようになっています。

——高齢になると足を上げるのも大変になってくるので、よさそうですね。材質は、どのような面を考慮されたのでしょう？

二瓶：座面やフチはワンちゃんの「ひっかき」に強い素材を採用し、引っ張りや引き裂き、引っ掻きにも強さも実証済みです。（JIS規格の生地スナッグ強度試験）

また、底地には滑り止めをつけ、ワンちゃんが本能的に寝床を「掘る」行為をしても耐えられる設計になっています。

——犬の寝床を「掘る」行為、見たことがあります！　これでベッドがダメになった方も多いのではないかと思います。

二瓶：そうですよね。この行為も野生時代の習性が大きく影響しているんです。過去に外敵から身を守るために巣穴をほって生活をしていたため、いまでも寝床を「掘る」行為をするワンちゃんが多いです。

そこで私たちは、ワンちゃんたちの安心して寝たい、居心地の良い寝床を作りたいという欲求を妨げないよう、破れにくく、耐久性の強い生地を選びました。

——「掘る」行為を防ぐのではなく、しても大丈夫なように高耐久な生地を選ぶ、ドッグフレンドリーな発想ですね。

二瓶：はい！　何より、ワンちゃんが幸せなことが飼い主さんにとっても嬉しいことだと思うので、ワンちゃんの快適さを第一に考えています。

——愛犬が気持ちよさそうに眠っていると、本当にこっちまで幸せな気持ちになれますよね。ただ、たまに「寝すぎでは？」と心配になることも（笑）。

二瓶：ワンちゃんは人間と比べると睡眠時間が長いので、大丈夫ですよ！

一般的に成犬なら1日平均計12～14時間、パピーやシニアになると計16〜19時間も眠っていると言われています。

二瓶：ただし、人間のように長時間続けて寝るのではなく、数分～数十分間の短時間の睡眠を繰り返すのが、健康なワンちゃんの睡眠スタイル。これも外敵の多い環境で暮らしていた野生時代の習性の名残だと言われています。

——私たち人間にとっては「まとまった時間眠り続けられること＝良い睡眠」ですが、ワンちゃんにとっては違うんですね。

二瓶：そうですね。ワンちゃんにとっては長時間眠り続けることよりも、好きな時にいつでも短時間ずつ眠れることのほうが大切なんです。

——言われてみれば、ワンちゃんがずっと同じところで寝ていることは少ないかもしれませんね。

二瓶：獣医師の先生曰く、ワンちゃんはその時間や環境に応じた寝やすい場所を求めて、移動しているのだそう。そのために、飼い主さんは「愛犬がいつでも自由に安心して眠れる場所を選べる環境」を作ってあげるのが好ましいのだといいます。

——というと、具体的にはどうしてあげるのがよいのでしょう？

二瓶：できれば家の中に生地感や形状の異なるベッドを複数置き、愛犬がその時々で快適な居場所を見つけられるといいと思います。

——ベッドを複数用意する、ということですね。ベッドといえば寝室に1つと考えてしまいがちですが、そこもまた人間の感覚とはまた違う点ですね。

二瓶：そうですね。愛犬にとってベッドは睡眠の場所であると同時に、安心して過ごせる「パーソナルスペース」としての役割も持っています。できればリビングや寝室、飼い主さんと一緒に過ごせる場所に1つずつベッドを置いて、いつでも好きなときに愛犬が眠ったりリラックスしたりできるようにしてあげてください。

——ただ複数置くにしても、ペットベッドはお家の中でも存在感があるもの……。ベッド選びには、自宅のインテリアとのバランスも気になります。

二瓶：はい。それでいうと、カバーのデザインにも自信があります。過去の実績から長年人気が高いベージュカラーを採用しました。

どのお部屋に置いていただいても馴染むのではないかと思います。

——たしかに、落ち着いたカラーならリビングに常時置いておいても、違和感がなさそうですね。

二瓶：私たちはワンちゃんはもちろん、飼い主さんにもフレンドリーなベッドであることを目指しているので、商品化にあたってデザイン性も意識しました。

——飼い主フレンドリー？

二瓶：そうです！　他にも、衛生面に関して。

ペットベッドの悩みの1つに「臭い」の問題をよく聞きます。なので、先ほど申し上げたとおり、このベッドのカバーは取り外して丸洗いできる設計です。気軽に洗えるようにし、飼い主の皆さんにも快適に過ごしていただけるよう配慮しました。

——お！　愛犬の安全と快適さだけでなく、一緒にくらす飼い主さんのことも考えられているのですね。

二瓶：そう思っていただけると光栄です！　この『中材が選べるペットベッド』は、愛犬のQOLを上げることを通じて、飼い主さんのQOLも豊かにしたいという私たちカインズの願いが詰まった自信作です。

本来、愛犬がずっと快適に過ごせる「一生もののベッド」を見つけるのは難しいと思います。でも、この『中材が選べるペットベッド』ならワンちゃんの一生を支える商品になりえるのではないかと思っています。

——愛犬の生涯に寄り添えるベッド、は新しいですね。

二瓶：これまでのペットベッドでは、「マットがヘタったら買い替えて、また別のベッドを探す」が当たり前でした。

しかしその常識を覆し、これからは「中材を変える」という方法で、ワンちゃんが1つのお気に入りのベッドを使い続けることを浸透させていけたら、嬉しいです。

8月19日の発売日以降は、店頭で中材のサンプルを展示しております。ぜひ実際に手に取って弾力や硬さ、質感や手触りなどをお確かめください。