公開
上京どうぶつ病院院長。北里大学出身。日本獣医生命科学大学付属動物病院にて研修後現職。
もふもふとした毛におおわれた犬は、冬でもあたたかそうに見えますよね。でも、生まれた土地や毛の構造から寒さに弱い犬もいます。もし、北海道や東北地方で犬を飼いたいのであれば、寒さに強い犬をお迎えすることをおすすめします。今回は、寒さに強い犬種をたっぷりと紹介します。
目次
- 寒さに強い犬とは
- 寒さに強い大型犬
- 寒さに強い小型犬&中型犬
- 寒さに強い犬種を飼うときの注意点
- 自宅でできる寒さ対策
- まとめ
寒さに強い犬とは
一般的に「猫は寒さに弱く、犬は寒さに強い」というイメージがあると思います。しかし、すべての犬が雪遊びを喜ぶような寒さに強いというわけではありません。犬の被毛には種類があり、それによって寒さに強いか弱いかにわかれると言っていいでしょう。寒冷地出身の犬は、ふさふさとした2重構造の毛に覆われており、寒さに強い傾向があります。今回は、前提として「寒さに強い犬」を「寒冷地生まれの犬」と定義して解説していきます。
寒さに強い犬の特徴
犬の中でも寒さに強いとされる犬種には、どんな共通点があるのでしょうか。ここでは、寒冷地生まれの犬によく見られる特徴を紹介します。
ダブルコート
寒さに強い犬は、基本的に被毛がダブルコートになっています。ダブルコートとは、2重構造の毛が生えている犬のことです。外側には雨や雪をはじく硬くてしっかりとした「オーバーコート(上毛)」が生えており、身体側には保温効果はあって皮膚を守るふわふわと柔らかい「アンダーコート(下毛)」が生えています。基本的に寒冷地生まれの犬種であれば、アンダーコートがしっかりしています。なお、暑い地域で生まれた犬種は、ダブルコートであってもアンダーコートが極端に少なく寒さを感じやすい場合があります。
大型犬
大型犬は、体表の面積に対して身体の体積が大きいため、体温が逃げにくく寒さに強い構造となっています。また、寒冷地生まれの犬種は大型犬であることが多く、寒さに強いと言えます。
寒さに強い大型犬
前述の通り、寒さに強い犬として挙げられる犬種は、大型犬の割合が高い傾向にあります。その中でも代表的な8種類を紹介します。
グレード・ピレニーズ
フランスとスペインの国境である寒冷のピレネー山地で、牧羊犬や護衛犬として活躍していました。その祖先は遊牧民がアジアから連れてきたと言われています。中世にはフランスの城館の番犬として活躍し、ルイ14世やマリー・アントワネットの護衛犬として務めていました。性格はおおらかで穏やか。素直で思慮深い一面も持ち合わせており、子どもとも仲良く遊ぶことができます。群れに対する仲間意識が強いので信頼関係が築けると、家族に愛情深く接してくれます。
グレート・ピレニーズの性格や特徴は?飼い方のコツや寿命、かかりやすい病気などを解説【獣医師監修】|ワンクォール
ゴールデン・レトリーバー
イギリス生まれで、鳥猟犬として冷たい水のなかで活動していました。そのため毛が長く、防水性に優れています。性格は穏やか。人と一緒に作業をすることが好きで学習能力も高いので、今では盲導犬、介助犬、セラピードッグなどとして活躍しています。活動することが好きなので、一緒にドッグスポーツやアウトドアができると、お互いにとって楽しい暮らしができるでしょう。
ゴールデン・レトリーバーの性格や特徴は?飼い方のコツや平均寿命、注意する病気などについて解説【獣医師監修】|ワンクォール
ラブラドール・レトリーバー
カナダのニューファンドランド島ニューファンドランド・ラブラドル州生まれの犬種です。毛が短いので寒さに強そうには見えませんが、下毛と上毛からなるダブルコートの犬です。運動能力が高くて賢く、知的好奇心が旺盛で、子犬の頃は家の中にあるものを何でもおもちゃにして遊ぶ傾向があります。成犬になると温和で優しい性格になっていきます。
ラブラドール・レトリーバーの性格や特徴は?飼い方のコツや注意点について解説【獣医師監修】|ワンクォール
サモエド
ロシアの北部シベリア生まれの犬種です。極寒のツンドラ地方で遊牧民族であるサモエド族と暮らし、カモシカや魚を捕まえたり、ソリを引いたりといった仕事をしてきました。もふもふとした毛や、上向きの口角から笑っているように見える「サモエドスマイル」が人気です。性格は穏やかで人懐っこく、子どもとも一緒に遊んでくれる飼いやすい犬種です。
サモエドの性格や特徴は?飼い方のコツやしつけを始める時期、平均寿命などを解説【獣医師監修】|ワンクォール
シベリアン・ハスキー
チームで作業をするソリ犬として活躍するエスキモー犬の一種で、雪の多い極寒の地で暮らせるように交配されました。アンダーコートは密集して厚みがあり、オーバーコートは短毛で雪の塊がつきにくい構造になっています。学習能力が高く、他の犬や人と仲良くなるのが得意な犬です。
【獣医師監修】シベリアン・ハスキーはどんな犬?性格・特徴・飼いやすさ、しつけのコツやかかりやすい病気などについて解説|ワンクォール
セント・バーナード
スイスの国犬です。スイスとイタリアの国境にある僧院(聖ベルナール)で飼育され、17世紀頃から救護犬として活躍していました。僧院周辺の峠は交通の要所ではありましたが、冬は-30℃で積雪量はなんと20mに及びます。そこで多くの遭難者を救出したのがセント・バーナードでした。セント・バーナードの名前は、聖ベルナールを英語読みしたものです。自分で判断する知性があり、がまん強くて優しい性格をしています。無駄にほえたり、攻撃したりすることも少なく従順な傾向にあります。ただし、体重が100kgを超えることもある最大級の犬なので、子犬のうちにトレーニングをすることが重要です。
セント・バーナードの性格や特徴は?飼い方やしつけのコツ、寿命やかかりやすい病気などについて解説【獣医師監修】|ワンクォール
秋田犬
東北生まれの日本犬で、ハンターと一緒に、熊、イノシシ、鹿を狩る仕事をしていました。警戒心の強いタイプの犬なので、子犬のころから人に慣れさせてしっかリトレーニングすることが大切です。また、日本犬唯一の大型犬で運動量が豊富ですので、たくさん運動させてあげる必要があります。
秋田犬はどんな犬?性格や特徴、飼い方のコツや注意点などについて解説【獣医師監修】|ワンクォール
北海道犬
大型の野生獣に立ち向かう獣猟犬として活躍していました。某通信会社のTVCMに登場したお父さん犬の犬種です。性格は勇敢で闘争心や警戒心が強めです。飼い主には忠実ですが、他の動物や人には敵対心を見せることもあるため、子犬の頃から他の動物や人に慣れさせることが大切です。
寒さに強い小型犬&中型犬
小型犬や中型犬の中にも、比較的寒さに強い犬種がいます。ここでは日本でも親しまれている犬を含めた、寒さに強い犬種を5種類紹介します。
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
12世紀頃に、現在のベルギー北部に起源を持つフラマン人の織物職人がウェールズのペンブロークシャー地方に移住したときに連れてきた犬が由来と言われています。牧畜犬として牛や羊を追い集める仕事をしていました。イングランド国王のヘンリー2世(在位1154年~1189年)がペットとして飼い始め、エリザベス女王も飼っていたことからイギリス王室の犬として有名になりました。天真爛漫で友好的な性格で遊びが大好きです。
【獣医師監修】柴犬はどんな犬?性格や飼いやすさ、しつけのコツや特徴について解説|ワンクォール
柴犬
日本犬の中でも人気があり、猟犬として活躍していた犬種です。今は屋内で飼われることが一般的ですが、長い間は屋外で番犬として飼われていました。性格は勇敢で警戒心も強め。自立心が強く、ベタベタされるのはあまり好きではないようです。
【獣医師監修】柴犬はどんな犬?性格や飼いやすさ、しつけのコツや特徴について解説|ワンクォール
ミニチュア・ダックスフンド
ドイツ生まれで穴の中に入るアナグマの猟犬として活動していました。性格はいたずら好きで活発。自立心や縄張り意識が高く知らない犬に向かって吠えることがあります。一方で、温和な性格なので多頭飼育されることも珍しくありません。
ミニチュア・ダックスフンドはどんな犬?種類や性格・特徴・飼いやすさやしつけのコツ、かかりやすい病気などについて解説【獣医師監修】|ワンクォール
ポメラニアン
ドイツ生まれで、ポメラニアンの先祖であるスピッツを品種改良で小型化したのがポメラニアンです。17世紀頃からポメラニアンの人気がヨーロッパの王族を中心に広がり、とくにヴィクトリア女王は小型のポメラニアンをこよなく愛していました。性格は活発。運動量も必要なので毎日の散歩は欠かせません。吠えやすい一面もあるので、子犬のうちからトレーニングをして人や他の動物に慣れさせることが大切です。
ポメラニアンの性格と特徴は?飼い方や寿命、気をつけたい病気について解説【獣医師監修】|ワンクォール
ジャック・ラッセル・テリア
イギリス生まれで、キツネ狩りのための狩猟犬として活動していました。小さい体から想像できないほど活発で負けず嫌い。大型犬並みに体力と運動量があります。狩猟犬のDNAが色濃く残っており、動くものに強く反応。子どもや他の犬を追いかけるので、呼び戻しのトレーニングが必要です。獲物を見つけたときに吠えて飼い主に知らせていたので吠えグセがある犬も少なくありません。初心者にはトレーニングが難しいと言われています。
寒さに強い犬種を飼うときの注意点
寒さに強い犬は分厚い被毛で覆われているからこそ、換毛期や夏季のお世話は入念に行う必要があります。ここでは、寒さに強い犬種を飼う上で抑えておきたいポイントを紹介します。
抜け毛が多く毛玉ができやすい
ダブルコートの犬種は抜け毛が多いので、年間を通して毎日ブラッシングをしなければ毛玉ができてしまいます。特に抜け毛の量が増える換毛期は、何度ブラッシングをしても終わりが見えないほど毛が抜け続けるでしょう。ブラッシングを怠ると抜けたアンダーコートがオーバーコートに絡まって毛玉ができやすくなります。
この時期は、シャンプーの頻度を増やして抜け毛を落とすのも良いでしょう。ただし、回数が多すぎると皮膚が乾燥しますので、多くても月に3回までにとどめておくことをおすすめします。
夏は長時間の散歩を避ける
寒さに強い犬は、保湿性と保温性に優れた毛をまとっているので、暑さには弱い傾向があります。日本の平均気温も上昇し続けていますので、熱中症にならないように体調と温度管理に気をつけるようにします。梅雨や夏場は常に水が飲めるようにして、エアコンで涼しい環境をつくってあげましょう。
また、冷感マットなどの冷感グッズを活用すれば、気持ちよく休憩や睡眠ができます。なお、夏の長時間の散歩も避けたほうが良さそうです。散歩する場合は、できるだけ直射日光の当たらない場所や涼しい時間帯を選んで歩いてください。接触冷感生地の服を着せることもおすすめします。
自宅でできる寒さ対策
寒冷地生まれで寒さに強い犬とされている犬種でも、あたたかく快適な室内の環境で飼っている場合は、寒さへの耐性が弱まることがあります。もし、部屋の隅で体を小さく丸めて寝ていたり、小刻みにブルブルと震えていたり、毛布や布団の中から出てこなかったり、水を飲む量が減っていたりした場合は、寒がっているサインかもしれません。飼い主の身体にくっついている場合は「甘えん坊でかわいいなあ」と思うかもしれませんが、寒さを感じている場合があります。
こうしたサインが見られたら、ケージに毛布を入れて床からの冷気を遮断したり、ペット用ヒーターや電気カーペットを用意したりしましょう。エアコンを使用する場合は、暖かい空気が上に行き、冷気は床に溜まりますので、サーキュレーターなどを使って空気を循環させましょう。また、コードを噛んでしまう場合は、湯たんぽがおすすめです。散歩に行く前には室内で一緒に遊んで身体を温めてから外出するのも良いでしょう。
まとめ
今回ご紹介した犬種は、寒冷地で生まれた寒さに強い犬ですが、室内で飼うことで寒さに弱くなっている可能性があります。寒さ対策を何もしていないと病気になってしまう可能性がありますので、ブルブルと震えていないかなど愛犬の様子をよく観察して対策をしてあげてください。