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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
スイスの山岳救助犬として有名なセント・バーナード。超大型でがっしりとした力強い見た目とその賢さから、家庭犬としても世界中で愛されています。そんなセント・バーナードについて、性格や飼う方のコツ、注意点などを、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- セント・バーナードってどんな犬?
- セント・バーナードの平均的な体高・体重は?
- セント・バーナードの平均寿命は?
- セント・バーナードの毛色の種類や被毛のタイプは?
- セント・バーナードの外見や吠え声の特徴は?
- セント・バーナードの性格の特徴は?オスとメスで性格の違いはあるの?
- セント・バーナードを飼うのに向いている人は?
- セント・バーナードを飼う上で気をつけるべきことは?
- セント・バーナードの日常のお手入れで気をつけることは?
- セント・バーナードのしつけを始める時期は?
- セント・バーナードの食事の注意点は?
- セント・バーナードを散歩させる際に気をつけるべきことは?
- セント・バーナードにおすすめの遊びやトレーニングは?
- セント・バーナードがかかりやすい病気は?
セント・バーナードってどんな犬?
11世紀ごろ、スイスとイタリアの国境にあるグラン・サン・ベルナール峠で、大型のマウンテンドッグが旅人や巡礼者用の宿坊で護衛と保護をしていた記録があります。これがセント・バーナードの最初の記録ではないかと考えられています。
ほかにもセント・バーナードは雪や霧による遭難者の捜索に同行し、救助を行ってきました。とくに有名な「バリー号」(1800-1814年)は、アルプス山中で15年間に40名以上の人命を救ったそうです。そんなバリー号の活躍などから世界中で愛されてきたセント・バーナード。今では、スイスの国犬であり、日本でも東京消防庁各救助隊のシンボルとなっています。
セント・バーナードの平均的な体高・体重は?
セント・バーナードは超大型犬であり、平均的な体高はオス70~90cm、メス65~80cm。体重の平均はオス65~80kg、メス55~70kgです。
セント・バーナードの平均寿命は?
セント・バーナードの平均寿命は8~10歳。大型犬のなかでは平均的な長さの寿命と言えます。
セント・バーナードの毛色の種類や被毛のタイプは?
被毛が短いショートヘアードと、長めのロングヘアードの2種類があり、いずれもダブルコート。毛色はホワイトの地色に入る「まだら」部分の色により、次の3種類に分かれています。
毛色の種類
ホワイトの地色×レッドブラウン(またはブランケット)
セント・バーナードで一般的な毛色。まだら部分が赤茶色です。胴体にはマントのように背中から広く赤茶色の被毛が覆います。
ホワイトの地色×レッドブラウンとブリンドル
赤茶色のまだら部分に「ブリンドル」と呼ばれる虎のような模様が入ります。
ホワイトの地色×イエロー寄りのブラウン
まだら部分が黄色っぽい茶色になった、薄い色素の毛色。
セント・バーナードの外見や吠え声の特徴は?
大型犬で筋肉質のがっしりとした体格。オスのほうがメスより一回りほど体が大きくなる傾向があります。しっぽは太く長めで、ふさふさとした被毛に覆われています。
印象的なのは、大きめの垂れ耳と、口角まで垂れ下がった唇。皮膚が伸びやすく、唇だけでなく全身の皮膚も垂れ下がる余裕があります。
吠え声は太く大きめ。吠え癖があると、近隣と吠え声トラブルになる心配があるので注意が必要です。
セント・バーナードの性格の特徴は?オスとメスで性格の違いはあるの?
個体差はありますが、基本的には穏やかで友好的。動きは素早くなく、おっとりとした性格です。また、遭難者救助など使役犬として活躍した歴史があるため、責任感が強く、与えられた仕事に対して自分で考える知能を持ちます。警戒心が強い一面もあるので、早めの社会化が必要です。
オスとメスを比べると、未去勢のオスは特有の攻撃性などを発揮することも。体格が大きい分、そうした時の攻撃威力はメスより大きくなります。
セント・バーナードを飼うのに向いている人は?
性格が穏やかという面では、セント・バーナードは飼いやすい犬種です。ただし、しつけや体力発散への向き合い方などは小型犬に比べると難しい面も。とくに、犬を飼うのが初めての場合は、それ相応の勉強と覚悟が求められるでしょう。
具体的には、次のような条件を満たせる人が、セント・バーナードを飼うのに向いています。
室内の広い飼育スペースが作れる
体が大きいので、飼育スペースは広め。身動きがあまり取れないと床擦れの心配が出てきます。
暑さ対策の温度管理がきちんとできる
寒い山間部に暮らしていた犬であることから、高温多湿な日本の夏は苦手です。熱中症を防ぐ温度管理が求められます。
散歩や運動の時間を確保できる
大型犬なので、散歩や運動時間をしっかり確保し、健康維持や体力発散をしましょう。
大型犬を制御できる体力と技術に自信がある
攻撃するつもりがなくても、大型犬ゆえに、少し触れただけで周りの人や犬を傷つけてしまうことも。飼い主が制御することが大事です。
大きめの車を持っている
急な体調不良や高齢になってからの介護などでセント・バーナードが歩けない時は、病院へ乗せていける大きめの車が必要です。
被毛のお手入れを苦に感じず、楽しんでできる
体格の大きさからも、抜け毛の量は多い犬種です。皮膚や被毛をこまめにチェックし、衛生的に管理しないと皮膚炎などにつながりやすくなります。
セント・バーナードを飼う上で気をつけるべきことは?
暑さに弱いこと、大型犬であることなどを踏まえ、次のようなことに気を付けるとよいでしょう。
日本の湿気の高い夏は苦手
夏は熱中症になりやすいので、生活環境を涼しく保つ工夫をしましょう。
散歩は1日1時間以上しっかりと
ただし、肥満傾向や関節の痛みがある場合などは、長時間の運動が負担になることがあるので、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
食費、医療費、老犬介護費などの金銭的負担がある
食費や医療費は、犬の体の大きさに比例してかさみます。介護の際も、飼い主の負担が大きい上に、獣医師や施設などのサポートを伴うと金銭的な負担も大きくなります。
ドアや柵は壊れないものを用意する
力強く、破壊力がある犬種です。ドアや柵は大型犬用や特注品が必要になるでしょう。
セント・バーナードの日常のお手入れで気をつけることは?
セント・バーナードの日常のお手入れは、次のようなポイントに気をつけましょう。
ブラッシングは毎日。換毛期には1日2回
1年を通して抜け毛量が多く、蒸れやすい傾向があるので、ブラッシングはこまめに行いましょう。シャンプーは1か月に1回ほど行うのがおすすめです。トリミングは不要ですが、毛量が多いなら夏はサマーカットを検討してもOK。ただし、毛をカットすると日光が肌に直に届き、より暑く感じるかもしれません。トリマーさんによく相談してみましょう。
よだれ掛けを必要に応じて
口を開けて呼吸するため、よだれを垂らすことが多い犬種です。よだれによる口周りの皮膚炎や被毛の汚れが気になる場合は、よだれ掛けを装着してもよいでしょう。
垂れ耳のため、耳が汚れやすい
夏は耳周りが蒸れて細菌が繁殖し、外耳炎を起こすことも。こまめに掃除し、臭いなどに変化を感じたら動物病院を受診しましょう。
セント・バーナードのしつけを始める時期は?
警戒心が強く、知能の高いセント・バーナード。体が大きくなると引っ張って制御するのが困難になるので、しつけは子犬期から始めるのがおすすめです。噛むなど「してはいけないこと」をした場合のしつけも早めにすることで、大きな事故を防ぎやすくなります。
しつけのポイント
賢いがゆえの頑固さがあるので、社会性を獲得させる
子犬のうちから周りの環境音や人などに慣らして社会化を行いましょう。飼い主だけでは難しいなら、トレーナーなどプロの方にアドバイスを仰ぐのもよいでしょう。
リードの引っ張り癖や人に飛びつくのを防止する
友好的な性格のため、うれしくなって飛びついてしまうことが。体が大きいために相手が怪我をする危険があるので、飼い主はそれを制御する方法を身に付けておきましょう。
壊されたくない物は犬の手が届く範囲に置かない
顎が大きく、力強いので、おもちゃとして遊んだだけで物を壊してしまうことがあり得ます。大切な物や危険な物は手が届く範囲に置かないようにするのがおすすめです。
大型犬はトイレを失敗しやすいので、根気よくトレーニングを行う
体の大きさゆえにトイレシーツからはみ出すなど、トイレを覚えるのが難しいケースも。声かけをしたり、失敗時の対処を家族で徹底したりして根気よくトレーニングをしましょう。
セント・バーナードの食事の注意点は?
大型犬のセント・バーナードは、食欲旺盛で肥満になりやすいもの。しかし、肥満になると体が大きいため関節へ負担がかかりやすくなります。肥満にならないよう、きちんと制限しながら食事を与えるとよいでしょう。また、大型犬がかかりやすい「胃拡張・胃捻転症候群」の予防のため、食後の運動はしないこと、早食いを避けることも大事です。
セント・バーナードを散歩させる際に気をつけるべきことは?
散歩は1日2回、1回につき1時間ほどが理想的です。ただし、体格や体質によっては、歩き過ぎが股関節への負担になることも。愛犬の散歩はどのくらい行うのがよいのか、かかりつけの獣医師と相談してみるとよいでしょう。
また、暑さに弱いため散歩中は熱中症に注意が必要です。とくに夏は早朝にするなど散歩の時間帯を工夫しましょう。また、とっさに大きな力を出した時、飼い主が引きずられたり、他の犬や飼い主に怪我をさせたりする恐れがあります。いつでも制御できるよう気を抜かずに散歩をしましょう。
セント・バーナードにおすすめの遊びやトレーニングは?
セント・バーナードは次のような遊びをすると楽しんでくれるかと思います。それぞれの遊び方のポイントを見ていきましょう。
ボール遊び
知能が高い犬種なので、ボール遊びは方法を上手に教えると楽しんでくれるでしょう。方法を教える時はまず、飼い主とボールを持って一緒に過ごし、その時間をだんだん長くして、最終的にボール遊びへつなげるのがコツ。いきなりルールなしにボールを投げるのではなく、飼い主との信頼関係を築き、ご褒美などで「ボール遊びは楽しい」と教えてあげるようにしましょう。
ドッグラン
広い場所での運動は体力発散にぴったり。週1回や月1回など定期的に連れて行くと喜ぶかもしれません。ただし、大型犬は怖がられる場合があるので、マナーを守り、大型犬が集まる場所を探すなどの配慮も必要です。
引っ張りっこ
友好的なセント・バーナードにとって、引っ張りっこは良いスキンシップに。体のいろいろな場所をなでてスキンシップに慣れ、飼い主との絆が深まったら、引っ張りっこに挑戦してみると良いでしょう。
セント・バーナードがかかりやすい病気は?
最後に、セント・バーナードがかかりやすい病気をご紹介します。気づいたら速やかに動物病院を受診するようにしましょう。
股関節形成不全
先天的な股関節の形状変化により、歩いたり座ったりした時に違和感や痛みが生じます。歩き方や座り方の変化から早期に発見できるので、普段から観察する習慣をつけましょう。痛み止めなど投薬や外科的な処置などで治療します。
前十字じん帯断裂
膝関節を固定する「前十字じん帯」の断裂。主な原因は加齢による体重増加や運動負荷の積み重ねです。足を上げたままにするなどの行動や、歩き方の変化が見られたらこの病気のサイン。治療は外科的な処置が一般的です。
悪性リンパ腫
異形のリンパ球が増殖する悪性の腫瘍。できた場所により症状も異なります。リンパ節の腫れなどから発見されることが多いでしょう。根治は難しいとされ、治療は段階や症状により緩和ケアを行います。
胃拡張・胃捻転症候群
食事時などに大量のガスを一緒に飲み込むことで、胃が拡張し、ねじれてしまう病気。実は命にかかわる危険な病気です。うつぶせのまま動かない、お腹が膨満する、といった様子があれば要注意。
拡張型心筋症
心臓の血液を全身に拍出するという機能が作動しなくなることで、うっ滞や循環不全などが起こります。原因は遺伝や代謝の変化など。咳が出たり、疲れやすくなったりする症状が現れます。
熱中症
寒い地域で暮らしていた犬種のため、熱中症になりやすいです。暑い季節でも過ごしやすいよう、環境を工夫してあげましょう。