LEDとは違う本物のネオンサインに心奪われる理由とは。ネオン職人・高橋秀信
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株式会社ザイエンス 技術開発部 取締役部長 須貝与志明さん(左)、技術開発部 サブマネージャー 渡辺大輔さん(右)
「防蟻」という言葉がある。「ボウギ」と読み、アリではなく、シロアリによる被害を防ぐことを主に意味する。そのシロアリの大好物は木材。知らぬ間に家屋に忍び込み、住宅の土台や柱を食い荒らす。防蟻の必要性は建築基準法にも定められている。
株式会社ザイエンスは、防腐や防蟻処理を施した木材を製造・販売し、防蟻工事も請け負う企業だ。創業は大正11年。昭和・平成の時を経て、令和4年となる2022年には、ついに100年企業の仲間入りを果たす。
その長い歴史をひも解くと、生活との密接な関わりを感じずにはいられない。ザイエンスは暮らしの基盤となる家を守るため、防腐・防蟻処理をした建材のみならず、家庭用の防蟻材『BL-24』も開発。使い方は、防蟻木材の入った段ボール箱を土に埋めるだけ。それだけでシロアリ駆除が可能となる。圧倒的な手軽さが受けているが、手軽さの背景にこそ、防蟻の必要性が隠れている。
なぜ、家庭レベルの防蟻が必要なのか。
答えてくれたのは、技術開発部に身を置き、家庭用防蟻材『BL-24』の開発に従事した須貝与志明取締役部長、渡辺大輔サブマネージャーのおふたりだ。いわく、ザイエンスの歴史は日本の発展とともにあり、発展の先に、家庭用防蟻材の開発がある。
「創業当時の大正11年は、工業化の真っ只中。そのために急増したのが電柱ですが、かつての電柱は木製。線路に敷かれた枕木も、すべてが木製でした。当然、放っておけば腐ってしまいます。腐らずに長持ちする防腐処理木材の製造が、私どもの出発点です」(須貝部長)
工業化の著しい時代。通信や鉄道、電気を支えるインフラ整備の需要増加を受け、木材に防腐効果のある薬剤を含浸させる企業として、ザイエンスは創業。薬剤含浸のための設備を注薬缶というが、創業から6年後の昭和3年には「東洋一の大きさ」と謳われた注薬缶を完成させ、事業を拡大していった。
防蟻処理を施さない木材(右)はシロアリに食い荒らされ、内部が空洞化。強度の劣化は明らかだ
電柱や枕木の防腐処理からスタートしたザイエンスは、次に木造住宅のなかでも腐りやすく、シロアリに侵されやすい床下部材、特に土台の防腐・防蟻処理の開発に着手。とりわけ日本が高度経済成長に沸いた昭和45年前後は、住宅の着工数も右肩上がりの時代だ。住宅の着工数が増えれば、その耐久性が強く求められるのも当然の流れだろう。
ザイエンスはこうした時代背景のもと、防腐・防蟻処理をした建築用部材の製造・販売に注力することとなる。さらに住宅をシロアリの被害から守るためには、シロアリ独自の対策が必要なことにも着目し、住宅の防蟻事業をも推し進めていったのだ。
「日本が豊かになるにつれ、変化したのが住宅に対する価値観です。求められたのは、より安全に美しく、快適に暮らせる住まい。耐久性を高めるにも、家の美しさを保つにもシロアリ対策は不可欠ですが、機密性に優れた現代の住宅は、温暖な場所を好むシロアリにとっても格好の環境です」(渡辺サブマネージャー)
防蟻事業拡大の背景にあったのは、日本の豊かさ。大切なマイホームに快適に、長く住みたいという人々の願いもさることながら、とりわけ住宅の耐久性に関しては、国が主導するところ。だからこそ、防蟻の必要性が建築基準法に定められている。
しかしながら、法に定められているのは建築時のみだ。高い防蟻効果を持った木材で家を建てても、その効果は永遠ではない。住宅の竣工から5年を目安にシロアリ駆除を行うのが望ましいが、重い腰が上がらないのが人間の性。この腰を上げてもらい、マイホームを長く健全な状態に保つには、住む人自らができる、手軽な対策が必要となる。