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日本一「ジャッキ」を大量に使う。家を動かす曳家職人の話

2020.09.06

調べてみた

岡本 直也

岡本 直也

曳家岡本の親方。かつて昭和南海大地震からの住宅復興のために興隆した土佐派の曳家技術の正統継承者。現代的な重力とび職から派生した曳家とは異なる繊細さが伝統構法や宮大工からの支持を集める。代表例は川越市うなぎ屋「小川菊」、石巻市雄勝町「モリウミアス」等。東日本大震災時の体験を書いた「曳家が語る家の傾きを直す沈下修正ホントの話」(主婦と生活社)、また建築系マンガ「解体屋ゲン」に実在の人物ながらセミレギュラー出演中。

日本で一番、ジャッキを使う「曳家職人」とは?

こんにちは。カインズ市原店を愛用している職人の岡本です。

私はもう生まれた時から、自宅の土間に「建築ジャッキ(通称きりん)」が並んでいる家庭で育ったため、赤ん坊の頃からジャッキの頭に乗って遊んでいました。

生家のなりわいは代々、曳家職人。曳家とは、古民家やお城などの建築物を、その形のままでほかの場所へ移動する工事のこと。東日本大震災からの住宅復興でも注目された伝統工法です。

建築ジャッキを使った現場

古民家に建築ジャッキ「きりん」を掛けている私

曳家工事では、下の写真のようにジャッキを大量に使い、古民家を少しづつ持ち上げていきます。

古民家の多くは不同沈下を起こしているため、本格的に改修する場合、このようなジャッキアップの後、基礎を造り替える必要があります。

ジャッキで古民家を持ち上げ、基礎を造り替える

そして、レールを古民家の下に敷き、家をワイヤーで曳いて(引っ張って)、所定の位置へと移動させます。

曳家のレール

横から見ると、電車の線路のようになっています。

いざ古民家を移動させる段階になると、その物珍しさから、近所の方々が見物に集まったり、テレビの取材が来たりすることがよくあります。

曳家工事の現場、ワイヤーを巻いて古民家を移動させる

さてさて、このような伝統技術を私は継承したわけです。

曳家技術というのは、宮大工から支持されるような繊細な伝統構法で、ひとつの工事現場で大量のジャッキを使用します。だいたい40坪の古民家の工事ですと、通常の業者さんなら大型オイルジャッキ30台くらいのところを、私の場合、約300台のジャッキを用います。その数、10倍。

なぜ、そんなに大量のジャッキを使うかというと、理由は超簡単です。つまり、たくさんのジャッキを掛けたほうが建築物の荷重が分散し、お家もそれだけ傷まないからです。手間を惜しまないのが、曳家職人としてのプライドでもあります。

──ということで、おそらく私は、日本で一番、ジャッキを使っている曳家職人。まずまず、ジャッキの取り扱いに詳しいほうなので、ちょっとジャッキの使い方や選び方について、言いたいことを自由に書かせてもらいます。

安いオイルジャッキは危険と隣り合わせ

ジャッキにもたくさんの種類があります。建築・土木・自動車・機械など、用途もさまざまです。

建設関係者であれば、「ジャッキ」という言葉を聞いて真っ先に思い浮かべるのは、オレンジ色のオイルジャッキ(油圧ジャッキ)だと思います。「ジャッキ=オレンジのボトル」というイメージが強いですよね。

私が普段よく使っているオイルジャッキは、マサダのこちらです。

オイルジャッキ(マサダ20トン)

マサダ20トンオイルジャッキ

われわれの中でもっとも一般的なオイルジャッキは、なんと言っても、このマサダ20トンオイルジャッキ。現場ではよほどのことがない限り、大きなジャッキは使い勝手が悪いので、このサイズのものが好まれます。

実際の工事現場で多用している、マサダ20トンオイルジャッキ

実際の工事現場で多用している、マサダ20トンオイルジャッキ

このオイルジャッキの値段は、ホームセンターで買うと1台30,000〜40,000円前後します。でもネット通販では、同じ性能が書かれた20トン耐荷重のオイルジャッキが、送料込みで1/10ほどの価格で販売されていることもあります。

「なんだ〜、ホームセンターぼったくりじゃないか!」

そう思いますか? まっ、思うかも知れません。ですが、さまざまな種類のジャッキを扱っているプロの曳家職人からすると、中国製の安いオイルジャッキをお薦めすることは到底できません。

そもそもオイルジャッキは、負荷が掛かりすぎるとパッキンが破れて、ハンドル部分からオイルが吹き出し始めます。もちろん、それまで支えていた荷重は一気に持ちこたえられなくなるので、そのようなジャッキを使うのは非常に危険です。

ですので、プロならば(素人でもそうするべきですが)オイルジャッキだけでジャッキアップ作業をする場合、万が一に備えるべきです。具体的には、5mm単位くらいで、ジャッキのすぐ近くにスペーサーを入れてゆきます。スペーサーは、どこかで余ったコンパネの端材とかでも大丈夫。10cmを越えたら、角材と取り替えて、またその上にコンパネを重ねてゆくと危険を回避できます。

で、何が言いたいかというと、私の経験上、中国製の安いオイルジャッキはかなりの頻度ですぐ壊れます。比較的、小さな10トンジャッキに至っては、私の現場の場合、使った瞬間に駄目になる確率が50%くらいです。あくまで個人的な意見になりますが、オイルジャッキは安全性を優先して、壊れにくい日本製オイルジャッキを選ぶのが賢明だと思います。しかし、ジャッキも使い方次第。後述しますが、私自身も安い中国製のオイルジャッキにはたいへんお世話になっています。

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