リュックの洗い方は? 洗濯機・手洗いで洗う方法と注意点
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目次/ INDEX
こんにちは。カインズ市原店を愛用している職人の岡本です。
私はもう生まれた時から、自宅の土間に「建築ジャッキ(通称きりん)」が並んでいる家庭で育ったため、赤ん坊の頃からジャッキの頭に乗って遊んでいました。
生家のなりわいは代々、曳家職人。曳家とは、古民家やお城などの建築物を、その形のままでほかの場所へ移動する工事のこと。東日本大震災からの住宅復興でも注目された伝統工法です。
古民家に建築ジャッキ「きりん」を掛けている私
曳家工事では、下の写真のようにジャッキを大量に使い、古民家を少しづつ持ち上げていきます。
古民家の多くは不同沈下を起こしているため、本格的に改修する場合、このようなジャッキアップの後、基礎を造り替える必要があります。
そして、レールを古民家の下に敷き、家をワイヤーで曳いて(引っ張って)、所定の位置へと移動させます。
横から見ると、電車の線路のようになっています。
いざ古民家を移動させる段階になると、その物珍しさから、近所の方々が見物に集まったり、テレビの取材が来たりすることがよくあります。
さてさて、このような伝統技術を私は継承したわけです。
曳家技術というのは、宮大工から支持されるような繊細な伝統構法で、ひとつの工事現場で大量のジャッキを使用します。だいたい40坪の古民家の工事ですと、通常の業者さんなら大型オイルジャッキ30台くらいのところを、私の場合、約300台のジャッキを用います。その数、10倍。
なぜ、そんなに大量のジャッキを使うかというと、理由は超簡単です。つまり、たくさんのジャッキを掛けたほうが建築物の荷重が分散し、お家もそれだけ傷まないからです。手間を惜しまないのが、曳家職人としてのプライドでもあります。
──ということで、日本の職人の中でも、ジャッキの取り扱いに詳しいほうなので、ジャッキの使い方や選び方について、言いたいことを自由に書かせてもらいます。
ジャッキにもたくさんの種類があります。建築・土木・自動車・機械など、用途もさまざまです。
建設関係者であれば、「ジャッキ」という言葉を聞いて真っ先に思い浮かべるのは、オレンジ色のオイルジャッキ(油圧ジャッキ)だと思います。「ジャッキ=オレンジのボトル」というイメージが強いですよね。
私が普段よく使っているオイルジャッキは、マサダのこちらです。
マサダ20トンオイルジャッキ
われわれの中でもっとも一般的なオイルジャッキは、なんと言っても、このマサダ20トンオイルジャッキ。現場ではよほどのことがない限り、大きなジャッキは使い勝手が悪いので、このサイズのものが好まれます。
実際の工事現場で多用している、マサダ20トンオイルジャッキ
このオイルジャッキの値段は、ホームセンターで買うと1台30,000〜40,000円前後します。でもネット通販では、同じ性能が書かれた20トン耐荷重のオイルジャッキが、送料込みで1/10ほどの価格で販売されていることもあります。
「なんだ〜、ホームセンターぼったくりじゃないか!」
そう思いますか? まっ、思うかも知れません。ですが、さまざまな種類のジャッキを扱っているプロの曳家職人からすると、中国製の安いオイルジャッキをお薦めすることは到底できません。
そもそもオイルジャッキは、負荷が掛かりすぎるとパッキンが破れて、ハンドル部分からオイルが吹き出し始めます。もちろん、それまで支えていた荷重は一気に持ちこたえられなくなるので、そのようなジャッキを使うのは非常に危険です。
ですので、プロならば(素人でもそうするべきですが)オイルジャッキだけでジャッキアップ作業をする場合、万が一に備えるべきです。具体的には、5mm単位くらいで、ジャッキのすぐ近くにスペーサーを入れてゆきます。スペーサーは、どこかで余ったコンパネの端材とかでも大丈夫。10cmを越えたら、角材と取り替えて、またその上にコンパネを重ねてゆくと危険を回避できます。
で、何が言いたいかというと、私の経験上、中国製の安いオイルジャッキはかなりの頻度ですぐ壊れます。比較的、小さな10トンジャッキに至っては、私の現場の場合、使った瞬間に駄目になる確率が50%くらいです。あくまで個人的な意見になりますが、オイルジャッキは安全性を優先して、壊れにくい日本製オイルジャッキを選ぶのが賢明だと思います。しかし、ジャッキも使い方次第。後述しますが、私自身も安い中国製のオイルジャッキにはたいへんお世話になっています。
ホームセンターでは、オイルジャッキとは別の種類のジャッキも販売されています。それは「建築ジャッキ」(通称きりん)です。
建築ジャッキ(きりんジャッキ)
きりんはその形状からして抜群の安定感がありますし、オイルが抜けて突然下がるという怖さもありません。
建築ジャッキは、使用中に横揺れするので、ほかのジャッキのサポートとして使います。ただし、メンテナンスが容易なので、ジャッキを使う頻度の少ない大工職などには一定の人気があります。
しかし、建築ジャッキは鋳物ですので、例えば鉄骨などにそのまま頭を当てると「割れます」。そのため、かならずクッション材としてコンパネなどの薄い端材を挟みます。
ちなみに、建築ジャッキのほとんどは5トン程度の耐荷重なので、重いものにはあまり適しません。
下の写真は、建築ジャッキの使用例です。ジャッキアップ中に荷重を分散させるため、鴨居に「仮柱」の代わりに建築ジャッキを掛けています。鴨居を傷つけないように、溝より少し長い「埋め木」をして、それに樫板を当ててから建築ジャッキを掛けているのが分かると思います。
鴨居を傷つけないように、溝より少し長い「埋め木」をして、それに樫板を当ててから建築ジャッキを掛けている
また、オイルジャッキのようにハンドルを上下に動かすことで真っ直ぐ揚がってゆくのと違い、横からジャッキ棒を回しながら揚げてゆくので横揺れします。ですから、建築ジャッキは本来、横揺れしても傷まないものにしか使うべきではありません。
ジャッキは安全面から「急に下がらない」ということを選択基準にすべきです。
オイルジャッキの機能と、建築ジャッキの安全性、その両方を兼ね備えたジャッキとして、ジャーナルジャッキギア式のジャッキがあります。
ただし、ジャーナルジャッキギア式は1台50,000円~とまずまずのお値段なので、通常ホームセンターの店頭には置かれていません。取り寄せになるケースが多いです。
ジャーナルジャッキ ギア式
このジャーナルジャッキが優れているのは、オイルを使用していないギア式のため真横に突くこともできる点です。何かを真横に強く押し込みたい時などに、たいへん重宝します。
ジャーナルジャッキは真横に押すことができる
また、ジャッキは上げる時よりも下げる時のほうが危険を伴うのですが、オイルジャッキの場合は緩めすぎると急激に下がる心配があります。それに対して、ジャーナルジャッキだとギア式なので、そうした事故が起きづらいという利点があります。
ジャッキは上げる時よりも下げる時のほうが危ない
ジャーナルジャッキを使用した現場
ジャッキはどうしても埃や砂を噛んでしまうので、時々分解して掃除することも大切です。
狭いところで使うための小さなジャッキ、低床型のミニオイルジャッキもあります。
軒下などの低い場所、狭い場所などで重宝する低床ジャッキですが、やはり小さな工具なので無理をさせると即壊れます。
低床型のオイルジャッキとジャーナルジャッキを並べて比較すると、大きさの違いが分かると思います。
低床型のオイルジャッキは高さ約7cmなので、枕木の向きを変えたい時などには、下の画像のように枕木の組まれている中にも挿入できるから便利です。
ミニオイルジャッキの使用例
とはいえ、私のように大量のジャッキを使用している曳家職人であっても、すべてのジャッキを高額なもので揃えるわけにはいきません。
実際、私の工事現場では、その半分くらいは安い中国製のジャッキを使用しています。これは主要なジャッキをサポートするためだったり、手間はかかりますが多くのジャッキを掛けることで楽にジャッキを巻くためだったりします。
安い工具を使う時には、それなりの使い方があります。
ジャッキの使い方ひとつで大事故にもつながりかねないので、ジャッキを使用する際はくれぐれもお気をつけください。そして、ジャッキを使用した後は、お手入れも忘れずに。
ジャッキを使用した後は、歯ブラシで泥を落として、油を指して磨いておきます。
上の写真は、カインズ市原店から10分ほどの「曳家岡本」千葉倉庫です。近所の犬くんが遊びに来てくれています(笑)。
ではでは、また現場の合間にカインズ市原店に寄らせていただきます。店内に、安価なたこやきとラーメンセットを出すお店があるところが好きです!
今回はカインズ市原店では取り扱いのないジャッキも紹介しましたが、CAINZ DASHで各店舗にお取り寄せ可能です。