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躍動感をまとい、神々しさと威厳を感じられるオオカミ。造形アーティストである加治聖哉さんが山犬をイメージして作られた作品です。
作品名:神籬(ひもろぎ)
この作品は、建具の板端材や展示用材料の余り、建物の耐震性を高める斜め方向の部材である筋交いの切れ端など、本来は捨てられるはずだった材料を再利用して制作されました。
オオカミの息遣いも聞こえてきそうなほどの迫力がある毛並みは、片栗粉の空箱を150個使って作られているのです。
「廃材再生師」の加治さんは、木材としての役目を終えてゴミとなった「廃材」を実寸大の動物に生まれ変わらせる活動をしています。
ペットボトルやガラスなどと違って、簡単に溶かしたり細かく砕いてリサイクルができない木材は、役目を終えればそのまま廃棄されるケースが多くあります。産業廃棄物となる木材が問題となっている中、加治さんは「廃材アート」という形で廃材の価値を発信し続けています。
加治さんはそんな廃材をどのように「再生」し、自身の作品を生み出しているのでしょうか。彼の活動の原点や廃材にこだわる理由とは。加治さんに話を聞きました。
加治聖哉さん
廃材再生師/Scrap wood artist
1996年生まれ、新潟県村上市出身。廃材で原寸大サイズの動物を作るアーティスト。
作品名:頬白鮫
──ゴミとなった木材を使う「廃材アート」はどのように作られているのでしょうか。
加治さん(以下、加治):作品は基本的に、骨格から全て再現して作りこみます。骨格には「垂木(たるき)」という屋根に使われる細い角材や、壁の下地として張る合板を活用しています。表面に使う廃材は、作品ごとに質感を考えながら使い分けています。
見る人に本物に近い迫力を感じてもらうために、自然界の動物と同じサイズで、作品を制作することにこだわりを持っています。
──具体的にはどんな廃材を使用しているのですか?
加治:代表作の『神籬(ひもろぎ)』では、「山と岩の神の依り代」をイメージして作りました。
加治:この作品には、私が活動している地域の肉屋で、片栗粉を入れていた桐箱を約150個使用しています。
──まさかもともとは片栗粉の空箱だったなんて信じられません。
加治:中国の神話に現れる伝説上の動物『麒麟』は、自身の夢に出てきた麒麟に着想を得て再現しました。
作品名:麒麟
加治:たてがみには杉のかんな屑、ひげはブドウの蔓、角は流木と、廃材以外の素材も組み合わせて作り上げました。
最大の作品は、全長20mにも及ぶ『ザトウクジラ』です。
作品名:ザトウクジラ
──大きすぎる……!
加治:中へ入れるような設計にし、休耕田で展示を行いました。家屋の解体で出た柱や梁など大型の廃材を活用して、約4ヶ月かけて1人で制作しました。すでに撤去しましたが、屋外展示ということもあり、多くの方が見にきてくれました。
加治:現在継続的に制作に取り組んでいるのは『イワシ』で、最終的には1万匹の巨大な群れとして完成させる予定です。
活動している新潟県長岡市栃尾では、40年ほど前まで機織りが盛んで、多くの工場が軒を連ねていました。これらの工場で使われていた、糸を巻く木製の軸を活用して、イワシを作り続けています。
製作途中の『イワシ』
加治:今は少なくなってしまいましたが、現在使われている機械だと木材の軸は型が合わず、廃棄するしかありませんでした。廃業した工場にあったものも含めて1万本もいただきましたが、それぞれ形が違うので、いろいろなイワシを作れて面白いです。
──廃材の裏にあるストーリーも興味深いですね。
加治:過去に役目を担っていた木材が、その役目を終えて、新たに動物として命を宿す。作品を見に来た方からも、「廃材の過去」を尋ねられることが多くあります。
それぞれ微妙に形が違うイワシ
加治:かつて工場で働いていたおばあちゃんやおじいちゃんが作品を見て、「あの部品がこんな作品になったんだね」と声をかけてくれたり、昔の思い出を振り返ってくれたりするのはとても嬉しいです。捨てられるはずだったものを残すことは大事なことだと、改めて実感します。