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目次/ INDEX
花が枯れると悲しいですよね。
人間の感情を学習中のAIみたいなことを急に言ってすみません。
この記事をお読みいただいている方の中には、お花が好きだという方も多いでしょう。そんな方は特に、こう思ったことはありませんか? 「花の命、儚すぎ」と……。
花が咲くのは、植物の一生のごくわずかな時間。それにしても咲いてから萎れるまでが早すぎるのではないでしょうか。2〜3ヶ月咲いて頂いても(人間側としては)やぶさかでないのに、早い植物だと一晩で枯れてしまうものも。お誕生日かと思った矢先にお通夜です。
筆者は、以前花屋に勤めていました。何千何万という切花を見てきたわけですが、それでも花が枯れているのを見ると、いまだに悲しい気持ちになります。人に贈っていただいた花ならなおさら。
そこでこう考えました。なんとか「枯れない花」を生み出すことはできないかと。
市販の造花などではない、正真正銘の「世界に一つだけの(しかも枯れない)花」をこの手で作り出せないか。花そっくりの形さえしていれば、なんなら植物じゃなくたっていいから……。
モンスターを生み出す直前のマッドサイエンティストのような発言をしていますが、この記事は「元花屋が(ほぼ)ホームセンターの材料でお花を作ってみる」という内容です。どうか怯えないでくださいね。
もしレオナルド・ダ・ヴィンチやトーマス・エジソンの時代にホームセンターがあったら、数々の発明は爆速で進んだのではないかと妄想することがあります。
何かを作りたい人間にとって、ホームセンターは天国のようなところです(本当に天国がホームセンターだったらいいのに)。ともかく、「枯れない花」を作りたい筆者が求めるべき材料も、きっとホームセンターでなら手に入るはず。
そんな想いで、材料についてはノープランのままカインズ店舗に足を運びました。
入口に立派な植木がたくさん置いてあるのを見て、「これを買って末長く育てたらいいのではないか?」という気持ちになりましたが、今の目的はガーデニングを趣味にすることではありません。
工具売り場。ホームセンターにやって来たのだという気持ちが高まって嬉しくなりますよね。筆者はデートの行き先としてホームセンターをリクエストしたことがあるくらいホームセンターが好きで、特にこういう「今のところ自分の人生に全く関係のない工具」を眺める時間がたまりません。
さて、花びらや茎を何で作ろうか。フロアを何周もしたところで、あるものを見つけて直感的に「これだ」と思いました。
粘土です。
カインズオリジナルの「かるい紙粘土」。「木材を削って花びらを作る」や、「紙をなんかこういい感じにして……花っぽくする」という他の素晴らしい案もあったのですが、なにせ筆者は花創造初心者。
「泥みたいなものから神様が人間を作った」というような話もあるくらいですから、はるか昔からの材料として粘土は非常に優れていることでしょう。
何より、油粘土で万物を創造をしていた幼稚園時代を思い出して「粘土ってこねるの気持ちいし楽しいよね〜〜」という気持ちになったので、紙粘土を5個ほど掴んでカゴに入れました。
さて、そんな経緯もあり、今回買ってきたものがこちら。
後に調べてわかったことですが、粘土で作られた花は「クレイフラワー」といい、工芸の1ジャンルとしてすでに確立しているとのこと。先人が成功しているならこのチャレンジはほぼ「勝ち確」です。
ホームセンターでの買い物に気持ちが高まって色々なものを買っていますが、クレイフラワーを作る際に、ベースになる材料はこの3つ。
粘土、針金、そして絵の具です。
アクリル絵の具で粘土に色をつけ、花の形を作ったら針金を通して茎にします。実際は花細工専用の針金や粘土を使うようですが、今回はホームセンターの材料で作れるものか試してみましょう。
さて、さっそく粘土こねこねタイムといきましょう。使わない粘土はすぐに乾燥してしまうので、写真のようにジッパーバッグに入れておくと便利です。
これこれ! ひんやりしてやわらかく、子どもの頃に想像した入道雲みたいな触り心地。仕事場の横に「粘土こね場」を設けて、たまに気分転換にこねに行けたらいいだろうなと思いました。コーヒーもタバコも嗜まない人向け「粘土休憩」。どうですか?
粘土がやわらかくなったら色をつけます。着色する方法は、あらかじめ絵の具を混ぜ込んでおくのと、最後に乾いた粘土に塗る2種類。まずは葉っぱと茎用に、緑の絵の具を馴染ませてみましょう。
アクリル絵の具はダイレクトに手につくとなかなか取れないので、着色の作業中はゴム手袋をしておくのがおすすめです。さもなくば枯れない花と引き換えに、手があたらしいアート作品となることでしょう。
緑色になった粘土に針金を刺して、細く伸ばすように転がせば茎になるはずですが……
異形のさやいんげん?
粘土と針金が分離してしまってぜんぜんうまくいかない。針金を2本絡ませて引っかかりやすくしたり、粘土の硬さを調整してみたりしましたが、何度試してもアスペクト比がバグったさやいんげんになってしまいます。
この粘土の素材問題、後で花びらを作る時に大苦戦することになるのですが、ひとまず茎については……
こんな感じでマスキングテープを巻き、後から着色するシステムにしました。テープなら後で曲げることもできますし、案外悪くないアイディアかもしれません。
茎に悪戦苦闘していたら夜になってしまいました。枯れない花を求めて薄暗い部屋で粘土をこね続ける大人がここにいます。
花びらの色は悩んだ末に赤系に。濃いめの色をつける際は、粘土がボソボソしやすいので適宜霧吹きで水を補給すると作業しやすくなります。
このくらいの小さな玉をたくさん作って……
雫型に形成。これを押し潰すように平たくすれば、花びらの形になる算段。だったのですが……
無惨。
花びらというより「経年劣化で剥がれたなにか」という感じです。乾燥させるとボソボソになるし、かといって濡らすと溶けてしまう。紙粘土なので当然といえば当然です。
先人たちはいったいどうやって作っているんだ!? と調べたところ、どうやら樹脂がベースの粘土や、工芸専用の粘土が主流とのこと。それじゃあ、紙粘土は枯れない花になることはできないのか……。
数時間格闘し、ゴム手袋もだんだん不穏な見た目になってきました。このままホラーゲームの背景に置いても違和感なさそう。
フリー素材の背景画像に合成してみましたが、やっぱりよく馴染みました
現実逃避している場合ではありません。千切れ溶けて破片と化する粘土をどうにか手懐けて、どうにか花びらの形を作らなければ。
さらに数時間の試行錯誤を経て、夜明けが近くなってきた頃のことです。ついに1つの解決策を得ました。
粘土板代わりに使っていたクリアファイルを切り開いて……
適当な長さの短冊状にしたら、端をセロハンテープでとめます。すると、簡易版のクッキー型のようなアイテムに。
あらかじめ粘土を薄く伸ばしておいて、型を抜いてみたら……
かなりいい感じ!
やわらかい紙粘土は指で触ると崩れてしまうため、使用する部位を極力触らず、いらない部分を剥ぎ取っていく考え方が正解のよう。
型抜きした粘土を粘土板とクリアファイルで挟んだら、麺棒のように筆を転がして薄くしていきます。
クリアファイルをそっと剥がしたら、筆の柄で花びらの模様を描き……
ここでウレタンマットが登場。
硬めのスポンジのような素材ですが、乾き切っていない花びらパーツを載せて上から押すことで、本物の花びらのようなシワと湾曲をつくることができます。
花屋時代に親の顔よりも見たはずのバラの花を思い出しながら、花びらを配置したら……これはかなりバラなのでは!?
すごい。バラだ。紙粘土ってバラになれるんだ。
蝶の変態を初めて知った子どものような気持ちです。
なんとか花の形を作れそうだぞとわかったところで、ホームセンター外から取り寄せたチートアイテムのご紹介。
花びらの筋を再現したシリコン型です。「ベイナー」や「ガムペースト」と呼ばれているそうで、これで粘土を挟んで花びらのテクスチャを作ります。
紙粘土をどう扱うか試行錯誤していた際、クレイフラワーの材料としてこちらを紹介している海外の方のブログを見つけて、面白そうだったので試しに取り寄せてみました。
簡易クッキー型で抜いた花びらをぎゅっと挟んだら……こんな感じ。かなりリアルな花びらのシワができました。
ベイナー使用の花びらだけで組み立てると、このようになります。花びらの先のギザギザができたことと、全体的に陰影ができたことで、繊細な雰囲気のバラになりましたね(今回はピンクのバラは手作業、紫のバラはベイナーでシワをつけていきます)。
このベイナー、何が便利って葉っぱの量産が楽ちん! 手作業だと半日かかりそうな量でも、30分ほどで終えられます。
以上、「ホームセンターの素材だけでやろうと思えばできるけど、チートアイテムを取り寄せるとレボリューションが起こるよ」というご報告でした。
どうしてもベイナーが準備できない場合は、ウレタンに薄く広げた粘土を置き、竹串など先の細いものでなぞるようにして筋をつけていくと良いでしょう。忍耐力のある方はぜひお試しください。
さて、数時間放置して粘土が乾いたところで、作ったパーツを組み立ていきます。
まずは茎となる針金の切り出し。バラの葉っぱは3枚1組なので、10cmの針金1本と、5cmの針金2本がセットになるよう数えながら切り出して、マスキングテープを巻きます。
針金の先端を少し曲げ、木工用ボンドで葉っぱに接着。マスキングテープを巻いたので木工用ボンドで扱えるようになりましたが、乾かす時間が惜しいときはグルーガンなどで貼るのがおすすめです。
上からさらにマスキングテープを巻いて、3つの葉っぱを合体。これをバラの本数分作ります。
お次は花の方の処理。紙粘土は筆で水を塗って少し放置するとその部分だけ溶け出して、他の粘土とくっつけられるようになります。その特徴を活かしてガクを張り付け、境目をさらに筆で馴染ませます。
ガクに小さな葉っぱを取り付けたら、20cmほどの針金にマスキングテープを巻いたものを優しく差し込み、木工用ボンドで固定。
こんなかんじ。だいぶバラっぽい!
最後にアクリル絵の具でいい感じの緑色を作って、マスキングテープを葉を馴染ませるように塗っていきます。この作業もだいぶ手が汚れるので、筆を持っていない方の手だけでもゴム手袋をはめておくのがおすすめ。
乾かすと……こんな感じ!!
ほとんどバラだ。かわいい。こねる前は豆腐か業務用クリームチーズみたいだった紙粘土がこんな形になるなんて、正直自分でも驚いています。
ここで完成としてもよかったのですが、元花屋として「もうちょっと色をリアルにしたいな」という欲が出てきたため、塗りを続行。
画筆や丸筆で花びらの陰影を描きます。「バラって一番外側の花びらは固くて色が濃いよな……」とか、「ピンクに見えるけど黄色がまだらに入っている品種あったよな……」とか、かつての記憶を頼りに彩色。
余談ですが、塗装用のハンディ・トレイは水切りようの凸凹が付いている上、背が低くて倒れづらいので、筆洗い用の水入れとして最高でした。心置きなく汚せる価格なのもいいところ。
最後に、バラの葉っぱのツヤツヤ感を出すために紙粘土用のニスを塗ります。(また日が暮れてきたぞ! いそげ!)
葉っぱにだけ薄く塗り広げたら、追加の塗装も終了。いよいよ「枯れないバラ」の完成です(なんとか日暮れに間に合いました)。
ニスが乾くのを待ち、束ねて花瓶に飾ったものがこちら。
元花屋が作った「枯れないバラの花束」です。
けっこう本物の花らしく見えませんか? 少なくとも、ホームセンターの学童用品コーナーで買ってきた紙粘土で作ったとは気付かれないはず。
花好きのこだわりとして、花びらと葉っぱに何回か絵の具を塗り重ね、よく見ると色が混じって見えるようにしました。
植物はよ〜く見ると葉っぱの一枚一枚、花びらの一片一片ごとに色がちがっていて、そのグラデーションがまた綺麗だったりするので、もし本物のお花を眺める機会があったらじっくり観察してみてくださいね。
さて、ついに枯れない花を手に入れたわけですが、今となって考えると「花が枯れない」ことよりも、「1から自分の手で生み出した花がある」ことの方が嬉しい気がします。植物を育てるのとはまた違ったタイプの喜び。
正真正銘の「世界に一つだけの花」ですし、プレゼントにもらっても嬉しいのではないでしょうか?(それとも気持ちが重すぎますか?)(それは相手によりませんか?)
今回はチートアイテムとしてベイナーも使用してみましたが、基本的には特殊な道具がなくてもOK。カインズでひととおりの材料が揃います。
粘土を使った枯れないお花作り、ぜひ挑戦してみてくださいね。