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目次/ INDEX
レジンテーブルとは、その名の通りレジン(ここでは混合レジン、2液性のエポキシ樹脂のこと)を母材として作られる透明なテーブルのことである。一般に透明なテーブルというとガラス製のテーブルが思い浮かぶが、レジンはガラスと違って常温での加工が可能であるため、材料さえ揃えれば簡単にDIYすることができ、また中に物を封入したり、着色したりといった自由な造形が可能であり、魅力的な素材なのである。筆者がこれまでに作ったレジンテーブルの一例としては以下のようなものがある。
海のレジンテーブル「レンソイス・ブルーラグーン」
暗闇で光る星空のレジンテーブル
紅葉の落ちた水面のレジンテーブル
今回は上記の「紅葉の落ちた水面のレジンテーブル」を通常よりスケールアップで製作する様子を紹介させていただく。
レジンテーブルを作るにあたってまず必要となるのは、レジン液を流し込み成型するための「型枠」の材料を揃えることである。土台(底面)となるコンパネ、レジン液を注型した際の水圧(レジン圧だが)に耐える側面の角材、それからレジンが型枠に癒着してしまわないようにする「内張り材」が主な材料だ。さっそくカインズに行ってこれらの材料を揃えることにした。
材料を仕入れる(写真はコンパネ)
様々なサイズ・厚みのある塩ビ板
普段は内張り材にアクリル板を使っているのだが、製作の都合上、今回は塩ビ板を用いることにした。3×6尺(910×1820mm)の巨大な塩ビ板を取り扱っているホームセンターは限られるが、カインズなら購入可能だ(取り扱いは店舗により異なります)。
内張り材の材質は、要はレジンに癒着しないポリマー素材であればいいので、アクリルや塩ビの他にもポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂なども用いることができる。
これらの材料のうち、コンパネ、角材といった木材類はカインズの木材カットサービス(有料・対応店舗のみ)で必要な寸法に切断し、塩ビ板はセルフサービスで利用できる「カインズ工房」にて自分で加工することにした。
木材カットサービス(1カット税込50円)
「カインズ工房」で塩ビ板を加工する
加工が終わった型枠の材料類
なおこれらのカットした材料はカインズの配送サービスを使って工房まで配送してもらった。大きな荷物でも260サイズまでの配送に対応している。
ここからは用意した材料で型枠を組み立てていく。今回製作するレジンテーブル天板の寸法は150×60cm、完成品の重量が30kgにもなる大型のもので、型枠を組み立てるだけでも大仕事だ。
作業台に底面のコンパネを敷き、表面を掃除機掛けする
卓上ボール盤で側面の角材に下穴を開ける
型枠側面をビスで組み立てていく
型枠側面部分の完成
型枠を組んだら、内張り材の塩ビ板を両面テープで貼り付けていく。両面テープは用途に応じ様々な種類があるが、レジンは硬化時にわずかながら体積が収縮する性質があり、型枠の木材と内張り材の間には「剥がれようとする力」が加わるため、両面テープは厚みがあって粘着力の強いタイプのものを用いる必要がある。
ここで内張り材が木材部分から剥がれてしまうと、完成したレジンテーブル天板の側面が「内側にへこんで」しまい、歪みが出るので注意が必要だ。
強力な両面テープ
塩ビ板を貼り付けていく
通常、内張り材の厚みは2mmもあれば十分であるが、今回は熱に弱い塩ビ板であるため、厚みが3mmのものを用いることにした。2mmではレジンが硬化する際の発熱により歪んでしまう可能性があるが、3mmあれば基本的には大丈夫だ。
塩ビ板を貼り付けたら、底面と側面部分をタイルの目地張りなどに使うシリコーンでコーキングしてすき間を塞ぎ、ようやく型枠の完成となる。
コーキングしてすき間を塞ぐ
型枠の完成。水平器で傾きがないかチェックする
型枠が完成したところで、いよいよレジン液の注型(流し込み)に取り掛かっていく。今回はレジンの中に紅葉を封入するので、注型と硬化を逐次的に繰り返して層を形成していく「積層」という作業が必要だ。おおまかに図示すると以下のようになる。
積層の模式図
紅葉を複数の層に分けて封入するのは、上から見た時に紅葉の配置に奥行きを持たせてリアリティを出すためである。このレジンテーブル天板は水面に紅葉が落ちているというイメージなので、こうすることで水の底に沈んだ紅葉、浮いた紅葉を表現することができる。
積層番号1から順に、前の層が硬化したら表面に紅葉を接着剤で貼り付け、次の層を注型していくイメージである。積層番号1は最初の紅葉を貼り付けるための土台となる部分なので、薄く注型する。積層番号4まではこのようにして積層していき、最後に硬度が高く傷のつきにくい「硬質レジン」で表面をコーティングする。この際に同じレジンで作った「波紋パーツ」を癒着させることで水面に波紋を形成するという段取りだ。
今回用いる混合レジンは、エポキシ(三員環のエーテル)成分からなる「主剤」と、アミン系化合物を主成分とする「硬化剤」の2液があり、これら2種類の液体を混ぜ合わせることで発熱系の化学反応である架橋重合反応(ポリマー化)を起こし、硬化するというメカニズムとなっている。主剤と硬化剤を混合する際の比率は正確に決まっており、混合比が数%でもずれるとうまく硬化しない(硬化後も軟らかい、あるいは表面がベタベタするなど)ので、レジン液は電子天秤を使って質量比で正確に混ぜ合わせる必要がある。作業の手順としては以下のようなイメージだ。
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このようにして主剤を計量し、その後3と逆の操作を行うことで必要な硬化剤の質量を求め、これらを混ぜ合わせることでレジン液の調製が完了する。これを型枠に流し込めば、室温で1~2日程度で硬化する。実際にレジン液を計量し、型枠に流し込むまでの様子が以下の通りだ。
主剤と硬化剤を電子天秤で正確に計量する
湯浴で温めながら、撹拌機で主剤と硬化剤を混ぜ合わせる
レジン液を湯浴で温めながら攪拌するのは、水飴のようにドロドロとしている主剤の粘度をできるだけ下げ、また主剤に対する硬化剤の溶解度を上げて2液を均一に混ぜるためだ。また反応の立ち上がりを促進したり、レジン液がサラサラになるため攪拌中に混入した気泡の抜けがよくなったりする効果もある。温度は50~80℃の範囲内で、レジン液の量や気温などにより調節する。
撹拌後。写真のように均一な透明になっていれば主剤と硬化剤が完全に混ざっている
1回目の流し込み
ヒートガンで熱風を送り、表面の細かな気泡を除去する
以上が基本となるレジン液の計量~注型の工程だ。同様の操作をレジンが硬化するたびに繰り返して、層を形成していく。
1層目のレジンが硬化したところで、紅葉の封入(1回目)を行う。用いる紅葉は色彩が保てるように人造のもの(造花)で、着色剤がレジンに溶解しないものであれば使用できる。造花はレジンに浸すと透明度が増し、より本物のように見えるのが面白いところである。
封入する紅葉。適宜はさみで切って用いる
硬化したレジンの層に貼り付けていく
接着剤が固まったことを確認し、レジン液を流し込んでいく。
紅葉封入層のレジンの流し込み
このようにして紅葉を封入する積層を3回繰り返し、水深方向に奥行きを持たせて紅葉を配置する。また配置には意図的に粗密をつけ、自然らしさを表現している。「作為的に無作為な配置」を作り出すのが自然に見せるコツだ。
紅葉の封入を3回繰り返した後。写真では分かりにくいが、紅葉は水深方向に立体感を持って封入されている
紅葉を封入する積層が終わったところで、次に水面を表現するための「波紋パーツ」を成型する。波紋という複雑な形状をレジンで作るためには特殊な技術が必要かと思いきや、必ずしもそうではない。波紋の成型に必要な道具は……
波紋レジンを作る秘密兵器
そう、タライである。製品にもよるが、タライの底面は水面の波紋に極めてよく似た同心円状の波の構造になっており、また鏡面なのでレジンを注型するだけでツルツルとしたつやのある硬化物を得ることができる。その上、材質もポリプロピレンと、レジンが簡単にはがせる素材でできているのだ。タライはまさに波紋レジンを作るために存在しているアイテムと言っても過言ではない(過言)。
つまり、タライに薄くレジン液を流し入れることで「波紋パーツ」作ることができる。今回は一回り小さいバケツでも同様の構造をみつけたので、これらを使って波紋レジンを作ることにした。
コーティング用硬質レジンで製作する
タライに流し込む。厚みは6mmほど
波紋は天板の表面に固定するため、トップコート層に用いるレジンと同じ硬質レジンを用いて製作する。硬質レジンは通常のレジンに比べ硬度が高く、傷がつきにくいのでテーブル天板の表面のコーティングなどに適したレジンだ。しかし、硬く硬化するために主剤と硬化剤の反応速度が速くなるように設計されており、その分発熱量が大きく熱暴走が起きやすかったり、15分程度で流動性が消失したり(可使時間が短い)、その他温度や湿度などのパラメータ設定がシビアであったりと、様々な種類のあるレジンの中でも最も扱うのが難しいレジン液だ。
硬化も速いので、注型から15時間程度で「波紋パーツ」ができあがった。
完成した波紋パーツ。タライ底面の波状構造がしっかりコピーされている
つづいてこの波紋パーツを天板の表面に固定する作業だ。まずコーティング用レジン液を型枠内に薄く流し込み、その上に波紋を静かに載せれば、同じ素材であるので硬化後には境界が全く分からないくらいに癒着させることができる。スマホに保護フィルムを貼るようなイメージで、気泡が入らないようにゆっくりと波紋を置くとうまく固定できる。
トップコート層の流し込み
気泡が入らないように注意しながら、波紋を静かに載せる
波紋固定後。一気に風流な眺めとなった
トップコート層の硬化が完了したところで、型枠を解体して完成した天板を取り出す。本体表面に傷を付けないように細心の注意を払いながら作業を進めていく。
型枠側面を固定するビスを取り外す
塩ビ板をはがす
サンダーを使って鋭利なバリを取り除く
トップコート層の周囲は表面張力で盛り上がっており、皮膚が簡単に切れるくらいの鋭利な「バリ」ができている。大変危ないので、サンダーを使って削り、平らにならしていく。紙やすりの粒度は180番くらいの荒い番手から始め、徐々に細かくしていく。この際にバリ以外の面の部分にサンダーが触れてしまうとすり傷になってしまうので、注意しながら作業を進めていく。
一般的なレジンテーブル製作では、面全体を粒度の荒いやすりで削った後にコーティングする操作がよく出てくるが、今回のように塩ビ板など鏡面の素材を内張りしておけば、研磨をしなくてもツルツルの綺麗な面を得ることができる。研磨作業は大変な重労働であるので、内張り材を用いることで研磨作業を省略できるメリットは計り知れない。
石鹸を付け、温水で洗う
バリ取りの後、温水で洗って表面に付着した粉を洗い落とす。洗い終わったらすぐに柔らかい布で水気を拭き取り、水あかを残さないように気を付ける。
紅葉のレジンテーブル天板全景
つややかな波紋が美しさを際立てる
10日の製作期間と、約30kgのレジンを使い、ついに特大サイズのレジンテーブル天板が完成した。
裏面の内張りにも鏡面の塩ビ板を用いたことで、向こう側がクリアに透けて見える透明度の高さを実現している。レジンに浸かることで一層鮮やかとなった紅葉の美しさもさることながら、タライで作ったとは思えないつややかな波紋が風流な趣を追加していて、まるで紅葉真っ盛りの日本庭園の庭を覗き込んだような気持ちにさせてくれる。100点満点の仕上がりである!
今回のレジンテーブル天板はオーダーメイド依頼を受けて製作したもので、150×60cmという大きめのサイズで製作した。他にも様々な大きさ、形状で製作することもできるが、これはひとえにレジンという素材の「形状付与性」の高さによるものだ。今回の記事でも紹介したように、元が液体であるので、テーブル天板に限らず自身の発想次第でいろいろな立体物を作ることができる。ぜひあなたもレジンを用いて自身のクリエイティビティを発揮してみてはいかがだろうか。