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カインズの便利道具に頼る現代人たちよ、これが縄文DIYだ!

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週末縄文人

週末縄文人

休日になると山へ繰り出すアラサーサラリーマン2人組。ライフワークとして、「既存の道具を一切使わず、自然にあるものだけでゼロから文明を築く」という挑戦をしている。これまできりもみ式火起こし、土器、釣竿、竪穴住居などを製作。スタートは縄文時代、目指すは江戸時代。YouTubeやTwitterでも活動中。

竪穴式住居に住みたくなるときってあるよね

ときどき、「あれ、俺なんのために生きてるんだっけ?」ってなる瞬間がある。

たとえば深夜の残業中、自分がやっている仕事に意味があるのか考えてしまうとき。子どもも結婚相手もいないのに、老後に必要なお金を計算しているとき。etc……。

そんなとき、ふと頭をよぎったのが「あー、竪穴式住居で暮らしてー」ということ。

お金とは無縁の狩猟採集社会。きっと縄文人は生きる意味に悩むことなんてなかったんだろうなあ。それに、竪穴式住居のあのこんもり丸っこいフォルムのかわいいこと。半地下ってのも安心感があっていいよね。薄暗い家の中で、チロチロと揺れる焚き火の灯りを見ながら眠りにつきたい……。

焚き火の灯り

そう、竪穴式住居はいつだって、なんとなく満たされない現実からフライ・アウェイしたいときの心の桃源郷だった。

これは、そんな妄想を膨らませているうち、とうとう現実に竪穴式住居を作ってしまったサラリーマン2人の物語である。

週末は縄文人

縄さんと文さん

少し自己紹介をしておこう。僕たちは都会の会社に勤めるサラリーマンで、背が高くて細い方が“縄”(じょう)、ガッチリしている方が“文”(もん)という。入社したときから気が合う同期同士だ。

休日になるとふたりで山へ繰り出し、「既存の道具を一切使わず、自然にあるものだけでゼロから文明を築く」という、休みとは思えないハードな趣味に興じている。それもこれも、一言でいえば“生きてる実感”を味わいたいからだ。

ゼロからきりもみ式火起こし。最初の火が着くまで3ヶ月かかった

ゼロからきりもみ式火起こし。最初の火が着くまで3ヶ月かかった

そんな僕らが、夢の竪穴式住居を建てるまでの30日間を振り返っていく。

竪穴式住居への道#0 竪穴式住居ってどうなっているの?

まず、竪穴式住居を作るには土地が必要だ。

平らで開けていて、地下に岩が少ない土地が理想的。僕らはこの計画を実行するため、ぴったりの土地を1年かけて見つけた。

土地は賃貸

土地は賃貸

作り始める前に、竪穴式住居の構造について調べてみる。

僕たちは2人ともド文系で、建築系の知識は一切ない。そこで、各地の縄文遺跡を訪ね、復元された竪穴式住居を観察してデータを集めた。

設計図のメモ。雑すぎて不安になる

設計図のメモ。雑すぎて不安になる

計画会議の結果、大まかな手順はこんな感じでいくことにした。

  1. 地面に40〜50cmほどの穴を掘り、掘った土を雨水止めのために周囲に盛る。
    (地域によって深さは様々で、北海道には2.4mの住居跡も見つかっている)
  2. 骨組みとなる4本の柱を立て、その上に梁をかける。梁には垂木を立てかける。
     (柱が7本ある大きな住居跡も見つかっているが、2人用はこんなもんだろう)
  3. 屋根を葺く(見学した復元住居は茅葺と土葺きが多かった)
  4. 中心付近に炉を作る。

わりとシンプルだ。なんかできそうな気がしてきた!

竪穴式住居への道#1 木の棒で穴を掘る

ということで、まずは穴を掘る。

現代の道具は使わないため、穴掘りにはその辺に落ちていた木の棒を使う。いろんな木を試した結果、先端の鋭さと持ち手の曲がり具合が絶妙なこいつが僕らの相棒になった。

知り合いの大工さんに「この道具には魂が込もってる」と褒められた棒

知り合いの大工さんに「この道具には魂が込もってる」と褒められた棒

これでザクザクと土をほぐし、もうひとりがそれを手ですくって外に出していく。この海外収容所の懲罰みたいな作業をひたすら繰り返すのだ。

この数日後、友人と銭湯に行ったら「背中がひと回りでかくなった」と言われた

この数日後、友人と銭湯に行ったら「背中がひと回りでかくなった」と言われた

ハードな作業を続ける中で、ある疑問が浮かんだ。

「竪穴式住居ってなんのために穴が掘られているんだろう? 地上建てならこんなきつい思いしなくていいよね?」

調べた結果、ちゃんと理由があった。

それは、地中は温度が一定であるということ。地下10mの温度は、常に年平均気温(東京なら17℃ほど)とほぼ同じらしい。そのため、竪穴式住居の中は、夏は涼しく、冬は暖かいのだ。

縄文人の知恵、恐るべし。彼らは石原良純のように理由もなく穴を掘っているわけではなかった。掘れば掘るほど快適に過ごせるということがわかり、棒を握る手にも一層力が入った。

穴掘りの大敵、根っこ。引っこ抜けないものは鋭い石で切った

穴掘りの大敵、根っこ。引っこ抜けないものは鋭い石で切った

この作業をしていて、もうひとつ発見したことがある。

それは、シャベルの偉大さだ。今までシャベルには「掘る」という機能しかないと思っていたが、実はあと2つの機能があった。土を「ほぐす」ことと「すくう」ことだ。

木の棒では土を「ほぐす」ことしかできないため、ほぐれた土は手ですくい出さなければならない。それをひとつの道具で一気にやってのけるシャベルはすごい発明だと思った。一見シンプルな道具ひとつとっても、人類が積み上げてきた文明の厚みを感じる。

穴完成。喜びのあまり走り出す

穴完成。喜びのあまり走り出す

2日かけ、ようやく穴を堀り終わった。深さ40cm、直径235cm。大人2人が寝られるサイズになっている。掘り出した土は周囲に盛り、雨水の進入を防げるようにした。

竪穴式住居への道#2 石斧で木を切る

続いては竪穴式住居の骨組み作り。まずは材料となる木を揃える。ここで登場するのが、縄文人の必須アイテム「石斧」だ。

旧石器時代から使われていた「打製石斧」

旧石器時代から使われていた「打製石斧」

もちろんこれもゼロから作る。まず河原へ行き、斧の刃に近い形の石を見つける。エッジを鋭くするため、石を打ち欠いて加工。それを木の柄にはめたら、「打製石斧」のできあがり。

……と、簡単に書いたが、実はこれを作るのに丸1日かかっている。

大変だったのが柄の部分。材料となる木が必要だが、この時点ではまだ石斧がないため、石を手で握って切らなければならない。ちなみに、これは人類最初の道具の一つで「握斧(あくふ)」というらしい。これで直径4cmほどの細い木を切るのに1時間もかかった。

「握斧」は反動がモロに手に伝わり、めちゃくちゃ痛い

「握斧」は反動がモロに手に伝わり、めちゃくちゃ痛い

柄のサイズに切り出したら、腐りにくくするために樹皮をはぎ、石をはめる部分の穴を空ける。これらの加工もすべて石を使って地道にやったため、柄を作るだけで10時間近くかかってしまった。

柄ができたら石の刃をはめ、樹皮を結んで固定する。石が落ちにくくするのと、使用時の衝撃で柄が割れるのを防ぐためだ。さあ、これでようやく木が切れる!

強い反動に、木の生命力を感じる

強い反動に、木の生命力を感じる

ゴッ、ゴッ、ゴッ……

なんか、鈍器で殴打しているような恐ろしい音がする。しかも全然切れない。鉄の斧だと、もっと「ザクッ」と木が切れる音がするのだが……。

それでもめげずに続けていると、少しコツが掴めてきた。木に当たる瞬間、石斧を少し手前に引いて、木を削るようにする。ノコギリを引くときのようなイメージだ。すると、「ボロッ」っと木屑が落ちる。

石斧の切り口はボサボサ

石斧の切り口はボサボサ

慣れてくると、直径5cmほどの木を10分弱で切れるようになってくる。握斧だと1時間かかったため、その6倍という驚異の速さである。すごいぞ、これは技術革新だ!

このとき、僕の脳内では「2001年宇宙の旅」のオープニング曲が流れていた。数万年のときを越え、石斧を発明した瞬間の人類の感動を味わっていたのだ。

♪テーン テーン テーン テンテーン

♪テーン テーン テーン テンテーン

現代のテクノロジー「チェンソー」を使えば、きっと10秒もかからないだろう。しかもカインズに行けばそれが1万円以下で買えてしまうなんて、悔しさすら覚える。

それでも、木を切るときのこの感動は、石斧で切った僕らしか味わえないはずだと胸を張りたい。

切るのが大変だからこそ、必要な量だけいただく

切るのが大変だからこそ、必要な量だけいただく

3日かけて、枠組みに必要な23本の木を切った。腐るのを防ぐため、1本1本皮を剥くという徹底ぶり。次はいよいよ組み立てだ!

竪穴式住居を作っていたのは5月。梅雨明け前の木は水分を多く含んでいるため、皮がつるんと剥けて気持ちいい

竪穴式住居を作っていたのは5月。梅雨明け前の木は水分を多く含んでいるため、皮がつるんと剥けて気持ちいい

竪穴式住居への道#3 骨組みを立てる

慣れれば1分程度で火種ができる

慣れれば1分程度で火種ができる

骨組みを立てるにあたって、まずはきりもみ式で火を起こす。柱に使用する木材の先端を焼き、炭化させるためだ。こうすることで、地中に埋めても腐りにくくなる。

縄文時代からある知恵だ

縄文時代からある知恵だ

柱の位置を決めたら、そこに穴を掘って柱を埋め込んでいく。このとき、柱の木が少し曲がっていたため、まっすぐ埋めるのに苦労した。自然界でまっすぐな木を見つけるのは難しいのだ。だいたい40〜50cmほど埋めたら、ぐらぐらせず安定した。

石で叩いて深く埋める

石で叩いて深く埋める

柱が埋まったら、梁を載せる。揺れても落ちないよう、あらかじめ柱の先端はY字の木を選んだ。梁が4つ載ったら、樹皮でしっかり結びつけて固定する。

家を支える土台なので念入りに結ぶ

家を支える土台なので念入りに結ぶ

梁が固定できたら、垂木(屋根部分となる斜めの木)をかけ、そこに枝を横向きに結びつけていく。これで骨組みが完成。最初からここまで15日が経過した。

玄関は太陽光が入る南向きに作る。縄文時代の竪穴式住居も大半が南向きだった

玄関は太陽光が入る南向きに作る。縄文時代の竪穴式住居も大半が南向きだった

完成した骨組みの前で記念写真

完成した骨組みの前で記念写真

できあがった骨組みを前に、記念写真を撮る2人。モザイク越しなのに、ドヤ顔しているのがわかる。彼らはこのとき、もうほとんど完成した気でいた。

この先に、本当の地獄が待っていることも知らずに……。

竪穴式住居への道#4 最終工程、絶望の屋根葺き

クマザサを取る

屋根材には、クマザサを使うことにした。クマザサはアイヌの伝統家屋「チセ」にも使われていて、耐久性のある立派な屋根材だ。僕たちのいる自然環境で、最も簡単かつ、大量に手に入るのがこのクマザサだった。

茎は硬いが、節の部分でポキッと簡単に折れる

茎は硬いが、節の部分でポキッと簡単に折れる

作業の流れはこうだ。まず、クマザサを70〜80本まとめてひとつの束にする。その束を骨組みの下の段から順に結びつけていく。これを全体が覆われるまでひたすら繰り返す。

クマザサを屋根材にしていく

至って単純なのだが、作業初日が終わるころ、ある重大な事実に気づいてしまった。

縄「1日やってこれよ?  発狂しそうだわ」

縄「1日やってこれよ?  発狂しそうだわ」

そう、とてつもなく時間がかかるのだ。

1日3〜4時間かけて1000本以上の笹を集め、それを日が暮れるまで葺くのだが、なぜか一向に進んでいる感じがしない。

2日目終了時点。1日目とあまり変わってないように見える

2日目終了時点。1日目とあまり変わってないように見える

3日目にはフラストレーションが頂点を迎え、険悪なムードが流れた。

縄「笹を葺くときさ、間隔を詰めすぎじゃね?」

文「どういうこと?」

縄「もっと大胆に広げないと、いつまでも完成しないよ」

文「いや、でも詰めて葺かないと雨漏りするから、今のままがいいよ」

縄「でもそれじゃ終わらないよ」

議題:笹の間隔について

議題:笹の間隔について

及第点でもいいから早い完成を目指す縄と、遅くてもいいから完璧なものに仕上げたい文。2人の屋根葺き論をめぐる方向性の違いが露わになったのだ。

文「ここで妥協すると、後々雨漏りして修理することになるからかえって大変だよ」

縄「俺だって雨漏りは嫌だよ、でも3日でこれは進まなさすぎだろ」

文「わかるよ、たしかにこれはやばいよ。やばいけど、でも……」

しばし流れる沈黙。先に口を開いたのは縄だった。

縄「……まあ、休みの日はここに住むんだもんな」

文「うん、そうだよ。ここは妥協せずにいきましょうよ」

縄「……うん、わかった。すまん、やろう」

文「ありがとう、気持ちは痛いほどわかる」

縄・文「よし、やるぞ。やるぞおお!!」

最後は縄が折れ、2人で謎のハイテンション状態に突入し、屋根葺きを再開した。

くる日もくる日も葺き続けた

くる日もくる日も葺き続けた

そして迎えた屋根葺き14日目。いよいよ笹を結ぶのが困難な高さになってきた。

屋根の上部は中から結ぶ

屋根の上部は中から結ぶ

残すは頂点だけ。しかしここはどうしても手が届かないため、ある作戦を考えた。それは、地上で天井部分を別に作り、それをどうにかして竪穴式住居の上に載せ、一気に完成まで持っていこうという、やや行き当たりばったりな作戦である。

できあがった天井部分をかぶり、亀の気持ちになってみる

できあがった天井部分をかぶり、亀の気持ちになってみる

天井部分はこれまでのノウハウですんなりと作れたが、問題はここからだ。思いのほか重くなってしまったこいつを、どうやって上に載せるか。

試行錯誤の末、生み出されたのがこの原始的な方法だった。

せーの、よいしょっ

せーの、よいしょっ

うおおおおおおお!!

うおおおおおおお!!

自分たちもびっくりの奇跡のジャストフィット。総日数30日。ついに、僕らは現代の道具をまったく使うことなく、竪穴式住居を作ったのだ!

人生でこんな達成感を味わったことがあっただろうか。手も服もボロボロになった2人は抱き合い、男泣きをするのであった。

竪穴式住居への道#5 縄文の夜

かわいい。かわいすぎる

かわいい。かわいすぎる

それでは、我が家をご案内しよう。狭めの入り口をかかんで入っていくと……。

暑い夏でも、中に入るとひんやり涼しい

暑い夏でも、中に入るとひんやり涼しい

大人が6人座れるくらいのスペースが広がる。このサイズ感や入り口の小ささが茶室っぽくて気に入っている。

階段は負荷がかかるため、崩れないように木の枝で土留めした

階段は負荷がかかるため、崩れないように木の枝で土留めした

顔を上げると、苦労して葺いた笹が隙間なく並んでいる。その数およそ2万本! 実際に雨が降っても漏れてこなかった。

もし笹が傷んでも、新しい笹を差し込んで簡単に修繕できる

もし笹が傷んでも、新しい笹を差し込んで簡単に修繕できる

家の中央には炉を作った。ここに灯す火は、暮らしに様々な恩恵を与えてくれる。日が落ちれば灯りとなり、土器を載せれば調理ができる。寒い冬には暖をとれて、夏には湿気を飛ばしてくれる。煙によって柱や屋根材は燻されて丈夫になり、虫やカビを防いでくれる。竪穴式住居での暮らしは、火と共にあるのだ。

火が灯ったとき、家に命が吹き込まれた感じがした

火が灯ったとき、家に命が吹き込まれた感じがした

薄暗い室内にしばらくいると、次第に目が慣れ、お互いの輪郭がぼんやりとわかるようになってくる。自分と相手の間にある境界線は淡く、ふしぎな一体感がある。

火が揺れるたびに壁の影も踊る

火が揺れるたびに壁の影も踊る

次第に夜も深まってきた。松の葉のベッドを敷き、寝ることにしよう。生の松の葉ベッドはふかふかで、とても快適だ。

ほのかに松葉の良い香りがする

ほのかに松葉の良い香りがする

火は熾火になり、もうほとんど何も見えない。ときどき笹がカサカサと音を立て、そこに何かがいることを知らせてくる。少しドキドキするが、あまり怖くはない。この中にいると、何か大きいものの一部になったような安心感があるのだ。

縄文人はどんな夢を見ていたんだろう。想像しながら、ゆっくりと夜は流れていった。

周りに灯りはなく、天の川が見える

周りに灯りはなく、天の川が見える

朝、目が覚めて、家の中から外を見る。世界はすっかり明るく、笹で縁取られた入り口の向こうに木々が揺れている。その強く鮮やかな緑を見たとき、僕は新しく生まれ変わったような気持ちになった。

竪穴式住居の入り口からみた景色

縄文人がどんな世界を見ていたかは想像することしかできない。でもきっと、目覚めたときに見ていたこの景色は同じで、彼らも開口一番、感動してこう叫んでいたと思う。

「今日も俺は生きてるぞー!」

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