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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
きゅうりのような見た目でも、かぼちゃの仲間であるズッキーニ。犬に食べさせても問題はなく、食糞防止効果が期待できるとも言われますが、本当のところはどうなのでしょうか? 今回の記事では、ズッキーニに含まれる栄養素や犬に与えるメリット、一日あたりの適量、食べさせる際の注意点などをバーニー動物病院千林分院 堂山有里先生監修のもと解説します。
目次
- 犬にズッキーニを与えても大丈夫!
- 犬にズッキーニを与えると食糞防止効果がある!?
- 子犬やシニア犬にズッキーニを与えても大丈夫?
- 持病のある犬にズッキーニを与えても大丈夫?
- ズッキーニに含まれている栄養素は?
- 犬にズッキーニを与えるメリットは?
- ズッキーニを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
- 犬にズッキーニを与える際の1日あたりの適量は?
- 犬にズッキーニを与える際のおすすめの調理法は?
- 犬にズッキーニを与える際の注意点は?
犬にズッキーニを与えても大丈夫!
ズッキーニには、犬が中毒を起こすような成分は含まれていないため、基本的には与えても問題ありません。生でも食べられますが、消化吸収がよりしやすくなるため加熱調理したものを与えるのがおすすめです。ただし、与えすぎると消化不良になり、お腹を壊す原因になるため、過剰摂取にならないよう注意しましょう。
犬にズッキーニを与えると食糞防止効果がある!?
ズッキーニは、食糞防止効果のある食材だと言われることがあります。ズッキーニを食べることで、糞に犬の嫌う臭いがつくといったことが理由として挙げられているようですが、学術的な裏付けはまだないようです。犬の食糞にはさまざまな原因があるため、悩んでいる場合はまずは獣医師やドッグトレーナーに相談してみてください。
子犬やシニア犬にズッキーニを与えても大丈夫?
ズッキーニなどのウリ科の植物には、通常、微量の苦味成分・ククルビタシンが含まれます。しかし、中にはこのククルビタシンの含有量が多いものもあり、人がそれを摂取したことによって、腹痛や下痢などの中毒症状を起こした事例が報告されています。
犬が食べた場合、このような中毒症状が発症するのかはまだ詳しく調べられていません。消化能力や代謝機能が低い子犬やシニア犬は、念の為、少しずつ与えて問題がないか様子を見ることをおすすめします。
※参考
No.17011 観賞用ヒョウタンによる食中毒,健康危機管理支援ライブラリー,国立保健医療科学院,2018/3/22
持病のある犬にズッキーニを与えても大丈夫?
子犬やシニア犬と同様に、持病のある犬は代謝が変化していたり、体力が低下していたりすることで、通常とは異なる反応が出る可能性があります。主治医に相談してから与えるようにしてください。
ズッキーニに含まれている栄養素は?
淡白であっさりとした味わいのズッキーニ。それもそのはず、約9.5割が水分、残りの約0.5割がそのほかの栄養素と、ほとんどが水分で構成された食材です。含まれている栄養素の特徴や働きをそれぞれ見ていきましょう。
水分
ズッキーニ100gのうち94.9gと、大部分を占めているのが水分です。人と同じく犬も体の約60%は水分でできていて、水分は体内で体液となり全身を巡ります。体液は酸素や栄養分などの重要な成分を全身の細胞に届け、代わりに老廃物を受け取り、尿として体外へ排出する働きを担っています。
カリウム
主要必須ミネラルの一つで、体内の水分バランスを調節します。ナトリウムを排泄して血圧を抑える作用やエネルギー代謝、神経の活動にも関与します。
βカロテン
体内で活性酸素の発生を防ぐ作用があります。必要に応じてビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康を維持したり免疫を保ったり、目の機能に関与します。
ビタミンC
体内でコラーゲンを作るときに働く成分です。活性酸素を除去する抗酸化作用があり、病気やストレスへの抵抗力を強くしたり、動脈硬化や心疾患の発生を予防したりします。
ククルビタシン
ウリ科の植物に特有のステロイドの一種で、苦味を感じさせる成分です。微量なため、通常は苦味を感じるほどではありませんが、前述したように稀に含有量の多いものがあり、それを食すと食中毒を起こすことが報告されています。
食物繊維
ズッキーニには、水溶性植物繊維(全体の0.2%)と不溶性食物繊維(全体の1.1%)が含まれています。不溶性食物繊維は、腸の中で水分を含んで膨らみ、便通を改善する作用があります。消化管の中で水に溶けてネバネバとした形状になる水溶性食物繊維は、糖やコレステロールの吸収を緩やかにし、スムーズに体外へ排泄させるよう働きます。
犬にズッキーニを与えるメリットは?
ズッキーニは、低カロリーでヘルシーな食材です。上記のような栄養素が摂取できるほか、薬膳では体の熱を取るのに役立つと言われているので、夏バテ予防が期待できるでしょう。
ズッキーニを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
食物アレルギーは食べる回数の多いものに対して起こります。犬がズッキーニを食べる機会はそれほど多くないため、ズッキーニアレルギーを発症する可能性はそれほど高くないでしょう。ただし、以下のようなアレルギーを持つ犬に対しては、注意が必要です。
かぼちゃにアレルギーのある犬
ズッキーニはかぼちゃの仲間であるため、かぼちゃアレルギーの犬は要注意。
ブタクサにアレルギーのある犬
人の場合、ブタクサアレルギーの人がズッキーニやバナナなどで口や唇に痒みや腫れを起こす「口腔アレルギー症候群」を発症する可能性があると報告されています。犬の場合の詳細はまだわかっていませんが、花粉にアレルギーのある犬は、念のためズッキーニを食べた後に唇の腫れや喉の違和感が出ていないか注意しておきましょう。
【アレルギーを起こした場合の症状】
犬がズッキーニでアレルギーを起こした場合、以下のような症状が出ると考えられます。
下痢
食べた当日から2〜3日以内に軟便または下痢を起こすことがあります。通常原因となる食べ物の摂取をやめると症状は治ります。
嘔吐
食べた直後から半日程度の間に嘔吐が起きることがあります。原因となる食べ物を吐き出すと、その後、体調は回復します。
皮膚のかゆみ
目や口、耳、背中などに痒みが生じます。激しく掻くことで皮膚が赤くなり、ただれることもあります。
元気がない
全身の痒みや消化器官の不調から元気がなくなったように見えることがあります。
目の充血
主に瞼の内側の粘膜に充血が起こります。
外耳炎
外耳炎を繰り返す場合があります。アレルギーにより外耳道に痒みが出て掻きむしるため、外耳炎が治りにくいことがあります。
【アレルギーを起こした場合の対処法】
犬にズッキーニを与えた後、いつもと違う様子が見られたら、まずはズッキーニを続けて食べさせないようにしましょう。そうすることで症状がなくなれば、しばらく様子を見ていて構いません。しかし、繰り返す激しい嘔吐や下痢が見られる場合は、脱水症状を起こす恐れがあるため、早めに動物病院を受診しましょう。その際は、数日以内に食べたものがわかるメモを持参すると診断に役立ちます。
また、普段から目や口の周り、耳や背中の痒みがある場合も、今、食べているものがわかるようにして動物病院を受診しましょう。食事アレルギーの可能性があるかどうかを診てもらえます。
犬にズッキーニを与える際の1日あたりの適量は?
犬の場合、1日に必要なエネルギー量の1割程度までであれば、ドッグフードをほかの食べ物に置き換えても、栄養学上は問題はないとされています。ただし、ズッキーニは水分が多いため、上記の範囲内でも与える量が多いと消化不良を起こすことがあります。以下、犬の体重に対するズッキーニの摂取量を参考にしつつ、少しずつ与えてください。
・5kg未満…小さじ1杯程度
・5kg以上10kg未満…大さじ1杯程度
・10kg以上20kg未満…大さじ2杯程度
・20kg以上30kg未満…大さじ3杯程度
・30kg以上…大さじ4杯程度
犬にズッキーニを与える際のおすすめの調理法は?
犬に与えるズッキーニは消化しやすいように調理して与えましょう。注意点は次の通りです。
細かくカットして火を通す
犬の消化能力は、野菜の消化にそれほど長けていません。野菜を与えるときは消化しやすくするため、なるべく細かくカットし、茹でる、蒸すなど火を通してから与えましょう。
皮をむくとより消化しやすい
ズッキーニの皮も食べることは可能です。ただ、実の部分と比較すると消化しにくい部分ではありますので、消化能力が衰えている子や子犬、シニア犬の場合には皮をむくか細かく刻んで与えることをおすすめします。
生で与えるならすりおろす
生で与えると、ビタミンCなどの熱に弱いビタミンを摂取しやすいという利点があります。ただし、そのままでは消化しにくいので、すりおろして与えます。
犬にズッキーニを与える際の注意点は?
最後に、ズッキーニを与える際に気をつけるべき点を確認しておきましょう。
消化不良やお腹を下すので与え過ぎない(適量を守る)
ズッキーニは食物繊維や水分を多く含むので、一度にたくさん食べ過ぎると消化不良や下痢などを起こします。与える量には十分に注意しましょう。
初めて与えるときは少量から与える
アレルギーを引き起こす可能性があるので、どんなものでも初めは少量から与え、様子に変化がないかをよく見極めてください。
苦味のあるズッキーニは与えない
繰り返しになりますが、人の場合、ズッキーニなどのククルビタシンを含む食物の摂取により、嘔吐や下痢などの中毒症状を起こしたという報告があります。犬においても、大量に与えたりせず、また苦味のあるズッキーニは食べさせないようにしましょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。