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Animal Life Partner代表。ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、製品開発など幅広く活動。
愛犬がうんちを食べているのを見てビックリした経験を持つ飼い主も多いでしょう。人間にとっては少し受け入れがたい行動であり、どうしてうんちを食べるのか不思議ですよね。今回は、Animal Life Partner代表で獣医師の丸田香緒里先生に教えていただいた、犬がうんちを食べる理由や健康面への影響、やめさせたいときに飼い主がとるべき行動などを解説していきます。
目次
- 犬はなぜうんちを食べるの?
- 犬がうんちを食べる理由は?
- 子犬期と成犬期でうんちを食べる原因は違うの?
- 犬がうんちを食べた場合、健康面に影響はあるの?
- 犬がうんちを食べるのをやめさせた方がいいの?
- 犬にうんちを食べさせないための対策は?
- 犬がうんちをしたときの正しい処理方法は?
犬はなぜうんちを食べるの?
犬がうんちを食べることを食糞行動といいます。食糞行動は一般的に子犬の頃によく見られます。というのも、母犬は子犬を育てる際、子犬の肛門や会陰部(えいんぶ)をなめてうんちや尿の排泄を促すとともに、排泄物を食べることがあります。子犬は母犬の姿を見ているので、その行動を真似ていると考えられています。また、うんちに含まれる未消化物に興味を示し、うんちを食べてしまうこともあるようです。
犬がうんちを食べる理由は?
犬がうんちを食べる理由は母親の真似だけとは限りません。他にどんな理由があるのでしょうか。以下、具体的に説明していきます。
好奇心で食べている
排泄物以外に好奇心を刺激されるようなものがない環境だと、うんちに興味を示して食べてしまうことがあります。
退屈なのでおもちゃ代わりにしている
遊びが足りなかったり、犬だけで遊べるおもちゃがなかったりした場合に、うんちをおもちゃの代わりにすることがあります。これは、おもちゃを与えることで対策できるかもしれません。
栄養不足や消化不良
うんちの中にまだ消化されていないフードがあったり、フードの香料がうんちの中に残ったりしていると、うんちを食べることがあります。また、食事の量が足りていなくてお腹が空いているという場合も考えられます。
排泄物を片付けるつもりで食べている
飼い主が排泄物を片付けるのをお手伝いするつもりで、うんちを食べてしまう犬がいます。うんちをしたらすぐに犬をうんちから遠ざけて、片付ける姿を見られないようにしましょう。
飼い主に注目されたい・かまって欲しい
うんちを口にすると飼い主が犬に声をかけるため、「遊んでくれている」と勘違いしてしまう犬もいます。飼い主の反応を楽しみにしてしまっているので、犬に声をかけずに黙ってうんちをしまい、大きなリアクションはとらないでおきましょう。うんちをくわえて運んで来た場合は、きちんと怒るか、無視するなどの対策をとる必要があります。
寄生虫がお腹にいる
犬のお腹に寄生虫がいる場合、寄生虫のせいで消化がうまくいかず、未消化のフードがうんちに入っていることがあります。そのため、うんちを食べてしまうのです。
子犬の頃のクセが抜けない
子犬の頃の食糞のクセは見つけたら叱るなどのしつけをしないと、成犬になっても習慣として残ってしまう犬もいます。
うんちを隠そうとしている
うんちを食べたときに飼い主が強く怒りすぎると、うんちをすると怖いことが起きると学習してうんちを隠すために食べたり、うんちを我慢するようになってしまうこともあります。
子犬期と成犬期でうんちを食べる原因は違うの?
子犬期によく見られる食糞行動ですが、成犬期になってからうんちを食べるようになる子もいます。それぞれの場合でうんちを食べる原因が違いますので、詳しく解説していきます。
子犬期にうんちを食べる原因
好奇心やおもちゃで遊ぶ代わりに食べたり、寄生虫がお腹にいたりするケースは子犬に多く見られます。また、子犬期も成犬期も共通の原因として、飼い主の興味を引きたくて食べることが多いです。環境の変化などで注目してもらえなくなった場合、食糞することで飼い主の気を引くということがあります。
成犬期にうんちを食べる原因
子犬の時にはうんちを食べなかったのに、成犬になってうんちを食べるようになった場合は、病気などで食事中の栄養分がきちんと吸収できていない状態が考えられます。また、上記のような環境の変化によって飼い主さんの気を引きたくて食べることもあります。
うんちを食べやすい犬種はある?
うんちを食べやすい犬種はとくに決まりはありません。食糞行動はおもに子犬で見られますが、成犬になってもその癖が治らない場合があります。また、食欲旺盛な子、成長期で食事量が十分でない子に多く見られます。
犬がうんちを食べた場合、健康面に影響はあるの?
基本的に犬がうんちを食べても健康面に問題はありません。ですが、万が一、寄生虫などに感染していた場合、排泄したうんちに含まれる寄生虫を口にすることで、再び感染してしまうリスクがあります。
犬がうんちを食べるのをやめさせた方がいいの?
犬の健康面ではあまり問題がないといっても、ペットとして家庭で飼う上では、なるべくやめさせた方がいいでしょう。食糞した口でいろいろなものをなめてしまうので、家庭内の環境として衛生的とはいえません。
犬がうんちを食べることが多い場合は病院に行くべき?
習性などでうんちを食べている場合、病院ではしつけ面を治すのはなかなか難しいです。しかし、栄養不足や病気のせいで食糞をしている可能性もあるので、一度かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
犬にうんちを食べさせないための対策は?
食事や体調面で気をつけたいことや、しつけの仕方など、家庭でできる対策を教えていただきました。
食事の量や種類を見直す
食事の量が足りないと、栄養を補給しようとうんちを食べてしまうことがあります。食事の量がちょうどいいか見直しましょう。愛犬の適切な量がわからないときは、動物病院に相談するのも良いと思います。また、人工香料が入っているフードだと、フードの匂いがうんちに残っていることがあるので、人工香料などが含まれていないフードを選んで与えるようにするといいでしょう。
十分に運動させる
遊びが足りないとうんちを食べてしまうことがあります。好奇心を満たすように普段からボールなどで遊んだり、お散歩に連れていったりしましょう。
コミュニケーションをとる時間を増やす
一緒に遊び、コミュニケーションをとる時間を増やしましょう。犬からの「遊ぼう」という誘いに応じるのではなく、飼い主からきちんと遊びに誘うことでいたずらにうんちを食べることがなくなります。犬の誘いに応じるのが続くと、気を引くためにいたずらをするようになる場合があるため、飼い主からアクションを起こすことが大切ですよ。
留守番時にはおもちゃを置いておく
留守番時に犬がうんちを食べることは止められません。ですが、ひとりで退屈しないようにおもちゃを置いておくことで、多少の効果が期待できるかもしれません。
犬がうんちをしたときの正しい処理方法は?
食糞行動を防ぐためには、うんちをしたら速やかに片付けることが一番大切です。犬がうんちを食べてしまっても叱るのはやめておきましょう。うんちをした後に大きな声を出して、「食べないで!」と叫ぶと、怒られたと感じ、便をすること自体を我慢してしまうことがあります。大きな声で叱るときは、便を口にしようとした瞬間のみにしてください。
うんちよりもおやつの方がおいしいと学習させる
犬がうんちをした後、便のにおいをかいで少し顔を離した際に、おいでと声をかけておやつをあげ、ほめてあげるといいでしょう。「排泄後にうんちを食べないでいるとほめられる」と学習してくれるようになります。
第2稿:2021年11月19日更新
初稿:2021年3月30日公開
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。