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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
犬が夜になると吠えてうるさい、夜鳴きが止まない、と頭を抱える飼い主は意外と多いもの。ご近所迷惑も心配だし、睡眠不足は家族の心身の健康にまで影響します。犬が吠えるのは単なる意思表示だけでなく、いくつかの原因が考えられます。
この記事では、犬が吠える理由から、夜中に吠える原因とその対処方法、さらに動物病院へ行った方がよいケースなどを解説します。夜鳴き対策に有効なお部屋の防音対策も合わせて参考にしてみてください。
目次
- そもそも犬はどうして吠える?
- 犬が夜吠える理由
- 夜吠える犬への対応は?
- 夜鳴きには防音対策もしながら対処しよう
- まとめ
そもそも犬はどうして吠える?
犬が鳴いたり吠えたりするのには、必ず理由があります。
「無駄吠え」や「夜鳴き」などと呼ばれて、困った行為のように捉えられてしまうことがありますが、これらは何らかの理由がある犬の意思表示の一つです。
そのため、犬が吠えた際に「うるさい!」「吠えるな!」と叱ると、吠えれば飼い主さんにリアクションしてもらえる、構ってもらえると学習し、より吠えやすくなることもあります。叱ることでやめさせようとしても、やめ方を教えなければ、何も解決しません。
そのほか、犬が吠える理由には「警戒」や「要求」、「不安」や「痛み」、「興奮」などがあります。中には吠えること自体が、その犬にとってのストレス発散方法になってしまっているケースもあります。
犬が吠えるのを止めさせたい場合は、なぜ吠えているのか、原因をきちんと見極めて対応することが重要です。
また、犬の中には興奮しやすい、警戒心が強いなど「吠えやすい性質」を持っている、使役犬としての特性から「吠えるのが得意」な犬種などがいます。もちろん個体差はありますが、次に紹介するのはそういった特性を持っているとされる犬種です。これから犬を迎えようと検討している人は、住環境を考慮した犬種選びや、吠え癖がつかないトレーニングを自分でしっかり行う覚悟も必要です。
吠えやすい犬種と、性格や特徴などそれぞれの犬種について詳しい記事はこちらから!
<テリア種>
>ケアーン・テリア
犬が吠える理由についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
犬が夜吠える理由
犬が夜中に、家族が寝静まってから大きな声で吠えると困りますよね。犬に何かあったのかと心配してベッドから起きて見に行くと大喜びでシッポを振っていた、なんて話も。そこで、なぜ夜に吠えるのか、考えられる原因を紹介していきます。
寂しさや不安
夜になると犬が吠えて困っている、という場合、もしかしたら犬は寂しさや不安を感じて訴えているのかもしれません。
夜、家族みんなが寝室に行き、犬だけが取り残された後に吠える場合は、「寂しさ」が原因のことがほとんどです。また、夜中に目を覚ましたときに、飼い主や家族がいないことに気が付いて寂しくなり、鳴いたり吠えたりすることもあります。
特に子犬の夜鳴きの原因の多くは、これらの寂しさや不安です。慣れない環境や寂しさに、「ぴぃーぴぃー、クーンクーン」と鼻鳴きをします。
眠くない、もっと遊びたい、構ってほしい
子犬や若い犬に多いのが、夜になってもまだ体力が余っていて、もっと遊びたくて吠えるケースです。留守番が長時間におよぶ場合などによく見られるほか、日中たっぷり睡眠を取っているため夜になっても疲れていない場合、飼い主とのコミュニケーション不足からストレスや寂しさを訴えている場合があります。
お腹が空いた! トイレに行きたい!
「お腹が空いている」「トイレに行きたい」「トイレが汚れているからきれいにして!」と訴えているケースも。また、犬が過ごしている部屋の室温や湿度が快適でない場合、その居心地の悪さを訴えていることもあります。
こんなケースは要注意! 病気やケガのサインかも
これまで夜吠えたり、夜鳴きをしたりしなかったのに、ある日突然し始めた場合は、病気や何らかの不調を疑いましょう。
その日、愛犬に何か変わったことがなかったか思い返してみてください。例えば、ドッグランに行ったり他の犬と遊んだり、来客があったりしませんでしたか?
また、吠えたり鳴いたりすること以外に、いつもと違う様子がないかよく観察してください。どこか痛がっていないか、触られると嫌がる箇所はないか、食欲はいつも通りか、水はきちんと飲んでいるかなどチェックします。
愛犬に何か異変があったり、不安があったりする場合は、動物病院を受診して相談しましょう。
老犬の場合は認知症かも!?
老犬は認知症の発症によって、夜鳴きの症状が出ることがあります。寂しげな鳴き方だけでなく、激しく吠えることもあります。また認知症でなくても、高齢になって夜鳴きをするようになることもあります。加齢によって目や耳が悪くなり、これまで平気だったことに不安を感じるようになっていることが原因だと考えられます。
例えば、家族の就寝中もひとりで過ごせたのに、急に不安感を持ち、吠えたり鳴いたりして飼い主に訴えるようになります。
寝たきりなどで動作の介護が必要になった犬が、床ずれなどの痛みで夜鳴きをすることもあります。
老犬の夜鳴きについてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
夜吠える犬への対応は?
犬の夜鳴きや夜吠える原因を見極めて、適切な対応をすることが大切です。いずれのケースでも、すぐの解決は難しいかもしれませんが、いろいろな方法を試していきましょう。
▶原因が「寂しさや不安」の場合
ひとりにされたことで吠えたり、鳴いたりしている犬が心配で様子を見に行ってしまうと、「吠えれば(鳴けば)飼い主が来てくれる」ということを学んで、吠えることが癖になってしまいます。この場合の最善の対処法は「放っておくこと」です。昼間に散歩などでしっかり運動をさせて、適度に体が疲れていれば熟睡でき、夜の吠えや興奮が抑えられるケースはあります。
また、狭い空間の方が落ち着く犬もいるため、ケージをタオルなどで覆ってみるのも一案です。
もし引っ越しや部屋の模様替えをしたばかりの場合、愛犬の不安は慣れない環境が原因の可能性も。愛犬が安心できるように近くで寝てあげたり、飼い主の匂いが付いた衣類やタオルを犬の寝床に置いてあげたりするとよいでしょう。
夜鳴きや夜吠える行為の他に、下痢や嘔吐、足を噛むような自傷行為などがある場合は、極度の不安から問題行動を起こす分離不安症かもしれません。獣医師やトレーナーなど専門家に相談することで早期に解決できるでしょう。
▶原因が「眠くない、もっと遊びたい、構ってほしい」場合
お散歩の時間を長く取る、寝る前にたっぷり遊んであげるなどして、愛犬の体力発散と心が満たされる愛情表現を意識してみましょう。
▶原因が「お腹が空いた!トイレに行きたい!」などの場合
お腹が空いて吠えるようなら、与えるご飯の総量は変えずに配分を変えて、夜ご飯の量を多めに配分してみましょう。
その際、注意したいのがおやつを与えるタイミングです。夕食後に犬が落ち着いている時におやつを与えるなど調整してみてください。寝る場所がクレートであれば、犬がクレートに入ったタイミングで与えると良いでしょう。そうすれば、クレートトレーニングも同時に行えます。
吠えてから食べ物を与えると、吠えればもらえると学習してしまう可能性があります。必ず、吠える前のタイミングで与えるようにしましょう。
トイレに行きたがって吠える場合は、犬の寝る場所にトイレを設置する、寝る前に排泄をさせるなどの工夫をしましょう。
また寝床の居心地が悪いケースでは、寝床が快適か、室温の確認や敷物が汚れていないかなどをチェックします。
▶原因が「認知症」の場合
吠える理由は、飼い主に近くにいてほしかったり、お腹が空いたり、のどが渇いていることを訴えているなどさまざまです。そのため愛犬の要求を理解してあげることが重要です。
また、昼夜逆転してしまわないように日中に散歩をたっぷりして、夜はしっかり眠れるようにしてあげることも意識しましょう。
認知症の夜鳴きは解決が難しく、獣医師の判断で精神安定剤や睡眠薬を導入するケースもあります。
▶原因がわからない場合
理由がわからない場合は、身体の不調がないか動物病院へ相談することをおすすめします。
また、動物病院の専門科目に「行動診療科」があります。犬の問題行動に対して、心の病や脳の異常、健康上の問題などさまざまなアプローチで診断し、治療法を提案してくれる診療科です。原因不明の夜鳴きの相談にもおすすめです。
夜鳴きには防音対策もしながら対処しよう
犬が夜吠えたり夜鳴きをしたりすると、家族が眠れないだけでなく近所迷惑も心配になります。いままで紹介した原因ごとの対処法を取り入れても、夜鳴きが改善するまでは時間がかかることもあります。
そこで、平行して防音対策をしながら対処することをおすすめします。例えば、厚手の布などでケージをカバーすれば、犬の鳴き声が軽減します。薄暗い場所がリラックスするという犬も多いので、防音対策と一石二鳥です。
ケージにカバーを付けた際は、換気や温度管理にも注意を払います。犬にとって最適な室温の18~22℃になるように調整してあげましょう。
また部屋の窓に防音カーテンを設置したり、壁に防音パネルやシートを貼ったりしてもよいでしょう。
まとめ
犬が鳴いたり吠えたりするのには必ず理由があります。愛犬の夜鳴きや夜吠えで悩んだら、決して頭ごなしに叱ったりするのではなく、なぜ吠えるのか、愛犬を注意深く観察し、吠えるときの状況や気持ちを把握することが解決への第一歩です。
場合によっては、身体的な不調を訴えて吠えているかもしれません。原因がわからず対応に悩んだら、獣医師やドッグトレーナーなどの専門家に相談しましょう。