日傘のスキをなくしたら妖怪っぽくなった話
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目次/ INDEX
「まぜそば」ブーム火付け役のお店であり、埼玉県を中心にチェーン展開をする濃厚ガッツリ系ラーメンチェーン「ジャンクガレッジ」。
看板メニュー・まぜそばの大きな特徴は、太さの異なる3種類の麺とうま味が凝縮したスープ。そして自分好みにカスタマイズできる多彩なトッピングと、まさに“ジャンク”な魅力に溢れています。
そんな同チェーンは、2007年に1号店を東京都品川区大崎にオープン。その後、じわじわと勢力を拡大し、現在は埼玉県を中心に22店舗をチェーン展開。近年では、2020年8月にカインズ羽生店、2020年11月にカインズ朝霞店を立て続けにオープンして、ホームセンターという新しいフィールドでも新規ファンを開拓しています。
ジャンクガレッジを運営するのは「株式会社 松富士食品」。つけめんブームの立役者として知られる「六厘舎」や「舎鈴」を展開する東京の企業(本社・千代田区)です。しかも、かつては千葉や東京、山梨、岡山などにもジャンクガレッジの店舗があったようなのです。
なぜジャンクガレッジだけが、埼玉のローカルチェーンとして生きていく道を選んだのか? その謎に迫るべく、カインズ羽生店を訪ね話を伺いました。
——まずはジャンクガレッジの2枚看板である「まぜそば」と「ラーメン」の特徴を教えてください!
まぜそば。トッピングは、ヤサイ、ニンニク、アブラ、チーズ、辛味、エビマヨ、ベビースターがすべて無料(写真は全増し)。チャーシュー(1豚増し~10豚増し)、半熟玉子と味玉も有料で追加できる
ラーメン(濃厚豚骨醤油ラーメン)。トッピングはヤサイ、アブラ、ニンニクの3種(写真は全増し)。この見た目からは想像できないほどライトな味わいで、意外と食べやすいのだとか
——ラーメンは、いわゆる「二郎インスパイア系」ですよね。
ジャンクガレッジ
そうです。敷居が高いと思われていた「二郎系」というものを、もっとたくさんの人に知ってもらって、楽しんでもらいたいという思いがあります。
——なるほど。
ジャンクガレッジ
そのためにスープも麺も、食べやすく重たくならないように仕上げていますし、量も一般のラーメン屋さんに比べると多いほうですけど、二郎系よりは控えめにしてあります。
——今日はまぜそばを食べさせていただきましたが、見た目よりも重くなかったです。
ジャンクガレッジ
創業当時は一部のラーメンファンをターゲットにするという戦略で、とにかくガツン! と尖った味だったんですけど、チェーン展開していくにあたってたくさんのお客さんに食べてもらうために、良い意味で食べやすく、かつ丸くなり過ぎず、微妙なところを攻めています。
——まぜそばはどのように生まれたんですか?
ジャンクガレッジ
ルーツに「油そば」、二郎系で言うと「汁なし」があって、その基本形は“かえし”に麺を絡めて食べるというスタイルです。そこに創業者の高山は、かえしと旨味を凝縮した豚骨スープに、特注の太麺を絡めるというスタイルを生み出しました。
——油そばとは別物なんですね。
ジャンクガレッジ
あとはトッピングの数ですね。当時は、油そばや汁なしの上に乗るものと言えば、メンマ、ナルト、海苔などラーメンの上に乗るのと同じものでしたからね。そこが、まぜそばは全く違います。
——まぜそばもラーメンも、現在は太麺1種類だけでなく、太さの違う3種類の麺を混ぜ合わせた特注麺を使用しています。いつから、この特注麺にしたんですか?
ジャンクガレッジ
社内では「3種混合麺」と呼んでいるんですが、2年ほど前からです。
3種類の麺を同時に茹でることで、それぞれ歯ざわり・のど越し・触感が異なる仕上がりになるのだとか
——意外と最近なんですね! 3種類の食感が違和感なく共存していて、細い麺もあるから重さが軽減されているのかなと感じました。
ジャンクガレッジ
ありがとうございます。実は、麺を変えるときはすごく不安だったんです。以前はごわごわした太麺で、それはそれで好きなお客さんがたくさんいました。ただ、カインズさんのような商業施設などにオープンすると、ご家族連れの方やお年寄りの方もいらっしゃいます。
——客層が一気に広がるわけですね。
ジャンクガレッジ
そういう方たちから、「ちょっと重い」という声もあったんです。もちろん好意的な意見も多くあったんですが、幅広い層に喜んでもらうために、太い麺で食べごたえを残しつつ、細い麺で食べやすさも表現しているんです。
——値段もラーメン・まぜそば共に730円(税込/2022年8月時点)と、企業努力を強く感じました。
ジャンクガレッジ
値段に関しては弊社の社長・三田遼斉が掲げた「旨い安い腹いっぱい」というキーワードがありまして、それに沿った商品じゃなきゃダメだと。だから値段にもこだわって、同業他社さんに比べると100円から150円ぐらい安く設定しています。
メニュー表の中にトッピングのシステムが記載されているので、初心者も安心して注文できる
——メニュー数を絞っているのは、意図的なものでしょうか?
ジャンクガレッジ
はい。まぜそばとラーメンの二本柱を常に磨き続けるというのが大前提としてあります。その中で3ヶ月に1回ぐらいのクールで季節商品を販売しています。
——現在(2022年6月)はどんな商品を提供しているのでしょう?
ジャンクガレッジ
夏メニューの「冷しまぜそば」です。こちらは初めて出した年に好評で、夏の定番商品になりました。ただ、ラーメンとまぜそばの2本柱を脅かすほどの商品は、そう簡単に生まれないんですよね。
——松富士食品さんは、つけめんの「六厘舎」や「舎鈴」、タンメンの「トナリ」など、さまざまなラーメンチェーンを展開していますが、どういう経緯でジャンクガレッジが生まれたのでしょうか。
ジャンクガレッジ
2005年に、東京都品川区大崎に六厘舎がオープンして、2007年に六厘舎の隣の倉庫を改装してジャンクガレッジがオープンしました(のちに東大宮に移転)。松富士食品のセカンドブランドを立ち上げようと、当時のナンバー2だった高山竜が創業したんです。
——かなり力を入れてたんですね。
ジャンクガレッジ
その背景には、「とにかくお客様も従業員も楽しめるようなラーメン屋を作りたいよね」というのがあって。昔のラーメン屋って頑固親父がいて、朝から晩まで働き詰め……みたいなイメージがあったじゃないですか。それを変えていこうという思いがあったんです。
——現在のジャンクガレッジは緑がイメージカラーで、外装も内装も明るくて、スタッフのユニフォームは清潔感があり、BGMもおしゃれですが、創業当時からそのスタイルだったんですか?
ジャンクガレッジ
いや……大崎の1号店は7席しかない小さなお店だったんですけど、従業員はラフなスタイルで、BGMはハード・ロックやへヴィ・メタルを流していました(笑)。
——初見で入るにはハードルが高いですね(笑)。
ジャンクガレッジ
大崎から東大宮に移転したときも、赤いカウンターに黄色い看板で、いわゆる「二郎系」を彷彿とさせる見た目でした。当時は今よりも二郎インスパイア色が強くて、コアなお客さんに支持していただいていたんです。
——それだと二郎系好きじゃないと近寄りがたかったでしょうね。
ジャンクガレッジ
ちなみに、こちらが当時のロゴと現在のロゴです。
豚の表情もなんだか健康的になっている!
——並べて見ると、びっくりするほどポップになりましたね(笑)。
ジャンクガレッジ
そうなんです(笑)。会社の経営理念として、「価値ある食事で人々の喜びに貢献 日常のくらしに貢献」という使命を掲げているんですが、より多くの人々に支持していただくには、店舗展開が必要不可欠ですし、より広い客層の方にご利用いただけるブランドにしなければいけません。
——経営理念も創業当時から変化したということですか?
ジャンクガレッジ
変化してますね。創業当時の経営理念は「一瞬の感動を妥協なき精神で伝えたい」「とにかく最高の一杯を作るんだ」という熱いものでした(笑)。店舗数を増やしていく思想に変わったときに、「人々の日常の暮らしを豊かにしたい」という現在の理念が生まれたんです。
——それにしても、大崎でスタートしたジャンクガレッジが、どうして埼玉を拠点にチェーン展開することになったのでしょうか。
ジャンクガレッジ
2006年に、埼玉県鴻巣市に「次念序」という、つけめんの新店舗がオープンしまして、ありがたいことにすごくお客さんに恵まれました。そういった埼玉での成功例に加え、埼玉には「武蔵野うどん」という麺文化があって、太麺に馴染みがあるんです。
——なるほど! 受け入れらやすい土壌があったんですね。
ジャンクガレッジ
ええ、そこが埼玉を選んだ大きなポイントでした。お陰さまで、ジャンクガレッジもオープン後は大変好評で。
店内のパーテーションには、数々の「それがさいたま」ネタが(Twitterでも公募中)!
——過去には東京、千葉、山梨、岡山などにもジャンクガレッジの店舗があったようですね。とはいえ、今は撤退していますが……。
ジャンクガレッジ
正直申し上げますと、成功体験は慢心しやすいもので……「ここで成功したんだから、あっちでも大丈夫だろう」と、いろいろな地域に広げていったら上手くいかなかったんです。我々も未熟だったんですよね。
——失敗の原因は何だったのでしょうか?
ジャンクガレッジ
地域の食文化という点で、やっぱり太麺に馴染みがないと受け入れにくかったんでしょうね。それで打ちのめされて、いったん拡大路線を止め、地に足をつけて埼玉でやろうと。
——挫折体験もあったんですね。
ジャンクガレッジ
そこからは、おこがましいんですけど「埼玉県のソウルフード」と言われるようなブランドにしていきたいという思いで、現在の方針になりました。
——方針転換はいつのことですか?
ジャンクガレッジ
今から6年ぐらい前ですね。埼玉にジャンクガレッジを根付かせて、地域の人たちが誇りに思っていただけるようなブランドに育てるには、時間をかけてやっていくことが大事だなと思っています。
ユニフォームにも「SAITAMA」の文字が
——群馬県に1店舗だけあるのはどうしてなんですか?
ジャンクガレッジ
もともと埼玉県北部は熊谷に店舗があったんですけど、「群馬から来てるよ」というお客さんが結構いらっしゃったんです。
——アクセスも悪くないですしね。
ジャンクガレッジ
「もっと群馬寄りに店舗が欲しい」という声が多くて、より北にある深谷でもオープンしたんですが、その後実験的に群馬の太田に出店しました。ただ、今後も埼玉にこだわって規模を拡大していく方針は変わっていません。
——「着実に埼玉に根付いているな」という実感はありますか?
ジャンクガレッジ
そうですね。ラーメン屋さんに限らず、うどん屋さんやファミレスも競合なので、厳しいことは厳しいですけれども、地道にやってきたことは間違ってなかったなと。カインズさんの敷地に出店させてもらっているのも、それを証明しているのかなと思います。
——カインズは、ここ羽生と朝霞に出店しています。羽生に出店したきっかけは?
ジャンクガレッジ
まず羽生を選んだ理由としては、埼玉北エリアのドミナント戦略を考えると、もともとあったフォレオ菖蒲店(久喜)と熊谷店に続く格好の街だったというのが大きかったですね。
——なるほど。
ジャンクガレッジ
そんな時、当時沼地だったこの土地を切り開き、道路を通し、カインズをはじめ大型商業施設の集まる“新しいまち”を作るという話があり。
——おお!
ジャンクガレッジ
現在は基本的に「駅前」「ロードサイド」「商業施設内」の3つを軸に出店しているのですが、ここは「ロードサイド」かつ「商業施設内」という、格好の条件だったんです。
——朝霞店についてはいかがでしょう?
ジャンクガレッジ
朝霞も羽生と同様に、埼玉でのドミナント戦略を考えての出店ですね。こちらの場合は、志木、和光、北戸田と、より近隣に店舗があったので、商勢圏を構築する意味合いもありました。
——羽生店は、お客さんの層も普通の路面店とは違いますよね。
ジャンクガレッジ
カインズさんに来るお客様はファミリーやシニアが多いので、カウンターだけのお店は使いにくいんですよね。だからベビーカーでも入ってこられる使いやすいお店作りにしました。
——羽生店は独立型の店舗ですが、フードコートのような雰囲気で開放感があります。
料理の提供や返却はセルフの、フードコートスタイル
ジャンクガレッジ
基本的にお店を展開するときは、同じ厨房、同じ客席、同じ坪数にするんですけど、カインズ羽生店、フォレオ菖蒲店、太田店の3店舗で、フードコートスタイルを取らせてもらっています。
——レアなスタイルだったんですね。
ジャンクガレッジ
弊社はアメリカのチェーンストアを学ぶという取り組みをしていまして、私も実際に渡米し、現地のチェーンストアと飲食店を視察しました。アメリカではセルフスタイルが一般的なので、この3店舗でもそれを採用しています。
——羽生店は若い世代の家族も多いかと思いますが、次世代にも愛してもらうためには重要なことではないでしょうか。
ジャンクガレッジ
おっしゃる通りです。もともとのメインターゲットは大学生や、20代から30代の社会人だったんですが、その世代の方が今は結婚して子供ができて、家族で来店されること方多いんです。カウンターだけの店だと、どうしても家族では行きにくいですからね。
——まぜそばはシェアしやすいから家族連れにも合っていますよね。
ジャンクガレッジ
実際、フードコートでまぜそばを一杯頼んでシェアして食べるお客さんもいて、そういう意味でも楽しんでもらえているのかなと。
——今後もカインズ羽生店やカインズ朝霞店のように、路面店以外での出店は積極的に行っていきたいですか?
ジャンクガレッジ
もちろんです。ジャンクガレッジをより多くの方に知っていただくためには、カインズさんなどのお力を借りながら店舗展開していくことは必要不可欠です。実際、出店している地域では路面店に比べて認知度が断然高いということを、肌で感じています。
——ジャンクガレッジ目当てではないお客さんを取り込むチャンスですからね。
ジャンクガレッジ
カインズさんは、「買い物ついでに食事をしていく」という方が圧倒的に多いんです。すごくありがたい機会をいただいていますね。
・・・
一部のラーメンマニアだけではなく、幅広い層を取り込むために、味だけではなく店舗作りや出店先まで徹底して吟味するジャンクガレッジの姿勢は柔軟性に富んでいます。
そうでなければ、創業から十数年に渡って提供していた太麺を3種混合麺に変えたり、全国展開を取りやめ埼玉のローカルチェーンの道を選んだりといった英断はなかなか下せないはずです。
時流や周囲に流されることなく、自身のこだわりに徹するラーメン店も素晴らしいですが、お客さんのことを第一に考えて、ブラッシュアップしていくジャンクガレッジの経営方針も貴いもの。
ジャンクガレッジが「埼玉県のソウルフード」として、全国的に認知される日がやってくるのは、そう遠い未来ではないのかもしれません。
ジャンクガレッジ
ジャンクガレッジのまぜそばは他にはないオリジナルでして、濃厚なスープと“かえし”に麺を絡め、そこにお好みで6種類のトッピングが乗せられます。組み合わせによって何百パターンという食べ方をお客様に楽しんでいただけるのが最大の楽しさであり、売りですね。