なぜ猫はかわいいのか? 「猫社会学」の東大教授に話を聞いてみた
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目次/ INDEX
新型コロナウイルスの影響で減少していた海外からの訪日観光需要が、回復の兆しを見せている中、吸血性の寄生昆虫である「トコジラミ」の被害が増えています。
かつて「南京虫(ナンキンムシ)」とも呼ばれていたこの虫は、一度室内に持ち込んでしまうと駆除が難しい虫のひとつです。
トコジラミに刺された後の症状には個人差が大きいため、気づかないうちに数が増えて被害が広がることもあるのだそう。また、ダニや蚊に比べて情報が少なく、痒いと思って皮膚科に行っても、特定は難しいといいます。間違った対処をして、被害をかえって拡大してしまうケースも。
トコジラミを早期に発見し、深刻な状態になる前に個人にできることはあるのでしょうか?
大阪の害虫駆除会社、害虫バスターズの今西智洋さんに聞いてみました。
害虫駆除・防除会社「害虫バスターズ」の今西さん
トコジラミは、「シラミ」と名前がつきますが、カメムシの仲間に分類されます。サイズは成虫で5〜6ミリ。ゴキブリと同じく隙間を好む、圧迫習性を持つ生物です。基本的に夜行性ですが、昼間も暗い場所では活動しています。
トコジラミに吸血されると、チクッとした痛みがありますが、人によっては無症状なことも(画像提供:クリーンボーイ大阪)
体の色は褐色で、血を吸うと黒っぽく、厚みが増して丸っこく見えるのが特徴。カメムシの仲間というだけあり、大量に発生すると独特の悪臭が広がり、部屋に入ると分かるのだそうです。
かつて、冬には活動があまり見られなかったようですが、住環境が変わった今では日本列島のどこでも、年中見られるようになりました。
成虫になるまでの期間は、約1ヶ月。動物の血を食糧とします。血を得られなかった場合の寿命は1ヶ月に満たないものの、卵は1週間から10日で孵ります。繁殖率は高く、孵化したての幼体もすぐに吸血をはじめるので、何もしなければ爆発的に増えていってしまいます。
昨今問題になっている理由は大きく2つ。ひとつは人や物の移動が増え、それらを介してトコジラミの移動する機会も増えたこと。もうひとつは、蒸散型などの殺虫剤に含まれるピレスロイド系の薬剤に、トコジラミが耐性を持つようになったことです。
薬剤が効きにくくなったトコジラミは、「スーパートコジラミ」と呼ばれます。また、沖縄などで見られるネッタイトコジラミはそもそも薬剤がほとんど効きません。それも温暖化の影響もあってか、九州まで北上しているというのです。
わずか数ミリの虫、その存在に気づくのは、既に刺された後。特に夏は蚊やダニなど、その他の虫の被害も増えるなかで、トコジラミの被害だと見分ける方法はあるのでしょうか?
今西さん
蚊もダニも、トコジラミもアレルギー症状として現れるので、腫れ方は人によってまちまちなんですよね。ほとんど腫れない人もいれば、発熱する人もいます。体のどこを刺されたかを確認するのが、見分ける手がかりになります。
ダニは、多くの場合衣服に隠れる場所を噛むことが多いのだそう。一方トコジラミは、衣服から露出した場所を狙います。
また、ダニはジメジメと湿気が多いところを好むなど、発生した室内の環境がダニに適している環境にある場合は、ダニの可能性が疑われます。
トコジラミには、湿度を好む性質はありません。屋外を自力で移動するケースは稀で、ほとんどの原因は人や物を介した外部からの持ち込みです。
そのため、「トコジラミに刺されたかも?」と感じたら、真っ先にチェックするべきは、「最近不特定多数が出入りする施設に行っていないか?」と行動を振り返ること。
また、届いた配達物の段ボールや郵便物、特に国外など遠方から送られてきた物がなかったか、確認することも必要です。
もし、環境や条件に心当たりがあれば、トコジラミの可能性を疑ってみてください。
トコジラミの被害に心当たりがあったら、外出時に持っていたもの、あるいは疑わしい配達物は、袋に入れて虫が移動しないようにしっかり封をしましょう。万一トコジラミが荷物についていた場合に、被害の拡大を防止できます。
なお、外出時に着ていた衣服は乾燥機にかけたり、アイロンをかけたりして熱処理をするのがベスト。トコジラミは、卵を含め42度ほどから体を構成するタンパク質の変性が始まり、徐々に死滅します。
今西さん
トコジラミの卵に薬剤は効きません。成虫も水や洗剤で死ぬとは限らないのですが、熱であれば卵であっても駆除が可能です。駆除の依頼では寝具を丸ごと処理できる加熱乾燥車を使い、70度以上の設定で処理をしています。
薬剤が効かないトコジラミの卵(画像提供:クリーンボーイ大阪)
一方で思わずやりがちだけど、やってはいけない初期対応が2つあります。それは、ゴキブリなどに効くと謳われている蒸散型のピレスロイド系の駆除剤を使ってしまうことと、寝る場所を別の部屋に移すことだといいます。
しかしなぜ、駆除剤がいけないのでしょうか?
今西さん
もちろん死ぬ個体もあるのですが、ピレスロイド系の薬剤耐性があるトコジラミの多くは、生きたまま逃げるんですよ。逃げてしまうと、被害が他の部屋にも広がります。
では、寝る場所を変えてはいけないのは、どういうことなのでしょう。
今西さん
刺された場合は、既に寝具や寝巻きにトコジラミが潜んでいる可能性がありますよね。つまり、寝る場所を移すことは、その移動先の部屋にトコジラミを広げてしまう事態になりかねません。
初期対応において重要なのは、封じ込めること。トコジラミが出たからといって手元にある殺虫剤をかけたり、寝る場所を変えたりするのは思わずやってしまいそうな行動なので、いざというときに備えて、あらかじめ覚えておくのがよさそうです。
今西さん
トコジラミは夜行性のため、照明を点灯しておくことで、活動を抑えられます。エアコンで室内温度を下げることもトコジラミの動きを鈍くする効果があります。就寝する場所の周りにゴキブリなどに使う虫を補殺するトラップを設置してもいいでしょう。
トコジラミは体長わずか数ミリの小さな虫。最善を尽くしても、被害の拡大を防ぐ確実な方法はありません。究極的には、プロに依頼して部屋の隅から隅まで手を入れてもらう他ないのだそうです。
しかし、本当にトコジラミが原因か確証が持てず、プロに問い合わせるか迷っている間にも被害は広がっていきます。判断に迷う段階にある個人でも、ある程度の駆除をする方法はないのでしょうか?
今西さん
ゴキブリ用に売られているプロポクスル系の薬剤は、トコジラミにも効果があります。ただし、薬剤の効果が残るタイプで、アレルギーのある方や小さいお子さん、ペットとお住まいの方は、使う場所に充分な注意が必要です。
多くの場合、トコジラミは人の寝る場所の近くに潜んでいます。しかし人体への影響も考慮すると、寝具への使用は控えたほうがいいでしょう。
今西さん
一番いいのは凍らせるタイプの駆除剤ですね。物理的に冷気を当てる必要がありますが、トコジラミが潜んでいそうな隙間にスプレーするのも効果的です。
潜んでいそうなところを聞いたところ、ベットマット、シーツ、畳の隙間、家具の隙間、ふすま、障子、カーテン、木製家具の節、ソファの谷間など、特に自然素材の隙間やくぼみを好むとのことでした。
巾木と壁の間に残る、トコジラミの痕跡(画像提供:クリーンボーイ大阪)
しかし、自宅にプロポクスル系の殺虫剤や冷凍スプレーがない状態で遭遇してしまった場合、どうすればいいでしょうか。
今西さん
粘着テープで取るのがいいですね。潰すとプチっと音がして、吸血されていた場合は、血が出ます。トコジラミを介して感染症が広がった例を聞いたことはありませんが、なるべくなら手で触れない方がいいでしょう。
粘着テープで捕獲されたトコジラミ(画像提供:クリーンボーイ大阪)
トコジラミが広がっている可能性が濃厚になったとき、吸血させないようにすることも重要です。吸血させると、餌を与えることになるので、繁殖が加速してしまいます。
そうでなくても吸われると痒くなるのだから、吸血させないための工夫はぜひ知りたいところ。何か役に立つ道具はないか、聞いてみました。
今西さん
トコジラミは、ツルツルしているところを移動するのが苦手です。ブルーシートやビニールプール、空気を入れるタイプのアウトドア用のベッドなどは、トコジラミに近付かれにくいですね。
ただし、数が増えてくると天井を移動して、上から落ちてくることもあるので、万能とはいえません。最初に持ち込まれた数と性別にもよりますが、のんびりしていると数はどんどん増えてしまいます。
天井に広がるトコジラミの被害(画像提供:クリーンボーイ大阪)
繁殖が広がってからの対応は手遅れになってしまいそうですが、何を基準に行動を起こせばよいのでしょうか。これはすぐにでもプロにお願いするべき、判断基準になる条件を挙げてもらいました。
今西さん
まずは荷物が多い人ですね。トコジラミが潜む場所は少なければ少ないほどいいので、ご依頼いただく場合も、初めに物を捨てて減らしてもらう作業をお願いしています。
そもそも物の量が多い方や、ペットがいるなど地道な駆除が難しい環境にあるケースでは、個人で駆除し切るのは非常に困難です。
いっそ引っ越してしまう人もいるそうですが、持ち出した荷物にトコジラミがついていては、元も子もありません。時間が経てば経つほど、潜んでいる可能性がある場所も広がってしまいます。
プロに頼むと決めた場合、駆除にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。
今西さん
お問い合わせをいただいてから、まず被害状況を確認する必要があります。それから実施する日を決めることになりますね。作業には、だいたい1日かかるかと。
室内中に広がったトコジラミを完全に駆除するには、潜む可能性のある場所を隅から隅まで調べて処理を施さなければならず、多くの時間と手間がかかります。被害範囲が広がるだけ必要な作業も増えるため、早めに決断をしたほうが良いでしょう。
害虫駆除のプロフェッショナルの今西さんは、生きているトコジラミを目にする機会が多いにもかかわらず、自身はトコジラミに刺されるなどの被害にあったことはないと語ります。
自宅にトコジラミを持ち込まない方法はあるのでしょうか。ホテルなど不特定多数が利用する施設に滞在するときにできることを聞いてみました。
今西さん
まずは、痕跡をチェックすることですね。
トコジラミの存在を示す痕跡として、血糞と呼ばれる排泄物を確認するといいのだといいます。血糞は1〜2ミリ、黒色をしています。また、不水溶性で服につくと染みになるほか、触れるとねっとりした質感があるのが特徴です。
窓周辺に残る血糞の痕跡(画像提供:クリーンボーイ大阪)
今西さん
血糞が室内にあった場合は、注意して過ごす必要があります。特に疑わしいサインがなかった場合も、荷物を床に直置きするのはやめたほうがいいですね。
荷物はビニールシートなどの上に置いたり、バスルームに置いたりすることで、トコジラミが所持品に侵入しにくくなるのだそうです。
今西さん
ディートやイカリジンを含む忌避剤も効果があるので、荷物などに吹きかけておくのも予防になります。
外出時には、荷物の取り扱いに注意することが予防につながります。では、自宅ではどのような対策ができるのでしょう。
今西さん
コーキング剤で、トコジラミが好む隙間を埋めてしまえば、、潜む場所を減らすことができます。発生したときに駆除しやすくなりますね。
コーキング剤での処置は、トコジラミが発生してしまってからでも有効な手段だそうです。
コーキング処理作業をする今西さんのYoutube動画(「トコジラミ発生前後にやる事は?」より)
トコジラミを外から持ち込まない。持ち込んでも発見しやすい環境にしておくこと。もしも被害が疑われたら、封じ込める。それでも吸血を防げなければ、早めにプロに駆除を依頼する。
一度広がると駆除が困難とはいえ、あらかじめ予防し、初期に適切な対応を行えば被害を最小限に止めることは可能です。
気温も上がり、旅行も増えるこれからの季節。トコジラミを上手に遠ざけながら、楽しく過ごしたいですね。
今西さん
コロナ前の段階で、既にトコジラミが増えているという実感はありました。コロナの最中は、インバウンド需要と共に減っていましたが、ここのところは問い合わせが増えていて、被害が広がっているのを感じます。