埼玉県平野部なぜ暑い? 熊谷地方気象台と熊谷市長に聞いてみた
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「新しい趣味なら、砂金採りいいっすよ!」
突然の提案に、頭に「???」が浮かんだ。趣味に砂金採り? どういうことだ?
こんにちは。フリーランスでライターやWebデザイナーをしている松本と申します。
東京から山梨に移住してもうすぐ1年。住宅ローンに追われつつも、新しい生活を楽しんでいます。なにか新しい趣味でも始めようかなと知人に話したところ、冒頭の返事。
どうやら趣味として「砂金採り」が密かなブームらしい。その火付け役として伊藤亮太さんという、「砂金掘り師」を名乗り積極的に情報発信されている方がいると分かった。
伊藤亮太
ファイナンシャルプランナーとして活動するかたわら、砂金採りに関する啓蒙活動を行う。砂金による地域活性化を図るために「あなたの街でも砂金が採れる!? 〜令和時代の砂金採り入門〜」を出版。金貨や小判などの収集、自然金・砂金の収集家、金投資の専門家でもある。
本業はファイナンシャルプランナーだが、砂金採りの第一人者としてメディアに出演したり、本を執筆したりと積極的に活動している方だ。
伊藤さんに連絡をとり話を聞いたところ、「一回で数万円分の金が採れることもある」という。
伊藤さんの砂金コレクションから。一日でこんなに採れたという。「珍しい産地のため価格は付けられない」とのことだが、欲しい人は数万円でも出すそうだ。
な、なんだって!?
ひょっとして、砂金採りは儲かるのでは? 住宅ローンも繰り上げ返済できてしまうのでは!? いやむしろ、ローンなんて一回で返せてしまうのでは!!? そこで今回、伊藤さんの砂金採りに同行させていただけることになった。
結論から言うと、砂金採りは、夢中になれてお金も稼げる!? 最高の趣味だった。
ゴールデンドリームを夢見て、関東某所へ向かう。
「某所」というのは、場所を明かすと砂金採り目的の人が殺到してしまい、地元の人たちや施設などに迷惑をかける可能性があるためだ。
確かに、のどかな町が突然ゴールドラッシュに沸いたら住人は困ってしまう。砂金採りの魅力やコツ、探し方などは紹介するが、場所がはっきり分からないような写真や説明になることをご了承いただきたい。
伊藤さんと待ち合わせたのは、山の中のとある観光スポットからさほど離れていない川のそば。
伊藤さん
いえ、すぐそこですよー
本当にこんなところで金が取れるのだろうか? 心配をよそに、ずんずん進んでいく伊藤さん。
行動が迅速。大きな荷物は砂金採りの道具だろうか? 何が詰まっているのか。
河原に降りて、少し進んだ草むらの陰に着くと、伊藤さんは荷物を下ろした。
伊藤さん
砂金採りは今はまだメジャーな趣味じゃないので、好奇な目で見られることもあります。集中したいので、人目につかないここで着替えます
なるほど。「集中したい」とは、職人っぽい考え。その気持ちは後でこれでもかというほど思い知ることに。伊藤さんに言われるがまま、持ってきたウェーダー(胴付き長靴)に着替える。
準備OK! ウェーダーを着たのは初めて。
改めてあたりを見回したところ、普通の川。本当にここで砂金が採れるのか。砂金掘り師にしか見えない何かがあるのだろうか。
そんな砂金採りに使う道具は、最低限必要なものを伊藤さんから教えてもらっていた。参考にしてほしい。
砂金採り道具一式。パンニング皿、ウェーダー、ゴム手袋、スコップ(大小)、スポット、ガラス瓶、以上7点だ。
「パンニング皿」は聞き慣れない人も多いかと思うが、砂金採り専用の道具で、円錐形の皿に溝が入っている。これがないと始まらない。
伊藤さんのパンニング皿は、新品と違ってツヤがない。ツヤがあると砂金が滑って流れていってしまうためわざわざやすりで削ったとのこと。砂金採り専用の道具なのに、そのまま使うよりカスタマイズして使うところに職人っぽさを感じる。
滑りやすいという同じ理由で、パンがつくからといってフライパンでは駄目。「相当な熟練者ならできないこともないかも…」とのこと。テフロン加工してあるフライパンでは、せっかく採った砂金を流してしまいかねない。そんな悲劇を味わいたくなくて、せっかく持ってきたけど試すのはやめておいた。
「ウェーダー」はさきほど私が着ていた、胴付き長靴のこと。川にしゃがみ込むので必須。「ゴム手袋」は、取材時は秋の終わりだったため防寒仕様だ。
「スコップ(大小)」は砂金を含む土などを掘り起こすために必須。カッチャという専用の道具があるとよく、これはつるはし兼スコップのような道具。ホームセンターにはなかったためスコップで代用した。
伊藤さんの使い込まれたカッチャ。
「スポイト」はパンニング皿の上にある砂金を集めるのに使う。伊藤さんはこれもまた砂金採り専用の「スナッファーボトル」という道具を使っていた。パンニング皿といいこれといい、今まで全く知らなかった専門の道具がいろいろとあることに驚く。
伊藤さんのスナッファーボトル。スポイトよりも吸い取りやすいそうだ。
「ガラス瓶」は、スポイトで吸った砂金を入れるために使う。
欲張ってこぶしサイズの瓶を持ってきたが、伊藤さんから「そんなに採れる場所なら誰にも教えない」とつっこまれてしまった。
それくらい採れないと住宅ローンを返せないのでは? とも思ったが、現実に即した小瓶がよさそうだ。
ここで紹介したもの以外では、直射日光を避けるための帽子や、水分補給のための水筒などがあるといい。特に夏は熱中症に注意。
そう、砂金採りは1年中できるのだ。夏は川に入るので涼しいし、冬も熱中するのでさほど寒さは感じないという。冬は川の水位が下がるので探しやすい、とも。
私がごそごそと準備をしている間に伊藤さんはさっさと川に入っていた。本当に行動が早い。砂金掘り師はみんなこうなのだろうか?
伊藤さん
あ、ありますねー
え、早くない? 見つけるのも早いの?? 川に入ってから5分くらいしか経ってないような。
伊藤さんが見せてくれた砂金。え、どれだろう。
中央に、確かに金色に光るものが! これが砂金!?
松本
これが金なんですか
伊藤さん
そうなんです。輝いてるのが分かりますよね
そんなに簡単に見つかっていいのだろうか。だって金ですよ金。ゴールド。
伊藤さん
この川はすごいんですよ。実は昔、上流に金山があったところなんです。砂金のある川を探すには、周辺の歴史も調べてみるといいですね
松本
なるほど、それで今も金が採れるんですね。自分にも採れますかね?
伊藤さん
もちろん!
伊藤さんのお墨付きをもらったのでますます金への期待が高まる。
砂金採りにはいろんな方法があるらしい。まず教えてくれたのが、川辺に生えている草の根についた土から採取する「草根引き」という方法。初心者でも簡単で、見つかる確率が高いという。
川辺に生えている草を周りの土ごと掘り起こし、パンニング皿に乗せて水に沈める。草をほぐすようにし、根についた土を完全にパンニング皿に落とす。土を落とし切った草は、元の場所に埋め戻しておくも忘れずに。
松本
この川の中でここ、というポイントの見分け方はあるんですか?
伊藤さん
水の流れをイメージするといいですね
松本
水の流れ?
伊藤さん
川の形を見ると分かると思いますが、水が流れてきて留まるところに砂金が溜まりやすいんですよ
松本
なるほど、確かに!
伊藤さん
本当は教えたくないんですけどね(笑)
水の中で草をゆすぐ。
水中に沈めたパンニング皿を、円を描くように回し、中にある土を水に流していく。大きなものが流れたら、パンニング皿の溝があるほうを前方に20度ほど下に傾けた状態で水中で揺する。
砂金(金)は比重が重いので、パンニング皿の中でも下に沈んで溝に引っかかり、石や砂や泥は流れていく。
この力加減が難しい。ある程度大きく揺すらないと余計な土が出ていかず、かといって揺すり過ぎると砂金も一緒に出ていってしまう。
石などが流れた後に、砂金の次に比重が重い砂鉄も残るが、パンニング皿に再び水を入れてゆっくり揺らし、それぞれを分けていく。初心者にはこの微妙な加減も難しいところで最後まで完全にはできなかった。
そして、ついに…!
この金色の粒がもしかして…。慌てて伊藤さんに声をかける。
松本
伊藤さん! これ、ひょっとして…
伊藤さん
そうです、砂金です
松本
おお…
伊藤さん
結構ありますよ、これも、これも。もっとあると思いますので、確かめてみてください
松本
こんなに簡単に金が見つかるなんて…
伊藤さん
天の川みたいでしょう?
急にロマンチックな表現で面食らう。
でも、確かにそうかも知れない。自分の見つけた砂金が輝いているパンニング皿をよく見てみる。一番星見つけた、いや二番も三番もあるぞ! 確かに天の川だ。暗い宇宙に輝く星の集まりだ!
そのあとも、パンニング皿に残った砂鉄と金を、水を入れて揺すりながら慎重に分けていくがなかなかうまくいかない。力加減が難しく、砂金と砂鉄が一緒に動いてしまうのだ。
伊藤さん
全然ダメっすね(笑)。もっと丁寧に! かつ思い切りよく!
砂金掘り師、難しいこと言ってる! いや言っていることは頭では分かるのだが。
ダメ出しをされながらもなんとか砂鉄と砂金を選り分けて、パンニング皿に残った砂金。金色に光る粒が分かるだろうか。20粒ほどあったと思う。
松本
すごい、1回でこんなに…
伊藤さん
採れる場所ではそうなんです。もちろん全く採れないことだってありますよ!
松本
ここはどうやって見つけたんですか?
伊藤さん
さっき話した通り金山があったことは知っていたんですが、別の目的でこの近くへ来て、ふと川を見たらここはありそうだなと思いまして
松本
ありそう、というのは何で分かったんでしょうか
伊藤さん
岩盤があったので。ああいうやつですね
岩盤。川底に大きな一枚岩がある川が狙い目とのこと。
伊藤さん
経験上、岩盤が川床にあると、砂金がまとまって堆積しやすいようなんです。岩盤はなるべく大きいほうがいいですね。岩盤同士の隙間も狙い目です。増水時に水がどこまで来るのかイメージして、砂金がどこに流されて溜まるかを考えます。それで実際にあった時はやっぱり嬉しいですね
水の流れをイメージするのがポイントだそうだ。川を見る目が変わりそう。
松本
岩盤があるかどうかは、実際に川に行かないと分からないですよね?
伊藤さん
これも本当は内緒なんですが(笑)。最近は、GoogleEarthで川の様子を見て探したりします
松本
おお、テクノロジーで解決。そうやって実際に行って見つかるものですか
伊藤さん
私の場合、ほとんど外さないですね
その確度の高さはやはり経験によるのだろう。
砂鉄と分けた砂金は、スポイトを使って慎重にパンニング皿から小瓶に移す。多少砂鉄も一緒に入ってしまうが、初めてだし、仕方がない。
それから一時間ほど、取材を忘れて夢中に作業していた。草を土ごと採取し、パンニング皿の上でほぐし、土を流していく。黒い砂鉄の中から輝く砂金が出てきた時の感動は、何物にも代えがたいものがある。
伊藤さん
「草根引き」の他に、こういう穴を探す方法もあります
そういって足元の穴を指差す伊藤さん。
伊藤さん
「ポットホール」と呼んでいます。これも水の流れで砂金が溜まっている可能性があり、大物が見つかることもあります。いわゆるグレイン(0.4g以上の砂金)やナゲット(1g以上の砂金)が見つかるかもしれませんよ
その後も黙々と作業を続け、3時間ほど経っただろうか。私の小瓶の中には20〜30粒ほどの砂金が集まっていた。
伊藤さん
どうですか? 結構採れました? 自分はこれくらいですね
伊藤さんのパンニング皿の上で輝く砂金。私の見つけた量の倍はありそうだ。経験と腕の差か…。
松本
一攫千金なんてうまい話はないんですね
伊藤さん
最初は全く採れないのが普通なので、松本さんは採れたほうだと思いますよ! 慣れてくればたくさん採れるようになります!
松本
本当ですか!
実は、取材のことも、住宅ローンのことも忘れるほど夢中になっていた。特に砂鉄と砂金を分ける時には、慎重にやる必要がある上、砂鉄の中から覗く砂金は美しく、他のことなど頭から消えてしまう。
余談だが、取材中はICレコーダーを録音状態にしていたのだが、聞き返すと無言の時間が長すぎてあとで困った。
時間を忘れるほど楽しめて、何ならお金も稼げる砂金採り。それにしても、伊藤さんはどんなきっかけで始めることになったのだろう。
松本
どういったきっかけで砂金採りを始めたんですか?
伊藤さん
山梨県の湯之奥金山博物館で砂金採り体験をしたのがきっかけです。それで自分でもやってみようと思って川に行ったんですが全く採れなくて。そこに偶然通りがかった人から色々教えていただんですが、その方は実は砂金採りの大ベテランで、知る人ぞ知るトレジャーハンターだったんです
松本
そんな運命の出会いが!
伊藤さん
それからは事前に下調べしたり研究したり。そうして予測した場所で実際に砂金が見つかった時の喜びは大きいですね
事前の研究、そして実践からのフィードバック。確かにやりがいがありそうだ。
松本
砂金採りをしたい人は、何から始めるのがいいですか
伊藤さん
まずは道具を揃える。パンニング皿とカッチャ、なければスコップが代用できます。あとは近くで砂金採りの体験施設がないか探してみるといいですよ
松本
注意事項はありますか?
伊藤さん
無理しないことですね。川で足を滑らせてしまう可能性もありますし、急な増水にも注意が必要です。枯れ葉がたくさん流れてきたら増水の兆候なので急いで離れましょう。時には諦めることも大事です
松本
怪我したら元も子もないですからね!
伊藤さん
あとは心構えとして、とにかく、川を含めた周辺の環境を大事にしてほしいですね。ゴミを捨てるようなことはもってのほかですし、掘ったら埋め戻す、石を動かしたら元に戻すなど、現状回復を必ずしてほしいです
伊藤さんによると、重機で砂金を掘ったり、私有地に入ってトラブルになった、という話もあるらしい。また、川が濁ると釣り人が嫌がるので、周辺や地元の人たちに迷惑を掛けないことは徹底してほしい、とのことだった。その配慮からも、砂金採りはまさに大人の趣味という印象を受ける。
伊藤さん
あとは砂金を採ることだけを目的にするのではなく、例えば、終わった後にその近くの温泉に入るとか、お昼は近くの店で名物を食べるとか、砂金採りを中心としたレジャーとして楽しんでほしいですね。その地域にお金を落としてもらうことは、地方の活性化にもつながってくると思います
松本
確かに、採れないこともあるわけですもんね
伊藤さん
採れないからがっかりして終了ではなくて、その一日を楽しんでもらいたいです。昔に金山があったところではたいてい資料館などがあり、砂金採り体験ができるところも多いです。歴史を学んだり、体験したり、地形や地質を調べてみたり、砂金採りを総合的に楽しんでほしいですね
伊藤さんに見せていただいた砂金コレクション。つまめるほどの大きさのものも。一番大きなものは掘ったのではなく、岩の間に落ちていたものを拾ったもの。
伊藤さんは本業がファイナンシャルプランナーということもあり、「もっとみんなに趣味を持って人生を楽しんでもらい、経済を回してほしい」という想いを持っているそうだ。そんな趣味のひとつとして、砂金採りと、その地域の観光などをひとつのレジャーとして捉えてほしいとのこと。
今後は地域と組んで、砂金採りを中心とした町おこしの計画も練っているという。今後の展開が楽しみだ。
自分で採った砂金。黒いのが砂鉄、黄色いのが全部砂金。
なお、今回採れた砂金の価値は、二人合わせて数千円分。数万円には届かなかったが、もっと時間が長く、タイミングがハマればまったく夢ではないという。その採れるか採れないか分からないところも砂金採りの魅力だろう。そうでなくとも、「川から数千円分の価値を得た」と考えるとすごいことだ。
この取材以降、机の引き出しに入れてある、自分が採った砂金の入った瓶を時々振ったりして眺めている。出かけた先で川を見かけると、ここでは砂金が採れるかな…と考えてしまう。砂金採りには夢がある!
伊藤さん、素晴らしい趣味を教えていただき、ありがとうございました!
砂金採りについてもっと知りたいという方は、伊藤さんが出版された本に砂金採りの歴史や具体的なテクニックの解説、ご自身の砂金採りに関する考え方などがまとめられているのでこちらを読んでみてほしい。
※ご紹介した商品は一部店舗ではお取り扱いがない場合がございます。また価格は変更される可能性があります。ご了承ください。
松本
ここから結構歩くんですか?