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名称からして子どもの心をくすぐりやすいアリジゴク。アリをはじめ、巣穴に落ちてきた生き物を食べるウスバカゲロウの幼虫のことですが、その生態は謎に包まれている部分もあり、神秘的ともいえます。
しかし飼い方や捕まえ方はかなり簡単で、餌にも困らないことから夏休みの自由研究にぴったり。無事に成熟すると、成虫となったウスバカゲロウが飛びたつ姿も観察できるでしょう。
この記事では、アリジゴクの飼育に必要なアイテムや上手な飼い方、注意点などを詳しく解説します。
アリジゴクは、アリ目線から見ると地獄のような罠を張っていることから付けられた昆虫の俗称です。英米では「ant lion(アントライオン)」と呼ばれており、私たちと近い感覚でアリジゴクを見ていることがわかります。
正式には「アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科」に属する昆虫で、ウスバカゲロウという一見トンボのような翅を持つ幼虫(トンボとは全く異なる昆虫ですが)を指します。「カゲロウ」の名を持つもののカゲロウ目には属さず、日本国内に17種ほどいるウスバカゲロウのうち、すり鉢状の巣を作る種類(ウスバカゲロウ・クロコウスバカゲロウ・コウスバカゲロウ・ハマベウスバカゲロウ・ミナミハマベウスバカゲロウなど)の幼虫が「アリジゴク」と呼ばれています。
アリジゴクは北海道から南西諸島まで、日本全国の平地に幅広く分布しています。サラサラと柔らかい「シルト」という土砂地にすり鉢状の巣を作り、その底で顎だけを出して獲物を待ち構えています。
比較的よく見かけるウスバカゲロウの幼虫は、民家の軒下やお寺の境内下、木の根本など、雨が直接当たらない半日陰の場所にいることが多いです。一方、同じアリジゴクでもクロコウスバカゲロウの幼虫は、海岸砂丘や川の中州周辺に巣穴を作ります。
クワガタのような大きな顎を持つのが最大の特徴です。体長は、数ミリから1cm強ほどで、脱皮して成長するにしたがって大きくなります。
食性は肉食です。アリジゴクと呼ばれていますが、小さな生き物であればアリ以外でも捕食対象です。
獲物を捕えると毒入りの消化液を注入し、体の組織を分解してから体液だけを吸います。この毒にはフグの持つテトロドトキシンの約130倍の威力があるといわれており、アリなどはひとたまりもないでしょう。……そう聞くとアリジゴクを飼うのが怖くなるかもしれませんが、人間の皮膚を貫通できるほどの咬合力はないため心配ありません。
なお、獲物の狩りは自ら行わない「待ち伏せ作戦」を常とします。餌にありつけるかは運次第なところも大きいため、数か月の絶食に耐えられる体をしています。
ウスバカゲロウの場合、直径1~6cm、深さは1~3cmほど、底に行くにかけて狭くなるすり鉢状の構造をしています。サラサラで崩れやすい土砂で、ぎりぎり崩れてこない角度の傾斜(安息角)を作るため、脚力のあるアリでも上手に登れません。もがけばもがくほど足場が崩れ、やがてアリジゴクの大きな顎に捕まります。
なお、山盛りした砂の角度は湿度によって微調整が必要のため、幼虫は必要に応じて角度を整えています。アリジゴクの狩りはほぼ運任せであることから、少しでも確率を上げられる努力をしているのでしょう。
民家の近くでも見かけやすいウスバカゲロウのアリジゴク(幼虫)を例に挙げて紹介します。
アリジゴクは幼虫でいる期間が長く、いつ成熟できるかは餌にありつける頻度・量で異なります。早ければ1年、通常でも2〜3年ほどかかり、長ければ4年は幼虫でいます。
脱皮を繰り返して大きくなり、初夏にかけて土団子状の繭を作ってさなぎへ。通常は1か月ほどで羽化し、ウスバカゲロウとなって飛び立ってきます。成虫になってからの寿命は数週間から数か月です。初夏から秋にかけて現れ、交尾・産卵をして一生を終えます。
なお、アリジゴクは尿しか排泄しませんが、羽化が完成すると幼虫時代から溜めていたフン(宿便)を出します。珍しい生態といえるため、宿便を観察してみるのも面白いのではないでしょうか。
アリジゴクは昆虫ショップで販売されていることがあり、数百円〜1,000円程度で購入できることがほとんどです。ウスバカゲロウ以外のアリジゴクなど、少し珍しい種類のアリジゴクを飼ってみたい場合は、昆虫専門のお店を探すとよいでしょう。
自然にいる個体を採集するのも可能です。特にウスバカゲロウは日本各地に生息しており、昆虫採集に慣れていない方でも簡単に捕獲できるでしょう。
神社の境内や山道の脇など、少し日陰で細かい砂がある場所を探してみてください。木の根元など、草木の葉が傘代わりになっている場所にもよく巣を作っています。巣は密集していることが多いため、エリアさえ発見できれば複数匹を捕まえることもできるでしょう。
どれでも捕まえられますが、巣穴に棒などを突っ込むのは、アリジゴクを傷つけてしまう恐れがあるためおすすめしません。
手早いのは、ストローなどで砂穴の中心を拭き上げていく方法です。アリジゴクが露出したら、スプーンなどで優しくすくって虫かごに移しましょう。このとき、アリジゴクが巣にしていた砂土も一緒に持って帰るのがポイントです。ほかの砂土ではアリジゴクがお気に召さず、巣作りしないかもしれません。虫かごに10cmほど敷ける程度の量を採取しておきましょう。
アリジゴクを飼うにあたって特別なものは必要ありません。アリジゴクがいた(お気に入りの)砂土と飼育ケース、餌(昆虫)があれば十分です。
アリジゴクが作る巣穴は直径1~6cm、深さ1~3cm程度なので、これ以上の大きさのケースであれば何でも構いません。素材にこだわる必要もないため、安価なプラケースがおすすめです。
巣穴の中は確認できませんが、クリアな飼育ケースはアリジゴクの様子を観察しやすく、おすすめです。
巣を作るための砂土は、生息地のものを使うのがおすすめです。
海岸の砂浜などで見つけたクロコウスバカゲロウであれば、乾いた川砂でも構いません。
餌はアリのほか、小形で柔らかい体をした生き物なら大体なんでも食べます。ダンゴムシやイモムシ、釣具屋で購入できるアカムシ(ユスリカの幼虫)やミルワームも大好物です。ただ、アリジゴクの巣に捕らわれる昆虫の様子を観察したい場合は、やはりアリが適しているでしょう。
割り箸でなくても構いませんが、アリジゴクが羽化する際につかまれる棒状のものを入れてあげましょう。そこで翅を伸ばします。
アリジゴクは必要なものをそろえれば、他の昆虫に比べてあまり手間がかからずに飼える昆虫です。たまに餌やりを失念しても大丈夫なほどタフですが、早く羽化させるには多少のコツがいります。ここでは、アリジゴクの上手な飼い方を注意点とともに解説します。
アリジゴクは神社の境内下や木の根元近くなど、日陰になりやすい場所を好んで巣を作ります。巣の中が乾燥しすぎると調子を崩す恐れがあるため、飼育ケースは直射日光が当たらない場所へ置いてあげましょう。
ウスバカゲロウは夜行性です。幼虫のアリジゴクも夜に巣作りをすることが多いため、部屋は暗くしておくとよいでしょう。
アリジゴクの成長スピードは餌の豊富さに依存するところが大きいです。早く成虫にしたければ、3日に1度は餌を与えましょう。ただ、イモムシのような大型の獲物を与えた場合は、しばらく餌を口にしないこともあります。様子を見ながら餌の量を調節するとよいでしょう。
吸汁後の餌の死骸はその辺に投げ捨てるため、気づいたら取り除いてください。
牧田さん
ちなみに、大きめのアリなどの脚力が強い昆虫はたまに脱走に成功することがあります。飼育ケースから逃げ出さないように、ケースにはしっかりとふたをしておきましょう。
餌を入れても動きが見られなくなったら、さなぎになっている可能性があります。一般的には梅雨の前後にさなぎ化することが多いですが、個体差があるため一概にはいえません。アリジゴクの状態を確かめるために、飼育容器全体をゆすって砂を動かしてみましょう。砂粒をつけた球状の繭があれば、その中でアリジゴクがさなぎになっているでしょう。
羽化に備え、割り箸など棒状のものを7〜8cmに切って砂に突き立てておきます。順調に成長すれば約1か月で成虫になります。宿便を出し、十分に翅を乾かしたら飛んで行ってしまうので、飼育容器に蓋をしておくことをお忘れなく。
アリジゴクを飼うにあたって気になる疑問をQ&Aにしてまとめました。飼育に役立つプラスαの知識として、ぜひ参考にしてください。
A.アリジゴクは全身に滑り止めのような毛が生えており、後ろ向きにしか進めない構造をしています。飼育容器に入れると、後ろ向きに進みながら円を描くように砂を掘っていく姿を観察できるでしょう。なお、巣の形は砂土によって違い、大きさは初めに描く円の大きさで決まる傾向があります。
A.アリジゴクの巣内での1対1の戦いでは勝負になりませんが、巣の外でアリが何匹も協力して立ち向かった場合、アリジゴクが負けてしまう可能性は十分にあります。
また、ウスバカゲロウ科の幼虫には巣を作らない種類もいます(むしろそちらのほうが多数です)。それらは岩の上で獲物を待ち伏せしたり、徘徊して獲物を狩ったりしていますが、巣という主戦場がない以上、徒党を組んだアリに襲われることもあるようです。実際に、クロヤマアリやアシナガアリなど、特別に強くないアリがアリジゴクを巣穴に運んでいる姿が確認されています。
A.カゲロウもトンボも漢字で「蜻蛉」と書き、昔は同じ生き物(あるいは仲間)だと認識していたと考えられます。しかしカゲロウは「カゲロウ目」、トンボは「トンボ目」であり、分類学上ではまったく別の昆虫です。さらに、ウスバカゲロウは「アミメカゲロウ目」で、カゲロウの名が付くもののカゲロウ目とは異なります。
トンボとカゲロウの代表的な違いを表にまとめます。
カゲロウ | トンボ | |
---|---|---|
外見上の違い | ・腹部の末端に細長い毛(尾毛)がある ・後翅が前翅に比べてかなり小さい |
・オスに尾毛は見られず、メスの尾毛も短い ・後翅が前翅の大きさにカゲロウほどの差がない |
成長過程の違い | ・羽化して成虫になるまで亜成虫(成虫だが未熟)という段階を経る | ・羽化後はすぐに成虫となる |
成虫後の摂餌 | ・餌を取らない | ・積極的に餌を取る |
成虫後の寿命 | ・数時間~数日(繁殖のためだけに成虫となる) | ・数週間~数か月 |
アリジゴクは手間なく飼える昆虫です。簡単なプラケースと巣作りに適した砂土、餌があれば特にお世話をしなくても成長します。餌の量によって成長スピードが変わるため、早く成虫の姿を見たければたくさん餌を与えましょう。アリのほか、ダンゴムシやイモムシ、釣具屋で購入できるアカムシ、ミルワームなども喜んで食べます。
牧田さん
成虫になったウスバカゲロウは、カゲロウとは異なり、条件が揃えば1〜2か月ほど生きることができます。幼虫・成虫ともに生態にはまだまだ謎が多い昆虫なのでじっくりと観察してみましょう!
牧田さん
土全体が乾燥しすぎているとお気に召さない傾向があるため、霧吹きで適度に湿らせてあげましょう。砂土同士がくっつかない程度の量で十分です。