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目次/ INDEX
メダカのエサといえば、粉エサをはじめ、ブラインシュリンプやミジンコ、ゾウリムシなどの生餌が人気です。なかでもミジンコは、メダカの食いつきが良く、食べ残しても水質を悪化させない餌として優秀な存在。
「毎日メダカたちにミジンコをお腹いっぱい食べさせてあげたい」
メダカ愛好家なら、一度は考えたことがあるはずです。
しかし、ミジンコは2gで1000円前後と、毎日あげる餌としては決して安くありません。
そこで多くの愛好家は自宅で増やすことにチャレンジしているわけですが、ネットで「みじんこ 増やし方」で検索すると、めちゃくちゃ色んな方法が紹介されているわけです。飼育水を使った方法や、生クロレラ、鶏糞を使った方法などなど。
個人的には、光合成細菌を使った方法が簡単な気がしています。しかし、人によっては「鶏糞こそ至高」「生クロレラ一択!」とか本当にそれぞれ。
ミジンコに食いつくメダカ。嬉しそう
どれが一番良いのかを決めることができない。そんなことはわかっている。でも今のままで良いのか。ミジンコにとってもっと繁殖しやすい環境を整えてあげたい・・・!
そうやって悶々としていると、ふと思ったんです。そもそも僕たちメダカ愛好家の目的ってなんだっけ。
ミジンコを簡単に増やすことが目的だっけ? 違う!!!!
メダカたちに美味しい餌をたくさん食べてもらって、健康的に過ごしてもらうことだ!!!
いつからだろう。僕たちメダカ愛好家が、ミジンコを増やすことが目的になってしまっていたのは・・・。これが手段の目的化ってやつか・・・。
メダカにとって状態の良いミジンコ・・・。それを知れば、最適な培養方法がわかるはず!!
せっかくなら、高品質なミジンコを食べてもらいたい!! そうだろ!! 全国のメダカ愛好家たち!!
というわけで今回は、東北大学大学院の生命科学研究科にやってきました。つい最近、ミジンコが死んだふりをすることを発見したことで、世間を賑わせたすごい人たちがいます。ミジンコのスペシャリストですね。
メダカの餌として・・・。なるほど。わかりました。一緒に考えてみましょう。まず、ミジンコといっても、種類はさまざまです。どのミジンコが餌として最適なのかを見ていきますか。
一般的にはタマミジンコが良いと言われていますね、殻が柔らかくて食べやすく消化しやすいと聞いています。
なるほど。たしかにそうですね。では、その前にミジンコについておさらいしましょうか。
ミジンコとは正式名称Daphnia pulexのことを指します。体長は、1.5~3.5mmの品種で、ミジンコのなかでは中型にあたります。以前は世界に広く分布していると考えられていましたが、遺伝子を研究した結果、北陸大陸が原産地だったことが判明しています。
もともと日本にいたわけではないのですね。
どのように日本へ入ってきたのかは不明ですが、おそらく数百年〜数千年前にやってきたものと考えられています。
ミジンコが光に集まっている様子
ミジンコの主な餌は、植物性プランクトンや細菌。光に集まる習性を持っていたり、酸欠になると血中のヘモグロビンが増加し、体色がほんのりと赤くなったりします。
集まったり赤くなったり、なんだか可愛いぞ・・・。
ミジンコにはオスとメスがいるのですが、日本に分布している品種は、全て繁殖にオスを必要としない絶対単為生殖型です。
オスの仕事なくなった・・・。
ただ、全滅の危険性に直面するとオスとメスが交尾し、両性生殖を始めます。そこで生まれるのが耐久卵です。耐久卵は、水質汚染や低温、乾燥にも耐えられるんですよ。
水の中で生活している生き物なのに、乾燥にも耐えられるってすごいな。
そうですよね。また繁殖に適した環境になったら、耐久卵が孵化して繁殖していきます。
耐久卵を使って全滅を回避、未来に子孫を残すんですね。タイムカプセルみたいだなぁ。そういえば、ミジンコの耐久卵は市販されているのを見かけます。改めて考えるとミジンコって面白い生き物ですね。
ミジンコの話をしているときは常に楽しそうな占部教授。ミジンコ愛が伝わっていきます
そうでしょう。だから研究していても楽しいんですよ。
ほかにもミジンコは、ヤゴに襲われそうになったとき、死んだふりをして危険を回避することも分かっています。泳いで逃げるよりも死んだふりをした方が生存率が高いんですよ。
生存率の高い方法を選んでいるって策士ですね。
ほかにも面白い生態があるのですが、話が長くなるので次の機会にしましょう。ここからは、ミジンコの種類を見ていきましょう。
タマミジンコ(Moina macrocopa)
タマミジンコの正式名称は、タマミジンコ(Moina macrocarpa)です。日本全国に生息していて、流れの緩やかな場所や止水域に分布していますね。楕円形のカタチをしていて体長は1〜1.5mm程度で比較的、殻が柔らかい特徴があります。
メダカの餌として一番人気の品種ですね。皮が柔らかくて消化もしやすいし、サイズも小さいので稚魚や幼魚の餌にもぴったりなんだよなぁ。メダカ専門店でも取り扱いの多い印象です。ただ冬場の培養が難しいみたいで、年中与えられないのがなぁ・・・。
寒くなったら室内で加温しながら培養してあげると良いですね。
オオミジンコ(Daphnia magna)
次にご紹介するのはオオミジンコです。学名はダフニア マグナ(Daphnia magna)。タマミジンコと比べてかなり大型で、5mm以上に成長します。本来、日本では生息しておらず、欧米などに分布しています。一時的な水たまりや季節によって現れる池などで多く見られる品種ですね。
動物実験や水質検査などの目的で輸入され、それらが実験施設から流出したことで広まっていきました。
実験目的で来日して施設から脱走って・・・。なにかの映画みたいですね。オオミジンコはサイズが大きいので重宝しています。大きいから稚魚の水槽に入れてもすぐに食べられちゃうことがないんですよ。
そこで生まれたオオミジンコの子どもが稚魚の餌になるので、持続的に餌を供給してくれるんです。親となる個体が寿命を迎えるまでですが・・・。
なるほど。一時的に共存していくわけですね。
タイリクミジンコ(Daphnia similis)
次はタイリクミジンコ、学名Daphnia similisです。体長は2mm前後。原産地は中国大陸で、金魚などの観賞魚と一緒に日本へ持ち込まれたと考えられています。オオミジンコほどではないですが、大ぶりの品種ですね。
金魚やメダカの餌として販売されている「乾燥ミジンコ」は、この品種であることが多いです。
メダカ専門店でも生餌として販売されているのを見かけます。餌としては、どちらも優秀な存在ですね。
マギレミジンコ(Daphnia ambigua)
そしてマギレミジンコ(Daphnia ambigua)。小さな湖に生息している小型のミジンコ種で、体長は1mmにも満たない場合がほとんど。生息地は主に北米です。最近は、国内にも広く分布していて数を増やしているようですね。
めちゃくちゃ小さいですね。いくら食べてもお腹膨れなさそう・・・。田んぼや池で採取したら、紛れ込んでいる可能性があるということですね。
カブトミジンコ(Daphnia galeata)
次は、カブトミジンコ、学名Daphnia galeataです。
さらに知らない品種が出てきた。
カブトミジンコは、北半球に広く分布しているミジンコです。深い湖に生息していて、日本でも、琵琶湖や木崎湖などの大きな湖やダム湖に見られます。魚類などの捕食者に出会うと、頭部を尖らせて威嚇します。それがカブトのようなカタチに見えるので、この名前になりました。
威嚇の仕方がかわいいやんけ・・・。
国内では、北米や欧州では見られない系統のカブトミジンコが確認されているので、在来種だと考えられています。
なんだか侍に見えてきました。
ただ近年は、北米系統のカブトミジンコも観測されているので、もしかしたら在来種じゃないのかもしれません。
映画「ラストサムライ」でも海外出身の方が活躍していたので、大切なのは武士の心を持っているかですよね。
そうですか。よくわかりませんけど。
メンドータカブトミジンコ(Daphnia menodotae)
次は、メンドータカブトミジンコ(Daphnia menodotae)。カブトミジンコの亜種とされていて、カブトミジンコのように頭部が尖ります。ちなみに北米産の品種です。
待ってください・・・。こんなに覚えられません。ミジンコってこんなに種類いるのか。知りませんでした。
ハリナガミジンコ(Daphnia dentitera)
まだまだいますよ。ハリナガミジンコ(Daphnia dentitera)は、東日本から北海道の山地湖沼に分布している品種です。日本を含む北東アジアが起源とされ、数万年以上前に北米などに分布を広げたとされています。
トガリハリナガミジンコ(Daphnia cristata)
次は、トガリハリナガミジンコ(Daphnia cristata)です。
メダカの餌に向いてなさそうな形状・・・。エイリアンかな?
欧州からアジアの高緯度地域の湖や沼などに分布する品種です。日本では、北海道のごく一部に生息しています。メダカなどの天敵がいると頭が反り返って三日月のようなカタチになります。いまだに詳しいことがわかっていない謎に満ちたミジンコですね。
謎に満ちてそうなカタチしてるもんなぁ。
タナカミジンコ(Daphnia tanakai)
そしてタナカミジンコ(Daphnia tanakai)です。
急に身近な感じの品種でてきた。
タナカミジンコは、立山や蔵王などの山地や高山湖沼にのみ分布するミジンコ。体長は、1.5mm前後で、標高2000m以上に位置する池などに生息しています。1986年に富山大学の田中晋教授(現名誉教授)によって発見され、2006年に石田聖二博士により新種として記載されました。
体長的には餌に向いてそうだけど、標高2000mまで上がらないと手に入らないのは、ちょっとな・・・。
プリカリアミジンコ(Daphnia pulicaria)
そしてプリカリアミジンコ(Daphnia pulicaria)です。北米大陸が原産地で日本には分布していなかった品種ですが、1998年に突如として琵琶湖に出現しました。
おそらくコハクチョウなどの渡り鳥の羽に耐久卵が付着して運ばれてきたのでは? と考えています。ほかにはオオクチバスといったブラックバスと共に侵入した可能性もありますね。現在も琵琶湖に生息しています。
やばい・・・もう覚えられない・・・。
ほかにも種類はありますが、今回はこの辺にしておきましょうか。
ミジンコといっても色々といるんですね。まさかこんなに種類があるとは・・・。
このなかだと、どの品種がメダカの餌に向いているでしょうか。
サイズ感と入手のしやすさの観点からみたら、オオミジンコやタイリクミジンコ、タマミジンコが良さそうですね。
たしかに入手のしやすさは大切ですね。仮にタナカミジンコが適してますと言われても、標高2,000mの湖にまで取りに行くのはちょっとな・・・。では、栄養価でいうと、どの品種が良いのでしょうか。
栄養価を考えるなら、種類よりも培養方法のほうが重要ですね。大切なのは「なにを食べて育ったのか」です。
たしかに、良い餌を食べて育った牛の方が美味しいですもんね。では、何を食べて育ったミジンコが栄養価が高いのでしょうか。
植物プランクトンを食べて育ったミジンコの方が、良質な脂がのっていて栄養価は高いですね。
ということは生クロレラや青水(グリーンウォーター)化した飼育水とか・・・?
研究室では専用の装置を使ってミジンコの餌を培養中
そうですね。自宅では難しいと思うので、青水化した飼育水が良いと思います。
メダカ愛好家の中には、鶏糞で培養している方もいるそうです。
鶏糞ですか。おそらく鶏糞を餌にしている微生物が繁殖して、それをミジンコが食べているんだと思います。ただ、植物性プランクトンを食べさせたほうが良く増えると思うんですよね・・・。
えっ。そうなんですか。
うーん、もしかしたらミジンコの餌として最適ではないからこそ、使っているのかもしれません。
といいますと・・・?
餌が豊富にあると、ミジンコが爆発的に数を増やし、エサ不足に陥ってしまう可能性があります。エサ不足になれば、ミジンコたちは全滅します。
飼育下においては餌を追加できますが、自然界では、そうはいきません。だからミジンコは、急に増えすぎると「このままではエサ不足になるかも!」と判断して耐久卵を作ります。耐久卵を抱えた個体が出現した群れは、それ以上増えずに減少していくんですよ。
先ほども触れましたが、ミジンコはエサ不足や乾燥などの繁殖しづらい環境になると耐久卵を作り、そこで孵化できるタイミングを待ちます。
だから、耐久卵を作らせないために、あえてミジンコの繁殖スピードが緩やかになる環境を作っているのかもしれません。
なるほど。たしかに光合成細菌で培養したミジンコは、ものすごい勢いで増えるんですけど、翌日全滅していることが多いんですよね。
安定した供給を求めるなら鶏糞は良い方法かもしれませんね。
奥が深いなぁ。
ただ、先ほどもお伝えしたようにミジンコの餌としての品質を求めるなら、植物プランクトンをおすすめします。植物性プランクトンと鶏糞で育てたミジンコの成分にどのくらい差が生まれるのかはわかりませんが・・・。
ちなみにミジンコの成分は、主にタンパク質、必須アミノ酸、必須脂肪酸などです。大雑把な値ですが、乾燥重量に対して、タンパク質45%、脂肪5%、繊維質5%、灰分15%、炭水化物30%くらいですね。
人気のメダカの餌には、タンパク質が多く含まれているイメージがありますね。実際、愛好家からも絶大な人気を誇るキョーリンさんの「メダカのエサ 産卵繁殖用」の成分表には、タンパク質や脂質が多く含まれているようです。
培養するうえでは、鶏糞とグリーンウォーターを上手く合わせていくのがよさそうですね。
ふむふむ。ありがとうございます! それでは、帰ったら早速、やってみます!
というわけで、今回は、東北大学大学院生命科学研究科の占部 城太郎教授にお話を伺いました。ご協力ありがとうございました!
ここからは実際にさまざまな方法でミジンコを培養してみようと思います。取材から2ヶ月、さまざまな割合で試行錯誤を重ね一番成功率の高かった方法をご紹介します。
まずは、乾燥した鶏糞を用意します。鶏糞は、しっかりと乾燥したものを使います。鶏が生んだばかりの糞を水に入れないように注意してください!
鶏糞は匂いが不安という方も多いかと思いますが、安心してください。乾燥されたものは、想像より遥かに穏やかな香りです。
飼育水6リットルに対して、2つまみ前後の鶏糞を投入します。
少しかき混ぜてから、グリーンウォーターを4リットル追加。あとは、ミジンコを10匹投入するだけ。ポイントは、最初に入れるミジンコの数を少なめにすること! ミジンコは食欲旺盛です。数が多いと、鶏糞を餌にして増える細菌の繁殖が追いつかず、食べつくされてしまいます。
イメージとしては、最初にグリーンウォーター(植物性プランクトン)を食べてもらい、その間に鶏糞を餌にして細菌たちに繁殖してもらう感じ。
水温は20〜25度前後をキープできると調子が良かったです。エアーレーションは使用せず、半日陰の場所に設置。リスク分散のため、同じセットを3〜4つ用意しておくと安心です!
念のためかき混ぜます
あとは、水の色が薄くなってきたら、グリーンウォーターを追加するだけ。
軽く掬っただけですが、10匹スタートにもかかわらず、3日後にはこれだけの量に増えていました。これは幸先良いのは!?
10日後。掬っただけでは、いろいろ汚くてわかりませんでした。
容器に移してみると・・・
めちゃくちゃ増えてる!!!
元気そうにいっぱい泳いでいます。ぴょこぴょこ泳ぐミジンコたちは、見ているだけでも癒されますね~。
あとは必要な分を網で救ってメダカに与えるだけ!
鶏糞だけでなく、植物性プランクトンもしっかり食べているので、きっと絶品なはず・・・!
背中に黒い点々(耐久卵)をもっている個体がいたら、全滅が近い合図です。すぐにリセットしましょう。
グリーンウォーターの与えすぎは気をつけましょう。バケツの底が見えるくらいが適切です。餌をたくさん与えると、一気に増殖しますが、その後休眠卵を作りやすくなり、急速に減少してしまう可能性が高くなります。餌が豊富な親から生まれた子は、少ない餌条件になると休眠卵を作りやすい傾向があるため、注意が必要です。
今回ご紹介したのは、あくまで僕の飼育環境で成功した方法です。どんな場所で培養するのか、どこに住んでいるのかによって成功パターンは異なるもの。ぜひ、この方法を参考に、自分の環境にあった増やし方を模索してみてください! トライ&エラーを繰り返すのも、みじんこ培養の楽しみ方です。
ただ共通していえるのは、「ミジンコに何を食べさせるのか」が重要だということ。餌は、体を作る大切な要素です。質の良い餌を食べたミジンコは、メダカたちにとって上質な餌になります。
ぜひ、ご自身のメダカたちの健康を考えながら、栄養たっぷりのミジンコを増やしてみてはいかがでしょうか!
個人的には、豊富なアミノ酸を含んでる光合成細菌を餌にして増やすのも、めちゃくちゃ良いのでは!? と考えています。ぜひ、そちらもお試しください!
イラスト提供:danna3ch.medaka
メダカの餌として高品質なミジンコを培養したいのですが、おすすめの増やし方を教えてください。