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家に出るクモを飼ってみたい! 飼育に必要な道具や餌やりの方法とは

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監修者:須黒達巳

監修者:須黒達巳

神奈川県横浜市出身。日本蜘蛛学会評議員、東京蜘蛛談話会運営委員 (会計)。2009 年からハエトリグモの研究をしている。修士号を得た後、日本産のハエトリグモを全種採集する夢を追ってフリーターに。2年間ハエトリグモに全霊を注ぎ、2016年4月より慶應義塾幼稚舎にて教諭、現在に至る。

執筆:カインズ How to ペット編

どこからかやって来て、家の中を徘徊しているクモ。ダニやハエ、ゴキブリといった不快害虫を食べる益虫として活躍してくれるうえ、よく見るとかわいい顔をしています。「家の中のクモは殺してはいけない」とはよくいいますが、殺すどころか、飼ってみたいと思う方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、家の中でもしばしば見かけるクモの飼い方を紹介します。なお、飼ってしまう時点で害虫ハンターとして自由に行動ができなくなりますが……そこは他のクモの活躍に期待しましょう。

家の中でよく見かけるクモの種類

クモは世界に132科、約5万1,000種もいるといわれており、日本にも約1,600種が生息しています。そのうち、家の中でよく見かける代表的なクモを7種紹介します。

アダンソンハエトリ/Hasarius adansoni

アダンソンハエトリ

分類 ハエトリグモ科
国内での分布 本州〜南西諸島
生活スタイル 徘徊性
体長 5〜9mm
人に対する毒性 なし
寿命 約1年

アダンソンハエトリは数いるハエトリグモの一種で、「家によく出るクモ」の代表種といえます。チャームポイントは正面に並ぶ2つの大きな目。見つめるとアダソンハエトリのほうもじっと見つめてくることから、特にクモ好きではない方からもかわいいと評判です。

オスとメスとで特徴が異なる「性的二型」がはっきりしているため、壁や床にいるのを見つけたら性別を確認してみるのもよいでしょう。黒の体色に白い帯状の模様があるのがオス、全体的に茶色い体をしているのがメスです。オスとメスとが一緒にいる場合、オスが求愛行動をしていることもあります(メスの周囲を徘徊します)。

ハエトリグモは英名で「jumping spider(ジャンピング スパイダー)」と呼ばれており、驚くべきジャンプ力で獲物に飛びかかり捕まえます。蚊やダニ、コバエ、ゴキブリの幼体など人間にとっての不快害虫を食べてくれるため、「かわいくて頼りになる子」といえるでしょう。毒はなく、放っておいても人間に与える害はほとんどありません。

余談ですが、かつてはハエトリグモに虫を狩らせる「座敷鷹」や、体長1cmほどのオスの「ネコハエトリ」同士を喧嘩させる「ほんち」という遊びがありました。ペットではありませんが、昔からハエトリグモが「人間にとって害虫ではない」ことがよくわかります。

チャスジハエトリ/Plexippus paykulli

チャスジハエトリ

分類 ハエトリグモ科
国内での分布 本州以南
生活スタイル 徘徊性
体長 10〜11mm
人に対する毒性 なし
寿命 約1年

アダンソンハエトリと並ぶ「家によく出るクモ」代表格でのチャスジハエトリは、アダンソンハエトリよりも少し大きなハエトリグモの一種です。家の中だけでなく、外壁や庭、公園などさまざまな環境を住処にしています。

和名の通り体色は褐色で、頭から背中にかけて縦筋模様が見られるのが特徴です。筋が白く、お尻の先まで長く伸びているほうがオス、淡い褐色で背中の手前辺りで止まっているのがメスです。

網を張らずに壁や床を徘徊する生活スタイルですが、糸を持っていないわけではなく、移動の際の道しるべにしたり、糸を命綱にして壁からジャンプしたりすることもあります。ずっと観察しているとダイナミックにジャンプするチャスジハエトリの姿を見られるかも?

イエユウレイグモ/Pholcus phalangioides

イエユウレイグモ

分類 ユウレイグモ科
国内での分布 本州以南
生活スタイル 造網性
体長 7〜10mm
人に対する毒性 なし
寿命 約1年

イエユウレイグモは、異様に細長い足を携えているのが最大の特徴です。天井や壁の隅などに網(クモの巣)を張り、コバエやチャタテムシ、ダニなどを捕食しています。

人間にとっては益虫の部類に入りますが、異形ともいえる形や、不規則な場所に網を張る生活スタイルから不快害虫として駆除されることも多いです。

しかし実際のところ、さしたる害はありません。

イエオニグモ/Neoscona nautica

分類 コガネグモ科
国内での分布 本州以南
生活スタイル 造網性
体長 4〜12mm
人に対する毒性 なし
寿命 約1年

イエオニグモは、全体的に灰色がかった褐色をしています。頭胸部は黒く、腹部には薄い灰色の斑紋があります。

軒下や窓の縁に巣を作る造網性で、明るいうちは物陰などに隠れて休んでいますが、日が暮れると活動しはじめます。ひと晩中、巣の中で獲物を待ち続け、日が昇りはじめると巣の一部を畳んで再びどこかに身を潜めるという生活スタイルです(巣を畳まない個体もまれにいます)。

活発になるのは7〜10月下旬頃。オスよりもメスのほうがやや大きく、腹部が丸く太っていればメスの可能性が高いです。

オオヒメグモ/Achaearanea tepidariorum

分類 ヒメグモ科
国内での分布 全国
生活スタイル 造網性
体長 4〜8mm
人に対する毒性 なし
寿命 約1年

腹部は丸く、体色は黒や褐色、まれに緑がかった個体も見られます。イエオニグモと違い一年中見られます。

造網性で、軒下などに立体的で不規則な網を張ります。網に数個の卵のう(中に卵の詰まった袋)を吊るすため目につきやすく、採集は容易でしょう。

ヒラタグモ/Uroctea compactilis

分類 チリグモ科
国内での分布 本州以南
生活スタイル 造網性
体長 8〜10mm
人に対する毒性 なし
寿命 約1〜2年

ヒラタグモは、その名の通り平たいボディが特徴のクモです。頭胸部と脚は赤褐色で、腹部にははっきりとした黒い斑紋が見られます。

建物の壁や塀の表面などの平たく広い面に、直径2~3cmの白いテント状の巣を作るのが特徴。ここをすみかとし、信号糸と呼ばれる長い糸を放射状に張り巡らせて獲物を待ちます。普段は巣の中にいて動こうとしないため、採集するには巣を突いたり、はがしたりしてみましょう。

アシダカグモ/Heteropoda venatoria

アシダカグモ

分類 アシダカグモ科
国内での分布 本州以南
生活スタイル 徘徊性
体長 10〜32mm
人に対する毒性 なし
寿命 約3年

アシダカグモは、家に現れるクモのなかでは最大級に大きく、インパクトのある見た目をしています。ゴキブリをはじめとする不快害虫を捕食する有能なハンターとして知られており、アシダカグモが住みついた家にはゴキブリがいなくなるともいわれるほどです(その圧倒的な戦闘力から、インターネット上では「軍曹」と呼ばれることもあります)。なお、野外にはアシダカグモより一回り小さい「コアシダカグモ」など、他にも数種類のアシダカグモ科の仲間がいます。

アシダカグモの餌=ゴキブリというイメージが強いようですが、飼育の際にはコオロギやミルワームなどでも問題ありません。紹介した他のクモに比べると寿命が長く、5〜7年生きることもあるため、タランチュラなどと同様に実はペット向きのクモといえるでしょう。

【飼ってはいけない】セアカゴケグモには要注意

セアカゴケグモ

セアカゴケグモ(学名:Latrodectus hasselti)は日本に生息しないとされていましたが、1995 (平成7)年11月に大阪府の臨海部で発見されて以来、各地で確認されているヒメグモ科の仲間です。

オスは無毒ですが、メスはα-ラトロトキシンという神経毒を持ち、咬まれると発汗や発熱、発疹が起こるほか、後日に吐き気、めまい、嘔吐、頭痛、関節痛などが発生する恐れがあります。セアカゴケグモの毒が原因で死亡することはまれではあるものの、乳幼児や高齢者は重症化しやすい傾向があります。

注意すべきメスのセアカゴケグモの外見上の特徴は、名前の通り背中側に見られる赤〜オレンジ色の大きな模様です(英名では「Red back spider」と呼ばれています)。体長は約1cmと小さいですが、甘くみてはいけません。なお、オスは白〜グレーっぽい背面をしており、体長は約3mmです。

セアカゴケグモは巣を作る造網性です。性格は攻撃的ではなく、動きも遅いほうですが、存在自体が脅威のため、家の中で見かけたら早急に駆除することをおすすめします。物理的に潰してしまうか、一般的なスプレー式殺虫剤を使うのがよいでしょう。もちろん、巣も除去してください。

もしセアカゴケグモに咬まれたら

前述の通り、セアカゴケグモに咬まれても死亡することはまれです。まずは患部を温水や石鹸水できれいに洗い流し、速やかに皮膚科や内科を受診しましょう。

なお、実はセアカゴケグモではなく、同様に毒を持つゴケグモ・「ハイイロゴケグモ」の可能性も考えられます。ハイイロゴケグモの外見は個体差が激しく、なかにはセアカゴケグモに似た個体もいます。適切な治療につながるかもしれないため、できれば駆除したクモを病院に持っていきましょう。

クモの採集方法

クモの採集方法

少し脱線しますが、クモの理解を深めるために、野外のクモの採集方法を紹介します。人気の高いハエトリグモの仲間を採集する方法として、「ビーティング」「スイーピング」「シフティング」のやり方を解説します。

ビーティング

木の枝や草などを叩き、衝撃で落ちてきた昆虫を網などで受け止めて採集する方法です。うまくいけば一度にたくさんのハエトリグモを採集できます。

草木を叩く棒、ハエトリグモを受け止める網は特別なものでなくとも構いません。拾った枝や子ども用の傘(骨が丈夫なものがおすすめ)など、身近にあるもので代用できるでしょう。

スイーピング

虫取り網を草木の先端や花をほうきで掃くようにして振り回す採集方法です。低木林や草原などでよく使われます。すでにハエトリグモが網に入っている状態で振り回し続けると生体によくないため、数度に一度は網の中の状態を確認しましょう。ハエトリグモが入っていれば、スチロール瓶などに入れます。

シフティング

篩(ふるい)を使った採集方法です。堆積している落ち葉や藁を篩の上に乗せ、横方向に降ることで間に潜むハエトリグモを落とします。ビーティングと同じく、特別な道具を用意する必要はありません。野菜の水切りでも代用できます。

目視

落ち葉の上や草の間、草の根元付近を目視で探すという、もっともシンプルな採集方法です。ハエトリグモ採集の経験がダイレクトに生きるため、慣れている方であれば効率よく採集できるでしょう。

ハエトリグモを飼うために必要なもの

ハエトリグモを飼うために必要なもの

引き続き、ハエトリグモの仲間を飼うことを想定した飼育グッズを紹介します。採集と同じで特別なものは必要ありません。

  • 飼育容器

飼育容器

ハエトリグモの飼育容器は次の条件を満たしたものが適切です。

  • 面積が狭い:広すぎると餌を捕まえにくいため
  • ふたができる:逃げ出し防止のため

以上から、タッパーやフィルムケースなどがおすすめです。ペットボトルや味噌の入れ物などを活用している方もいます。

生きた昆虫を用意してください。「ハエトリグモ」なのでハエは好みますが、ハエ以外の昆虫でも餌として適したサイズであれば食べます。

  • ショウジョウバエ
  • ユスリカ
  • ヨーロッパイエコオロギの幼虫
  • レッドローチの幼虫
  • 小さめのミルワーム

餌は爬虫類や両生類の専門店で「餌用」として販売している昆虫を入手するのがおすすめです。または、釣具ショップで取り扱いのあるサシ・サバムシを成虫のハエにして与えるという手もあります。

水分は湿らせたティッシュや脱脂綿を飼育容器に入れておくだけでOKです。

ハエトリグモの上手な飼い方と注意点     

ハエトリグモの上手な飼い方と注意点 

餌は数日に一度でOK

幼体のハエトリグモであれば、餌は毎日与えたほうが速く成長します。一方、成体の場合は数日に一度の給餌でも問題はありません。

与え方は、前述した昆虫をピンセットなどでつかみ、ハエトリグモの目の前で揺らしたり、落としたりしてみてください。お腹が空いていたら食いつきますし、満腹状態であれば興味を示しません。空腹状態かどうかはお腹の膨らみ具合を確認してみましょう。餌の食いつきが悪い場合は、飼育容器を直射日光の当たらない明るい場所に移すなどして様子見してください。

脱皮前後はそっとしておく

脱皮前は拒食状態になり、脱皮してからも数日は餌を口にしないことが多いです。心配になる気持ちはわかりますが、下手に構うとストレスの原因になるため、そっとしておきましょう。

脱皮に関係なくハエトリグモの様子がおかしい場合は、湿度が適切でない(乾燥や過湿)可能性があります。

乾燥は命取りになる

水分補給用のティッシュや脱脂綿が乾いていないか、最低でも週に一度は確認しましょう。飼育容器内が乾燥していると想像以上に速く弱ってしまい、最悪の場合死んでしまいます。逆にいうと、適度な湿度さえ保っていれば、多少の空腹状態が続いても死にはしません。

複数匹を同居させない

同じ飼育容器で多頭飼育をすると、かなりの確率で共食いします。したがって、基本的には単独で飼育しましょう。

家に出るクモの飼育でよくある疑問

家に出るクモの飼育でよくある疑問

クモはどこからやってくるのか?

クモは餌となる不快害虫がいるところにやってきます。室内への侵入経路はゴキブリやコバエとった不快害虫と同じで、床下の隙間や窓サッシの隙間、排水溝、換気口などです。

したがって、不快害虫の出入りを許さない、あるいは発生させない対策を施せば、クモがやってくる可能性も減らせます。

家に出るクモはなつくのか?

ハエトリグモは動くものに対して関心を示すため、飼い主さんをじっと見つめたり、手を出すと指の上に乗ってきたりすることは確かにあります。しかし残念ながら、ハエトリグモを含むすべてのクモは人間になつきません。なついているように見えても、本能と反射で動いているだけです。

家に出るクモを放し飼い状態にしても衛生上の問題はないのか?

「クモは家の守り神」といわれてきた所以は、人間に衛生上の問題をもたらす害虫を食べてくれるためです。クモにとっての餌がなくなれば、獲物を求めて自然に出ていくでしょう。

衛生面を気にするのであれば、クモの存在よりも「クモが現れる室内環境」の対策をすることをおすすめします。

ただし、危険な毒を持つセアカゴケグモやハイイロゴケグモを見かけたら速やかに駆除してください。

さいごに:クモを適当な場所に逃さないこと!

クモを適当な場所に逃さないこと!

屋外で採集してきたクモを再び野に放つのは基本的にNGです。一度でも人間の飼育下に置かれた生き物は、自然で生きていたときとは違う「何か」を抱えてしまっているかもしれないためです。

その「何か」がどのような影響をおよぼすのかは予測できません。無害であればよいですが、生物同士が保っている絶妙なバランスを狂わすきっかけになるかもしれません。クモを意図的に逃がすのはもちろん、逃げてしまうような飼い方をすることも止めましょう。

須黒達巳さんプロフィール画像

監修者:須黒さんよりコメント

なお私は、野外で採集したクモを研究用に多数、成体になるまで飼う、というやり方を探求した経験で申し上げています。個別の最適な飼い方は色々と試行錯誤してみてくださいね。

※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。

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