埼玉県平野部なぜ暑い? 熊谷地方気象台と熊谷市長に聞いてみた
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目次/ INDEX
フィラリア症は蚊を媒介にして犬などの哺乳類に感染する病気です。「犬糸状虫症(いぬしじょうちゅうしょう)」という別名の通り、犬がかかる病気として昔から知られてきました。
実際に犬が感染しやすい病気ではありますが、実は猫を含め人やその他の哺乳類でも感染例があります。蚊が感染経路ということもあり、外で過ごしている猫はもちろん、完全室内飼いの猫でも絶対に感染しないわけではありません。
それどころか感染していても発見が難しく、診断が遅れて症状が悪化したり、最悪の場合死に至るケースも…
健康そうに見えた猫が突然倒れ、死後の解剖検査で初めてフィラリア症と診断された例も少なくありません。猫の突然死の約1割はフィラリア症が原因だといわれているほどです。
詳しくは後述していますが、猫は犬と違ってフィラリア症の有効な治療法が確立されていません。一度発症してしまうと対症療法がメインで完治は難しくなります。
発見・治療が困難といわれるフィラリア症から飼い猫を守るには、何より「予防」が大切なんです。
フィラリア症は、寄生虫の幼虫が蚊を介して体内に侵入することで感染します。幼虫は皮下組織を通って血管に侵入し、体の中を移動しながら未成熟虫になり、6~7ヶ月ほどかけてそうめん状の成虫へと成長して心臓や肺動脈に寄生します。
フィラリア症は単純な接触や飛沫で感染することはなく、フィラリアに感染している動物の血液を吸った蚊が他の犬や猫の血液を吸うことで感染します。そのため、犬のフィラリア症感染件数が多い地域では猫のフィラリア症感染率も高くなります。
日本ではアカイエカやヒトスジシマカなどをはじめ約16種類の蚊がフィラリアの媒介となるといわれています。
猫のフィラリア症の代表的な症状は咳などの呼吸器障害ですが、フィラリアの状態や位置(体内のどこにいるか)によって様々な症状が現れます。
実は猫の場合、犬と違ってフィラリアが心臓まで到達することは少なく、ほとんどが成虫になる前に猫自身の免疫によって死滅させられます。本来フィラリアは犬に寄生する寄生虫なので、猫は宿主として適さないのです。実際、フィラリアに感染しても一見無症状のままで一生を終える猫もいるといいます。
「寄生虫が勝手に死んでしまうなら予防しなくても良いのでは?」と思うかもしれませんが、フィラリアを排除する際に起こる強い免疫反応は、猫自身の体にもダメージを与えてしまうのです。
未成熟虫が猫の肺動脈に到達した際に、特有の免疫的な組織構造によって肺動脈や肺組織に急性の炎症が起きる「犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)」が知られています。猫の体内で成虫になったフィラリアが死ぬ際に肺の炎症や血栓塞栓症を発症することがあり、その際に10~20%程度の猫が突然死するともいわれています。これを乗り越えても肺の組織に後遺症が残り、喘息やアレルギー性気管支炎のような症状が起きるといわれています。
さらに、稀ですが成虫が心臓まで到達する可能性もゼロではなく、それを排除する際の自己免疫機能によって猫が突然死してしまうケースも。体内で死滅した幼虫や未成熟虫の死骸についても、猫の体内へ悪影響を及ぼすため軽視できません。死骸によって血管が詰まることで呼吸器疾患を起こしたり、心臓に重大なダメージを受けることもあります。
他に、脳に移動して寄生したフィラリアによって神経障害が起きた事例もあります。
猫のフィラリア症の症状は特異的なものではなく、他の病気と似ているため発見が難しいといわれています。例えば犬糸状虫随伴呼吸器疾患は、「猫喘息」の症状によく似ていて初診では判断がつきにくいことがあります。
犬と違って体内のフィラリアの数が少なく、動物病院内で行われる抗原検査ではほとんど判断することができないといいます。検出が難しいため複数の検査を組み合わせて診断しますが、それでも確定診断が難しいというのが現状です。
また、もし感染が発見できたとしても絶対的な治療法が確立されておらず、症状を緩和し延命させる対症療法がメインになります。肺を患い、生涯にわたりステロイド剤などの投薬が必要になるケースもあります。
体が大きい犬はフィラリアを摘出する外科手術を行うことができますが、猫は摘出手術ができる獣医師が少ないことや、リスクの高さなどから外科治療は一般的ではありません。
実は犬と違って、これまで猫のフィラリア症予防はあまり啓蒙されていませんでした。
しかし猫のフィラリア症感染報告は近年増加しており、健康な猫のうち10頭に1頭がフィラリア症の抗体を持っている(過去にフィラリア症に感染した経験がある)といわれています。フィラリア症に感染した猫の約6割は外に出る猫ですが、残る4割は完全室内飼いだったというデータもあります。
感染源が外部からでは防ぎにくいことと、感染してしまうと発見・治療が困難であることから、近年は猫のフィラリア予防についても強く叫ばれるようになってきました。
猫のフィラリア予防ができる主な予防薬の種類や特徴についてまとめました。正しい使用方法や注意点なども紹介しているので、フィラリア予防をしていない・したことがないという飼い主さんは参考にしてください。
※こちらで紹介している予防薬は、日本では基本的に獣医師の診断がないと購入できません。
※定期検診を受けている場合などは猫を連れて行かなくても販売してくれることもあるので、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
手軽にできておすすめなのが、スポットタイプのフィラリア予防薬です。
使い方は簡単で、猫の肩甲骨の間あたりにスポットオン式の予防薬を滴下するだけ。蚊によって埋め込まれた幼虫を1ヶ月ごとにまとめて退治するため、毎月1本の頻度で滴下していればしっかり予防することができます。商品や購入先にもよりますが、費用は1ヶ月で大体1,500円~1,900円程度です。
注射ではないので傷みもなく、飲み薬が苦手な猫にはぴったりです。有効成分が皮膚から体内へ素早く吸収されると同時に皮脂腺を通じて全身に広まるため、ノミなどの外部寄生虫にも効果を発揮してくれます。
フィラリア予防薬は、正しい使用方法を守っていれば猫への安全が保証されている動物用医薬品です。ただし、稀に副作用が現れたり、猫が舐めてしまったためによだれが止まらないなどの症状が出ることがあります。大抵の場合は一過性のものですが、改善が見られない場合は獣医へ相談しましょう。
以下に紹介しているのはスポットタイプのなかでも人気のフィラリア予防薬です。商品によって駆除できる寄生虫の範囲が異なるので、地域や猫の行動範囲によって検討してみてください。
多くの寄生虫の予防が1度にできるのはメリットですが、駆虫対象が増えるほど値段も高くなる傾向です。
ちなみにスポットタイプの予防薬としては「フロントライン」や「フロントラインプラス」も有名ですが、これらはフィラリア予防効果はないものなので注意してください。
種類は少ないですが、経口(飲み薬)タイプのフィラリア予防薬もあります。濡れるのを極端に嫌がったり、大人しく触らせてくれない猫は経口タイプの予防薬がおすすめです。
そのまま飲めない場合はご飯やおやつに混ぜて飲ませるなど工夫をしましょう。
経口タイプのフィラリア予防薬はスポットタイプと同様、蚊によって埋め込まれた幼虫を1ヶ月ごとにまとめて退治してくれます。検討している方は取り扱いがあるかどうか動物病院に確認してみてください。
近年温暖化の影響で蚊の活動シーズンが伸びたこともあり、米国犬糸状虫学会(AHS)では通年の予防を推奨しています。
ただし日本は真冬など蚊が活動していない時期もあるため、関東であれば5月上旬~12月頃まで投与を行うのが良いとされています。温かい地域や、川の近く、山あいなど蚊が活動しやすい地域に住む方は少し早め(長め)に投薬をしておくと安心です。
気候によって蚊の活動期間が異なるので、蚊が吸血活動をはじめる15℃以上の気温が続いたら、少なくとも1ヶ月以内にフィラリア予防をしましょう。15℃以下の気温が続くと蚊は活動しなくなりますが、その後さらに1ヶ月間はフィラリア予防が必要だと覚えておいてください。
フィラリア予防薬が何歳から使用できるかどうかは、薬の成分やメーカーによって異なります。
参考までに、スポットタイプの人気薬「レボリューション」は生後6週齢未満の子猫に投与することはできません。保護した子猫にフィラリア予防薬を使いたいときなどは、1度獣医師に相談することをおすすめします。
フィラリア症は犬に多い病気ですが、猫がかかる可能性もゼロではありません。発見・治療が難しい猫のフィラリア症は予防が何より大事です!
感染に気がつかないうちに飼い猫が命を落とす危険もある恐い病気なので、「室内飼いだから必要ない」と軽視せず