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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
「シェルティ」という愛称で呼ばれるシェットランド・シープドッグは、その気品ある美しい外見と聡明さで、日本だけでなく世界中で愛されている犬種です。今回は、そんなシェットランド・シープドッグの性格や、飼う上での注意点について、バーニー動物病院千林分院分院長で獣医師の堂山有里先生に解説していただきます。
目次
- シェットランド・シープドッグの歴史やルーツは?
- シェットランド・シープドッグの体高、体重は?
- シェットランド・シープドッグの平均寿命は?
- シェットランド・シープドッグの毛色の種類や被毛の特徴は?
- シェットランド・シープドッグの外見や吠え声の特徴は?
- シェットランド・シープドッグとラフ・コリーの違いとは?
- シェットランド・シープドッグはどんな性格? オスとメスで性格の違いはあるの?
- シェットランド・シープドッグを飼うのに向いている人は?
- シェットランド・シープドッグを飼う上で気をつけることは?
- シェットランド・シープドッグのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
- シェットランド・シープドッグの食事の注意点は?
- シェットランド・シープドッグにおすすめの遊びは?
- シェットランド・シープドッグを散歩させる際に気をつけることは?
- シェットランド・シープドッグがかかりやすい病気は?
シェットランド・シープドッグの歴史やルーツは?
シェトランド・シープドックは、18世紀のスコットランド北部の沖合のシェットランド諸島がルーツといわれており、当時は農夫とともに家畜を管理する牧畜・牧羊犬として活躍していました。その後、土着の犬と輸入されたラフ・コリーとの交配によって生まれたと考えられています。
シェットランド・シープドッグの体高、体重は?
小型犬に分類されるシェットランド・シープドッグ。オス・メスそれぞれの平均的な体高と体重を見ていきましょう。
体高
シェトランド・シープドックの平均的な体高は、一般的にオスは37cm程度、メスは35.5cm程度です。40.5cmを超えるものは好ましくないとされています。
体重
シェットランド・シープドッグの平均体重は6~7kgとされていますが、実際には8~9kgになることもあります。
シェットランド・シープドッグの平均寿命は?
シェットランド・シープドッグの寿命は平均12〜13歳です。小型犬に比べるとやや短命といえるでしょう。
シェットランド・シープドッグの毛色の種類や被毛の特徴は?
美しい毛並みがシェットランド・シープドッグの魅力です。被毛の特徴と豊富な毛色のバリエーションを見ていきましょう。
毛色の特徴
シェットランド・シープドッグの毛色は種類が多く、ジャパンケネルクラブが認めるのは以下の5つです。同じパターンであっても、毛色の混じり具合で個性がでる点が魅力でしょう。
セーブル
黒味を帯びた茶色、あるいは茶色で毛先に黒っぽい毛が混じるものを指します。色は薄いゴールドから濃いマホガニー(赤褐色)までとされています。
トライ
黒色とタン(黄褐色)と白色の3色からなる毛色です。体の部分は黒色で、濃いタン・マーキング(斑)があることが多いです。
ブルーマール
きれいなシルバー・ブルー(青みを帯びた灰色)に大理石のように黒色が散りばめられている毛色です。濃いタン・マーキングがある場合も多いです。
ブラック&ホワイト
その名の通り、黒と白の二色です。
ブラック&タン
全体が黒でタン・マーキングがある毛色です。タンは両目の上、口の両側、喉や足、肛門の周辺にあることが多いです。
被毛の特徴
犬の毛は、犬種によっては2層構造(ダブルコート)になっており、シェットランド・シープドッグの被毛もダブルコートです。上毛のオーバーコートは太くてしっかりした剛毛で皮膚を保護する役割を持ち、下毛のアンダーコートは柔らかく短い毛が密生していて保湿・保温の役割を持ちます。
ダブルコートであることから、春と秋の換毛期は抜け毛が特に多いです。皮膚の通気性のためにもこまめな手入れが欠かせません。
シェットランド・シープドッグの外見や吠え声の特徴は?
ここでは、シェットランド・シープドッグの外見と吠え声について解説します。
外見
シェットランド・シープドッグは、小型で胸の飾り毛が優雅な外見をもっています。均整の取れた体格で、豊かな被毛、美しい頭部、優しい表情が特徴的です。
吠え声
牧羊犬であった性質から、よくとおる声で吠えるのが特徴です。また、動くものに反応して吠えやすい傾向もあります。子犬の頃から少しずついろいろな音やもの・人に慣れさせておくとよいでしょう。
シェットランド・シープドッグとラフ・コリーの違いとは?
シェットランド・シープドッグと外見がよく似た犬にラフ・コリーがいます。それぞれの違いを見ていきましょう。
体の大きさの違い
シェットランド・シープドッグは小型犬に分類されるのに対し、ラフ・コリーは大型犬に分類されます。平均で、体高50~60cm、体重も20~30kgほどあり、シェットランド・シープドッグより大きいのが特徴です。
性格の違い
シェットランド・シープドッグは比較的穏やかな性格ですが、ラフ・コリーの方がさらにおとなしいでしょう。
顔の違い
シェットランド・シープドックと比較して、ラフ・コリーはマズル(鼻先から口周辺)がよりシャープな印象があります。
シェットランド・シープドッグはどんな性格? オスとメスで性格の違いはあるの?
シェットランド・シープドッグは、優雅なイメージと同様、落ち着いた優しい性格が特徴です。
忠実
飼い主には忠実ですが、見知らぬ人やもの、犬には警戒します。
愛情深い
日頃から接している大切な家族に対しては、深い愛情を見せます。
穏やか
穏やかで、ひどく怒ったり興奮したりすることは少ない犬種です。
繊細
警戒心は比較的強いです。チャイムの音や来客に吠えることもあるので、過剰に警戒しないようにしつけをするとよいでしょう。
シェットランド・シープドッグのオスとメスの性格の違いは?
メスに比べるとオスの方が多少活発で、警戒心も見せやすい傾向があります。
シェットランド・シープドッグを飼うのに向いている人は?
シェットランド・シープドッグは活発な犬種なので、犬と一緒にお出かけしたい人や毎日散歩に連れて行ける人がよいでしょう。また、毛が長いのでブラッシングが必須です。被毛のお手入れに時間を割ける人だとより飼うのに向いています。
シェットランド・シープドッグは初心者向きの犬?
穏やかな性格で問題行動も少ないため、初心者でも飼いやすいでしょう。
シェットランド・シープドッグを飼う上で気をつけることは?
シェットランド・シープドッグを飼う際は、日常的な運動と被毛のケアがポイントです。
毎日欠かさず運動させる
牧羊犬として活動していたことから、日々の運動を必要とする犬種です。毎日のお散歩のほかに、休日はドックランや広い公園などで走らせてあげるとストレスの発散につながります。
こまめにブラッシングをして毛の手入れをする
長く豊かな被毛は、毛玉ができやすくブラッシングが必須です。子犬の頃から体を触られることに慣らしておくとよいでしょう。自宅でシャンプーしづらい場合は、月に1回トリミングサロンで洗ってもらうことをおすすめします。
シェットランド・シープドッグのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
シェットランド・シープドッグは賢くて穏やかな性格なので、しつけは比較的しやすいです。
しつけを始める時期
生後1〜3か月頃は、「社会化期」といって子犬が新しく出会うものや人に慣れやすい時期です。シェットランド・シープドックは家族以外の人や知らない場所・ものなどには比較的警戒心を持ちやすい犬種ですが、社会化期はいろいろな刺激を受け入れやすい傾向にあります。この時期に、これからの生活で遭遇しやすい刺激に慣らしておくことで適応する力が身に付くでしょう。
おすすめのしつけ方法
牧羊犬をルーツとするため、吠えることと動くものに反応することへのしつけをするとよいでしょう。
吠え声のしつけ
シェットランド・シープドックは比較的吠えやすい犬種ですが、むやみやたらと吠えるわけではなく、見知らぬ人や大きな物音に反応することが多いです。子犬の頃から、宅配便の人や遊びに来てくれたお客さんからおやつをもらったり、お散歩中に家族以外の人と楽しく触れ合ったりするようにしておくとよいでしょう。
いきなり撫でられると嫌な経験となってしまいますので、嫌がっているときや怖がっているときは無理をさせないでください。様子をよく観察して、リラックスしているときや嬉しそうな様子を見せているときにおやつをあげるのがおすすめです。
動くものへのしつけ
「おいで」と言って犬を呼び寄せるしつけは、散歩中に誤ってリードが外れてしまったときや、犬を危険なものから回避させたいときなどにとても役立ちます。バイクなどの早いスピードで走るものに不意に反応して追いかけることもありますが、「おいで」で呼び寄せることができると安心です。
ごはんの入った器を持って「おいで!」と言い、そばに来たらそのままフードを与えてください。「おいで」と呼ばれたら良いことがあるようにしておくと、喜んできてくれるようになります。「おいで」で呼んで叱ったり閉じ込めたりすることはしないように気をつけましょう。
シェットランド・シープドッグにおすすめの遊びは?
シェットランド・シープドッグは毎日の運動が欠かせない犬種です。体を動かせる遊びで一緒に楽しむとよいでしょう。
ボール遊び・フリスビー
牧羊犬であったため、動くものを追いかけることが本能的に好きです。
アジリティ
走ることが得意で人の言うことをよく理解するので、アジリティも楽しめるでしょう。
ドッグラン
オフリードで自由に走らせてあげると喜ぶので、ドックランに連れて行ってあげるとよいでしょう。
シェットランド・シープドッグを散歩させる際に気をつけることは?
シェットランド・シープドッグを散歩させるときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
時間・頻度
1日2回、朝晩に30分程度のお散歩をさせてください。
気をつけた方がよいこと
涼しい地方の出身なので暑さに弱いです。真夏は暑い時間帯を避けて散歩させ、熱中症にならないよう気をつけてあげてください。
シェットランド・シープドッグがかかりやすい病気は?
ここからは、シェットランド・シープドッグがかかりやすい病気を見ていきましょう。
コリー眼異常
コリーアイとも呼ばれる遺伝性の眼疾患です。眼の脈絡膜の発育不全や網膜内の過剰な血管新生を特徴としていて、無症状のものから失明に至るものまで症状には個体差があります。
進行性網膜委縮症
眼の網膜にある視細胞が変性し失明に至る疾患です。有効な治療法はないため、不自由なく暮らせるよう飼育環境を整えることなどが推奨されています。
外耳炎
耳介から鼓膜までの外耳道に炎症が起きるものです。定期的に耳の状態を確認し、赤くなっていたり匂いがあったりしないかを確認しましょう。外耳炎になると、痒みや痛みのために引っ掻く動作を頻繁にしたり頭を振ったりします。変化に気づいたら、なるべく早く動物病院を受診するようにしてください。
アトピー性皮膚炎
ハウスダストや花粉など、環境中にあるアレルゲンに反応して皮膚に痒みや炎症が生じるものをアトピー性皮膚炎と呼びます。体をかゆがる、ふけが出て毛が抜けるなどの症状が出ます。
関節炎
骨と骨のつなぎ目にある関節に起きる痛みを伴う炎症です。進行すると片足を庇って歩くようになったり、痛くて歩けなくなったりします。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨(膝のお皿)が正常な位置から外れ、膝関節を伸ばせなくなってしまう病気です。原因の多くは先天的なものです。膝蓋骨脱臼から靭帯を損傷し歩けなくなることがありますので、太りすぎや激しい運動を避けること、床を滑りにくい材質にすること、そして適正な運動により良質の筋肉を維持することが大切です。
甲状腺機能低下症
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが減少することにより、だるさ、寒気、食欲不振、左右対称の脱毛など、全身にさまざまな症状が見られるようになります。高齢犬になると発症しやすくなります。
特発性てんかん
MRIなどの検査を受けても脳に明らか異常が見つからず、発作が繰り返される場合を特発性てんかんと呼びます。遺伝的要因が関与しているといわれ、軽度であれば無治療で経過観察を行います。発作が頻繁である場合や重度である場合は、薬によるコントロールも行われます。
フィラリア予防薬に注意
薬物に関係する遺伝子に変異があり、フィラリアのワクチンに使用されるイベルメクチンを投与されることで、発熱やショック、運動失調などの神経毒性が出ることが知られています。