公開
ヤマザキ動物看護大学准教授、愛玩動物看護師、ペットグルーミングスペシャリスト。教育気・研究の現場だけでなく、数々のテレビ出演や、執筆活動など幅広く活躍。
小さな体に短い足、素朴な外観が特徴のケアーン・テリアですが、ケアーン・テリアを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、ヤマザキ動物看護大学准教授の福山貴昭先生に教えていただいた、ケアーン・テリアの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- ケアーン・テリアの歴史やルーツ、英語名は?
- ケアーン・テリアの体高や体重は?
- ケアーン・テリアの平均寿命は?
- ケアーン・テリアの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?
- ケアーン・テリアはどんな性格、習性?
- ケアーン・テリアを迎える際にかかる費用は?
- ケアーン・テリアのしつけと社会化トレーニングのポイント
- ケアーン・テリアに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- ケアーン・テリアを飼うのに向いている人は?
- ケアーン・テリアがかかりやすい病気と予防法は?
- ケアーン・テリアの日常のお手入れ
- ケアーン・テリアとの生活で注意すべきことは?
ケアーン・テリアの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | ケアーン・テリア |
英語名 | Cairn Terrier |
原産国 | イギリス |
分類 | 小型犬 |
グループ | 3G:テリア |
ケアーン・テリア【英語:Cairn Terrier】は、イギリスが原産の小型犬です。
ジャパンケネルクラブの犬種分類では、「3G:テリア」に属します。
ケアーン・テリアは、テリアの中で最も古い犬種といわれていて、スコットランド北西・ハイランドの農村地域で何世紀もの歳月をかけて発達しました。名称の「ケアーン」は、スコットランド名物である“石塚(cairn)”から。石が積まれた石塚や岩場の穴に入り込んで、ネズミやウサギなどを狩っていたことから名付けられました。
『オズの魔法使い』に出てくるトトという名の犬は、このケアーン・テリアです。またケアーン・テリアとウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアは、近親であることから共通の特徴が多く見られます。
他のテリア種のように手を加えられることなく、テリアの祖先に最も近い素朴な外貌と気質はそのままに、現在では家庭犬やショードッグとして親しまれています。
ケアーン・テリアの体高や体重は?
体高:オス、メスともに28~31cm
体重:オス、メスともに6~7.5kg
ケアーン・テリアは小型犬に分類されます。オス、メスの体高や体重に大きな差はないとされています。
ケアーン・テリアの平均寿命は?
ケアーン・テリアの平均寿命に関するデータはありませんが、『アニコム家庭動物白書2021』によると、小型犬の平均寿命は14.4歳となっています。
犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
ケアーン・テリアの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?
ジャパンケネルクラブの犬種標準によると、ケアーン・テリアの毛色は、クリーム、ウィートン、レッド、グレー、ほぼブラックのいずれかであること、となっています。これらの色でしま模様のようになったブリンドルの場合もあります。耳やマズルは黒っぽいのが典型です。
コートは、粗くて硬いトップコートと軟らかいアンダーコートのダブルコートで密生していて、雨水をよく弾きます。
体格はコンパクトで短い足、骨格はしっかりしています。幅広の頭部に小さくとがった立ち耳、尾は断尾せずに立っています。
ケアーン・テリアはどんな性格、習性?
ケアーン・テリアは、明るく人を喜ばせるのが大好きな性格で、良い家庭犬になるでしょう。子どもとも仲良くできるといわれています。
しかし、テリア種ならではの頑固で自己主張が強い性質もあります。またオス同士ではケンカになりやすいため注意が必要です。
さらにテリアは地面に穴を掘る習性があるため、庭などで自由に遊ばせる際には柵の下を掘って逃げ出さないように気を付けましょう。
ケアーン・テリアを迎える際にかかる費用は?
ケアーン・テリアを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき | ペットショップ、ブリーダー | 約40万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000〜10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000〜10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
ケアーン・テリアをペットショップから迎える際の価格の目安は、約40~50万円です。月齢や血統などにより、値段が上がることもあります。他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
犬を飼うための初期費用や毎月の支出についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>犬を飼うのにかかる費用はどれくらい?初期費用や毎月の支出を解説【獣医師監修】
飼い続けるために必要な費用
犬を養育するうえでの生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
犬を飼う際に生涯かかる費用についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>迎える前に知っておこう!犬の一生にかかるお金はどれくらい?
ケアーン・テリアを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。ケアーン・テリアは運動量が豊富ですから、取ってこい遊びに使えるボールなどのおもちゃや、近くにドッグランがあると理想的です。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどです。ケアーン・テリアはダブルコートのため、ブラッシングや自宅でのシャンプーといったケア用品を揃えておくのが安心です。
犬を飼うための初期費用や毎月の支出についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>犬を飼うのにかかる費用はどれくらい?初期費用や毎月の支出を解説【獣医師監修】
2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主のもとへ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、ケアーン・テリアを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策をとるのもおすすめです。
ケアーン・テリアのしつけと社会化トレーニングのポイント
ケアーン・テリアは、頭が良く利口で、飼い主に対しては忠実なため、トレーニングに楽しんで取り組む犬種です。
しかしテリア種ならではの頑固さや気の強い一面もあるため、トレーニングを進めるときは諦めることなく根気強く接していきましょう。
また、テリア属は狩猟犬だったことから吠えやすい性質があります。ケアーン・テリアは小さい体ですが、吠え声は大きいため、集合住宅に住んでいる場合は特に吠え癖がつかないように注意しておきたいところです。子犬の頃からたくさんの人に会わせ、多くの経験をさせることで、見知らぬことに対して過剰な警戒心を持たないよう社会性を育てていきましょう。
犬の社会化についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>子犬の社会化期とは?必要な理由と期間中にやっておきたいことを解説【獣医師監修】
ケアーン・テリアに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:30分以上を1日2回
✓運動量:多め
✓おすすめの遊び:ドッグラン、ボール遊び
小型犬ですが、狩猟犬だったこともから体力があります。活動的な犬種なので、普段からの散歩の他、自由に走り回れるドッグランや、狩猟本能を満たすボール投げなどの遊びを交えてあげるとよいでしょう。
ケアーン・テリアを飼うのに向いている人は?
✓子どものいる家庭でも大丈夫
ケアーン・テリアは子どもが好きな犬として知られているため、小さなお子さまがいるご家庭でも犬がストレスを感じにくいでしょう。また、子犬期からしっかりとトレーニングをすれば、優れた家庭犬になります。
✓テリア犬種の特性を理解し、しつけができる人
テリア犬種は、頑固で自己主張が強い性質を持っているとされています。そんな特性を理解して、辛抱強く付き合える人がよいでしょう。
✓十分な運動をさせてあげられる環境
ケアーン・テリアは小さな体ですが、猟犬だったこともありパワフルでスタミナ豊富な犬種です。小走りを交えた散歩や、ボール遊びで走らせるなどして、毎日十分な運動をさせてあげられる人がよいでしょう。
ケアーン・テリアがかかりやすい病気と予防法は?
ケアーン・テリアがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓フォン・ヴィレブランド病
血小板の止血機能に関与する因子に異常がある遺伝性疾患です。ケガをした際の過度な出血や、手術時に出血が止まらなくなるなどの症状があります。治療法はなく、貧血や出血があった際は投薬や輸血などで対応します。予防法はありませんが、親犬の遺伝検査で子犬が産まれる前にチェックできます。
✓大腿骨頭壊死症
ケアーン・テリアを含む小型犬に多い疾患で、大腿骨につながる血管に異常があり、血液供給が不足して骨が変形してしまう疾患です。遺伝的要因が疑われていますが、原因は分かっていません。多くが生後11か月までの成長期に発症し、症状が重い場合は大腿骨頭を切除する外科手術を行います。
✓目の疾患
ケアーン・テリアは遺伝的に目の疾患が多いといわれています。白内障や緑内障、進行性網膜萎縮症など、病気が進行すると失明する場合もあるので、定期的に目のチェックをするようにしましょう。
ケアーン・テリアの日常のお手入れ
✓ブラッシング:2、3日に1回
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:必要
密生したダブルコートなので、丁寧にブラッシングをして抜けた毛が絡まったり、毛玉になったりする前に取り除きます。特に春と秋の換毛期は抜け毛が増えるので、こまめなブラッシングが必要です。
また、テリア種のお手入れには専用のナイフで古い被毛を抜く「プラッキング」という技法があります。プラッキングを行うことで、被毛の褪色を防ぎ、毛質が硬くなります。硬い毛質にこだわりたい場合は、技術のあるトリマーに施術してもらいましょう。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯みがきは毎日~2日に1回、耳掃除や肛門腺絞り、爪切りは2週~1カ月に1回の頻度で行います。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床などで滑りやすくなるためカットしてください。
犬のお手入れ方法についてはこちらの記事もおすすめ!
>実はとっても重要!犬に必要な“小さなパーツのお手入れ”方法を解説!〜顔・お尻・足〜
ケアーン・テリアとの生活で注意すべきことは?
✓小動物との同居に注意
ケアーン・テリアはウサギやネズミを追いかけて捕まえていた狩猟本能があるため、ハムスターなどの小動物との同居には注意が必要です。
✓関節に負担の少ない床材を選ぼう!
ケアーン・テリアは非常に活発的できびきび動き回ります。フローリングなどの床で足が滑ると足首などの関節に負担がかかります。普段過ごす部屋の床は滑りにくい素材を選ぶか、マットなどを敷くとよいでしょう。
✓いたずらに注意
ケアーン・テリアは非常に活動的で、好奇心も旺盛です。ちょっと目を離した隙に大切なものにいたずらされるといった可能性があります。犬の届く場所には壊されそうなものは置かず片付けておく、留守番させるときはケージに入れる、など未然にいたずらを防ぐようにしましょう。また運動不足も問題行動の原因になります。十分に運動欲求を満たすようにしましょう。