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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
普段は食欲旺盛なのに、シニアの愛犬が突然ご飯を食べなくなってしまった……そんなシチュエーションに困ったことはありませんか? 特に、老犬(シニア犬)となればなおさら心配になってしまうものですよね。今回は獣医師の林美彩先生に老犬がごはんを食べなくなってしまう理由とその対策について伺いました。
目次
- 老犬がご飯を食べなくなる理由は?
- 老犬がご飯を食べない時、病気かどうかを見分ける方法は?
- フードにどんな工夫をすると老犬はご飯を食べてくれる?
- 老犬が何も食べないとき、犬の好物や人間の食べ物をあげてもいい?
- 寝たきりの老犬にご飯を食べさせる時にはどうすればいい?
- 老犬がご飯を全く食べなくなったときは?
老犬がご飯を食べなくなる理由は?
老犬がご飯を食べなくなるのはなぜでしょうか? その理由として、老化または病気が考えられます。
ご飯を食べなくなった原因が老化の場合
食欲自体が落ちた、代謝が低下した、味覚と嗅覚の低下により嗜好が変わったなどの理由で、老犬はご飯を食べなくなる事があります。いずれも加齢によるものなので、ケアをして回復させてあげるというよりは、愛犬に合ったご飯を選んであげることを優先してあげてください。
ご飯を食べなくなった原因が病気の場合
老犬がご飯を食べなくなってしまった場合、病気の可能性もゼロではありません。何らかの疾患があり、口や喉、腹部に痛みを感じているため、食事ができなくなっているということが考えられます。
老犬がご飯を食べない時、病気かどうかを見分ける方法は?
ご飯を食べなくなった原因が病気からくる場合と、老化が原因となってご飯を食べられなくなった場合を見分ける方法があります。それは「消化器症状」があるかどうかです。消化器症状とは、胃や腸など消化器系に疾患があるときに起こる症状のことです。
老化が原因の食欲不振の症状
老化が原因でご飯を食べなくなってしまっている場合、大きな変化はあまり見られません。嘔吐・下痢などの消化器症状や強い口臭はなく、普通に過ごせていて、食欲はあるものの食べる量が少なくなったというケースが多いようです。
病気が原因の食欲不振の症状
病気によってご飯を食べなくなってしまった場合には、嘔吐や下痢といった消化器症状が見られます。その他、口臭が強くなるといった変化も。例えば、腎臓に疾患がある場合はアンモニア臭が強くなることもあります。
食欲不振には意外な原因が潜んでいる場合も
愛犬の食欲不振は、胃腸障害や老化だけでなく、体の痛みやストレスなどが原因となっている場合もあります。いずれの場合であっても、まずいつもと愛犬の様子が違うことに気がついたら、かかりつけの獣医師に相談し、食欲不振の原因を調べてもらいましょう。
また日々の愛犬の健康状態について
- 食欲があるか
- 排泄の回数
- 排泄物の内容(色や形体)
を飼い主が毎日チェックし、健康状態の変化にいち早く気がつけるように日頃から備えておくことも大切です。
フードにどんな工夫をすると老犬はご飯を食べてくれる?
食欲不振の老犬にご飯を食べさせたいときには、フードに工夫が必要です。
かかりつけの動物病院で食欲不振の原因を相談の上、獣医師判断のもと、フードを温める、柔らかくする、フードそのものを変更するといった工夫をしてみましょう。
フードを温める
器を電子レンジなどで温めてから、そこにフードを入れて数分置いておくと、フードが温まって香りが強くなり、食欲を増進させる効果が期待できます。缶詰などに入っているウェットフードの場合は湯煎で温めてもよいでしょう。温めるだけで冷たいままのものよりも食べやすくなる上、消化のしやすさにもつながります。
フードを柔らかくする
フードを柔らかくする場合は、白湯や出汁などのスープをフードに入れてふやかしてあげてください。固いままのときよりも食べやすくなるのはもちろんのこと、簡単に水分補給ができるといったメリットもあります。犬がご飯を食べない場合に一番避けたいのは、脱水症状になってしまうことです。
フードの変更
ご飯を食べなくなったのは、老化によって嗜好が変わってしまったためという理由も考えられます。そのため、フード自体を普段食べているものから別のものに変えてみるのもいいアイディアです。特に、普段ドライタイプを食べている子の場合は、ウェットタイプにするだけでも食いつきがよくなることもあります。
キャットフードを与える
フードを温めたり柔らかくしたり、フードを変更してみたりと、こうした工夫をすべて取り入れてみても食べてくれない場合には、猫のフードを使用してみてください。一般的に猫のフードは犬のものよりも嗜好性が高く作られているため、喜んで食べてくれることもあるのです。猫のフードを選ぶ際は、ドライではなくウェットタイプのものがおすすめです。
ただし、一般的に猫のフードは犬のフードより高カロリーなため、食べ過ぎは肥満や糖尿病の要因になる可能性があり注意が必要です。あくまでも食欲を出させるための一時的な処置にしてください。
老犬が何も食べないとき、犬の好物や人間の食べ物をあげてもいい?
犬の好物ばかりを与えてもいい?
老犬が全くご飯を食べないときに、高カロリーのおやつのような大好物をたくさん与えたくなる気持ちはよくわかります。老犬の場合はたとえ1日でも何も口にしないとどんどん衰弱してしまうため、一時的にあげることは問題ありません。
しかし、それしか食べないからといって、長期的に好きなものばかりを与えてしまうのはおすすめできません。できれば、『第4章:フードにどんな工夫をすると老犬はご飯を食べてくれる?』でもご紹介した通り、もともと食べていたフードを工夫してみることから始めてみてください。
人間の食べ物を与えてもいい?
食べてくれるからといって、人間の食べ物を与えたいという方もいらっしゃるかと思います。どうしても人の食べ物を与えたいという場合には、野菜(ネギ類などを除く)を肉や魚など動物性たんぱく質のものと一緒に、味付けをしないで茹でるのがおすすめです。味付けがなくても、肉や魚と一緒に茹でることで嗜好性が高まり、食べてくれやすくなります。
寝たきりの老犬にご飯を食べさせる時にはどうすればいい?
ご飯前に寝返りやマッサージをする
寝たきりになってしまっている老犬にご飯を食べさせる場合、寝返りを打たせたり、全身のマッサージをしてあげたりして、軽く体と筋肉をほぐしてあげてください。寝返りやマッサージをすると血液が全身に行きわたりますが、そうすると消化器官に集まる血液が少なくなって消化不良を起こしやすくなるため、食前食後の1時間は避けて行ってください。
誤嚥しないように上半身を起こす
寝たきりの子にご飯を与える際は、誤嚥しないよう注意してあげてください。ご飯を与える際は寝たままではなく、上半身を起こしてあげましょう。食道から胃までがまっすぐになるよう座らせてあげると、誤嚥のリスクを軽減できます。座らせるのが難しい場合は、寝たままでもできるだけ上半身を起こしてあげてください。
少し難しく感じられるかもしれませんが、顎ではなく頭を上に上げるようにすることがコツです。少し意識するだけでも食べやすさが格段に変わりますので、ぜひ挑戦してみてください。
老犬がご飯を全く食べなくなったときは?
水分補給は必ず
ご飯を一切口にしなくなってしまった場合、まず優先するべきは水分補給です。脱水が起こるととても苦しい思いをしてしまうため、体に吸収されやすい水分を与えてあげるようにしましょう。中でも、経口補水液やイオン水などがおすすめです。こうした水分をスポイトで少しずつ与えてあげたり、軽く滴る程度に水分を含ませたガーゼでお口の中を拭いて湿らせてあげたりと、水分補給を心がけてください。
好きな食べ物を
最終手段として、甘いものであれば食べてくれるといった場合もありますので、好きな食べ物を食べさせてあげるのもおすすめです。
どうしてもご飯を食べてくれないときは
老犬はご飯を一日食べないだけでも一気に体力が衰えてしまいます。ある程度は無理やりにでも与えることが必要でしょう。どんなものも一切受け付けないという場合には、すぐにかかりつけの病院へ連れていってあげてください。
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