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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
私たちの身近にある食材であるパン。主食として食べたり、おやつとして食べたりと普段食べている飼い主さんも非常に多いでしょう。おいしそうに食べていると、愛犬が欲しそうに見ているとき、ついついパンをあげたくなる人も多いかと思います。ですが、そもそもパンは犬に与えてもいいのでしょうか。今回は、chicoどうぶつ診療所所長の林美彩先生に教えていただいた、愛犬にパンをあげる時の注意点やパンを食べた時の影響について解説していきます。
目次
- 犬にパンを与えるのはNG!
- 犬にパンを与えるとアレルギーを引き起こす可能性も
- 犬にパンを与えると肥満の原因になることも
- パンには犬に食べさせてはNGな食材が含まれているものも
- 犬用パンなら食べさせても大丈夫?
- 犬がパンを食べてしまったときの対処法
- 犬がパンを誤食しないための予防法
犬にパンを与えるのはNG!
実は、パンは基本的に犬には与えない方がいい食べ物です。パンにはさまざまな材料が使われています。シンプルなパンでも、小麦粉、イースト菌、塩、砂糖、バターが含まれています。また、スーパーで売られているパンには保存料が含まれています。こういった材料がアレルギーの原因になったり、肥満の原因になったりする可能性があるため、犬にパンをあげるのは避けたほうがいいでしょう。
犬にパンを与えるとアレルギーを引き起こす可能性も
パンは小麦をメインに作られていますが、この小麦は犬にとってあまりよくない食べ物です。小麦粉には「小麦グルテン」という成分が含まれていますが、犬は生まれつきこの成分を消化できる酵素を持っていません。雑食のイメージが強い犬ですが、もともと犬の祖先は肉食です。その名残として、穀物を消化する力が弱くなっています。小麦がメインで作られているパンを犬にあげると、胃や腸のトラブルを起こしたり、小麦アレルギーを引き起こしたりする可能性があります。
犬にパンを与えると肥満の原因になることも
パンには小麦の他に砂糖やバターも含まれています。そもそも、パン自体が犬にとって高カロリーな食材です。そのため、パンを犬に与えると必要な時にドッグフードを食べなくなったり、肥満の原因になったりすることもあります。
パンには犬に食べさせてはNGな食材が含まれているものも
菓子パンや総菜パンなど、パンにはいろいろな種類があり、犬にとってNGな食材が入っているパンがあります。
代表的なのはチョコレートを含んだパンです。チョコレートにはテオブロミンという犬にとって有毒成分が入っていますが、人間はこれを消化する酵素を持っているため毒にはなりません。ですが、犬は元来テオブロミンを分解する力が弱く、消化するまでに時間がかかってしまいます。結果として身体の中に有毒な成分が残ってしまい、チョコレート中毒となります。
チョコチップをトッピングしたり、チョコを挟んでいたりするパンはすぐに気づけるかもしれませんが、生地に練り込んであるタイプもあります。また、チョコレートだけではなく同じカカオ豆を原料としたココアも犬にとってNG食材です。こちらも生地に練り込まれていることがよくあるので、気を付けましょう。
チョコレートと同じく気を付けたいのが玉ねぎを含んだパンです。こちらはチョコレートを使った菓子パンとは異なり、惣菜系のパンに多く含まれています。玉ねぎも犬にとっては与えてはいけない食品で、食べると玉ねぎ中毒の原因になります。
玉ねぎは調理によって形を変えるので、一目で「入っている」とわからないこともあります。加熱されても毒性は変わらないため、「火が通っているから大丈夫」ということもありません。ピザパンやコロッケパン、カレーパンなどに多く含まれている可能性が高いため、間違って食べないように買うときは成分表示をよく確認しましょう。
犬用パンなら食べさせても大丈夫?
人間用に売られているパンは犬にとって食べなくてもいいものですが、自分が食べている姿を物欲しそうに見られるとちょっと心が痛みますね。「どうしてもあげたい」という時には、犬用に作られた犬用パンを与えましょう。小麦粉を避け、米粉やおからから作られたもの、なるべく添加物が入っていないものを選ぶと良いでしょう。
あげる時には、一口サイズにカットし、おやつとしてごく少量をあげるようにしましょう。人間用のパンと同じで、あげすぎは肥満の原因となります。肥満は他の病気やケガの原因にもなるので、あくまでおやつとして量を調節して与えましょう。
犬がパンを食べてしまったときの対処法
「ちょっと目を離したすきに犬がパンを食べてしまった」というケースは少なくありません。犬がパンを食べてもすぐにアレルギー症状を起こすとは限りません。ただ、犬がアレルギー症状を起こすと、嘔吐や下痢、皮膚の発疹や赤みなどが見られます。すぐに収まるものであればよいですが、激しい嘔吐や下痢、数時間経ってもアレルギー症状が落ち着かなかったり、ぐったりしてしまったりするようであれば、すぐにかかりつけの病院を受診してください。
犬がパンを誤食しないための予防法
好奇心の強い犬にとって、飼い主さんが美味しそうに食べているパンは魅力的な存在です。ちょっと舐めてみたり、かじってみたいと思ったりするかもしれません。犬が間違ってパンを食べることがないよう、手の届かないところか扉のついた戸棚にしまっておきましょう。
第3稿:2021年6月14日更新
第2稿:2021年2月15日更新
初稿:2020年11月26日公開
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