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アメリカ獣医行動学会会員、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表。問題行動の治療を専門とし臨床に携わる。
引き締まった体と品格のある美しい赤毛をもつアイリッシュ・セター。狩猟犬としてのルーツを背景に持ち、賢く従順でドッグショーでも常連の犬種です。今回の記事では、アイリッシュ・セターの性格の特徴やしつけのコツ、飼育上の注意などを、「ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets」代表で獣医師の石井香絵先生監修のもと解説します。
目次
- アイリッシュ・セターの歴史やルーツは?
- アイリッシュ・セターの平均的な体高・体重は?
- アイリッシュ・セターの平均寿命は?
- アイリッシュ・セターの毛色の種類や被毛の特徴は?
- アイリッシュ・セターの外見や吠え声の特徴は?
- アイリッシュ・セターの性格の特徴は?オスとメスで性格の違いはあるの?
- アイリッシュ・セターを飼うのに向いている人は?
- アイリッシュ・セターを飼ううえで気をつけるべきことは?
- アイリッシュ・セターのしつけを始める時期は?
- アイリッシュ・セターの食事の注意点は?
- アイリッシュ・セターを散歩させる際に気をつけるべきことは?
- アイリッシュ・セターにおすすめの遊びやトレーニングは?
- アイリッシュ・セターがかかりやすい病気は?
- アイリッシュ・セターの日常のお手入れで気をつけることは?
アイリッシュ・セターの歴史やルーツは?
イギリス・アイルランド地方を原産とする猟犬で、別名「レッド・セター」と呼ばれています。「セター」は、獲物の位置をハンターに教えて「セット=伏せ」をすることが由来となっています。アイリッシュ・セターはさまざまなセター、スパニエル、ポインターを交配させてつくられました。かつては鳥猟犬として活躍していましたが、現在ではきれいな体型と毛からショードッグとして活躍することが多いです。
アイリッシュ・セターの平均的な体高・体重は?
大型犬に分類されるアイリッシュ・セター。平均的な体高や体重は次の通りです。
体高
平均的な体高は、オス約63~69cm、メス約58~63cmです。
体重
平均的な体重は、オス約25〜29kg、メス約23~27kgです。
アイリッシュ・セターの平均寿命は?
アイリッシュ・セターの平均寿命は、およそ12~13歳です。大型犬のなかでは比較的長生きをする犬種といえるでしょう。
アイリッシュ・セターの毛色の種類や被毛の特徴は?
美しい毛色で知られるアイリッシュ・セター。毛の色や質にはどのような特徴があるのでしょうか。
毛色の種類
アイリッシュ・セターの毛色はリッチ・チェスナットの1種類です。
リッチ・チェスナット(別名:チェスナット、マホガニー・レッド)
アイリッシュ・セターの毛色は、艶のある濃い赤褐色です。原産国であるアイルランドやヨーロッパではホワイトの毛色にレッドのマーキングがある毛色が認められていますが、日本ではリッチ・チェスナットのみ、ホワイトカラーが入る場合は範囲が小さいもののみが認められています。
被毛の特徴
毎日の多少の抜け毛はあるものの、アンダーコートが少ないため、換毛期に大量の抜け毛に悩まされることはありません。飾り毛がある耳・前胸部・下腹部・四肢は、毛が柔らかく絡まりやすいです。また、オスの場合は特にペニス周りの毛が汚れたり絡んだりします。毎日ウェットシートなどで汚れを拭き取ってからブラッシングしてあげましょう。
アイリッシュ・セターの外見や吠え声の特徴は?
「美しい容姿」と称されることの多いアイリッシュ・セター。外見と吠え声の特徴も見てみましょう。
外見
すらっとした首と長い体長でスリムな骨格ながらも筋肉質です。胸骨が前に出ていて、耳は薄く大きく垂れています。
吠え声
声色は大型犬特有で比較的低く、声のボリュームは大きく響きます。
アイリッシュ・セターの性格の特徴は?オスとメスで性格の違いはあるの?
クールな見た目のアイリッシュ・セターですが、実は攻撃性は低く、大人になってもあまり変わらない子どもっぽさもあります。それぞれくわしく見ていきましょう。
活発
もともと狩猟犬だったこともあり、活発で遊び好き。陽気な性格をしています。
甘えん坊
人が好きで、温和でやさしい性格の子が多いです。知能は高いですが、甘えん坊な一面もあるでしょう。
やんちゃ
狩猟犬としてのルーツがあるため比較的賢いですが、一方でいたずら好きでやんちゃな傾向もあります。
オスとメスの性格の違い
メスよりもオスの方が体格が大きく活発ですが、甘えん坊で素直な気質であることが多いです。ただ、血筋や家族として迎えられた環境によって、性格や行動パターンは変わるでしょう。
アイリッシュ・セターを飼うのに向いている人は?
大型犬のアイリッシュ・セター、どのような人が飼うのに向いているのでしょうか。
室内で広い飼育スペースがとれる人
アイリッシュ・セターは運動量が多い犬種です。室内で比較的広い飼育スペースをとれる人が向いているでしょう。
散歩や運動の時間・体力がある人
運動量が多く遊び好きなので、毎日愛犬と向き合う時間を持てる人がよいでしょう。アウトドアが好きな人は一緒に楽しむことができるはずです。一方、小さなお子さんやシニアのいるご家庭には向いていないかもしれません。
アイリッシュ・セターは初心者向き?
体が大きくやんちゃな犬種なので、犬と暮らすのが初めての方には基本的に向いていません。
アイリッシュ・セターを飼ううえで気をつけるべきことは?
ここからは、アイリッシュ・セターと暮らす際に注意したいポイントを見ていきましょう。
毎日、必要な運動量を確保する
すでに何度か触れていますが、アイリッシュ・セターは活発でたくさんの運動量を必要とする犬種です。特に若いうちは運動不足でストレスを溜めないよう、一緒に遊んだり散歩したりする時間をつくってください。
誤飲・誤食、いたずら対策
運動不足によるストレスから破壊行動やいたずらをすることもあります。特に子犬期はなんでもおもちゃにしがちです。誤飲・誤食を防ぐためにも、家の中でいたずらをされて困るものは手の届かない場所で管理してください。噛みたい気持ちを満たすことができるおもちゃを与えるのも有効です。
暑さ・寒さ対策
暑さと寒さ、どちらにも強い犬種ではありません。室内の空調管理には気をつけてあげましょう。
アイリッシュ・セターのしつけを始める時期は?
大型犬のなかでも賢いといわれるアイリッシュ・セター。しつけはいつ頃始めるのがベストでしょうか。
しつけを始める時期
ご家庭に迎えた初日からしつけを開始することが望ましいです。トイレトレーニング、遊び噛みのコントロール、ブラッシングなどのお手入れ、クレートに慣れさせるなど、これから人間の社会で一緒に暮らすために必要なマナーをひとつずつ根気よく教えていきましょう。
おすすめのしつけ方法
散歩中、飛びついたりリードを引っ張ったりしないよう、散歩デビューをしたら飼い主と同じペースで歩く習慣をつけさせてください。
アイリッシュ・セターの食事の注意点は?
アイリッシュ・セターを散歩させる際に気をつけるべきことは?
とても活発で動くことが大好きなアイリッシュ・セター。散歩にも気を付けるべきポイントがあります。
散歩の時間・頻度
1回1時間以上の散歩を1~2回してあげましょう。特に若いうちは運動や遊びが足りないといたずらをするようになります。質を高めることも意識し、異なる道を散歩したり、歩調を変えたり、ドッグランでおもいっきり走らせたりと、本能欲求を満たしてあげてください。
気をつけた方がよいこと
熱中症につながる可能性が高いため、夏場に散歩に行く際は十分注意しましょう。ネッククーラーなどを活用するのもおすすめです。また、アンダーコートが少ないため寒さにはあまり強くありません。冬は洋服を着せてあげましょう。
アイリッシュ・セターにおすすめの遊びやトレーニングは?
運動量が求められるアイリッシュ・セター。どのような遊びやトレーニングをすればよいのでしょうか。
ボール遊び
ボールやおもちゃを投げてとってきてもらう遊びは、犬の本能要求を満たせます。どの年齢でも楽しめるでしょう。
ジョギング
持久力が高いので、飼い主がジョギングをするのであれば一緒に楽しく走れるパートナーになれます。
水泳
泳ぎが得意なので、川やプールなどで遊ぶことも好きです。水を大量に飲ませないようにし、屋外の水場で遊ぶときはライフジャケットを装着させ安全に遊ばせましょう。
ドッグラン
思う存分走れる場所としてドッグランは最適です。施設は、小型犬と大型犬のエリアがわかれていて、登録制度のある管理が行き届いたところを利用しましょう。ドッグランでは常に自分の犬を観察し、疲れすぎていないか、ほかの犬との相性に問題はないかなど確認してあげましょう。
アイリッシュ・セターがかかりやすい病気は?
いつまでも健康で長生きしてもらうために、アイリッシュ・セターがかかりやすい病気をあらかじめ知っておきましょう。
胃拡張・胃捻転
胸の深い大型犬によく見られる、胃が広がったりねじれたりする病気です。食後すぐの運動や、胃を支えている靱帯が加齢とともに緩むことなどが原因で発症し、最悪の場合、命を落とすこともあります。病気のサインは、急に元気がなくなり吐きたくても吐けない、腹部が膨れてくるなど。一度に大量のフードを与えない、運動前後4時間ほどは食事を与えない、早食いをさせないなどで防ぎましょう。
股関節形成不全
骨の変形や関節の緩みなどの形態的な異常で起こる病気で、遺伝的な要因が大きいです。腰を振って歩く、横座りする、運動を拒むなど、いつもと異なる様子が見られたら整形外科で検査しましょう。子犬期の過度な運動を控えたり、肥満に注意して関節の負担を減らしたりすることが予防となります。
進行性網膜萎縮症(PRA)
遺伝性で、光や映像を感じ取る網膜が委縮・変性し、失明する病気です。はじめは暗がりでの視力の低下から始まり、悪化すると明るいところでも見えづらくなります。遺伝の要素が大きいため、決定的な予防法はありませんが、ビタミンEやアスタキサンチンが含まれるサプリメントを使って治療します。