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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
美しい毛並みと伸びやかな手足、大人びた顔立ちを持ち合わせた優雅な佇まいが何よりの特徴です。基本的に、聡明で恭しく穏やかな性格のボルゾイは、家庭犬としても飼育できますが、元来狩猟犬としての特質を持ち合わせているため、身体能力が高く、十分な運動を必要とするなど、迎え入れる際にいくつか注意点を確認する必要があります。今回は、獣医師の茂木千恵先生に教えていただいた、ボルゾイの性格の特徴やしつけの仕方、飼育する上での注意点などを解説します。
目次
- ボルゾイの歴史やルーツは?
- ボルゾイの体高・体重は?
- ボルゾイの平均寿命は?
- ボルゾイの毛色の種類や特徴は?
- ボルゾイの性格の特徴は?オスとメスで違いはある?
- ボルゾイを飼うのに向いている人は?
- ボルゾイの外見や吠え声の特徴は?
- ボルゾイがかかりやすい病気と、その予防法は?
- ボルゾイの食事で気をつけることは?
- ボルゾイの日常のお手入れで気をつけることは?
- ボルゾイのしつけの仕方と注意点は?
- ボルゾイを散歩させる際に気を付けることは?
- ボルゾイにおすすめの遊びやトレーニングは?
- ボルゾイを飼う際の注意点は?
ボルゾイの歴史やルーツは?
ボルゾイはその高い身体能力から、オオカミを追いかけるための猟犬として、ロシアで飼育されてきた伝統のある犬種です。アラビア原産のグレイハウンドと、ロシア原産のコリーのような牧羊犬の交配から作出されたといわれており、以前はロシアのウルフハウンドとして知られていました。ボルゾイはロシア語で「俊敏」を意味する言葉です。
ボルゾイの体高・体重は?
平均的な体高は、オスは75~85cm、メスは68~78cmです。
平均的な体重は、オスは34〜48kg、メスは27〜39kgです。
ボルゾイの平均寿命は?
日本で暮らすボルゾイの平均寿命は10〜14歳と、超大型犬の中では比較的長命です。9歳を超える頃から身体機能の低下が見られる傾向があります。
ボルゾイの毛色の種類や特徴は?
細く美しい毛並みが特徴のボルゾイ。ここからは、ボルゾイの毛色の種類や毛質について見ていきましょう。
【主な毛色】
ホワイト
白い被毛で覆われています。レッドやレモン、ブラックなどのポイントカラーが入ることもあります。
ブラック
黒い被毛で覆われています。白いポイントカラーが入ることもあります。
レモン
明るい黄色の被毛で覆われています。
レッド
オレンジ系の茶色の被毛で覆われています。
シルバー
艶のあるグレーや白の被毛で覆われています。
ゴールド
艶のある明るい黄色の被毛で覆われています。
ブルーとブラウン(チョコレート)の色調の子もいますが、この2色はジャパンケンネルクラブでは認められていません。
【被毛の特徴】
ボルゾイの被毛は細く繊細な長毛が特徴で、抜け毛は多いほうです。ダブルコートのため、年に2回の換毛期には、オーバーコートもアンダーコートも生え変わります。一時的に被毛がとても薄くなってしまう個体もいます。
ボルゾイの性格の特徴は?オスとメスで違いはある?
ボルゾイはどのような性格の犬種なのでしょうか? 主な性格の特徴をご紹介していきます。
基本的には物静かで穏やか、独立心が強い
ボルゾイは基本的に穏やかで物静かな性格ですが、人への愛着表現には個体差があります。すぐ飼い主に愛着を示し、恭しく朗らかなタイプと、独立心が強く人に慣れにくく不安になりやすいタイプに分かれるため、適切なケアが必要です。
インタラクティブ
視覚を活用して周囲をチェックする習性があるため、周辺環境や社会的なコミュニケーションに対する感受性が豊かで、対話型(インタラクティブ)の傾向があります。しかし、子犬の時期に適切なしつけを行わないと、自己主張が強くなりすぎる恐れがあります。
オスとメスで性格に違いはある?
対人における性格はオス・メスの違いは見られません。一方、犬を相手にする場合は、メスは相手次第で態度を変えることが多いようです。オスは、自宅敷地では縄張り防衛にこだわりを見せますが、自宅敷地以外のドッグランなど公の場所では、他の犬に対して中立かつ友好的に振る舞うことがあります。避妊・去勢手術後もこの性格の傾向は変化しないでしょう。
ボルゾイを飼うのに向いている人は?
ボルゾイを飼うのは、人によって向き・不向きがあるのでしょうか?
ボルゾイは初心者向きの犬?
ボルゾイのしつけは初心者には難しいと思います。体格が大きいため、犬にしっかりルールを教え、行動を管理できるスキルがあることが大前提です。
ボルゾイを飼うのに向いている人は?
ボルゾイに限らず、大型犬は小さな子どもがいる家庭での飼育には向きません。犬が嫌がることを子どもがしてしまった場合に、体格の大きな犬が攻撃的に振る舞うことでケガをさせてしまう恐れがあります。また、ボルゾイは神経質な傾向にあるため、犬に対しておおらかに接することができる方が向いています。
ボルゾイの外見や吠え声の特徴は?
ボルゾイの外見や吠え声にはどのような特徴があるのでしょうか?
外見
マズルが長く、耳は垂れています。超大型犬で、細く引き締まった体格と細く美しい毛並みから優雅な佇まいをしていますが、力強さや足の速さも特徴です。狩猟犬としては、視覚(サイト)を使って獲物を捉えるタイプの「サイトハウンド」に分類され、視力が優れています。
吠え声
あまり吠えない犬種ですが、吠えるときは大きな声量です。
ボルゾイがかかりやすい病気と、その予防法は?
愛犬が健康で過ごすためにも、病気には気をつけたいものです。ボルゾイがかかりやすい病気とその予防法について知っておきましょう。
胃捻転
胃捻転を起こすと、不安そうな様子で室内をウロウロする、吐きそうで吐けない、よだれを流すといった症状が見られます。食後数時間で胃が拡張してねじれを起こし、胃の内容物が漏れたり、心臓や脾臓などに合併症を発症し、命が危険にさらされたりする恐れもあるので、予防が重要です。食事30分前から運動をさせないで休ませる、食後や飲水後の30分間は動かさない、大量の一気食いをさせず少量を複数回にわけて与えるなどの工夫をしましょう。
外耳炎
外耳炎とは、外耳道(耳の穴から鼓膜までの通り道)に炎症が起こる状態です。ボルゾイは耳が垂れているため外耳炎になりやすく、耳を頻繁に掻く、耳から異臭がする、耳介が赤いなどの症状がないか注意しましょう。治療は、耳道の洗浄や点耳薬や内服薬での消炎が中心となります。慢性化することも多いため、外耳道を清浄に保つ、耳道を濡らさないようにするなどで予防しましょう。
マラセチア皮膚炎
マラセチアとは真菌(カビ)の一種で、健康な犬の皮膚や外耳道等にも常在しています。この菌が原因で皮膚が赤みを帯びたり、分厚くなりかゆみを示したりする状態がマラセチア皮膚炎です。垂れ耳のボルゾイは発症しやすいため、耳道を清浄に保ち、皮脂分泌が過剰にならないようバランスのいい食事を心がけましょう。
骨折
足の速いボルゾイが興奮して駆け回った際に、急に止まれなくなり壁などにぶつかって骨折してしまうことがあります。狭い場所で興奮したり、走り出したりしないよう、普段から行動をコントロールすることが大切です、
ボルゾイの食事で気をつけることは?
病気になりにくい健康な体づくりをするためにも、日々の食事はとても大切です。ボルゾイの食事では、どのような点に気をつけるべきなのでしょうか?
消化の良い、新鮮なフードを選ぶ
大型犬なので、体重に比例して1日に食べる量は多くなります。消化のよい新鮮なフードを選びましょう。質のいい総合栄養食に、トッピングでタンパク質のものを加えるのがおすすめです。食事が体質に合わないと、アレルギー性疾患などの発症リスクが高まるため、フードを切り替えるときは1度に全量を置き換えてしまわずに、徐々に配合していき、体調や食欲に変化が無いか注意深く観察しましょう。
食事と飲水の前後30分は休ませる
ボルゾイは胃捻転の恐れがあるため、食事と飲水の前後30分はおとなしく過ごさせます。1回の量は少なくし、1日に必要な量を少なくとも2回以上に分けて与えるといいでしょう。
ボルゾイの日常のお手入れで気をつけることは?
抜け毛が多いという、ボルゾイの体の特徴に合ったお手入れを行うことが大切です。
2日に1回ブラッシングを行う
ブラッシングは2日に1回は行いましょう。特に毛が絡まりやすい耳の後ろを丁寧にほぐします。
月1〜2回シャンプーを行う
シャンプーは月1〜2回が理想的。普段はホームケアで構いませんが、体格が大きく洗いにくいため、時々プロに任せて、しっかり汚れを落としてあげるといいでしょう。
ボルゾイのしつけの仕方と注意点は?
ボルゾイは大型犬なので、飼うときにはしつけがが重要になります。しつけを始めるのに適切な時期と成長に合わせたしつけの仕方を見ていきましょう。
しつけを始める時期
大型犬は体格があっという間に大きくなるので、力が強くなる前に行動のコントロールを教えましょう。自宅に迎えたその日からしつけを始めるようにしてください。
子犬期のしつけの仕方
もともと噛む力が強いため、甘噛みでも必ずやめさせましょう。人の体や物を勝手に噛んではダメだということを一貫して教える必要があります。人の体を噛むのは、犬にとっては「遊び行動」の可能性がありますが、噛むことを許してしまうと噛む力が強くなって、ケガや事故に繋がります。噛んだときは、すぐにハッキリ「いけない」と伝え、次に噛んでいいおもちゃなどを与えて、そちらをくわえたらしっかり褒めてあげましょう。また、噛みそうになったら別のコマンドで気をそらせるといいでしょう。
社会化期のしつけの仕方
犬は本来、社会化期である生後3週〜12週のころ、兄弟犬や母犬との関わりを通じて、噛む力の強弱や服従行動などボディーランゲージのルールを学びます。しかし、飼い犬として家に迎えた場合は、飼い主がトイレの方法や噛んではいけない物など、様々なルールを教える必要があります。
オス・メスによるしつけの違いがあるかどうか
日常的な関わり方に違いはありません。ただ、オスは足を挙げて排尿するようになると、ペットシーツからはみ出してしまうことがあります。タイミングをみて、外でも排尿できるように教えましょう。
ボルゾイが起こしやすい問題行動
基本的に人のことが好きな犬種ですので、家族がいる家の中で自由に動き回ることができれば、問題行動を起こしにくいといえます。しかし、相手が犬の場合は、遊びたい、または、追い払いたいなどの理由から吠えてしまうことがあります。社会化期のころから散歩に時間を割き、様々な環境に十分慣らすことが重要です。
ボルゾイをしつけするときの注意点
犬に不快を与える関わり方は、関係性を悪化させる恐れがあります。広いドッグランでオフリードで走らせるなど、欲求不満を解消するような遊びを取り入れることが重要です。
ボルゾイを散歩させる際に気を付けることは?
次に、ボルゾイの散歩の方法や注意点を見ていきましょう。
散歩の時間、頻度
社会化のためにも、1日に20〜30分は散歩に出かけましょう。運動不足解消のためには、週末に広いドッグラン等で筋肉をしっかり使うアクティビティを体験させるといいで しょう。
散歩するときの注意点
ボルゾイは犬に対しても友好的な犬種ですが、他の犬に吠えられると、吠え返してしまうことがあります。無駄吠え予防のためにも、友好的ではない犬とは距離を取りましょう。
散歩後のお手入れ方法
室内に入る前に脚を洗い、脚先にノミやダニがついていないかを確認しましょう。さらに、2〜3分で軽くブラッシングする習慣をつけると清潔に保てます。
ボルゾイにおすすめの遊びやトレーニングは?
誤飲の可能性があるため、小さなボールを与えてはいけません。「持ってこい」が得意なので、くわえて運びやすい形状のおもちゃを選びましょう。トレーニングは毎日取り組み、定着するまで繰り返し教えることが大切です。
ボルゾイを飼う際の注意点は?
最後に、ボルゾイを飼うときの注意点を確認しておきましょう。
室内で飼う
人との関わりを好むため、人の気配を感じる空間で過ごすことで落ち着き、精神的に安定します。
落ち着いた場所にハウスを設置する
ハウスは、ボルゾイがひとりで過ごしたいときや、眠たい・怖いと感じたときに安心できる場所になります。落ち着いた場所にハウスを設置し、ハウスの中を居心地良く整えましょう。
暑くないよう室温管理を行う
他の犬種と同様に、寒さに強く、暑さには大変弱い体質のため、熱中症対策が欠かせません。室温は、人が快適だと感じられる温度に保ちましょう。
十分な運動が必要
日常の20〜30分の散歩をしていても、飼い主の歩くスピードに合わせて進む場合は速度も遅く、ボルゾイにとってはあまり運動になりません。オフリードで走れるくらい広いドッグランなどに出かけて、運動不足を解消させてあげましょう。
大型犬のため、介護時には体力・気力・経済力が必要
介護が必要にならないよう、若い時から下半身の筋力を鍛えて維持しましょう。大型犬が寝たきりになると床ずれが起こるため、寝がえりの補助が欠かせません。その際、体に触れられることになれていないと、驚いて攻撃的になってしまうこともあります。いざという時に適切な介護ができるよう、若いうちから情報を収集しましょう。
※本記事の内容は、株式会社ドッグワールド代表 大関京子さんへのインタビューをもとに作成しました。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。