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獣医師でありながら、トリマー、動物看護士、ドッグトレーナーとしての実務経験も持つ。病気の早期発見、未病ケアに努める0.5次医療を提唱し、精力的に活動。
犬が骨折した時の見極め方や対処法をご存じでしょうか? 犬の骨折は外見からはわかりにくいだけでなく、犬自身が「痛い」と言葉で伝えることもできないため、飼い主が早急に気付いてあげることが大切です。今回はペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長で獣医師の箱崎加奈子先生に、犬が骨折したときの特徴的な仕草や応急処置の方法、病院に行くタイミングなどについて解説していただきました。
目次
- 犬の骨折の問題とは?
- 犬の骨折の主な原因は?
- 骨折しやすい犬種はある?
- 骨折した犬の仕草の特徴は?
- 犬の骨折を発見したら、どう応急処置すべき?
- 犬の骨折の病院での治療は?
- 犬の骨折を予防する方法は?
犬の骨折の問題とは?
犬の骨折は、外見からはわかりにくいという問題があります。さらに、犬は骨折しても、飼い主に知られないように痛みを我慢する傾向があることも、わかりにくさの要因です。犬は言葉で「痛い」と伝えることもできないため、飼い主が早く気付いてあげることがとても重要です。
犬の骨折の主な原因は?
犬が骨折する原因は、日常生活のあらゆる場面に潜んでいます。
高いところやソファから飛び降りる
犬は高いところから飛び降りるとき、前足に重心をかけて着地します。この時、着地点に何か障害物があったり、足を踏み外して着地に失敗したりすると、骨折の原因になることがあります。また、犬が椅子やソファに飛び乗ろうとして失敗し、落下したことが骨折に繋がることもあります。
誤って踏んでしまうなど飼い主のミス
飼い主のミスにより、犬が骨折してしまうことが多々あります。室内で飼い主が誤って犬を踏んでしまうことも骨折の原因になります。特に小型犬は飼い主の足元にまとわりつく癖があるため、注意が必要です。飼い主が酔っぱらっていて足元がおぼつかなくなったり、帰宅直後で部屋が暗く足元が見えなかったりしたときも、犬を誤って踏んでしまう可能性があります。また、飼い主が犬を抱っこした状態から誤って落としてしまうことも、犬の骨折の原因として考えられます。
階段からの落下やフローリングでの転倒
室内で起こる犬の骨折の原因には、階段からの落下やフローリングでの転倒などもあります。犬が日常的に階段を自由に行き来でき、勢いよく上り下りする癖がある場合は注意が必要です。また、滑りやすい床の上でダッシュしたり、ボール遊びで興奮したり、犬同士でじゃれついて遊んだりすることも怪我や骨折に繋がりやすくなります。
散歩中などのおでかけ時のトラブル
散歩中に犬をしっかりリードで繋いでいても、思いがけないトラブルが起こることもあります。道が狭かったり、犬が飛び出したりして、自転車や車、バイクと接触事故を起こすこともあるからです。また、犬の足にリードが絡んでいることに気付かず、飼い主が引っ張ったことで犬が骨折する場合もあります。
病気や栄養バランスの悪化
病気や栄養バランスの悪化によって骨がもろくなり、病的骨折が起きるケースもあります。
骨折しやすい犬種はある?
骨折しやすい犬種で圧倒的に多いのはイタリアン・グレーハウンドです。その他にはトイ・プードルやパピヨンなども骨折しやすい犬種です。基本的にスリムで骨が細い犬は骨折しやすい傾向にあります。
また、犬種ではありませんが、勢いのある若年齢の犬や子犬も骨折が多く見られます。これは扱いに慣れていない人が子犬を抱っこして落としてしまったり、犬が腕の中が暴れて落ちてしまったりすることも原因です。
骨折した犬の仕草の特徴は?
骨折は外見からはわかりにくいため、犬の仕草からも判断する必要があります。
怪我した足を床につけなくなる
一番起こりやすい足の骨折の場合、怪我した足を床につけなくなります。たとえば、前足の肘から足首にかけての部分である橈尺骨の骨折の場合、骨折した足を着かず浮かせたような状態でいることが多く、折れた先が脱力するのが特徴です。
骨折した箇所を触ろうとすると嫌がったり怒る
骨折には痛みも伴うため、触ろうとすると嫌がったり怒ってキャンと鳴いたりします。その様子から見極めることもできます。
元気消失や排泄の失敗
足以外の骨折だと、ふらつきながら歩いたり、元気がなくなったり、排泄がうまくいかなくなったりといったことなども、特徴的な仕草として見られます。
犬の骨折を発見したら、どう応急処置すべき?
犬の骨折を発見した場合は、まずは病院でレントゲンを撮影してもらいましょう。足の骨折の場合は、骨折が疑われる足に体重をかけて歩いているかの確認も必要です。骨折の可能性がある部分を動かさないようにして、ゲージに入れて安静にしてあげましょう。また、飼い主の自己判断で添え木をするのは危険ですので、病院で受診してください。
犬が骨折したとき、病院へ行くべきタイミングは?
犬に骨折の疑いがある場合は、骨折したと思われる時間から半日以内には病院で受診しましょう。夜間に発見した場合は、翌朝の開院時間まで様子を見るのも良いかもしれません。骨折だけであれば、救命的な緊急性が高くなく、命に関わらないことが多いからです。しかし、半日程度様子を見ても構わないとは言えども、犬は激痛を抱えてるかもしれないことを忘れないでください。また、様子を見る場合でも、翌日の午前中には診察を受けるようにしましょう。
犬の骨折の病院での治療は?
犬が骨折した場合の病院での治療法は、骨折した箇所や骨折の状態によっても異なります。手術による整復やギプス固定での治療の他、骨折箇所によっては何も措置をせずに経過観察し、犬の自然治癒力で治すこともあります。治療した場合も経過観察の場合も、ともに安静にすることがとても重要です。
犬の骨折を予防する方法は?
日常のしつけや生活環境を整えることで、犬の骨折を予防することもできます。
子犬の頃からのしつけ
犬の骨折を予防するには、子犬の頃からのしつけが重要です。犬にハウスの習慣がなく日常的にフリーにしていると、怪我のリスクが上がるため、ハウストレーニングをするとよいでしょう。他にも興奮を鎮めるためのコマンドトレーニングをすることで、骨折の発生率を下げられます。
食事の改善
人間と同じように犬も体づくりの基本は食事です。良質な食事を適切に摂取することは、犬の骨折予防のために重要だと言えます。特に骨や筋肉が育つ時期の子犬には、栄養バランスの良い食事を与えましょう。
生活環境の見直し
犬を骨折から守るためには、室内の生活環境の見直しも大切です。床で滑らないようにするためにマットやカーペットを敷いたり、階段からの落下を防ぐために段差にスロープを設置したりなどの工夫をしましょう。バリケードを設置して、事故を起こしそうな場所に犬を入れないようにするのもおすすめです。
飼い主の意識の改善
犬の骨折は飼い主の意識次第でも防ぐことも可能です。慣れていない人が犬を抱き上げたり、落ち着きのない小型犬を抱き上げたりするときには、腕全体で犬を包むようにして落とさないように注意しましょう。また、散歩中はリードを短く持って飼い主がコントロールすることで、犬を事故から守ることができます。