平成ギャルの、ガラケーを「デコる」技術。「デコ電」の歴史と作り方を専門家に教わった
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「誰でもキレイに穴が開けられる」とSNSでウワサになっている「竹用ドリル」。「竹用」とうたっているが、竹以外にも使え、木材はもちろん割れやすい合板やアクリル板、塩ビ、硬質ゴムなどにもきれいに穴開けできるという優れものだ。
その汎用性の広さは、DIYにおいて絶大な威力を発揮する。
この「竹用ドリル」。もともとは、とあるお客様からの要望で作られた別注品が開発のきっかけだったのだとか。
株式会社スターエム 営業1課課長 髙野敦史さん
「竹用ドリル」を製造したのは、木工ドリル業界で国内シェアNo.1を誇っている株式会社スターエム。営業部の髙野さんに詳しくお話を伺ってみると、「1点からでもお客様の要望にこたえる別注品に対応する」というスターエムのこだわりが、同社の商品力と技術力を支えていることが見えてきた。
DIYをする人には欠かせないアイテムの1つ、木工ドリル。その名の通り、木材にネジ穴やボルトを通す穴を開けるためのドリルだ。そんな木工ドリルの老舗スターエムが手掛け、今や看板商品となった「竹用ドリル」は、お客様の相談がきっかけで生まれた製品。
「竹用ドリル」は、3〜21mmまで22サイズで展開されている
「『尺八に割れずにキレイな穴を開けるドリルがほしい』というお客様からのご相談がありまして。竹は繊細質なので、一般的なドリルを使うと割れてしまうんです。1年くらい試行錯誤して、割れやすい材質でもきれいに穴を開けられる自信作のドリルが完成し、一般向けにも販売することになりました」
竹だけでなく、木材や塩ビ、ゴム、アクリル板にも対応。「竹用」とうたっていることもあり、ニッチすぎて最初はあまり売れなかったが、じわじわと竹用ドリルの良さがSNSで広まり、界隈では知る人ぞ知る大ヒット商品に。
さらにブームを広げる後押しとなったのが、「竹あかり」づくりだ。竹に穴を開けて模様を作り、中に明かりを灯すというもので、まさに「竹用ドリル」の出番。オリンピックの前夜に全国47都道府県で約2万本の明かりを灯して世界平和を願う「みんなの想火プロジェクト」をはじめ、各地のイベントで「竹あかり」が作られるようになり、これをきっかけに「竹用ドリル」を知る人が増えたという。
竹用ドリルだからこそ表現できる、繊細でやわらかな灯火が「竹あかり」の特徴
「竹用ドリル」は子供や初心者でも使いやすいことから、各地のDIYワークショップで木材に穴を開けるのにも使われている。
竹の代わりに塩ビパイプを使った「塩ビパイプあかり」も。穴あけのためのデザインはスターエムのHPでダウンロードできる
1951年頃の工場
竹用ドリルを生んだスターエムは、兵庫県三木市で1923年に創業。当時は世間一般にはまだなじみのなかった木工用ドリル(=ギムネ)に着目して事業を立ち上げた。これが国産木工ドリルの始まりとなった。
先端についたネジの力で掘り進め、穴の外周をけがくケガキ刃と木を削り取るスクイ刃でスムーズに木材に穴を開ける
「ギムネは明治初期に日本に入ってきたそうですが、日本ではしばらく製造するところがなかったようなんです。そんな中、1923年に弊社の創業者が『これからの世の中はギムネが必要になるはず』と生涯をかけてギムネ製造に携わることを決意し、工場を設立しました」
小林元二が叔父と2人で創業。1951年には「小林式ギムネ」が特許権を取得した
世の中にまだないものを生み出すというベンチャーマインドで、大正時代に創業したスターエム。その後、時代が変化する中で、らせん状の木工ドリルのみならず、自在錐や皿取錐、埋木錐などさまざまな製品を世に送りだし、その品質の高さと使い勝手の良さから多くのユーザーからの信頼を集めてきた。
同社の製造工程も大部分が機械化されてきたものの、今なお変わらないことがあるという。
「最後の仕上げ工程は今も必ず職人が手作業で刃にやすりがけしています。木工ドリルメーカーは世界に何社かありますが、こういうアナログな作業をしているのはスターエムだけかもしれません。なぜ手間をかけるかというと、どれだけ機械化しても完成品は一本一本ちょっとした違いが生じるからです。
スターエムはお客様に安定した品質の製品をお届けすることが大切だと思っています。最終工程の刃付けを手で行うことで、より安定した品質を保つことができており、それが多くのお客様にご愛用いただけていることに繋がっていると思います」
どんなに機械化を進めても、最後の刃付け工程は一本一本職人が手作業で行っている
手仕事ゆえの品質と柔軟性の高さが多くのユーザーに選ばれ続けている一因であることは間違いない。また、お客様に安心安全な製品を提供することの一環として、環境に優しい製品の開発にも力を入れているそう。
「充電式のインパクトドライバに付けるビットの形を工夫し、従来よりも電池持ちが20%向上するインパクトビットを開発しました。消費電力を抑えるために切削抵抗を減らす形状にしたことで、ソフトに穴を開けられるようになったんです」