私とお花と妖精と。庭で妖精のドレスを作るファンタジーで儚い世界の裏側
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「升席(ますせき)」の存在を知ったのは30年前。漫画『こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)』83巻に収録されていた「はっけよいは待ったナシ!」という話だった。派出所のメンバー4人が両国国技館の升席で相撲を観戦するのだが、途中で両津と大原部長が小競り合いをはじめ、あげく升席で相撲を始めてしまうという最高の回である。
当時、中学生だった私は『ドラゴンボール』の次に『こち亀』が好きで、なかでもこの話は名作として心に刻まれている。楽しみにしていた相撲観戦を両津に台無しにされる大原部長の悲哀もさることながら、この回で私が最も心惹かれたのが「升席」だったのだ。
両国国技館の升席(写真:すぽりん/PIXTA)
4人グループごとに区画された座敷に靴を脱いで上がる。そこで飲み食いしながら相撲を見るというのが、いかにも贅沢な大人の遊びという感じがして羨ましかった。当時は空前の相撲ブームで、こち亀でも国技館の升席は「入手不可能なプラチナ席」として描かれていたこともあり、より升席への憧れが募ったものだ。
前置きが長くなったが、今回はそんな升席を手作りする。
30年来の夢をDIYで叶えるのだ。
升席!
升席です!
そう、夢は叶った。着想30年、制作時間3時間のマイ升席である。材料費だけで升席チケット3枚分くらいのコストがかかってしまったが、これで升席の永久パスポートを得たと思えば安いもの。マイ升席があれば、テレビの相撲中継も国技館気分で楽しめるのだから。
ちなみにキャスターが付いているので
移動が便利
従来の升席にはない機動力がマイ升席の肝である。このように持ち運びができたら、行く先々の景色を升席から楽しめていいなと考えた。逆に、いつもの見慣れた風景も升席から眺めることで特別なものに感じられるかもしれない。
夏は屋上に持ち込んで花火鑑賞なんてよさそう
それでは升席の作り方を紹介しよう。
まずカインズに足を運ぶ
升席に必要な材料はカインズの資材館でほぼ手に入った。木材もカット加工してもらえるので、工作スキルのない者にとってはたいへんありがたい。
木製平台車(600×900×120)。2台で5500円くらい
はじめに、複数の平台車を連結させて基礎を作る。両国国技館の4人掛け升席の寸法は1300mm×1250mmということだが、大きい台車(600m×900mm)2台と中サイズの台車(450m×600mm)2台を組み合わせると、だいたいそれくらいになる。
連結した台車の上から板を張って床をつくる
そして床に布を敷く。高級感がほしかったので、わざわざデパートで高い布を買った
次に手すりを設置する。床にホールソーで丸く穴を開けて
丸く抜いた穴に塩ビ管をはめて接着剤で固定する
手すりは塩ビ管を連結させて作る
木屑を掃除して
接着剤が固まったら手すりをセットする
座布団を並べる。移動式DIY升席の完成だ
自宅の一角に升席ができた。1LM(マス)DKである。
『こち亀』で升席を見た両さんは「結構狭いな」と言っていた。国技館というスケールの中ではそう感じられるだろうが、一般住宅に置くとかなりの存在感があり、容赦なく生活スペースを圧迫してくる。しかし、生活が不便になるマイナスよりも、我が家に升席がやってきた喜びのほうが勝る。相撲だけでなく、プロ野球中継などもここで見たら楽しそうだ。
オープンエア升席
ちなみにこのあたりは水辺なので、屋外に升席を持ち込むと京都の川床っぽさも少し感じられる。あまりきれいではない都心のコンクリート護岸も、どことなく鴨川の趣である。これはいい。
せっかくなので会社の部下の小野くんを升席に招待した。
部下の小野くん。升席は初体験とのこと
升席は隣人との距離が近いためソーシャルディスタンスがとれず、コロナ禍での宴会には不向きだ。そこでお互いに顔を背けて座ると、大人気ないおっさん同士が喧嘩してるみたいになった。
もし友達と相撲観戦に来て、狭い升席でこんな険悪なムードになったら地獄だろう。大原部長と両津のような、カラっとした取っ組み合いのほうがまだいい。
宴会メニューで小野くんのご機嫌をうかがう
「国技館やきとり」は名前の通り両国国技館の名物で、升席で相撲を見ながら食べられる。ちなみに、国技館の地下にある工場で焼いていて、1場所あたり100万本超の製造能力があるらしい。
そんな豆知識を小野くんに披露したが、顔を背けているので無視された気持ちになった
それにしても楽しい。あまり面白味のない都心の風景も升席越しに見るとなんとなく風情がある、ような気がする。
(見えにくいけど)眼下の公園に桜が咲いていた
眼下では桜が開花していた。宴会ついでに花見としゃれこもう。
桜がよく見える場所に升席を移動する。
見よ、この機動力!
花見をしています
このように見たい場所、行きたい場所を特等席にできるのが移動式升席の素晴らしさだ。コロナが落ち着いたら升席を軽トラに積んで全国の景勝地を行脚したいと思った。
小野くんは仕事に戻りました