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目次/ INDEX
我々は土の上で生活している。コンクリートジャングルで過ごしているけれど、そのコンクリートを剥げば土があるし、日頃食べている農作物は土で作られている。土なき生活は考えられない。
では、その土とはなんなのだろう。ホームセンターに行けば園芸用の土を売っていたりする。もっと土について知るべきではないだろうか。そこで土壌の専門家を訪ねた。
畑でもプランターでも、花や野菜等を育てる時は土を必要とする。ホームセンターで土を買ってきたり、肥料を混ぜ込んだりと、いい土を作ろうと心がける。では、土とはなんなのだろうか。
土のお話です
土は土壌と言ったりもする。土と土壌は同じものなのだろうか。足元にあるのによく知らない土について知るために、東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科の加藤拓先生を訪ねた。土壌の専門家だ。
加藤拓先生
土壌と土は一般的には一緒と考えて問題そうだ。
ただ土っていうのは、生物が住んでいる環境圏とも定義されているので、生物が住んでいないと、土でも土壌でもないんですよね
これが大きなポイントだ。たとえば、月に生物がいないとする。無人の宇宙船を飛ばして月の土を回収したとする。でも、それは厳密には土(土壌)という扱いにはならない。そこに生物が住んでいないからだ。生物が住んでいないところに土は成立しない。
文学的に月の土と言ってもいいと思います。月の砂なら問題ないですね。砂には生物がいなくてもいいです。砂は物質になるので
月に土は存在しない
生物の有無というのが土を考えるときの大きなポイントとなる。
僕らが手に触れるのは土塊みたいな、黒かったり、茶色かったりする部分。土ではないです。土とか土壌って言う場合は、空間全部を指しているんですね。土壌という空間、土壌という環境圏なんです
たとえば、「家」と言う時に、柱1本のことを「家」とは言わない。屋根があって、壁があって、家具があっての生活空間を「家」と言う。土(土壌)も同じで、パッと掴んだ一部の物質を土とは言わないわけだ。
加藤先生の研究室
ベランダで花や野菜を育てようと思った時に、我々はカインズに出かけて土を買う。ここまで読んでいただけると分けると思うけれど、ホームセンターでは土は買えないということだ。
ホームセンターで「土の材料を買う」が正しいです
ホームセンターで売っている土はまだ土ではなく、土の材料でしかない。それを買ってきて、自宅で土にして行くわけだ。
カインズで売っている土の材料
金魚鉢で考えるとわかりやすい。金魚鉢で金魚を飼うとすれば、まず底に砂利を敷き、そこに水草を植える。もちろん水も入れるし、さらに空気がないといけないので、エアレーションを使う。このようにして環境が整う。
土も一緒と考えればいい。ホームセンターで買ってきた土の材料だけでは空気が入りにくいので、下の方に砂利を敷き、土を入れ、肥料もいれるかもしれない。そして、植物を植える。そこで初めて「土」となるわけだ。この状況(環境)こそが土なのだ。
こうなれば土というわけです
プランターレベルではあれば、上記のような感じで土はできるわけだけれど、我々の住む地球の土はどのようにしてできたのだろうか。まずはマグマから出てきた火山灰や溶岩が地面に落ちたところから始まる。
マグマはたぶん生物が住んでいないと思うんですよね。つまり火山灰や溶岩が地面に落ちた瞬間は無生物なんです。ここからいろんな種や空気、ほこり。ほこりには微生物が住んでいるかもしれないですよね。そのようなものがマグマから出てきたものに住み始め土壌が始まるんです
マグマから出てきた火山灰や溶岩は貧栄養で、どんな生物でも生きられるわけではない。そんな環境下でも生きていける生物がやがて住み始め、雨風で鉱物から利用可能なミネラルなどが溶け出し、だんだんと養分が整い、やがて苔が生え、その苔が死んで有機物が還元されたり、有機物が溶け出したりして、土壌の養分は増えていく。すると、よそから飛んできた種が発芽し、木が生えたりなどして、最終的に私たちが見ている森となって行く。
土壌は最初は育む力が弱いんですが、生物と協力しあって、時間をかけて土壌という環境が発達していく。土はだんだんできてくるんです
生まれたての土は、溶岩のような岩の塊で、動植物に必要な元素養分が入っているけれど、雨風によって溶け出してきて、土壌の養分が生物に使われて行く。そしてやがてなくなる。つまり寿命があるというわけだ。
どのくらいの年月の寿命なのかはわからないけれど、土壌って環境は生物と同じように老化します
土は無限にある資源かと思いきや寿命があるのだ。
ただ日本の土は若い。日本は活火山が多く108座もある。これはだいたい世界の1割程度の数になる。人間の寿命から考えれば、そんなにたくさん噴火している気がしないけれど、長い年月で見れば噴火しているエリアと言える。噴火により土が更新されているため、若い土となる。
お隣の中国には火山が1、2個しかないので土が全体的に古い。ユーラシア大陸の土の材料は氷河期の頃に氷河が地表面の岩石を削って細かくした砂を材料にできている。カナダの辺りに行くと、地表面にカンブリア時代の地表面が露出していることもある。火山が多い日本では考えられないことだ。
日本のほとんどの面積は数千年か、千数百年くらいの土だと思います。それこそいま地表面にある土のほとんどは、数千年ですね。海外から考えると一桁若いくらいですね
日本の土が若いということは、ミネラルなど養分がたくさんあり、農作物を育てるのに向いているのではないか、とも考えられる。先に書いたように土も老化していくけれど、日本は若いからだ。しかし、そうではないのが日本の土の特徴だ。
日本の若い大部分の土は火山灰からできた土なんですけど、世界で一番肥沃度が低い、作物や生物を育むには、一番能力の低い火山灰土なんです
火山灰はとても小さな粒子で作られている。火山灰も岩石もケイ素が主体で、次に多いのがアルミニウムだ。ケイ素は雨と共に流れる出る元素ではあるが、もともと多いので、土壌という環境を構成する無機物ではケイ素が主体となる。
一方でアルミニウムは土壌中から流出しづらく、その場に留まりやすい元素。ケイ素とアルミニウムで作られる次の鉱物(二次鉱物や粘土鉱物と呼ぶ)は、大陸の土の材料だとケイ素がアルミニウムを覆い、ケイ素がアルミニウムと等倍か2倍になる。
しかし、火山灰からは、アルミニウムに覆われた粘土鉱物ができてしまう。これが問題なわけだ。
これがよろしくないんですね。アルミニウムで覆われた鉱物って、窒素、リン酸、カリっていう肥料のうち、リン酸を強くくっつけすぎて、植物に渡さないという性質があるんです。植物がリン酸を吸いたいんだけど、土がリン酸を抱え込みすぎていて、植物がそのリン酸は吸えないんですね
リン酸は植物の開花、結実を促進し、根の伸長や発芽、花芽をつきやすくするなどの働きがあり、生育に必要な成分だ。
窒素リン酸カリ
日本の土は若いけれど、リン酸という肥料成分を土があまりにも強く吸着してしまうので、植物の育成には向かないわけだ。カインズで肥料を買ってパッケージをよく見るとわかるけれど、リン酸が入っており、リン酸が一番多いことも少なくない。
日本は火山灰の土の畑が多いんですけど、そのような畑では、植物が吸収する10倍のリン酸を入れます。海外より日本の方がリン酸をたくさん使わなければなりません。戦後、リン酸肥料を輸入できるようになって、日本の農業は飛躍的に生産量が上がりました
セイタカアワダチソウのような、外来種や帰化植物は、本来は日本と比べればリン酸が獲得しやすい土で育ってきた。そのためなのか、日本ではそのような植物は肥料としてリン酸が与えられている農地の周辺に多く、外来種の進行スピードは土壌中のリン酸に影響するという研究結果も出ている。
畑の場合、肥料として与えたリン酸は流亡したわけではなく、土に留まっているので、そのリン酸を植物に渡す研究も行われている。
カインズの肥料
今までの日本の土の話は平均的な話で、全てが火山灰の土ということではもちろんない。地域や環境条件によって違う可能性がある。例えば、河川が発達している地域では氾濫などにより、火山灰が流され、肥沃度が高い土壌が分布している。四大文明が大きな河川の流域で生まれたことからもわかるように、火山灰が流され、山からのミネラルが供給され肥沃な土になるからだ。
日本にも河川の氾濫でできた場所には、生産性の高い、少ない肥料で、ある程度植物の育ちが良い土壌があります
こちらもリン酸が一番多いですね
土壌はアメリカとヨーロッパで分類や名前の付け方が異なるけれど、どちらも12種類に分けることができる。1960年代までは11種類しかなかったけれど、1970年代になり12種類目が加えられた。その12種類目が先までに書いた日本の火山灰の土「黒ボク土」だ。
火山灰でできた土は軽いんですね。有機物が多く含まれているというのもあるし、火山灰が細かいものからできているので、土壌がホワホワしています。歩くと沈むじゃないですか? 方言だと思うんですけど、歩く音がボクボクしているということで黒ボク土です
黒ボク土(加藤先生提供)
黒ボク土という名前からもわかるように、土は黒い。一般に黒い土は肥沃と言われている。海外の黒い土「チェルノーゼム」は肥沃で、その土のあるエリアは大穀倉地帯となっている。以前は日本の黒い土(黒ボク土)もそうだと思われていたけれど、全く違うことが分かったわけだ。12種類で考えれば一番肥沃度度が高いのが「チェルノーゼム」、最下位が「黒ボク土」ということになる。
黒ボク土もチェルノーゼムも表面が黒くて厚いんですよね。厚いところでは1メートル以上黒くて、だいたい30、40センチは黒いので、チェルノーゼムと黒ボク土はパッと見は同じに見えると思います
チェルノーゼム(加藤先生提供)
黒ボク土は世界的には珍しい。全陸域面積の1%ほど。2%はないと言われている。実は我々は普段から世界的に珍しい土を見ているのだ。考え方を変えれば、とても貴重な体験をしているとも言える。
火山分布と重なるので、プレートの境界面の地域、樺太、ロシアの東、アラスカ、チリなどで見ることができる。
黒ボク土の畑
日本では細かく見れば5種類、だいたいメインは4種類くらいの土壌を見ることができる。黒ボク土、レゴソル、キャンビソル、ポトゾル。素人にその見極めは難しい。例えば、黒ボク土の中でも淡色黒ボク土のように枝分かれしていくからだ。
日本では3種類の土壌名を覚えてください。まずは「黒ボク土」。そして、山にある土は「褐色森林土」。山にある茶色い土で、山に行って「褐色森林土だね」と言っていただければ大丈夫です。ただ火山灰が多くなると黒ボク土に分類されるのもあるんですけど、概ね、山に行ったら褐色森林土だね、と言ったらほぼほぼ当たります
褐色森林土(加藤先生提供)
ちなみに褐色森林土は英語では「キャンビソル」と言い、黒ボク土は「アンドソル」と呼ぶ。アンドソルは、黒い土だから、暗い土で「アンド」というところから来ているそうだ。元は日本語。英語圏の人も発音しやすいため採用された。
3つ目は川の土。これは火山灰の土ではなかったりするので、英語名になるとバリエーションが増えますが、日本では「沖積土」と俗に言われているやつです。川の流れで氾濫して、火山灰が入っていない土です。肥沃な土。日本語で言えば、黒ボク土、沖積土、褐色森林土の3つで8割から9割は行けます! 自然にできた川の堤防の内側はほぼ沖積土です!
使っていこうではないか。それだけで土壌に詳しい人のように思われるはずだ。
沖積土(加藤先生提供)
土壌とは何かがわかった。またその成り立ちや、日本の土壌の特長も。我々の足元にもまだまだ好奇心を刺激する世界が広がっているということだ。
土壌の「壌」って左側は「土」と書きます。左側が女の子だとすると「嬢」。お嬢様なんですよね。酒だと醸造の「醸」になる。「じょう」はお嬢様だったり、微生物がお酒を作ってくれる醸造だったり、時間の流れと共に育まれているイメージがあると思います
土の匂いを嗅ぐとなんとなく気分が癒されるのは、長い時間をかけて育まれてきた地球や生き物たちの息遣いを感じるからかもしれない。「土壌は環境」、大切にするべきものなのだ。
先生の研究室にあったスコップ
取材、文:地主恵亮
土壌と土を、皆さんは普段から区別して使っていないと思うんですよね。厳密には違う時もありますが、私も土と言ってもいいと思うし、土壌と言ってもいいと思います