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「カメムシ注意報」ってなに? どう注意すればいいの? 専門家に聞いてみた

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岡田和秀

岡田和秀

農林水産省 消費・安全局 植物防疫課 防疫対策室 課長補佐(国内防除第2班)。担当は、発生予察や総合防除(IPM)、ドローンでの農薬散布など、国内の病害虫防除。

カメの甲羅のような硬い体と、強烈な悪臭。一般的には「害虫」として認識されているカメムシが、日本各地で大量発生している。2024年は春頃から多くの都府県で「カメムシ注意報」が出され、8月中旬時点では53件。より警戒レベルが高く、滅多に出ない「カメムシ警報」も3県で発令されているとのこと。これは過去10年で最も多い数字だという。

しかし、「注意報」や「警報」といっても、何にどう注意したり警戒したりすればいいのだろうか? そもそも「カメムシ注意報」とは誰がどんな目的で調査・発表しているものなのだろうか?

※【閲覧注意】本記事にはカメムシの画像が頻出します。カメムシが苦手な方はご注意ください。

今年は特によく聞く「カメムシ注意報」とは?

農林水産省の消費・安全局植物防疫課では、都道府県の協力の下、カメムシをはじめとする「病害虫(※農作物などに被害を与える、病害や害虫)」の発生動向などを調査し、その後の病害虫の発生の予測や防除対策を「発生予察情報」として農家向けに発信している。いわゆる「カメムシ注意報」もその一つだ。取材に対応してくれた植物防疫課の岡田和秀課長補佐によれば、このようなカメムシの発生の調査を行っているところは他にないため、今年は農家以外の方からの問い合わせがかなり多いという。今年は春先から多くの都道府県でカメムシ注意報が発表されたこと、街の中でもその姿が多く見られることなどが原因と思われる。

日本で最もカメムシの発生状況を注視している岡田さんたちに、「カメムシ注意報」のことや、大量発生している原因と想定される被害、今後もカメムシは増え続けるのか?など、色々と伺ってみた。

クサギカメムシ

クサギカメムシ。日本全国に分布するが、特に関東以北での発生が多い

──いきなり本題なのですが、そもそも「カメムシ注意報」とは何なのか教えてください。いつ、どんな目的で始まったのでしょうか?

岡田さん:病害虫発生予察事業は「病害虫発生予察及び早期発見に関する事業」という名称で戦時中の昭和16年に始まりました。きっかけは、その前年に稲のいもち病、ウンカ類が大発生したことで、大きな被害が出たこと。そこで、食糧生産を安定させるため、農家の方にこうした病害虫の発生予察情報をお伝えし、適時に適切な対策をとってもらうことを目的にスタートしました。要は、「天気予報の病害虫版」ですね。病害虫も天気と同じように年次変動がありますので、それを調べて農家の方に「今年は発生が多い/早いですよ。注意してください。対策を取る場合にはこういう対策が効果的ですよ」といった情報をお伝えしています。ちなみに、現在はカメムシ類を含む148種類の病害虫の発生状況を調べ、予察情報を出しています。

──つまり、「カメムシ注意報」は一般の人に向けたものではなく、農家の方に注意喚起と対策を促すために発表されていると。ちなみに、どのように調査していますか?

岡田さん:各都道府県では、設置された調査地点での病害虫の発生状況、気象、農作物の生育状況などを調査、分析して、農家の方向けに概ね月一回の予報や、必要に応じて注意報や警報を発表します。国(農林水産省)では、その全国の調査結果や気象状況等を取りまとめ、年10回の病害虫発生予報を発表するという流れですね。

令和6年における警報及び注意報の発表件数

農林水産省のWEBサイトでは、国の病害虫発生予報や注意報、警報の発表件数を閲覧することができる。カメムシ以外の発表状況も検索可能だ

果実を求め、春と秋に森から飛来する「果樹カメムシ類」

──イネに被害を与えるカメムシと、果物に被害を与えるカメムシは違う種類なんですか?

岡田さん:はい。日本には1000種類以上のカメムシが生息しているといわれますが、その中で我々が調べているのは「果樹カメムシ類」と呼ばれる、果実に対して被害を起こすカメムシや、「斑点米カメムシ類」と呼ばれる稲に被害を起こすカメムシなど、いくつかの種類です。今年、メディアなどで大きく報じられているのは果樹カメムシ類についての発生状況かと思いますので、今回はこちらについて説明いたします。

果樹カメムシ類は全国に30種類ほどいて、特に発生が多いのは「チャバネアオカメムシ」、「ツヤアオカメムシ」、「クサギカメムシ」ですね。いずれの種も、針状の口を果実に差し込んで中の汁を吸います。そうすると吸われた部分がスポンジ化して、果実が変形してしまうんです。また、幼果期にカメムシの加害を受けると落果してしまうこともあります。

チャバネアオカメムシ

果樹カメムシ類のなかでも特に発生が多いチャバネアオカメムシ

ツヤアオカメムシ

ツヤアオカメムシ。関東以南に分布するが、特に九州南部および四国南部などでの発生が多い

──果物が好物なんですね。

岡田さん:いえ、じつはチャバネアオカメムシとツヤアオカメムシの一番のエサは「スギ」や「ヒノキ」といった針葉樹の球果の中にある「種子」です。ただ、果樹の果実では種子に口針が届かず、あまり栄養は摂取できていないはずなんです。それにも関わらず、彼らは一生懸命に果実を吸汁します。

──何のために……?

岡田さん:基本的にはスギやヒノキなどがある針葉樹林で繁殖、生息しているのですが、餌の枯渇などによりそこを離脱し、果樹園などに飛来してきます。昔の果実は今よりも皮が薄かったので、中心部にある「種子」にまで口針が届いたと、その記憶から果実を狙っていると考えられていますが、今はいくら吸ってもあまり栄養になっていないようです。

──健気でちょっとだけかわいい気もしますが、農家さんからしたらたまったものじゃないですね。

岡田さん:果樹カメムシ類は、カンキツ、カキ、ナシ、モモ、ウメ、リンゴなど、あらゆる果実を加害します。また、果樹園だけでなく、おそらく民家の庭などにもやってきます。ただ、結局はあまり収穫を得られず、森に帰っていく。夏以降は一番のエサであるスギやヒノキの球果が豊富にあるので、そこで栄養を蓄えて繁殖をします。繁殖が終わるとまた森から出てきて、今度は秋の果実を加害して、また冬ごもりをするという。その繰り返しですね。

──つまり、果樹カメムシ類は果物の実がある時期に「市中」へもやってくると。

岡田さん:市中のカメムシ全てについては分かりませんが、果樹カメムシ類については春と秋に加害のピークがくるということですね。

地面に転がる果実

カメムシに寄主された果実はくぼみが生じるなど大きく商品価値を損なう。場合によっては落果してしまうことも ※写真はイメージ

過去10年で最多。「カメムシ注意報」が頻発している理由

──2024年は「カメムシ注意報」のなかでも、特に果樹カメムシ類の注意報が数多く発表されているんですよね。

岡田さん:8月14日時点で、33の都府県からのべ53件の「注意報」が発表されているほか、愛媛、広島、鳥取の3県ではより注意が必要となる「警報」も発表されています。

──お盆時期までに56件の注意報・警報が出ていると。これはやはり例年に比べて多いんですか?

岡田さん:そうですね。ここ10年では最も多いです。また、2023年の同時期までの発表数は13件でしたので、前年比だと4倍以上ということになります。ちなみに、斑点米カメムシ類は8月14日の時点で31都道府県からのべ38件の注意報が発表されています。これもここ10年では最も多く、前年比では2倍以上になっています。

クモヘリカメムシ

斑点米カメムシ類の一種であるクモヘリカメムシ。山林近くの水田での発生が目立つ

──ここまで数が増えていると、何か大変なことが起きているんじゃないかと不安になってしまいますが……。

岡田さん:今年は確かに多いですが、全国的には「異常発生」といったレベルではないと考えています。

そもそも、カメムシの発生はかなり年次変動、その地域差も大きく、増える時には指数的に増えてきますので、その変動の範囲ということもできなくはないと思います。また、注意報・警報の数としても、10年間の年次推移を見ていただければわかる通り、ここ数年で特に増加傾向にあるということもありません。

果樹カメムシ類警報・注意報発表回数の年次推移

──では、2024年にこんなに増えている原因は?

岡田さん:果樹カメムシ類のチャバネアオカメムシとツヤアオカメムシについては、先ほどもお話ししました通り「スギ」や「ヒノキ」の球果が一番のエサになります。つまり、球果の量が多ければ多いほどカメムシは増殖しやすくなる。そのため「スギ」や「ヒノキ」の花粉が多く飛んだ年の翌年は、カメムシが大量に発生しやすい傾向があります。ちなみに、「スギ」や「ヒノキ」の花粉は飛散が多い「表年」と、少ない「裏年」が交互に訪れるといわれていますが、カメムシ注意報の件数も花粉の「表年」・「裏年」に相関していて、交互に多い・少ない年が来る傾向にあるんです。今年の場合は前年の暖冬など、増殖に有利な条件も重なったため、大量発生につながっているのではないかと考えています。

──なるほど。僕らもそうですが、マスコミやメディアがセンセーショナルに取り上げすぎなんですかね?

岡田さん:もちろん、メディアに取り上げてもらうことで農家の方への注意喚起につながる面もあるので、報道してもらうこと自体はありがたく受け止めています。ただ、現時点では注意報が数多く出ているからといって、たとえば気候変動と結びつけるなどして過度に心配する必要はないと思います。

──ちなみに、今年は街中でも多くのカメムシ目撃情報があるようなのですが、これも特に騒ぎ立てるようなことではないですか?

岡田さん:すみません、市中のカメムシ全てについては分かりませんが、先ほども少し触れたように果樹カメムシ類はエサが豊富にある時は針葉樹林にいて、それが枯渇した場合などに色んな場所へ飛来します。そのため、街中や民家で目撃されるケースもあると思います。

──これらのカメムシは農作物にとっては害虫ですが、人間に直接的に害を及ぼすことはないのでしょうか?

岡田さん:そういう話ですと管轄外になりますが、一般的に衛生害虫としてのカメムシの害はいくつかあると聞いています。見た目の不快さやイヤなにおいを発することなどに加え、昆虫などを刺して吸う「サシガメ」と呼ばれるカメムシは誤って人を刺すこともあります。

ヨコヅナサシガメ

注射針のような口を持つヨコヅナサシガメ。公園や街路樹などにも生息している

市中にカメムシが現れる秋に向け、万全の対策を

ちなみに、カメムシは真冬以外は基本的に活動していて、今後も多くの都道府県でカメムシ注意報が出る可能性はあるという。「カメムシ注意報発表!」なんて聞くと、なんだかとてつもなくヤバい事態が起きているように思えてしまう。実際、農家の方々にとっては悩ましい問題だが、少なくとも私たちが日常生活において、ことさらにカメムシを警戒しなければならないというわけではないようだ。

とはいえ、できればあまり出くわしたくはない。果樹カメムシ類が森から飛来してくる秋に向け、「カメムシ用ワイドスプレー」(※)など、カインズのアイテムを使って対策しておきたいところだ。
※衛生害虫、不快害虫等の駆除を目的とした殺虫剤は農薬ではないため、農地では使用できません。

※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※効果は使用環境や使用状況により異なります。

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