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マツ六株式会社開発企画部次長の岩田歩さん
日本が高齢社会であることは常識に違いないが、世界に類のないレベルであることはあまり知られていないかもしれない。2020年には、65歳以上の高齢者が3617万人にのぼり、総人口に占める65歳以上の割合が28.7%に達した。この高齢化率は調査対象となった201の国および地域のなかで1位。2005年に1位になってから、その座を一度も明け渡していない。
高齢者が増えるなか、国内の介護や福祉に関するサービスも充実の度合いを深めている。その一つに高齢者の移動や動作を補助する「手すり」がある。
2020年11月にマツ六株式会社(大阪市)が発売した『nimone(ニモネ)』はとりわけユニークな発想で商品化された。開発企画部次長の岩田歩さんは「“危ないから設置する”という、従来の手すり像を覆した」と話す。その意味について話を聞いた。
「まず、このnimoneはねじ止め位置が一直線でシンプルな設計なのが特長です。ドライバー1本で施工できるので、設置の手間と不安を軽減します。幅50mmのスリムな形状ながら、強度は厳しい社内基準をクリア。無塗装品をラインナップしているので、ご自宅のインテリアに合わせて塗装できます」
コンセプトが重視されるグッドデザイン賞も受賞した。では、どんなコンセプトが評価されたのだろうか。
nimoneは手すりでありながら、家のインテリアにしっかり馴染むのが特長
「転倒の予防には手すりの取り付けが有効であり、弊社も啓発に努めています。ところが、アクティブシニアと呼ばれる元気な高齢者には“まだいらない”“かっこ悪い”と手すりの設置を拒まれることがあったのです。そこで、私たちは高齢者の心のバリアを取り去るため、“危ないから”設置する手すりではなく、“我が家にぴったりだから”“家族みんなで使えるから”欲しいと思える手すりにしようと考えたのです」
「nimone」というネーミングには、手すり「にも」収納「にも」使えるという想いを込めている。また、高齢者「にも」その家族「にも」ぴったりで生活を豊かにするという意味も。インテリアに調和するよう、金属を使わずに天然木のみでデザインされているのも大きな特長だ。デザインに落とし込む作業は難航したという。
「手すりや収納として使えるための最低限の寸法や、インテリアになじむ形状を探すのに時間がかかりました。というのは、これまでスペックを高くする方向の開発は多数手がけていたのですが、シンプルにそぎ落とす開発はあまりしたことがなかったからです」
そこにコロナ禍という逆風も吹いた。
マツ六株式会社のオフィス。同社は工場を持たないファブレスメーカー
「通常、新商品の開発にあたっては担当者が現地に赴いて、直接生産ラインの確認や品質の指導をします。今回はインドネシアでした。ところが、コロナ禍ではそれが叶いません。試作の回数を増やしたり、試験量産を試みたりするなど時間と手間をかけ、お客様にお届けできるレベルまで持って行きました」
期せずして手に入れたリモートという方法。今後、同社は現地訪問とリモートを併用していくとのことだ。なお、この新型コロナウイルスで揺れる2021年、マツ六株式会社は創業100周年という節目を迎えている。
「金物卸商から始まった弊社は、バブル期には“建築金物のデパート”と呼ばれるほどでした。ところが、バブル崩壊後に新設住宅の着工数が減少。活路を高齢者向けの建材に見出しました。というのは1990年代後半、高齢化社会やリフォームがキーワードになったにもかかわらず、高齢者に向けたものが全くなかったからです」
商社でありながら建具金物で技術に対する知見を持っていたため、高齢者や障がい者のための手すりやスロープといった商品を自社で企画および開発することに。岩田さんは追い風もあったと話す。
「2000年の建築基準法改正、同年に施行された介護保険制度に手すりの項目が含まれていました。このときから、安心安全な手すりを供給することが大きな事業機会になると考えました。当時、市場では樹脂製手すりが主流でしたが、弊社は温かみのある木製手すりの開発に集中。従来は高価だった木製手すりを標準化することで、高品質な商品をローコストで生産することが可能になりました」
手掛けている製品群。ニーズに応えてその数は増え続けている
高齢者向けの建材分野に参入してからは20余年だが、長年、住宅産業に携わって培ってきた知見や細かい配慮はマツ六の大きなアドバンテージと言える。
「お店では釘や丁番のように“モノ”別に並べられていることが多いのですが、実際にユーザーの方や施工業者さんが求めているのは手すりの取り付け工事という“コト”ですよね。“コト”を完結させるには“モノ”のバリエーションももちろん必要ですが、安心して取り付けていただくための情報や企業としての信頼が大切だと考えています」
マツ六は転倒の事例や手すりの導入事例を掘り下げ、健康寿命を延ばすために役立つ情報をまとめた「転倒予防ナビ」というサイトを運営。また、自社サイトでも動画や施工マニュアルをまとめている。情報発信の際に意識していることについて、岩田さんはこう話す。
「お客様へは商品をPRするのではなく、例えば“このくらいの高さに、こういう種類の手すりを付けると効果的ですよ”という有益な情報をお届けするようにしています。そういった発信をすることで、企業と商品を信頼していただけると考えています」
また、社員の多くが「福祉住環境コーディネーター」という資格を取得。客側の相談に適切に応えるべく、社員一丸となっている様子がうかがえた。
消費者や施工業者のことを考えた数々の施策が最近、大きく評価された。経済産業省主催の「PSアワード2020」中小企業 製造事業者・輸入事業者部門で、最上位の経済産業大臣賞を受賞したのだ。この意義について、岩田さんは語る。
「1.高齢者の事故防止に向けた製品開発、2.マニュアル等の安全情報の充実とその内容の確実な伝達、3.施工事業者との連携による安全な施工方法の実現。この3点を特に評価いただきました。ファブレスメーカーの弊社にとって、品質管理や製品安全の充実は長年の課題でした。この受賞で、バリアフリー建材メーカーとしての入口にようやく立てたように感じています」
今後も日々耳に入る声を大事にしたいという。「お問い合わせやご意見は当社の財産です」そう岩田さんは表現する。
「お客様のご意見を日々精査した結果が、部材の豊富さにつながっています。情報と品揃えによって多くの方に使用していただくことで、またご意見をいだだいて商品や販促物、マニュアルなどがブラッシュアップされる。このサイクルを今後も続けたいですね」
「家のここに手すりが欲しい」から「素敵な家にするため、マツ六の手すりにしたい」。そう指名買いされる未来を現実のものにすべく、マツ六は次の100年に歩み出している。