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建物沿いを埋め尽くす鉢植え
お店や家の軒先などに所狭しと並ぶ、大小さまざまな鉢植え。昔ながらの住宅がひしめく下町エリアを散歩していると、こんなふうに家の周りを庭代わりに、限られたスペースを有効活用した園芸風景が随所に見られる。
サボテンのための傘。隣の鉢にはお箸が2本。
軒先に並んだ鉢植えは、そこに住む人にとっても道ゆく人にとっても楽しめる、創意工夫の詰まったポータブルな立体庭園。
よく見ると支柱代わりにお箸が刺さっていたり、猫よけのペットボトルが鉢を守っていたり、植物にお手製の傘がかけられていたり。植物を育てるための技や工夫には、育て主の方の暮らしやこだわりが、少しだけにじみ出ている。初めて訪れる街でも、鉢植えを通してそこで営まれる生活が想像され、なんだか愛らしさと親しみが湧いてくる。
鉢の中からあたり一面にこぼれだしたセダム。
植物に目をやってみると、鉢から根っこが奔放にはみ出していたり、周囲の隙間に旅立ってしまったり、逆にどこからか旅してきた種子が鉢に元いた植物と同居していたり、そのまま乗っ取ってしまったり。人間が勝手に決めた「鉢」「植え込み」などの枠なんて関係なく、自由に旅するさまが爽快だ。
私は、こんなふうに、路上の一角で営まれる園芸や、路上で育まれた植物を「路上園芸」と称して、勝手に愛で見守るのをライフワークにしている。
路上園芸ワールドを彩る数々のアイテムの中でも、熱い視線を送っているのが「転職鉢」だ。本来は別の用途で使われていた容器が園芸用として転用された状態を指す、筆者の造語である。
ネギの入っていたトロ箱が、鉢に。
おなじみなのは、発泡スチロール製のトロ箱。保水性や保温性があり、穴を開けるなどの加工もしやすく手に入りやすいトロ箱は、Wikipediaでも「トロ箱栽培」なる項目があるくらい人気の転職鉢だ。
他にもよく見かけるのは、漬物や味噌などの樽。プラスチック製の樽は加工もしやすく、大きな植物も余裕で植えられるサイズなのが嬉しい。
プラスチック製の樽は人気の転職鉢。使い勝手の良さそうなサイズ感だ。
峠の釜めしの器もよく見かける。たしかに捨ててしまうのはもったいない。
ずらり並んだ峠の釜めしの器。育て主は旅好き?
大型のものだとタイヤの転職鉢も。処分するのも一苦労だろうから、鉢として使えたら一石二鳥かもしれない。
タイヤにリュウゼツラン。沖縄にて。
「そこに土が入る窪みがあれば」とばかりに、さまざまな分野から参入していた器たちが、園芸界で新たな活躍を見せている。
何かを転用して鉢にする行為は、新しい概念でもなんでもなく、園芸が一大ブームを巻き起こした江戸時代にも、転用植木鉢は多く見られたそう(『浮世絵に見る庶民の草花愛 江戸の園芸熱』(たばこと塩の博物館))。
植物を育ててみたいと思っても、大きいサイズになればなるほど、既製品の鉢をわざわざ手に入れるのは大変だ。そんなときに「転職鉢」は頼もしい選択肢となる。
庭のないところが庭になる。鉢じゃないものが鉢になる。
路上園芸家の先輩方に触発され、そのクリエイティビティに一端に触れるべく、私も「転職鉢」で植物を育ててみたい。
鼻息荒く向かったのは、カインズである。