【ベタの飼い方】小さな水槽で飼える魚のペット!初心者でも育てやすい
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目次/ INDEX
私たちが暮らしているお部屋の中にはたくさんの「微生物」がいるって知っていましたか?
コロナ禍を経て、ウイルスから自分の身を守るための除菌や殺菌がより重要視されています。しかしその一方で、「微生物多様性」と呼ばれる、「お部屋の中にいる菌の種類と量を増やした方が良い」という新しい考え方が生まれてきているんです。
サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太です。「科学と社会をつなぐ」ことを目的として科学をわかりやすく解説したり、科学を語り合う場づくりをしたりしています。
「微生物多様性」が高いと......
◎感染症のようにヒトに悪影響を及ぼす菌の増殖を抑える効果がある
◎花粉症などのさまざまなアレルギーを防ぐ可能性がある
など、いろんなメリットが得られます。
しかも、室内にさまざまな微生物を取り入れるのは、誰でも簡単にできるのです! ポストコロナ時代、除菌ならぬ「加菌™」の時代がやってくるのでしょうか。微生物多様性に関する研究から社会実装まで、幅広く手がける株式会社BIOTAさんに、詳しく教えていただきました。
伊藤 光平
株式会社BIOTA 代表取締役
慶應義塾大学先端生命科学研究所にてマイクロバイオームを対象としたバイオインフォマティクス研究に従事。ヒトだけでなく都市や建築物における環境マイクロバイオームも対象とした。大学卒業後、株式会社 BIOTA を創業。
安藤 帆菜美
株式会社BIOTA 分子生物学実験担当
東京大学大学院 工学系研究科 修士課程修了。当時の研究テーマは「抗がん剤への応用を目指した特異性獲得のための核酸修飾技術」。BIOTA では分子生物学系の実験を担当。
安藤
体を構成する炭素の量で考えると、地球上に存在する、植物を除く生物の炭素質量を比較した時に、微生物は97.9%を占めているんです。
資料提供:BIOTA
佐伯
そんなに!? 現在知られている地球上の生物は約170万種で、そのうち約100万種は昆虫ですよね。昆虫が圧倒的に多いですし、しかも微生物ってものすごく小さいのに、意外です......。
伊藤
研究者の間でも、生物多様性に関して議論する際に、微生物の話が挙がることは少ないというのが現状です。でも、データが示しているように、僕たちは微生物こそ、生物多様性のメインストリームだと思っています。
安藤
微生物って、その辺の空気や水を採ってきてもたくさん新たな種が見つかるような状態なのですが、同定が難しくて、知られていない微生物の方が圧倒的に多いんです。だから炭素質量の比較などで、たくさんいるんだということを、まずお伝えしています。
佐伯
微生物といえば、腸内細菌には、乳酸菌やビフィズス菌といった腸内環境を良くする善玉菌がいたり、反対にブドウ球菌のような、病気の引き金になる悪玉菌がいることも知られていますよね。良い菌を増やして、悪い菌を減らす! というのが「微生物多様性」の大事なポイントなのでしょうか?
安藤
従来の研究としては、まさにそういったところが主流だったのですが、微生物多様性のポイントは、「微生物が多様であるという状態そのもの」に注目しているところです。いろんな微生物がいること自体に意味があるというイメージですね。
伊藤
微生物多様性があることのメリットは、2つの視点で考えられます。1つ目が、感染症に関する視点、2つ目が、アレルギーに関する視点です。
佐伯
感染症のことを考えると、シンプルに除菌や殺菌でヒトの感染症を引き起こす菌をなくしてしまえば良いように思うのですが、感染症に対して「微生物多様性」がどんなメリットをもたらすのでしょうか?
安藤
もちろん、感染症の原因となる菌がなくなれば感染症は防げます。しかし、有害な微生物を取り除くための除菌が、逆に悪影響を起こしてしまう場合もあるのです。
佐伯
詳しく教えていただけますか?
安藤
順を追って説明しますね。まず、微生物には自然由来の微生物と、ヒト由来の微生物がいます。私たちが住んでいるお部屋の中は、この両方がいる状態になっています。
佐伯
人がいない森を散歩した時に部屋に連れてくるのが、自然由来の微生物で、満員電車で帰ってきた時に連れてくるのが、ヒト由来の微生物というイメージでしょうか?
安藤
そうですね。ヒト由来の微生物の代表的な例として、時に食中毒などの感染症の原因となる黄色ブドウ球菌が挙げられます。黄色ブドウ球菌は、健康な人の20%の皮膚に存在すると言われていて、ヒトの身体で生活できる微生物だから感染症の原因になるほど増殖できる、と考えれば自然かもしれません。
佐伯
そう考えると、土壌中の微生物などが、ヒトに感染・増殖して悪い影響を与えるっていうのは難しそうですし、考えにくいですよね。
伊藤
そうなんです。もし土の中の微生物がヒトの体で生きて悪さをすることがあったら、人類は農耕社会のあたりで滅んでいたんじゃないかと思います。
佐伯
確かに......。
安藤
除菌をすると、ヒトに無害な微生物までなくなってしまいます。すると、次に有害な微生物がやってきた時に、増殖しやすい環境になってしまうのです。
すっかり生活に浸透したアルコール除菌
佐伯
無害な微生物を減らすということは、有害な微生物に大増殖するチャンスを与えているということでもあるんですね。
伊藤
しかもそれだけではなく、例えばエタノールで除菌を繰り返していると、エタノールでは減らすことができない「薬剤耐性菌」が生まれてしまうんです。
資料提供:BIOTA
佐伯
害のある菌を減らしたくて除菌しているのに、意味がなかったり、最悪逆効果になる可能性もあるんですね......。
安藤
反対に、積極的に自然由来の微生物を増やすことで、病原菌の増加を防ぐ効果が期待できます。病原菌の増殖を抑える物質を出す微生物もいます。
佐伯
有害な微生物の陣地を減らすだけじゃなくて、増えないように監視してくれるような役割の微生物もいるというわけですね!
資料提供:BIOTA
伊藤
ただここで注意したいのは、除菌がダメということではなくて、人混みの中を帰ってきた時などは手洗いうがいや除菌も大事。時と場合で判断していくということですね。
佐伯
散歩が日課なのですが、全然人とすれ違っていなくても、とにかく家に帰ったら徹底して除菌! 殺菌! が当たり前になってました。何を除菌しているのかを考えてみたいです。
佐伯
「微生物多様性」と聞いても、正直何のことかイメージしづらい部分があり……。そもそも、微生物って地球上にどれくらいいるのでしょうか?