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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
犬がかかる病気の中でもポピュラーなのが膀胱炎。再発率も高いとされる膀胱炎は、大きな病気の引き金となってしまう可能性もあるため早期発見、治療をしてあげることが非常に大切です。今回は膀胱炎の治療法や症状、原因や予防法についてchicoどうぶつ診療所所長の獣医師・林美彩先生に伺いました。
目次
- 犬の膀胱炎とは?
- 犬の膀胱炎の原因は?
- 膀胱炎になりやすい犬種やライフステージはある?
- 犬の膀胱炎の治療方法は?
- 犬の膀胱炎を予防・再発防止するために飼い主ができることは?
犬の膀胱炎とは?
犬も人間と同様、膀胱炎になる可能性があります。膀胱炎は膀胱の粘膜が炎症して起こるもので、膀胱炎になると、次のような様子が見られるようになります。
犬の膀胱炎で見られる様子
・頻尿
・トイレに行くものの排尿しない
・排尿痛のため排尿時に鳴くようになる
・血尿や尿に濁りが生じるなど尿自体の変化
・排尿姿勢を取るものの排尿が見られない
・排尿に時間がかかる
特に、トイレに何度も行っていたり排尿時に痛そうに鳴いたりするといったサインは飼い主も気が付きやすいポイントです。しっかりと日頃から愛犬の様子を見てあげてください。
尿自体も変化することがあり、濁りが生じている場合には膀胱炎になっている可能性があります。上記の様子が見られ、さらに尿も濁っているときには膀胱炎の疑いがかなり高いでしょう。
犬の膀胱炎の原因は?
膀胱炎の主な原因は、細菌感染と尿路結石です。その他、膀胱腫瘍や抗がん剤によっても起こる可能性があります。
細菌感染
最も多いのは細菌性膀胱炎と呼ばれるもので、尿道口から細菌が感染することによって起こります。細菌が感染する原因はさまざまですが、下痢などの大便から腸の菌が尿路へ侵入しやすいことが考えられます。
尿路結石
もう1つの主要な原因として考えられるのは、尿路結石から膀胱炎になってしまうケースです。泌尿器にできた結晶や結石が膀胱の粘膜を傷つけ、膀胱炎につながります。
尿路結石から膀胱炎が引き起こされているときは、最悪の場合尿路閉塞を起こしてしまうこともあります。尿路閉塞になってしまうと急性腎不全につながって、救急診療が必要となるケースもあるのです。
膀胱腫瘍
上記2つの原因よりは少ないものの、膀胱腫瘍によって膀胱炎が引き起こされることもあります。膀胱にできた腫瘍によって粘膜が傷ついてしまい、膀胱炎が起こるのです。血尿や頻尿などから症状が始まったのち、尿もれや嘔吐といった症状へと進んでしまいます。最終的には腫瘍によって尿路閉塞が起こってしまったり、リンパ節や肺に腫瘍が転移したりする可能性も考えられます。
抗がん剤
がん治療にシクロホスファミドという抗がん剤を使用した際、出血性膀胱炎が起きる可能性があります。
膀胱炎になりやすい犬種やライフステージはある?
膀胱炎になりやすい犬種は?
細菌感染が原因の場合
全犬種が細菌性膀胱炎にかかってしまうリスクはありますが、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、ラブラドール・レトリーバー、シベリアン・ハスキーなどが特に起こしやすいものです。
他の犬種も普段は免疫力があるため細菌をブロックすることができていても、体調を崩している、ストレスが多い環境にいるなど何らかの理由で免疫力が弱っているときには、膀胱炎にかかりやすくなってしまいます。
また、長毛種の犬は便が毛に付着しやすく、尿道口から細菌感染しやすいため、注意してあげてください。長毛種でなくても、下痢をしている場合はいつもより便が付着しやすくなり、そこから膀胱炎にかかってしまうリスクが高まります。
尿路結石が原因の場合
尿路結石が原因の膀胱炎は、ミニチュア・シュナウザーやウェルシュ・コーギーなどがなりやすいです。この2犬種は遺伝的に尿路結石ができやすい体質のため、飼い主が日頃から食事や新鮮な水を与えるなど、気をつかってあげる必要があるでしょう。
膀胱炎になりやすい性別は?
膀胱炎は比較的メスの方が起こりやすい傾向にあります。その理由は体の構造。メスの場合は尿道が短く尿路と肛門が近くに存在しているため、大便から菌が感染してしまうことがあるのです。
膀胱炎になりやすいライフステージは?
ライフステージでは、9歳前後のシニア犬に発症が多いです。免疫力が下がっていることや、循環機能の低下が原因の1つとして考えられるでしょう。
膀胱炎になりやすいライフスタイルは?
犬種は関係なく、水を飲む量が少ない子やトイレを我慢しがちな子、あまり動きたがらない子などは膀胱炎のリスクが高まる傾向にありますので、普段の生活習慣にも注意してあげてください。
犬の膀胱炎の治療方法は?
犬が膀胱炎になってしまった場合、まずは検査を受ける必要があります。検査の流れは最初に尿検査を行うことからスタートします。のちに、細菌性膀胱炎の場合は細菌培養をしたり、結石や腫瘍がある場合にはエコーやレントゲンといった画像検査をしたりすることもあります。
細菌が膀胱炎の原因だった場合の治療方法として最もスタンダードなのは、抗生剤の投与をすることです。およそ2~3週間程度抗生物質を飲み続け、消炎剤を投与することで治療を試みます。
尿路結石からくる膀胱炎の場合は手術で摘出する、食事療法で対応するといったケースが考えられます。食事療法は特に医師の指示を厳守してください。
犬の膀胱炎を予防・再発防止するために飼い主ができることは?
飼い主が日常生活で行える、犬の膀胱炎の予防や再発防止の方法をご紹介します。
新鮮な水を与える
日常生活では、新鮮な水を与えた上でこまめに排尿させ、体内の水の循環を守ることが大切です。
マッサージで体を温める
特にシニアさんの場合は体が冷えやすく、体内で水のめぐりが悪くなりがちです。腰回りを温めてあげたり、マッサージをしてあげたりすると循環が整いやすくなりますよ。腰回りを温めるためには腹巻きをしたり、服を着せたりすることも有効ですので試してみてください。夏場でもクーラーのきいた部屋に長時間いすぎると体が冷えてしまいがちなので、温度を調節できるようにブランケットなどを近くにおいてあげたり、適度に体を動かしてあげるようにするとよいでしょう。
陰部を清潔に保つ
細菌性膀胱炎は大便に付着していた細菌によって引き起こされることもあるため、陰部を清潔に保つことが必要です。特に、女の子や長毛種は細菌が尿路に付着しやすい構造になっているため気をつけてあげてください。
さらに、ここまでも何度か触れてきましたが、下痢をしているときは特に膀胱炎につながりやすい状態です。陰部をきれいに洗ってあげる他、最近では、犬のデリケートゾーン用シートなども売られていますので上手に活用できるといいですね。
クランベリーエキスを与える
スペシャルケアとして、クランベリーエキスも有効です。こちらのエキスは膀胱炎になった後はもちろん、予防のためにもよく用いられます。クランベリーエキスそのものを与えなくても、サプリなどがありますので日頃から与えてあげるとよいでしょう。