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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
最近は保健所や動物愛護センターから保護犬を迎える方が増えています。ペットショップやブリーダーから購入する場合と異なり、保護犬の里親になるには押さえておくべき点がいくつかあります。今回の記事では、保護犬の特徴や迎える際の条件、注意点についてふくふく動物病院院長の平松育子先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- そもそも保護犬とはどんな犬のこと?
- 保護犬の特徴やペットショップとの違いとは?
- 保護犬を迎える方法は?
- 保護犬を迎えるまでの流れ
- 保護犬はどのように選べばよい? 迎える際に必要なものは?
- 保護犬を迎える条件や費用は?
- 里親として保護犬を迎える際の心構え
- 保護犬を迎える際の注意点
そもそも保護犬とはどんな犬のこと?
保護犬とはあらゆる事情により、保健所や保護団体などに引き取られた犬です。一般的には飼い主がいない犬のことを指しますが、遺伝子の異常などでペットショップで販売できない犬なども含まれる場合もあります。主に以下のような犬が、保護犬になることが多いです。
1.野良犬
2.飼い主が家庭の事情などで飼えなくなった犬
3.虐待や飼育放棄を受けてしまった犬
4.ブリーダーの繁殖引退犬
5.遺伝子異常などがあり、ショップで 販売できない犬
保護犬は引き取り先が見つからない場合、殺処分されることがあります。保護犬を迎えることは、その犬の命を救うとともに社会貢献につながる行為とも言えます。
保護犬の特徴やペットショップとの違いとは?
保健所や保護団体などから引き取る犬は、ペットショップやブリーダーから購入する犬と比べ、いくつか違いがあります。そのひとつが費用です。保護犬は基本的に無償で引き取ることができます。ただし、ノミ・マダニ・フィラリアなどの予防や、ワクチン接種を受けていた場合、その費用を支払うケースもあるので覚えておきましょう。また、保護犬には以下のような特徴があることも知っておきましょう。
雑種が多い
保護犬の多くは雑種の中型犬です。特に野外で暮らす野良犬の場合、その傾向が強いと言えるでしょう。小型犬は生存競争に負けやすいため、自ずと中型犬が多くなるのだと考えられます。また、野良犬の交配の管理ができないのも、雑種が増えやすい理由です。
年齢や病歴など細かい情報がわからない可能性がある
野良犬や、飼い主が飼えなくなり保護された犬、飼育放棄された犬などは、出自や病歴などの細かい情報がわからない場合があります。一方で繁殖引退犬や、ペットショップで販売できないために保護された犬は、生年月日や病歴をブリーダーが把握しているケースが多いです。
特定のものを怖がる、興奮するといった癖があることも
ペットショップやブリーダーから購入する場合と異なり、保護犬のなかには警戒心が強い個体もいます。特に野良犬や飼育放棄された犬の場合、人に慣れていなかったり、人に対して恐怖心を持っていたりする可能性が高いです。子犬の頃から人に慣れているペットショップなどの犬に対し、初めは飼育が難しい場合も考えられるでしょう。
特に虐待や大声をあげられたなどの経験を持つ犬は、特定のものや動作に興奮したり、人を怖がったりする場合があります。主に以下のようなものを恐怖の対象として認識している場合が多いです。
・手を振り上げる動作
・頭に手を近づける
・棒状のもの
・大声や大きな音
・男性、女性、子ども、高齢者など特定の特徴を持つ人物
・自転車、バイクなど特定の特徴のあるもの
保護犬を迎える方法は?
保護犬を迎えるにはいくつか方法があります。ここでは保健所と動物愛護センター・譲渡会・里親募集センターの違いを解説し、それぞれの特徴を 紹介します。
保健所、動物愛護センター
保健所とは、全国の自治体に設置されている公的機関です。地域住民の健康を支えるための専門的な支援のほか、動物の保護活動も行っています。保護犬の譲渡には事前の講習会参加や面接など、各自治体で条件があるため、お住まいの地域の保健所のホームページを確認するとよいでしょう。また、動物愛護センターは保健所で保護された動物に対しての関連業務を行う施設です。
譲渡会
譲渡会は、主に動物保護団体で保護された動物の里親を探すために開催されるイベントです。実際に保護犬に触れ合え、相性を確認できるのがメリットと言えます。ただし、面談や講習会を受けていないと、譲渡会に参加できない場合もあるので、よく条件を事前に確認しておきましょう。
里親募集サイト
保護犬と、里親のマッチングを目的としたサイトです。NPO法人や、動物の保護活動を行うボランティア団体などが運営しています。飼い主と直接コンタクトが取れるメリットがある一方で、個人のやり取りでトラブルが起きるケースも報告されています。利用する際は十分に気をつけましょう。
保護犬を迎えるまでの流れ
次に先ほど紹介した3つの方法に関して、どのような流れで保護犬を迎えるのかを解説します。
保健所、動物愛護センター
1.登録
譲渡の条件を確認し、保健所やセンターに問い合わせて受付
2.講習会への参加
飼う際に注意点や心構え、必要なものなどの説明を受ける
3.面接
希望する保護犬と会いマッチング、飼い方などをレクチャーしてもらう
4.譲渡
問題なければ契約書を書き、譲渡成立
(※希望者が複数の場合は、抽選になる場合もある)
譲渡会
1.予約
ホームページなどから譲渡会への参加を予約
2.譲渡会に参加
犬との相性確認のほか、飼育の注意点や事前準備などの説明を受ける
3.手続き
引き取りたい犬を決めて、書面などの手続きを行う
(※事前にトライアルを実施する団体もある)
4.譲渡
問題なければ、譲渡成立
里親募集サイト
1.登録
里親募集サイトに会員登録する
2.申込
気になる犬を見つけたら申込する
3.条件の確認
掲載者と直接やりとりして、譲渡条件を決める
4.譲渡
お互いに合意したら、契約者を記入し譲渡成立
保護犬はどのように選べばよい? 迎える際に必要なものは?
保護犬をはじめて迎える方は、「どんな子を選んだらいいんだろう」と迷うかと思います。以下のポイントに着目すると、自分にぴったりな子に出会える確率が高くなるでしょう。
・ライフスタイルに合った犬を探す
・住まいに合ったサイズを想定する
・性別を決めてから選ぶ
・健康状態をよく確認する
・年齢を確認する
上記のように見た目だけでなく、さまざまな判断基準を持って選ぶことが大事です。たとえば、散歩の時間が多くとれない場合は、運動量の必要な個体は向かないでしょう。また、もともと野良犬だった子の場合は人に馴染みにくいので、初心者の方にはおすすめできません。そのほかサイズの想定も大事です。成長すると想像以上に大きくなることもあるので、居住スペースが広くない場合は注意してください。
保護犬を迎える際に必要なもの一覧
首輪やリード
勝手に動き回らないようにするためにも首輪やリードは必要になるでしょう。迎える際だけでなく、散歩などにも使えるのでサイズがあったものを選ぶようにしましょう。
サークルやケージ
犬は自分の空間を用意してあげると落ち着きます。お迎えしてから緊張をほぐすためにもあらかじめ用意しておくと良いでしょう。
キャリーバッグ
迎えに行く時には犬を持って運べるキャリーバッグが必要になります。ハードタイプのものはキャリーバッグとしてだけではなく、クレートとしても使うことができます。
ベッド
犬は人間よりも長い時間眠る生き物です。そのため、ベッドは重要な場所だと言えるでしょう。体よりも少し大きいくらいのサイズのものを用意してくつろげるようにしましょう。
トイレまたはペットシーツ
トイレの場所はおうちにあらかじめ用意しておくようにしましょう。トイレシーツは厚型のものや防臭タイプのものなどがありますが、その犬の交換頻度に合わせて選んであげるのがおすすめです。
ドッグフードや食べ慣れているフードなど
フードはしばらく保護施設や預かっていた場所で食べていたものと同じものを食べさせるようにしましょう。犬の年齢とともに食事の内容も変えていく必要があるので、どんなフードを取り入れていくか事前に検討してください。
食器
当然ですが、食事には食器が必要です。フード用とお水用の2つは最低限必要になるでしょう。フード用には衛生面の観点から陶器のものやステンレスのものが良いでしょう。
おもちゃ
犬のストレス解消や遊びたい欲求を満たすためにおもちゃを用意しておくと良いでしょう。しつけもできるような知育おもちゃもおすすめです。
犬の飼育に関する本
犬を初めて飼う際、誤った情報や知識をもとにしつけや食事などをしてしまうと後々取り返しのつかないことになってしまいます。そういった事態を防ぐためにも犬の飼育に関する本を事前に読んでおくと良いでしょう。
保護犬を迎える条件や費用は?
保護犬を迎えるには、さまざまな条件をクリアする必要があります。参考のひとつとして、東京都動物愛護相談センターの条件を紹介します。
・都内にお住まいで20歳以上60歳以下の方 ・現在、犬や猫を飼育していない方 ・家族に動物に対するアレルギーを持っている方がいない方 ・飼うことを家族全員が賛成している方 ・最期まで責任を持って飼い続けることができる方 ・経済的、時間的に余裕がある方 ・動物に不妊去勢手術による繁殖制限措置を確実に実施できる方 ・集合住宅・賃貸住宅の場合は、規約等で動物の飼育が許されている方 ・当センター主催の譲渡事前講習会を受講している方 |
上記のように、飼い主の年齢や経済状況、先住犬がいないなどさまざまな条件があります。犬の飼育には費用がかかりますし、体力も必要です。最後まで責任を持って飼うためにもこれらの条件を満たす必要があります。また、基本的に譲渡自体は無料ですが、「畜犬登録料」や「マイクロチップ挿入費用や登録費用」、「狂犬病予防注射費や注射済票の交付手数料」などの費用がかかることがあります。
里親として保護犬を迎える際の心構え
保護犬を迎え、里親になるために準備しておきたいことや、考えておくべきことをご紹介します
犬を飼うのにかかる費用や手間について確認しておく
犬の飼育には食費や医療費をはじめ、以下のお金がかかります。
・食費:毎日のフードやおやつにかかる費用
・医療費:フィラリアやノミ・ダニの予防費用、各種予防接種やワクチンの費用、病気治療費
・雑費:ペットシーツやリード、おもちゃなど生活に必要な消耗品など
一般社団法人ペットフード協会の「平成29年(2017年)全国犬猫飼育実態調査結果」によると、犬の飼育にかかる必要経費は医療費などを含めて年間160万円以上にもなると言われています。もちろん飼い始める年齢や性別、病気の有無によって変わりますが、おおよその金額は確認しておきましょう。
犬を飼うために家の環境を整える
犬が生活する場所を決めて、過ごしやすいよう整えておく必要があります。環境を整えるためにケージやサークル、犬用のベッドなどを買いそろえましょう。そのほか外出時に必要なクレートも早めに購入しておくと便利です。事前に必要なものを把握しておいてください。
保護犬を迎える際の注意点
最後に保護犬を迎える際の注意点を3つ紹介します。
保護犬それぞれの経歴や過去による苦手なものや癖をきちんと理解する
保護犬を迎えるまでに、その犬がどのような環境で暮らしてきたかを把握することが大事です。保護犬の中には、野良犬や虐待されてきた犬もいます。叩かれた経験のある犬は、頭を撫でようとしただけで噛みついたり威嚇したりすることがあるでしょう。その時に焦って飼い主の要求を無理やり通そうとすると、かえって保護犬との間に溝ができてしまいます。飼う前に苦手なものや癖を理解しておくことで、お互いにとってよりよい付き合い方ができるはずです。
信頼できる保護団体から引き取る
保護団体にもさまざまな特徴があります。活動内容や条件などをよく確認してから信頼の置ける団体から引き取るようにしましょう。
環境に少しずつ慣らしていく
保護犬をお迎えする時には焦りは禁物です。犬は慣れない環境に大変緊張します。安心できる場所かどうかをよく観察してから確認するので、すぐにフレンドリーになれない犬も多いでしょう。「早く仲良くしたい」「一緒に遊びに行きたい」とはやる気持ちを押さえ、まずはゆっくり環境に慣らしてあげながら接してください。