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日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。
犬は社会的な動物ですが、他の動物と一緒に飼う場合はその動物との相性が重要です。今回は、動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生監修のもと、犬と一緒に他の動物を飼う際の注意点をご紹介します。異なる動物どうしがお互いに安全で快適に暮らすにはちょっとした工夫が必要なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
- 犬と他の動物を一緒に飼うのに注意が必要な理由とは?
- 他の動物との問題が起こりやすい犬は?
- 1. 犬と「鳥」の相性
- 2. 犬と「モルモット」「ハムスター」の相性
- 3. 犬と「ウサギ」の相性
- 4. 犬と「魚」の相性
- 5. 犬と「猫」の相性
- 犬と他の動物を一緒に飼うときに気をつけること
犬と他の動物を一緒に飼うのに注意が必要な理由とは?
「愛犬がさみしそうだから他の動物を……」と考える人もいますが、他の動物が増えることで、かえって愛犬のストレスが増えてしまうことも少なくありません。犬と他の動物を一緒に飼う際に気を付けたいのは下記の点です。
犬が他の動物を捕食対象と考えてしまう
犬は摂食行動の一貫として、獲物を見つけ、追跡し、捉えるという行動をとります。これは感情の変化に関係なく起こる、正常な行動のひとつです。他の動物の細かい動きや早い動きに反応して、捕まえようとしてしまう可能性があります。
特に、優れた視覚と走力で獲物を捉えようとする視覚ハウンド、猟犬であるテリア、牧羊犬は捕食欲求に関する問題を起こしやすいと言えます。
他の動物をおもちゃと勘違いする
主に子犬期に見られる遊び行動は、犬として正常な捕食行動を身につけるために役立つと考えられています。他の動物の細かい動きや早い動きに興奮し、遊びの対象として捕まえようとするかもしれません。
感情をコントロールできずに攻撃してしまう
犬の脳は、人と比べて「大脳新皮質」という理性や複雑な分析を行う場所が発達していません。「いやだ!」「怖い!」というマイナスの感情を制御することができず、攻撃したり逃げ出したりしてしまいます。護衛犬や日本犬は、縄張りを守る為に相手を威嚇したり攻撃的な行動を示すことがあるかもしれません。
他の動物との問題が起こりやすい犬は?
他の動物を一緒に飼って、今よりも幸せになる、快適になる犬が多いとは言えません。中でも下記の特徴がある犬は、他の動物と一緒に飼うことで問題が起こりやすいでしょう。
・子犬期から他の動物に触れ合う機会がなかった
・怖がりである
・身体的・知的活動の機会が十分に与えられていない
・お腹が空いている、必要な栄養が与えられていない
・生活スペースが狭い
特に、幼齢または高齢の動物、体調の優れない動物と一緒に飼うのは要注意。飼い主の意識や注目が犬以外に向いてしまい、意識して犬とも充実した時間を作らないとストレスを与かねません。
また、犬にとって相手の行動パターンが予想しにくい場合は、突然の動きや泣き声で恐怖を感じることもあるでしょう。犬が何らかの理由で攻撃した際に、相手の動物が自分の身を守ることが難しいと、大きな事故につながる危険性があります。
犬と他の動物がお互いに愛着をもつ関係になるには、飼い主側で多くの注意と配慮を払う必要があるのです。
それでは、次はペットと犬の相性、一緒に飼育する場合の注意事項について具体例を紹介していきます。
1. 犬と「鳥」の相性
体が小さく、動きが素早く小刻みな動物は、犬にとって捕食の対象になりやすいです。鳥は飛ぶことができるので、犬から攻撃されそうになったら逃げることができるかもしれませんが、噛まれたり強く引っ掻かれたりすると非常に危険です。もし、犬と鳥と一緒に飼うならば、犬の目の届かないところに鳥かごを置くようにしましょう。
2. 犬と「モルモット」「ハムスター」の相性
鳥と同じように、動きが早い小動物として捕食の対象としてみられやすいです。モルモットやハムスターの場合は、飼い主がケースを簡単に開けられる場所に置きがちで、よくケースから脱走してしまうといった話も耳にします。犬の視界に入りやすく、いざというときにモルモットやハムスターは自分の身を守れないという点で一緒に飼うのはおすすめできません。どうしても一緒に飼いたい場合は、愛犬がどんなに穏やかな性格であっても、犬の生活スペースとは別の部屋で飼うようにしましょう。
3. 犬と「ウサギ」の相性
特にウサギよりも体の大きい犬から見ると、捕食の対象に考えられます。ウサギも犬に襲われた場合に、自分の身を守ることができないので、犬とウサギを一緒に飼うならば生活空間を分けることが重要です。
4. 犬と「魚」の相性
水槽の中でチョロチョロと泳ぐ魚の動きは、犬にとって捕食の対象に見える場合があります。また、匂いをかいだり触れたりすることができないので、犬にとって愛着のある存在になりにくいのも難点です。水が怖くない犬は、躊躇なく水の中に手や口先を入れて捕まえようとするかもしれません。日頃から、犬が水槽の魚を狙っていないか観察し、もし捕まえようとしているなら、犬の届かないところに水槽を移動しましょう。
5. 犬と「猫」の相性
犬は、自分よりも体の小さい猫も捕食対象として見ることがあります。他の動物と違い、猫は家の中を自由に移動することが多いので、縄張り問題につながることも。犬が追いかけようとしたら猫は高い場所に逃げることもできますが、事故や怪我につながる可能性は無視できません。先述した「問題が起こりやすい犬」の特徴に当てはまる犬は、猫と同じ空間で過ごさせないようにし、飼い主が目を離すときはそれぞれ部屋を分けましょう。リビングなど犬と猫が一緒に過ごす空間は、猫が複数の場所から高い場所に逃げられるように家具の配置などを工夫してください。
犬と他の動物を一緒に飼うときに気をつけること
犬と他の動物を一緒に飼いたい場合は、飼い主自身に十分な時間的、心理的、体力的余裕があること、犬の生態や愛犬の個性をよく理解していることが大切です。犬が他の動物を攻撃しないように、愛犬が快適で幸せであるように心を配りましょう。
また、犬と一緒に他の動物を飼育したいのであれば、下記のような条件を満たすことをお勧めします。参考にしてみてください。
・子犬の頃から一緒に飼う予定の動物と過ごし、良い経験を積んだ犬
・飼い主との信頼関係が十分である犬
・いつでも飼い主の指示に従うことができる犬
・適切な食事管理がされている犬
・身体的、知的活動の機会が十分に与えられている犬
・生活スペースが十分にあり、安全で安心できる場所がある犬
・必要に応じて他の動物と過ごす場所を分けることができる犬
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。